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第428話 油断
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宙に浮きながらリリエルは、バベッチの方を見つめるとバベッチは見上げる。
「リリエル先生……」
「あまり驚かないのな、お前は」
「十分驚いてますよ。まさか、介入してるとは思わなくて……いいんですが、貴方の立場で介入して?」
「まあ、情が捨てきれなかったと思ってくれて構わないよ」
その会話を聞く、ハンスとティアは何の話をしているのか分からず軽く首を傾げていた。
「……そうですか。で、そちらに貴方はついて俺の敵になるんですね」
「元教え子の誤った道を正すのも、元教員としての役目だろ?」
バベッチは小さく舌打ちをした後、兵士たちにリリエルに向けて魔法攻撃を放つ様に指示を出す。
兵士たちはためらうことなく、リリエルに向けて攻撃を行うが、その攻撃をハンスとティアにも対象となっており二人は咄嗟に防衛する魔法を展開させる。
しかし、リリエルがその前に向かって来る魔法に向かい片腕を振るうと相殺する様に魔法が全て消失する。
「「!?」」
リリエルはそのまま兵士たちに向けて、片腕を突き出すと次の瞬間、バベッチの周囲にいた兵士たちは一瞬で泥の塊へと変わり果てる。
理解が追い付かない状況にハンスとティアは目を大きく開けていると、先程破壊されたテラスをリリエルはそのまま宙を移動させ修復させたのだった。
そして修復したテラスの手すりにリリエルは降り立つ。
「バベッチ、一つ伝えてやろう。お前が王都に送り込んだ奴らは、もうすぐ全員倒されるぞ。まあ、元から侵略が上手く行くとは、お前も思ってなかったんだろ?」
「……」
「それとお前が本物のバベッチでない事も、私には分かるぞ。どうせ何処かで見ているんだろ?」
リリエルの言葉にハンスとティアは驚き、リリエルの方を向く。
するとリリエルがテラスの手すりから降りて、バベッチの方へと向かって行く。
「最後に一つ訊く……変わる気はもうないのか?」
「……変わる? 昔みたいに皆仲良くって事ですか?」
「ああ、そうだ」
バベッチの前で止まりリリエルはバベッチの顔を見るが、バベッチはリリエルの顔は見ず視線を下に落とし鼻で笑った。
「何を今更言ってるんですか。仲良しごっこは、もう俺が死んだときに終わってるんですよ! 貴方こそ、魔女の地位を捨ててまであいつ等に介入するなんて、昔の貴方からしたら考えられない行動ですよ」
「そうだな……あの日、暇つぶしに教員を引き受けた時点で間違ったんだろうな。だが、後悔はない。これが私が選んだ答えだよ、バベッチ」
リリエルはそう答えるとバベッチの顔に片手を向けて、魔法を放つ。
その瞬間バベッチは「魔女を捨てるなんて馬鹿な選択だ」と呟き、リリエルの魔法で吹き飛ばされ先程の兵士同様に泥になって、テラスに散ったのだった。
テラス周辺には泥が散らばっており、少し異様な光景であった。
「リ、リリエル先生……」
そこでハンスがリリエルに声を掛けると、リリエルは振り返ってハンスたちの方へと歩き始めた。
「やあハンス、ティア。数カ月振りだね。おっと、そう言えば杖を使うのをすっかりと忘れていた。ダメね」
「いや、そんな事よりも」
「せっかく魔女らしい格好をしているのに、杖を使わないのはなしよね。でも、ついつい忘れちゃうのよね杖」
「リリエル先生! 今はそんな話よりも、どうしてここに? それとバベッチの事、どこまで知っているのかちゃんと教えて下さい!」
「ティア、教えてって以前にも話したでしょ。あれが全てよ。彼は死んだけど、生きている。異様な執着心を持ってね」
「あの姿、いや、そもそもあれが本当にバベッチ何ですか? 以前見た時は、俺たちが知っているバベッチの姿でしたよ? どうなっているですか?」
ハンスとティアが何かを知っていそうなリリエルに質問攻めしていると、そこへ兵士たちがやって来る。
二人はまたバベッチの部下かと思い構えるが、それに対して兵士たちは驚いて少し怯えてしまう。
「だ、大丈夫ですかハンス様、ティア様……と、そちらの方は」
「貴方はバベッチの仲間?」
「バべッ……? よく、分かりませんがこちらで戦闘があると聞き、増援に来た部隊です。廊下の兵士も救出中です」
