とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第417話 忍び寄る悪意

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 時間は、王都メルト魔法学院の第2学年が修学旅行に出発して三日たった日まで遡る。
 王都ジェルバンスにいる人々は、この日もいつもの様に平和な日常を過ごしていた。

「う~~んっはぁ! 今日もいい天気だな。ルークたちは今頃どの辺に居るのかな?」

 そう背伸びをしながら街中を歩くのは、王都メルト魔法学院第3学年のオービン・クリバンスであった。
 オービンは一人で街中を歩き、通院中の病院へと向かっている途中であった。

「(ミカロスも付いて来ると言っていたが、さすがにそこまで心配しなくていいから断ったんだよな。エリスが少し強引にだが、出かける約束をとりつけてくれたから、付いて来てないって所もあるな)」

 そう思いながら歩いていると、前方から王国兵数名が急いで王城へと向かって行く姿を目にする。
 あまり見ない光景に周囲の人も少し驚いていたが、何か招集でもされたのだろうと適当に解釈し、特に騒ぐことなく皆流していた。
 オービンはその王国兵の姿を見て王城へと視線を向けた。

「(王国兵の人たちがあんなに急いで街中をかけて行くって事は何かあったのか? 何かあれば連絡が来るが、ないって事は特に事件とかではないって事だよな……そう言えば、アバンさんも王国兵だったな。最近会えていないけど、どうしているんだろうか)」

 そんな事を思いつつオービンは王城から視線を戻し、病院へと再び向かい始めるのだった。
 その頃王城内では、王国兵たちが慌ただしくしていた。

「早急、再度事実確認を! 正確な情報をもっと集めろ!」
「各部隊に渡す武器等の確認も急げ!」

 あちこちでそのような言葉が飛び交う中、王国兵の訓練兵であるアバン・フォークロスも上官に付き添い王城内を走り回っていた。

「悪いアバン、私の仕事の方に付き合わせてしまって」
「いいえ、ウエイド教官。緊急事態ですので、人手が足りない所で働くのは当然です。身分上はまだ訓練兵ですので」
「とは言っても、異例だがもう君はサスト隊に仮入隊している身だからね。サスト隊長に申し訳ない」
「気にしなくても大丈夫ですよ、ウエイド教官。俺の代わりにベルヴァティが働いてくれていると思うので」
「それはそれで、彼が大変なのでは?」
「あいつは体も頑丈ですし、俺よりも働き者ですから心配ないですよ。それより急ぎましょう」
「そうだね。今はこの情報を届けて報告するのが、最優先だね」

 そしてアバンとウエイドは目的地に向かって、急ぐのだった。
 一方で、王城のとある一室にて円卓を囲う様に国王を筆頭に、王国軍8部隊の部隊長と他二名がそれぞれ集まっていた。

「各部隊集まったな。それでは話を始めようか。では、状況報告から頼む」

 そう口にしたのは、王都ジェルバンス国王であるハンス・クリバンスであった。
 ハンスの言葉を聞き、端に控えていた王国兵士が口を開く。

「はい。では現時点ですが、北部に位置する都市ユンベールから一大隊の戦力が王都に進行中です。その中には、ユンベール内でも最高戦力である『サンショウ』の姿も確認されています。またユンベールとは現時点でも連絡がとれず、進行理由は未だ不明です。今の進行ペースですと、残り六時間ほどで王都に辿り着く予測です。現状報告は以上となります」
「ユンベールね……確か、そこまで大きい都市ではなかったよな」
「北の都市の中で一番王都に近い都市だろ」
「軍事力もベンベルに比べたら大きくも強くないって話だが、情報では異様に突き出た者たちがいるらしいが」
「それが最高戦力の『サンショウ』って呼ばれる奴らなのではないか?」
「詳しくは判明してないようだね」

 そう円卓に座る各隊長たちが手元に配布された資料に目を通しながら、話し始めた。
 円卓に集まった8部隊には、部隊カラーが決まっており服装の一部に必ずそのカラーを身に付けており、その部隊の王国兵も所属部隊のカラーを身に付けている。
 ちなみにアバンやベルヴァティが所属しているサスト隊は、朱色のカラーとなっており、その他の部隊の色は、黒・蒼・白・紫・橙・緑・黄となっている。
 そして再びハンスが話し始める。

「以前ユンベールとは、婚約の話があったりと直近で関係があったな。それと今回の件が関係しているとは考えられないが、念の為調査していた件も改めて報告頼む」
「はい。では直ちに、そちらの件もまとめさせていただきます」

