とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第472話 ハンスの先手

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 ――王城内にて。


「ハンス国王、これからどうなさるのですか?」

 大臣の一人がハンスに問いかけると、王都内の地図を支給準備する様に伝える。
 すると出て行く者たちと入れ替わる様に、王国軍兵が現在王都で起きている事態について報告へとやって来た。
 王都内はバベッチが仕掛けたゲリライベントにて盛り上がっており、突然の結界についても大きな混乱は起きてはいなかった。
 だが、それもいつまで続くか分からず既に通行などで、不満が出ている場所もあると報告する。

「それでバベッチに協力している王国軍隊長は判明しているか?」
「はい。それが、現在王都にいないはずのザベッシュ隊長、ウェックス隊長、シレス隊長、サスト隊長の四名と判明しました」

 思わぬ人物に大臣たちがざわつく。
 現在名前が挙がった人物らは、ユンベールへと派遣に出ており王都内にはいない人物たちであった。
 ユンベールは王都から魔道車を使えば半日程で到着するが、現状で王都に帰還すれば必ず報告が入り忍び込む事はあり得なかった。

「全く分からない。どういう事なんだ! 何故仮にも王国軍隊長らが、あのような人物に協力している!」
「証拠もないのに裏切り者として判定するのは、早いのでは?」
「他の隊長たちは何をしているんだ! 早く事態の収束に取り掛からせるべきだ!」

 大臣たちが騒ぎ始めると、ハンスが「まだ報告の途中だぞ」と大臣たちを静めさせる。

「すまない。それで、既に他の隊長たちは動いているのだろ?」
「はい。各隊長方は既に各所の結界付近にて、結界内に偶然いあわせた兵士と連携をとって状況確認中。レント隊長からは、被害が出て騒ぎになる前に結界内の王国兵のみだけでも、現れた隊長らの周辺を規制し人々の安全を確保すべきですと、意見を預かっております」
「そうか。他の隊長たちは何か言って来ているか?」
「その他には、インベル隊長から王国兵に対し、結界周辺の人々の往来制限を行い始めているのでその件を伝えてくれと言われております。他の隊長方からは、特に意見等なく指示があればそちらに従うとの事で独自隊長方でも連携をとりつつ、現状動いております」

 ハンスは報告を聞き終えると、隊長たちへの指示や方針などを伝えると報告に来た王国兵は、急いで部屋から出て行く。

「ハンス国王、あのバベッチと名乗る者とはいったいどういう関係性なのですか? それに今回の一件、事前にこうなると知っていたのですか?」
「話す約束だったな」

 そうしてハンスは大臣たちに対し、バベッチとの関係性、王都襲撃事件の中心人物インクルと同一人物である事も告げた。
 これまでの接触なども簡易的であるが口にし、彼の目的も話すと大臣たちは色々と訴え始めた。
 分かっていながら止められなかったのかとか、どうして黙っていたのかなどと責められたりもした。
 責められる事に関しては、大臣たちの言う通りでありハンス自身もそれは分かっていた。

「このような事態を招いたのは私の責任だ。だが、バベッチとの関係も今日、私たちで終わらせる」
「私たち? ですか?」
「ああ。インクルが消えた今、バベッチの目的は大きく絞られている。だから今回はこちらが先手を打たせてもっている」
「既にハンス国王は手を打っていたのですね」

 するとそこへ王都全体の地図を持ってきた王国兵が到着する。
 ハンスは直ぐに地図を広げる様に指示をする。

「バベッチの件については、専属の者に任せている。今私たちがすべき事は、彼が起こしたゲリライベントの把握と人々の安全確保だ」

 そうしてハンスは大臣たちと共に状況分析と情報取得などに取り掛かるのだった。
 そんな中、地図にて王都メルト魔法学院の場所をハンスは少し見つめた。

「(バベッチの事は頼んだぞティア、リーリア)」


 ――王都内西側地区。
 ――解除コード奪取組。


「ルーク、西側の結界にはどの隊長がいると思う? いや、誰が居て欲しい?」
「急に何だダンデ」
「せっかく王国軍隊長と戦うんだぞ、誰がいいとか希望があるだろ」
「そんな事考えているはお前だけだよ」

 ルークたち解除コード奪取組の次期寮長副寮長たちは、全員で学院から一番近くに張られた結界へと向かっていた。
 王都内に張られた四つの結界は、各所東西南北に一つずつ張られており学院からは西側に張られた結界が一番近かった為、まずはそちらに向かう事にしていた。
 全員で向かっているのは作戦であり、初めは四カ所である事から各寮ごとに別れてという作戦もあったが相手が王国軍隊長という事から、その作戦はなしとなった。
 相手の戦力とこちらの戦力を比べた時に、二対一でも戦いにならないかもしれないと推測し、更に今回は戦いが目的ではなく相手が持つ解除コードの奪取が目的である為、ここは一点に全戦力を投入し最初の解除コードを奪取する事になったのだった。
 タイムリミットも存在している為、バベッチの言葉通りであれば最初の解除コードを取得した時点で止まるという事もあり、全戦力投入作戦を決めていた。
 また、奪取組のサポート班として後から合流するチームは、解除コード奪取後にルークたちに代わり学院へと届けたり、戦闘の治療それに学院側との連絡係りなどとして編成されていた。
 仮に最初の解除コードを奪取しても、そこで終わりではなく次の解除コードを奪取しに行かなければいけない為、その様なサポート班を準備したのである。
 ルークたちが王都内を駆けて行くと、人々はゲリライベントの事を既に知っている為、それだと思い大きく反応し声を掛けられるのだった。

「何かこんな風に声掛けるのは、ちょっと気恥ずかしいな」
「確かに、本当にイベントだったら良かったがそうじゃないかな」
「そうですわね。反応しづらいですわ」

 トウマたちは特に人々に反応する事無く、結界目指して走り続けた。
 そしてようやく西側の結界付近に辿り着くと、既にそこには多くの人だかりが出来ていた。
 結界内外には自由に出入りが出来ない為、王国軍兵が規制を行い人々に説明や誘導を行っている姿があった。

「遠くから見えていたが、近くに来ると意外と広範囲だな」
「つうか、凄い人だが進めるのかこれ?」
「通してもらうだけだけだろ!」

 そう口にしダンデが先頭を切り、人混みをかき分けて結界へと進んで行く。
 直ぐにスザクが後を追い、ルークたちも同じく後を追い人混みをかき分けて行き、王国軍兵が規制している先頭まで辿り着くが、王国軍兵に止められるのだった。
 ここから先は誰も通さない様にと指示されていると口にし、別のルートから回って進むようにいわれるのだった。
 そこでルークが先頭に出てると、王国軍兵もルークだと分かり驚く。

「申し訳ないのですが、ここを通して下さい。俺たちは中にいる王国軍隊長から、解除コードを奪わなければいけないのです」
「そう言われましてもここ通す訳には」
「何でだよ! 俺たちはゲリライベントの参加者側だぞ!」
「ですから、どなたであろうともここは通せないのです」
「何事だ? 先程から騒いで」

 ダンデが引き続き王国軍兵に噛み付いていると、そこへ他の王国軍兵よりも黒が特徴的な兵士が近付いて来て声を掛けた。
 全員がその方へと視線を向けると、王国軍兵は急に慌てた様に背筋を伸ばした。

「も、申し訳ありません! レント隊長!」

 ルークたちの騒ぎを聞きつけ、やって来たのは王国軍隊長が一人、部隊カラー黒の隊長レントであった。
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