その言葉を聞き、二人は構えを辞める。
そして護衛された状態の大臣たちがやって来て、状況報告をしたいと口にし始める。
「ふー……分かった。会議室で聞く、先に行って待っていてくれ」
ハンスの返事に大臣たちと護衛兵たちは先に向かって行く。
「ほら、先に行ってきなさい。私は何処にもいかないから、先に国王の使命を果たしなさい。ティア、貴方も王女として共に行動しなさい」
「……分かりました。必ず話してもらいますからね、リリエル先生」
「約束ですよ、リリエル先生」
「はいはい。約束は破らないから、早く行きなさい」
そしてハンスとティアは、リリエルを残して急いで大臣たちの待つ部屋へと向かって行く。
リリエルは、テラスに残りそのまま手すりへと近付き王都へと視線を向けるのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――王都内北側地区。
インベルが向かって来る部下たちを相手に、戦闘を続けていた。
致命傷にならない程度に攻撃をし続けていたが、倒しても倒して再び立ち上がり立ち向かって来ており、手を焼いていた。
更にはそこに部下たちだけではなく、一般人までもが同じ様に襲い掛かってき始めていたのだった。
「(全く、本当に厄介だ。部下の状況から強制的に操られているのは把握出来た。それも、何処かから遠隔的に操作されていると考えるのが妥当だろう。となると、この数を操るとなると周辺で高い場所と絞るべきか)」
インベルは最小限の攻撃で向かって来る人を退け、相手をかわしながら移動していた。
そして辿り着いた場所は、周辺で一番高い場所である塔であった。
その周辺にも同じ様に襲い掛かって来る人がいたが、インベルは相手にせず軽くあしらい塔へと侵入する。
だが、中には偵察へと出ていた兵士たちが待ち伏せていた。
「(ここにもいるか。だが、こんな所にもいるという事は、当たりかもしれないな)」
襲い掛かってくる兵士に対しては、躊躇なく気絶する様な一撃を叩き込む。
そのまま吹き飛ばした後に、インベルは走って塔を登り始める。
登り終え最上階に到達すると、そこには筒状の魔道具が立っているのを目にする。
「やはり、ここで操作していたか」
インベルは直ぐに目の前の魔道具を斬り払い、魔道具を真っ二つにする。
そしてその場から下の光景を見ると、先程まで不死身の様に立ち上がっていた人々が、急に倒れ始めたのだ。
その光景を見て解決したと思い、一息ついた時だった。
背後から別の兵士が不意打ちする様に襲い掛かって来たのだ。
思いもしない出来事に、一瞬不覚をとるインベルであったが、すぐさま立て直し兵士を掴むと投げ飛ばし、魔法を放ち気絶させる。
「おや? さすがに不意打ちでは倒せませんか」
「誰だ?」
見知らぬ声にインベルは周囲を見回すが、誰もおらず女性の声だけが聞こえて来ていた。
「まさかカラクリに自ら辿り着き、それを破壊するとは流石王国軍隊長ですね」
「お前がこの犯人か」
「ええ。こうして声を掛けたのは、カラクリを見抜いた報酬です」
「……私の事が見えているのか?」
「それはどうでしょうね。ただ、会話するのはこれが最後だと思いますよ。貴方は私を見つけられない。このまま貴方は、部下や一般人に負けて倒れるのですから」
「そうか。やはり、この装置はまだ他にもあるのだな」
「おっと、口が滑ってしまいました。まあ言わなくても、気付いていた感じですのでいいでしょう。そうです。所詮貴方が破壊したのは、一つにしかすぎません。全てを壊さない限り、あの人たちは止まりません」
「なるほど。全て破壊すれば解放できるという事か。ありがたい情報だ、では先にそうさせてもらう!」
そう口にするとインベルは会話の途中で、塔から飛び降りた。
剣を壁に突き刺しながら垂直に塔の壁を走ると、途中で飛んで屋根へと飛び移り移動を始めるのだった。
その後女性の声はインベルには届く事はなかった。
「何なんですか、あの人。人の話を最後まで聞かないで飛び出すとは……王国軍の隊長は変わり者なんですか?」
そう口にするのは、執事服を身に纏い首枷を付けているのが特徴のオムジットであった。
彼女は、別の場所からインベルがいた場所へと破壊された魔道具から声を掛けていたが、インベルがいなくなり呆れた様に独り言を呟いていた。
