とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第448話 図書館倉庫

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 学院中に授業終了の合図であるチャイムが鳴り響く。
 それを聞き、教室で授業をしていた教員が授業を終わらせる。

「それじゃ今日はここまで。次回の範囲については今回の場所から、三ページ後まで。次の範囲はややこしい場所だから、必ず目を通しておくように」
「「は~い」」

 私たちが返事をすると教員はそのまま「では、授業終了」と口にして教室を出て行くのだった。
 それを見てクラスの皆は、机に突っ伏したり教科書をしまったりし始める。
 私も今の授業で今日の授業は終了なので教科書をしまい始めながら、ふと昨日の出来事を思い出していた。
 そう言えば、昨日はティア王女様とかリリエルさんとかと会って話をしていたんだよね。
 色々とあったけど、あまり引きずらずに今日からの授業に入れたのはやっぱりティア王女様と話せたからかな。
 私は憧れたあった月の魔女の正体を知った。
 まさかティア王女様とは思っていなかったが、特に月の魔女に対しての印象は変わる事はなかった。
 というより、途中から自分の悩み相談に乗ってもらっていて何というか申し訳ない気持ちになったくらいだ。
 自分に対して危険があるかもという話も忘れてはないが、それについてはあまり深く考えない様に頭の隅に置いておくことにし学院生活を今まで通り過ごす事にした。

「おーいクリス、この後暇なら大食堂にでも行かないか?」

 そう突然声を掛けて来たのは、ライラックであった。
 その隣にはリーガも立っていた。

「大食堂に何しに行くんだ?」
「何か美味いデザートが販売しているらしくてよ、トウマと話してて一緒にどうかなって」
「ちなみにピースは物凄い早さで帰宅準備して、教室を出て行ったぜ」
「あ、そっか。今日は帰りの担当教員からの連絡事項の時間はないんだったか」
「そうそう。今日はうちの教員が仕事があって出来ないから、このまま解散なんだよ。忘れてたのかよクリス」

 そう言えば朝の時に言ってたな、すっかり忘れてた。
 するとリーガが遠くにいるトウマに声を掛け、トウマがこちらにやって来るがその途中でルークに肩を叩かれる。

「ん? どうしたんだよトウマ?」
「え、あ~いや、そのだな、俺今日予定あったんだったわ」
「は?」
「おいおい、何だよトウマ」

 まさかの発言にライラックとリーガはぶーぶーと言い出す。
 私はそれを苦笑いして見ていると、トウマは二人に対して「本当に申し訳ない!」と謝り、ルークは小さくため息をついていた。

「トウマお前な、昨日予定あけとけって言ったろうが。こっちが呼び掛けてるんだからよ」
「悪い悪い、すっかり抜けてた」

 そう言えば昨日あの二人、学院までは一緒に帰って来たけど寮までは一緒じゃなかったんだよね。
 何か用があるって事で、学院の中で別れたけど何か今日の事と関係があるのかな?
 私がそんな風に疑問に思っていると、ライラックがトウマに「何の先約があるんだ?」と訊ねた。

「ちょっと大切な話し合いがあってな」
「それを忘れるって大丈夫かよ、トウマ」

 リーガに心配されトウマも苦笑いで返すしかなかった。

「悪いなお前ら、約束は別日にしてくれ。とういう訳で、行こうかポンコツ次期寮長」
「おい、それ悪口過ぎるだろルーク」
「普通忘れねだろうが」
「久しぶりの授業で、いっぱいっぱいだったんだよ」
「そんな詰めた授業じゃなかったろ」
「はい、でたよ。俺とお前じゃ頭への入り方が違うんだよ」

 ルークとトウマはそんな言い合いをしながら教室を出て行くのだった。
 私はあの二人で何かするって事は、寮長副寮長関連なんだろうなと薄々思いながら二人を見ていた。

「は~全くトウマの奴はよ。まあ、俺たちとになっちまったけど行くかクリス?」
「特に急ぎの予定もないし行くよ」
「よっしゃ! じゃ出発!」

 そうして私は、意気揚々としているライラックとリーガと共に大食堂目指して教室から出た。
 雑談をしながら暫く廊下を歩いているとそこで偶然担当教員と出くわした。

「ライラックとリーガじゃないか」
「あれ、先生偶然ですね」
「お仕事お疲れ様です」
「いや、お疲れ様ですじゃなくてだな、お前ら今日放課後呼び出されてたろ? もうそれ終わったのか?」

 その言葉に二人は笑顔のまま凍りつく。

「え、何。二人共呼び出されてたのか?」

 私も初耳の情報に担当教員同様に問いかけた。
 二人は徐々に冷や汗をかきだし、顔色が悪くなり始める。

「まさかだが、忘れてた訳じゃないよなお前ら?」
「そそ、そんな訳ないじゃないですかー! あははは、冗談きっついな先生!」
「そ、そうっすよ! 俺たちがそんなすっぽかす訳ないじゃないですか! 今から行こうとしてた所ですって!」
「……こっち呼び出されている場所と反対側だが?」

