とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第446話 遊びの産物

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「バベッチ? 誰と間違えているのかな、ハンス国王」

 インクルは涼しい顔をしており、ハンスはその顔を見て小さく「そうか、俺の勘違いか」と呟く。

「それでこんな俺に何の用なのかな?」
「ここまで出向いてやる事は一つしかないだろ、インクル」
「あーはいはい、分かってた、分かってたよ。そこにいる兵士共と同じね」

 そこで深くため息をつくインクル。
 拘束され投獄されいるのにも関わらず、どこか余裕そうな態度をするインクルにハンスはカビルに小声で話し掛ける。

「インクルの態度はずっとこんな感じなのか?」
「はい、他の者よりも話はするのですが、こちらの質問には一切答えないばかりか直ぐに話しを逸らされてばかりで」
「おーい、聞こえてるぞ~」

 インクルの言葉にハンスとカビルは一瞬視線を向けるが、直ぐに視線を外し二人で話し続けた。

「無視かよ。何だよ、せっかく国王が来たから気分がいいから話してやってもいいかと思ってたのによ~」
「またそんな事を口にして、どうせ話を脱線させて何も話さないつもりだろ?」
「いやいや、今日は本気よ本気。答えてもいい質問には答えてやるって」
「どういう風の吹き回しだ?」

 ハンスからの問いかけにインクルは小さく薄笑いを浮かべる。

「言ったままさ。気分がいいからだよ、国王」
「……なら、答えていい質問はなんだ? 何なら答えるんだお前は?」
「あー言うの忘れてたがそれ答えるのは、俺が指定した人だけな」
「なっ! 貴様にそんな権利があるわけないだろうが!」
「カビル君、そんな事言っちゃうんだ。あ~せっかくの大チャンスなのに、俺が自分から話してやろうっていうのに、わざわざそれを投げ捨てるんだね君は。あ~勿体ない、勿体ないな~カビル君」

 挑発する様な言葉にカビルは一度深く息を吐き、自分を落ち着けさせる。
 インクルにいいように遊ばれていると分かりつつも、ペースを乱されていると改めて理解し気持ちをリセットしたのだった。
 その様子にインクルは小さく舌打ちする。

「あ~あ、つまんな」
「インクル、それでお前が指定した人物なら話をするのは本当なんだな」
「っ!? こ、ハンス国王」

 まさかのハンス発言にカビルは驚き、インクルは小さく口笛を吹く。

「本気ですかハンス国王。インクルの言葉を信じるのですか?」
「そうだ。で、誰を指名するんだ」
「思いっきりがいいね。じゃ、二人指名させてもらうよ。まずはあんただ、ハンス国王」

 ハンスはインクルの使命に全く動じることなく、まるでそう来ると分かっていた様に直ぐに受け入れ「もう一人は?」と訊ねた。
 するとインクルは部屋にいる王国軍兵士たちの方を見ていると、そこへ部屋に入って来た兵士に目をつける。

「決めたぞ。今部屋に入って来た兵士にする」

 その言葉に全員が後ろを振り向き、その兵士に視線を向けた。

「? 何でしょうか? 何かしましたか、俺?」
「どうしてここにいるんだ、アバン」
「カビル中隊長にサスト隊長から伝言を頼まれまして」
「インクル、どうして彼を選んだんだ?」

 ハンスは直ぐにインクルに対し訊ねるが、インクルは「何となく」としか答えなかった。

「今選んだ奴以外が出て行くまで、俺は何も答えないからな。ハンス国王、さっさと俺から話を聞きたければ他の奴らを外に出すんだな」

 するとハンスは振り返りカビルたちに向けて退室する様に告げる。
 カビルは反論したが、ハンスは国王命令と告げ耳元で「情報を得る為だ、従って欲しい」と囁く。
 その言葉にさすがにカビルも反論出来ず、兵に部屋からの退室を命じる。
 そして自身も立ち去る時にハンスに対して「外では待機はしていますので」と答え、アバンから伝言だけ聞きそのまま部屋から出て行く。
 アバンは状況が分からないまま、カビルからハンスの護衛という理由で部屋に待機する様に伝えられ突っ立っていた。

「アバン、近くへ」
「は、はい」

 するとハンスが簡易的に今までの状況の流れを説明し始める。
 一方でインクルはその様子を黙って見つめていた。

「状況は理解しました。わざわざありがとうございます、ハンス国王」
「終わった? にしても、本当に二人きりにしてくれるとはね。そんなに俺から情報を得たいんだね」
「事件を起こした中心人物から知っている事も多いはずだからな」

 その直後インクルは、機会音の様な言葉を口に始める。
 アバンは突然の事に驚き、何か話しているのは分かるが何を口にしているのか全く分からない状況であった。

「ハンス国王、これは会話を放棄しているのでは?」
「いや、違う。こいつ、やっぱりそうじゃないか」
「? どういう事ですか? それにやっぱりとは?」

 すると次の瞬間、ハンスも口からインクルが発している機会音と同じ様な音を発し始め、インクルと会話を始めたのである。

「(どいう状況なんだよ、これ? 会話してる、よな?)」

 アバンでも理解出来ない状況にあ然としているとハンスが小さくため息をついた後、アバンの方に視線を向けた。

「すまないアバン。何も言わずに、放っておいてしまって」
「いえ。ハンス国王が情報を聞けていればいいんですが、さっきのは会話なのですよね?」
「そうだ。言葉の音を変えての会話だ。だから、耳にそれを聞き取れる様の魔力を纏えば、それがフィルターになって聞き取れる」

 そう言ってハンスはアバンの耳に魔力を纏わせる。

「言葉も同じ要領で、口元にフィルターの様に特殊な魔力を纏わせれば、会話も可能だ」
「それって魔法ですか? 聞いた事ないんですが」
「魔法ではない。ただの学院生の遊びだよ。これはね、私が学院生の時に友人たちと秘密の会話をする為に作った物を改良したものなのさ」
「え?」

 そこで今まで機会音にしか聞こえなかったインクルの言葉が理解出来る言葉として聞こえてくる。

「おーい、聞こえるか?」
「!?」
「お、その反応は聞こえてるな。さすがはハンスだ。直ぐに分かったんだな」
「誰と創ったのか忘れたのか、バベッチ。それよりも、何故アバンを選んだ? 選ぶなら俺だけでよかったろ?」
「やっぱり俺がお前を選ぶと分かって乗って来たな」
「当然だろ。そうでなきゃ、あんな提案に乗るわけないだろ」
「もし俺がお前を選ばなかったらとどうしてたんだよ?」
「俺を選ばなきゃ、提案には乗らないと脅してたよ」
「お~怖い怖い。で、そいつを選んだ理由が聞きたいんだよな? あーいいぜ答えてやるよ。でも、お前の事だ何となく察してるんじゃないのか?」

 インクルことバベッチの言葉にハンスは軽く眉をひそめる。
 アバンは自分が選ばれた理由を聞けると思いバベッチの方を見つめる。

「リーリアの息子だからだよ」
「!? どうして母上の名前が出て来るんだ」

 そこでアバンの顔つきが強張る。

「おーこっちも怖い。でもいい表情だ、妹のアリスも怒ったらそんな顔するのかね」

 アリスという言葉にアバンは目の前の牢を勢いよく掴み、バベッチを睨む。

「お前、何で俺に妹がいる事を知ってるんだ?」

 バベッチはアバンの問いかけに対し、不気味な笑みを見せて答えた。

「それはな、アリスの近くにいたからさ」
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