今オムジットは、新たに魔道具を設置し終えて階段を降りている時だった。
階段を降り終え扉を出ると、そこは王都でも数少ない大教会内であった。
そう、オムジットは大教会の最上階に筒状の魔道具を設置し操る人を増やし続けており、これからまた新たな場所へと向かおうと堂々と大教会を進み出て行こうとしていた。
「彼女の位置からここは真反対。直ぐに見つかる事はないですし、まだまだ装置は沢山ありますし、彼女が全てを壊すのは不可能。彼女は警戒すべき相手ですが、それ以外は私の魔法で直ぐに操れますし脅威はありません。彼女さえ警戒していれば問題なし」
オムジットはそう呟きながら、歩いていると突然教会内の椅子から大きなあくびが聞こえて来て足を止める。
そして声が聞こえた方へと視線を向けると、椅子で横になって寝ていたのか、急に一人が起き上がり大きく背伸びをし始めた。
「うっっ~~~! はぁ~……よく寝た~~」
その後ろ姿は、炎の様な赤と黄色の髪型で後ろ髪を小さく縛っている青年であった。
オムジットは咄嗟に声を殺し、魔法を展開し始める。
するとその青年が立ち上がり振り返り、オムジットの存在に気付いた時だった。
準備していた魔法をオムジットが放つ。
これでまた一人操り人形が増えたと思っていたが、何故かオムジットが放った糸は弾かれてしまうのだった。
「!?」
何かのミスかと思い、再び瞬時に放つが結果は同く意識を乗っ取る糸が弾かれるのだった。
「おいおい、さっから俺様に何しようとしてるんだあんたは?」
「……」
オムジットは黙ったまま、次は先程よりも多くの糸を青年に向けて放つ。
「(理由は分からないが、私の魔法があんな青年に効かないはずはない!)」
だが、放った魔法は青年の何かに弾かれ届く事はなかった。
「あんたさ、無言で魔法放つとか最悪だぞ。普通にそれ犯罪だからな」
「……っ!」
そこでオムジットは正面からではなく、移動し真横から魔法を放つ。
しかし、青年は目でオムジットを負い放たれた魔法を腕で薙ぎ払う。
「なっ! 馬鹿な! 何故効かない!」
「よ~く分かった。あんた悪い奴だな。だったら、俺様が相手してやる! 捕まえてしっかり反省してもらうぞ!」
「くっ……」
「俺様は王都メルト魔法学院、第3学年寮長! 名は、ダイモン! 真正面から行くぞ!」
「リリエル先生……」
「あまり驚かないのな、お前は」
「十分驚いてますよ。まさか、介入してるとは思わなくて……いいんですが、貴方の立場で介入して?」
「まあ、情が捨てきれなかったと思ってくれて構わないよ」
その会話を聞く、ハンスとティアは何の話をしているのか分からず軽く首を傾げていた。
「……そうですか。で、そちらに貴方はついて俺の敵になるんですね」
「元教え子の誤った道を正すのも、元教員としての役目だろ?」
バベッチは小さく舌打ちをした後、兵士たちにリリエルに向けて魔法攻撃を放つ様に指示を出す。
兵士たちはためらうことなく、リリエルに向けて攻撃を行うが、その攻撃をハンスとティアにも対象となっており二人は咄嗟に防衛する魔法を展開させる。
しかし、リリエルがその前に向かって来る魔法に向かい片腕を振るうと相殺する様に魔法が全て消失する。
「「!?」」
リリエルはそのまま兵士たちに向けて、片腕を突き出すと次の瞬間、バベッチの周囲にいた兵士たちは一瞬で泥の塊へと変わり果てる。
理解が追い付かない状況にハンスとティアは目を大きく開けていると、先程破壊されたテラスをリリエルはそのまま宙を移動させ修復させたのだった。
そして修復したテラスの手すりにリリエルは降り立つ。
「バベッチ、一つ伝えてやろう。お前が王都に送り込んだ奴らは、もうすぐ全員倒されるぞ。まあ、元から侵略が上手く行くとは、お前も思ってなかったんだろ?」
「……」
「それとお前が本物のバベッチでない事も、私には分かるぞ。どうせ何処かで見ているんだろ?」
リリエルの言葉にハンスとティアは驚き、リリエルの方を向く。
するとリリエルがテラスの手すりから降りて、バベッチの方へと向かって行く。
「最後に一つ訊く……変わる気はもうないのか?」
「……変わる? 昔みたいに皆仲良くって事ですか?」
「ああ、そうだ」
バベッチの前で止まりリリエルはバベッチの顔を見るが、バベッチはリリエルの顔は見ず視線を下に落とし鼻で笑った。