 すると報告してくれた王国兵が一礼すると、その部屋から退出して行く。

「それでハンス国王、わざわざ私たち8部隊長を集めて、このまま静観しているつもりではありませんよね?」
「おいレント。口が過ぎるぞ」

 そう黒色のシンボルを付けたレントの発言を止めたのは、胸元に緑色のシンボルを付けたポートレスであった。

「二人共、国王の前だぞ」
「はぁ……ザべッシュさん、貴方ならこの状況がどれほどの危機か分かっているのでは?」

 レントは、対面に座っていた胸元に橙色のシンボルを付けた隊長内でも歳を一番重ねているザべッシュに訊き返した。
 するとその様子を見ていた、黄色のシンボルを胸に付けていた隊長内でも一番若いシレスが視線を逸らし小さくため息をつく。

「(はぁ~嫌だ嫌だ、こういう雰囲気。一番嫌いなんだよね俺……はぁ~つら)」

 また、シレスの横で眠そうな目をつぶらない様に頑張って見開いていた紫色のシンボルを付けた隊長が、ウトウトし始めていた。

「(やばい、急激な眠気が……瞼が重い……)」

 直後机の下から、その隊長を起こそうと横に座っていたサストが軽く足を蹴る。
 それでウトウトとしていた隊長がハッと目を開き、サストの方を見て無言で感謝をする。

「(すまん。ありがとうサスト)」

 サストはそれを受け取り、視線をレントとザべッシュが話している方へと向ける。

「(夜間任務担当しているウェックスには、この会議の雰囲気はきつそうだな)」

 そんな事を思いながら、チラッともう一度ウェックスの方を見て、そのままその奥にいる白色のシンボルを付けた隊長内で唯一の女性である、インベルへと視線を向けると話を聞かずに資料を熟読していた。
 その時サストは自分を睨むような視線を感じ、その方へと顔を向ける。

「(げっ……グーゲンベル)」

 視線の正体は、蒼色のシンボルを胸に付けた隊長グーゲンベルであった。

「(何で話も聞かずに私の方を見て来ているんだ、あいつは)」
「(サストのやろう、大事な会議中にインベルの方を見やがって。何しているんだよ)」
「(どうせ、あいつの事だ。インベル関係で睨んで来たんだろうな。それより今は会議だ)」

 レントとザべッシュが互いの意見をぶつけ合い、そこにポーレストがちょくちょくと入る状況だったが、途中でインベルが割り込んで来た。

「いつまで無駄な時間を使うつもりですか? 今は各個人の意見よりも、全体としての総意を決めるべきでは? 危機が迫っているこの国を、貴方方は滅ぼしたいのですか?」
「何だとインベル? 私は早急に対処すべてきだと話しているのに、ザべッシュさんが反論してくるから言い合いになっているんだ」
「二人で熱い言い合いしていて、私たちは完全に蚊帳の外。入った所で、ポートレスの様になるだけ。これを時間の無駄と言わずになんというんだ?」
「っ……」
「確かにインベルの見方もあるな。まずは私にも非があったと認めよう。では改めて、全員でこの危機の対処について話し合おうではないか。国王、大変お見苦しい姿をお見せして申し訳ありません」

 ザべッシュはハンスにも他の隊長にも軽く頭を下げるが、レントは特に謝罪はせずに軽く顔を背けた。

「謝らなくてもいい、ザべッシュ。レントも気にするな。二人の気持ちはよく分かった。インベルも二人を止めてくれ感謝する」

 ハンスは各自に声を掛けると、今までレントとザべッシュが話していた内容もくみ取ったこれからの話を簡潔にいくつものプランを話し始めた。
 その話に各隊長たちも一番冷静で民の安全を考えた内容に、驚き関心してしまう。
 そして各隊長たちにも不足な部分や付け足すべき事などを訊き、より密度の高いプランへと変化させていった。

「よし。大まかではあるが、先程のプランで行こう。各隊長たちもそれでいいかな?」

 ハンスの問いかけに各隊長たちも納得し、頷いて返事をする。

「では早速だが、各自行動を始めてく――」

 と、ハンスが言いかけた時だった。
 突然部屋に一人の王国兵が息を切らして入って来る。

「誰だ、ノックもせずに部屋に入って来た奴は?」

 レントがすぐさま声を上げると、部屋に入って来た王国兵は謝りつつ、ハンスに発言を求める。
 その言動にレントが怒鳴ろうとするが、ハンスが止めその兵士に発言を許した。