 すると一瞬で二人は振り返り私の方を見て来て小声で話し掛けられる。

「悪いクリス!」
「すいまん!」

 と、口にすると勢いよく来た道を戻り始めるのだった。
 私はただただ二人が急いで離れていく後ろ姿を見つめていると、担当教員のため息が聞こえ振り返る。

「やっぱりあいつら忘れたな、全く。クリス、あの二人に何か誘われたのか?」
「はい。でも、呼び出されるとは知りませんでしたよ。何かしたんですか?」
「いや、ちょっと荷物を運ぶのを手伝って欲しいと言われてて、うちから元気のいいあいつ等はと推薦していたんだ。それで今日の朝にオッケーをもらい伝えておいたんだが」
「なるほど」
「まあ、そんな怒られる事はないと思うし、遅れた分あいつ等なら倍働くだろうから大丈夫だろ。クリスはあいつ等に巻き込まれて、予定が狂ったんじゃないか?」
「そうなりますね」

 すると遠くから担当教員を呼ぶ別の教員の声が聞こえ、担当教員は「すぐに行く」と返事をする。

「俺の事は気にせずに行ってください」
「悪いな、足止めさせちまって」

 そのまま担当教員は荷物を持って呼ばれた先へと向かう。
 私はそのまま一旦大食堂へと向かおうと思い、歩き始める。
 デザート自体は嘘じゃなさそうだし、興味がないわけでもないしそれを食べてからどう過ごすか考えるかな。
 少しどんなデザートかとワクワクしながら廊下を歩いていると、曲がり角で荷物を沢山持っていた人とぶつかりそうになる。

「すいません! 大丈夫ですか? って、デイビッド副学院長!?」
「すまないね。荷物で前が見ずらくて。大丈夫だったか?」
「はい、俺は大丈夫ですけどデイビッド副学院長こそ、大丈夫ですか? よかったら荷物運ぶの手伝いますよ」
「いやいやそういう訳には――」

 と口にした直後、持っていたデイビッドの荷物が廊下に落ちるのだった。
 私とデイビッドは互いに散らばった荷物を無言で見つめていた。

「……申し訳ないが、手伝ってもらっていいか?」
「はい、大丈夫ですよ」

 それから私は散らばった荷物をデイビッドと集め、荷物を少し持ちデイビッドの後を付いて行き資料室へと入り荷物を置いた。
 資料室には他にも教員が資料の整理をしていた。

「本当に助かったよ、クリス君」
「いえ、気にしないでくださいデイビッド副学院長。それにしても大変そうですね」
「ああ、来期に向けての準備の一環で、色々とやる事があってね」
「そうなんですか」

 そんな話をしていると資料室の奥からデイビッドに対して「副学院長、図書館倉庫の方はどうします?」と声が飛んで来る。
 デイビッドはそれを聞く軽く手を顔に当てる。

「すっかり忘れてた。そっちは後回しでいい、本の整理だけだから私の方で空き次第やるから、君たちはこっちを優先してくれ」
「分かりました」

 そこで小さくデイビッドはため息をつく。

「あ、すいまない生徒の前でため息など」
「いえ。それより図書館倉庫っていうのは?」
「それはね、大図書館があるだろ。そこに出しきれてない本に昔の学院生の研究発表の一部や時期ごとに切り替えている本などを保存している所さ。そこの本などの整理が残ってるって話さ」

 私はまだ知らない昔の学院生の研究内容に少し目を輝かせてしまう。

「あの、デイビッド副学院長。出来たらでいいんですけど、その片付け俺にも手伝わせてくれませんか?」
「え、クリス君にかい? どうして急にそんな事を」

 そこで私は正直に思っていた事を伝えた。

「なるほどね。そうだな……正直手伝いの申し出はありがたい。一部の仕事も掲示板で募集しているくらいだしな」
「それなら」
「……分かった。私からの掲示板依頼としてクリス君に手伝ってもらう事にするよ」
「本当ですか! ありがとうございます」

 それから私は一旦デイビッドから先に図書館倉庫に向かっている様に言われ、場所だけ聞き先に向かい始めた。
 場所は大図書館から離れており、そこは学院が出来た当時は図書館として使われていた場所であった。
 図書館倉庫へと入ると、大図書館に似た造りになっていたが、地面や机などに本などが山積みにされていたしていた。

「うわー何か凄いなここ。まさしく倉庫って感じだな」

 私は部屋の中へと進んで行き、所々の本を手に取ってパラパラと見たり、本棚の方へと向かい並んでいる本や資料などを見ていると部屋の扉が開く音がする。
 デイビッドがやって来たのだと私は入口の方へと向かった。

「デイビッド副――って、ええ!?」

 私が本棚の奥から出て入口の方へと視線を向けると、そこにいたのはデイビッドではなく何故か両手で箱を抱えたレオンであった。
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