「何を今更言ってるんですか。仲良しごっこは、もう俺が死んだときに終わってるんですよ! 貴方こそ、魔女の地位を捨ててまであいつ等に介入するなんて、昔の貴方からしたら考えられない行動ですよ」
「そうだな……あの日、暇つぶしに教員を引き受けた時点で間違ったんだろうな。だが、後悔はない。これが私が選んだ答えだよ、バベッチ」
リリエルはそう答えるとバベッチの顔に片手を向けて、魔法を放つ。
その瞬間バベッチは「魔女を捨てるなんて馬鹿な選択だ」と呟き、リリエルの魔法で吹き飛ばされ先程の兵士同様に泥になって、テラスに散ったのだった。
テラス周辺には泥が散らばっており、少し異様な光景であった。
「リ、リリエル先生……」
そこでハンスがリリエルに声を掛けると、リリエルは振り返ってハンスたちの方へと歩き始めた。
「やあハンス、ティア。数カ月振りだね。おっと、そう言えば杖を使うのをすっかりと忘れていた。ダメね」
「いや、そんな事よりも」
「せっかく魔女らしい格好をしているのに、杖を使わないのはなしよね。でも、ついつい忘れちゃうのよね杖」
「リリエル先生! 今はそんな話よりも、どうしてここに? それとバベッチの事、どこまで知っているのかちゃんと教えて下さい!」
「ティア、教えてって以前にも話したでしょ。あれが全てよ。彼は死んだけど、生きている。異様な執着心を持ってね」
「あの姿、いや、そもそもあれが本当にバベッチ何ですか? 以前見た時は、俺たちが知っているバベッチの姿でしたよ? どうなっているですか?」
ハンスとティアが何かを知っていそうなリリエルに質問攻めしていると、そこへ兵士たちがやって来る。
二人はまたバベッチの部下かと思い構えるが、それに対して兵士たちは驚いて少し怯えてしまう。
「だ、大丈夫ですかハンス様、ティア様……と、そちらの方は」
「貴方はバベッチの仲間?」
「バべッ……? よく、分かりませんがこちらで戦闘があると聞き、増援に来た部隊です。廊下の兵士も救出中です」
その言葉を聞き、二人は構えを辞める。
そして護衛された状態の大臣たちがやって来て、状況報告をしたいと口にし始める。
「ふー……分かった。会議室で聞く、先に行って待っていてくれ」
ハンスの返事に大臣たちと護衛兵たちは先に向かって行く。
「ほら、先に行ってきなさい。私は何処にもいかないから、先に国王の使命を果たしなさい。ティア、貴方も王女として共に行動しなさい」
「……分かりました。必ず話してもらいますからね、リリエル先生」
「約束ですよ、リリエル先生」
「はいはい。約束は破らないから、早く行きなさい」
そしてハンスとティアは、リリエルを残して急いで大臣たちの待つ部屋へと向かって行く。
リリエルは、テラスに残りそのまま手すりへと近付き王都へと視線を向けるのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――王都内北側地区。
インベルが向かって来る部下たちを相手に、戦闘を続けていた。
致命傷にならない程度に攻撃をし続けていたが、倒しても倒して再び立ち上がり立ち向かって来ており、手を焼いていた。
更にはそこに部下たちだけではなく、一般人までもが同じ様に襲い掛かってき始めていたのだった。
「(全く、本当に厄介だ。部下の状況から強制的に操られているのは把握出来た。それも、何処かから遠隔的に操作されていると考えるのが妥当だろう。となると、この数を操るとなると周辺で高い場所と絞るべきか)」
インベルは最小限の攻撃で向かって来る人を退け、相手をかわしながら移動していた。
そして辿り着いた場所は、周辺で一番高い場所である塔であった。
その周辺にも同じ様に襲い掛かって来る人がいたが、インベルは相手にせず軽くあしらい塔へと侵入する。
だが、中には偵察へと出ていた兵士たちが待ち伏せていた。
「(ここにもいるか。だが、こんな所にもいるという事は、当たりかもしれないな)」
襲い掛かってくる兵士に対しては、躊躇なく気絶する様な一撃を叩き込む。
そのまま吹き飛ばした後に、インベルは走って塔を登り始める。
登り終え最上階に到達すると、そこには筒状の魔道具が立っているのを目にする。
「やはり、ここで操作していたか」
インベルは直ぐに目の前の魔道具を斬り払い、魔道具を真っ二つにする。