「あ、ありがとうございます。はぁー、はぁー、それで用件ですが、この手紙が、はぁー、はぁー」
「一度呼吸を整えろ」
「は、はい」

 ザべッシュは咄嗟にそう声を掛けると、息を切らしていた王国兵が深呼吸して息を整えて再び話し始める。

「ハンス国王宛てに、先程ユンベールからの手紙が届きました!」
「「っ!?」」
「正確には先程見つかったらしいのですが」

 すると入口近くにいた、グーゲンベルが王国兵から手紙を受け取り、そのままハンスへと渡す。
 皆が息を呑んで見守りハンスが手紙を開けると、そこには一枚の紙が折りたたんで入っていた。
 ハンスはその紙を取り出し、開くと突然その紙から文字が飛び出す。
 思いもしない出来事に、全員が構えだし国王の護衛を担当している王国兵もハンスを護るように前へと出て、ハンスを後ろへと下げる。
 すると、飛び出た文字は円卓の中心に集まり出し魔法陣へと変わり、魔法陣が完成するとそこから映像の様にとある人物が出現する。

「王都の王国軍8隊長方、そしてハンス国王初めまして。俺の名は、インクル。現ユンベールを指揮する者だ」
「(インクル? それにユンベールを指揮する者だと?)」

 インクルと名乗った人物は仮面を付けて顔を隠しており、声も加工している様な感じで全く正体が分からない状態であった。

「今進行しているユンベールの軍は、私の指示で向かわせている。まぁ簡単に言えば、貴方達が倒すべき相手だな。進行理由は至って簡単。王都を奪いとるためさ」
「奪い取るだと? 何を考えている貴様!」
「あー言うの忘れていたが、これは事前記録だから話とかは無理だから。俺の一方的な話になるから、質問しても無駄だよ」
「ちっ」

 インクルの発言にレントが舌打ちする。

「俺はさ、王都が好きなんだよ。国の中心だしさ。それに、王になればなんでもしたい放題でしょ。そんで、俺が王になって叶えたい夢があるんだよ。だから、王都を奪い取る為に今進行してるってわけ。で、これはそれの宣戦布告。どう? 理解出来たかな?」
「考え方がいかれてやがる」
「愉快犯じゃなさそうだな」
「『モラトリアム』の思想でも持っているのか? その生き残りか?」
「どっちにしろ、完全に敵対関係と宣言してくれた。もうやる事は一つだろ」
「うんうん。皆滾ってる感じだね~分からないけど。という訳で、これから王都落としに行くからさ、覚悟しておいてよハンス国王。自分の国を護りたかったら、全力で俺たちを潰さないとダメだよ。俺たちは、どんな汚い手でも使うから、王都に入れた時点で勝ちはないと思った方がいいよ~」

 ハンスをおちょくる様な態度をとるインクルに、ハンスは気持ちを乱される事無くただただ、インクルの言葉を睨む様に聞いていた。

「王国軍だっけ? その隊長がどれほど強いとか知らないけど、どうせ上の立場になって威張って踏ん反り返ってるだけでしょ?」

 その発言に、数人の隊長が眉を歪める。

「ムカついた? 悔しいか? でも残念。どうせお前らは前線には出ないで指示するだけだろ? 所詮は賄賂とかコネで成り上がった奴なんだろうし、前に出ても俺たちに倒されてダメな所見せちゃうだけだしな。あっ、悪い悪い本当の事言って」
「挑発? 言い方がうざいんすけど」
「私たちを前線に出させたいか、本当に口が悪いだけかだな」
「まぁ何だ、俺たちは北側から向かってるから、警戒するなら北側にしなね。うわ~俺ってめっちゃ優しくない? わざわざ俺たちが攻める場所とか教えるとか。あ、そろそろ時間だわ。じゃ、戦場で会おう~バァ~イ」

 インクルはそう口にすると、片手を頭付近から軽く下に手を下ろす様な動作をして消える。
 そして同時に魔法陣も一瞬で粉の様になり、消え去るのだった。

「……皆、言いたい事や考えがあるだろうが、今は先程のプラン通りにまずは動いてくれ。改めて私の方から連絡する。以上、解散だ」
「「はっ!」」

 ハンスの言葉に各隊長たち含め、ハンスト護衛する王国兵以外がその部屋出て行き各自行動を始めるのだった。
 残ったハンスは椅子に再び座ると、護衛の王国兵の一人が増援を呼びに行き、それが来るまでハンスはその場に残る事になった。
 ハンスは椅子に座りながら、先程のインクルについて思い返していた。

「(インクル、聞いた事のない名だ。『モラトリアム』との関係性も気になるが、ユンベールを本当に現状動かしているのがあいつなら、今ユンベールの地はどうなっているんだ? 例の婚約の話しももしかしたら……それに、最後のあの行動も)」

 と、ハンスは頭を悩ますのだった。
 そして、至急王都ではユンベールから攻めて来る者たちに対して、各地で王国軍の配備が進められていくのだった。
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