そしてその場から下の光景を見ると、先程まで不死身の様に立ち上がっていた人々が、急に倒れ始めたのだ。
その光景を見て解決したと思い、一息ついた時だった。
背後から別の兵士が不意打ちする様に襲い掛かって来たのだ。
思いもしない出来事に、一瞬不覚をとるインベルであったが、すぐさま立て直し兵士を掴むと投げ飛ばし、魔法を放ち気絶させる。
「おや? さすがに不意打ちでは倒せませんか」
「誰だ?」
見知らぬ声にインベルは周囲を見回すが、誰もおらず女性の声だけが聞こえて来ていた。
「まさかカラクリに自ら辿り着き、それを破壊するとは流石王国軍隊長ですね」
「お前がこの犯人か」
「ええ。こうして声を掛けたのは、カラクリを見抜いた報酬です」
「……私の事が見えているのか?」
「それはどうでしょうね。ただ、会話するのはこれが最後だと思いますよ。貴方は私を見つけられない。このまま貴方は、部下や一般人に負けて倒れるのですから」
「そうか。やはり、この装置はまだ他にもあるのだな」
「おっと、口が滑ってしまいました。まあ言わなくても、気付いていた感じですのでいいでしょう。そうです。所詮貴方が破壊したのは、一つにしかすぎません。全てを壊さない限り、あの人たちは止まりません」
「なるほど。全て破壊すれば解放できるという事か。ありがたい情報だ、では先にそうさせてもらう!」
そう口にするとインベルは会話の途中で、塔から飛び降りた。
剣を壁に突き刺しながら垂直に塔の壁を走ると、途中で飛んで屋根へと飛び移り移動を始めるのだった。
その後女性の声はインベルには届く事はなかった。
「何なんですか、あの人。人の話を最後まで聞かないで飛び出すとは……王国軍の隊長は変わり者なんですか?」
そう口にするのは、執事服を身に纏い首枷を付けているのが特徴のオムジットであった。
彼女は、別の場所からインベルがいた場所へと破壊された魔道具から声を掛けていたが、インベルがいなくなり呆れた様に独り言を呟いていた。
今オムジットは、新たに魔道具を設置し終えて階段を降りている時だった。
階段を降り終え扉を出ると、そこは王都でも数少ない大教会内であった。
そう、オムジットは大教会の最上階に筒状の魔道具を設置し操る人を増やし続けており、これからまた新たな場所へと向かおうと堂々と大教会を進み出て行こうとしていた。
「彼女の位置からここは真反対。直ぐに見つかる事はないですし、まだまだ装置は沢山ありますし、彼女が全てを壊すのは不可能。彼女は警戒すべき相手ですが、それ以外は私の魔法で直ぐに操れますし脅威はありません。彼女さえ警戒していれば問題なし」
オムジットはそう呟きながら、歩いていると突然教会内の椅子から大きなあくびが聞こえて来て足を止める。
そして声が聞こえた方へと視線を向けると、椅子で横になって寝ていたのか、急に一人が起き上がり大きく背伸びをし始めた。
「うっっ~~~! はぁ~……よく寝た~~」
その後ろ姿は、炎の様な赤と黄色の髪型で後ろ髪を小さく縛っている青年であった。
オムジットは咄嗟に声を殺し、魔法を展開し始める。
するとその青年が立ち上がり振り返り、オムジットの存在に気付いた時だった。
準備していた魔法をオムジットが放つ。
これでまた一人操り人形が増えたと思っていたが、何故かオムジットが放った糸は弾かれてしまうのだった。
「!?」
何かのミスかと思い、再び瞬時に放つが結果は同く意識を乗っ取る糸が弾かれるのだった。
「おいおい、さっから俺様に何しようとしてるんだあんたは?」
「……」
オムジットは黙ったまま、次は先程よりも多くの糸を青年に向けて放つ。
「(理由は分からないが、私の魔法があんな青年に効かないはずはない!)」
だが、放った魔法は青年の何かに弾かれ届く事はなかった。
「あんたさ、無言で魔法放つとか最悪だぞ。普通にそれ犯罪だからな」
「……っ!」
そこでオムジットは正面からではなく、移動し真横から魔法を放つ。
しかし、青年は目でオムジットを負い放たれた魔法を腕で薙ぎ払う。
「なっ! 馬鹿な! 何故効かない!」
「よ~く分かった。あんた悪い奴だな。だったら、俺様が相手してやる! 捕まえてしっかり反省してもらうぞ!」
「くっ……」
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