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第471話 第二の結界

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「タツミ先生!?」

 私を含め突然現れたタツミに声を上げたが、タツミは気にせずにマイナに対して話を続けた。
 マイナもタツミの話を遮ることをせずに軽く頷いた。
 するとタツミは学院に張られた結界について話し始める。
 現在抜け道など見当たらない結界だが、タツミはもしもの時の為に個人的に学院防衛用の魔道具に細工をしていた。
 そう現在学院を覆っている結界は、以前学院が襲撃された後に増設された魔道具による防衛結界なのである。
 もしもの時の為に学院を外敵から護るようとしていたが、今回はそれを逆手に取られてしまっていた。
 基本的に外部からの結界解除は行えず内部からの魔力操作のみとなっており、更にはその操作は限られた人物のみである。
 その為今回侵入者はその一人であるデイビッドに成りすましたのではないかとタツミは推測する。
 更には、以前の襲撃事件時にオービンに扮した相手が侵入出来たのも偽デイビッドが関与し、内部から魔力感知を偽装していたのではないかと余罪もあるのではと口にする。
 話が少し脱線したが、タツミは直ぐに話しを戻した。
 学院には現在学院側が用意していた魔道具の発動によっての結界と思われているが、更に内部にもう一つの結界があるとタツミは話す。

「それはどういう事ですか、タツミ先生?」

 デイビッドが詳細を問いかけると、タツミは学院の全体地図がないかと返すとマイナが机にその地図を広げる。
 するとタツミはペンで結界範囲をかき始め、更に校舎を覆うように結界が張られているとペンで記した。

「二つも結界があるなんて、どうして分かるのです?」
「直接見たからですよ、デイビッド副学院長」

 その言葉に全員が驚く。
 直接見たという事は、学院内部に入ったという事になり、先程の口にしていた細工から内部に出入りが出来たという証明であったからだ。
 するとそこでルークがタツミの方を見つめ問いかけた。

「タツミ、お前また偽者とかじゃないよな?」

 ルークの発言に空気がピリッとする。
 確かにルークのいう通り、デイビッドの偽者やこれまでの事件などを踏まえて他にも偽物がいてもおかしくない状況であった。
 ましてやこんな状況で学院内部に侵入できるという情報を持ってくるのだから、疑われない訳がなかった。
 タツミはそんな事をマイナ辺りから言われるだろうと想定していたのか、慌てたり驚くこともなく冷静な顔でルークに対し返事をする。

「俺がお前らに対して本物だという証明など出来ない。俺をどう思うかはお前ら次第だ。まあ仮に俺が敵だとしたら、わざわざこんな情報教えずに手っ取り早くここに閉じ込めるけどな。お前らを自由にはさせないよ」

 そうタツミは悪い顔をしながら口にすると、リーガとライラックが小声で「こわっ」と呟くのだった。
 タツミはそのままルークからマイナへと視線を向けた。

「どうされますか、マイナ学院長。俺はこの場で拘束されようとかまいませんよ」
「……はぁー、やめて下さいタツミ先生。そこまで変に挑発する様な事をしなくても、私は拘束しませんよ」
「マイナ学院長それはつまり、タツミ先生は偽者ではないという事ですか?」
「違いますよデイビッド副学院長。例え偽者だったとしても、私が好きにはさせないだけです」

 真っ向から力でねじ伏せる発言に、私は学院長に対する印象が優しい学院長から少し変わった。
 それは皆も少しからず同じ様な感じたのか、それが表情に出ていた。

「ちょ、ちょっとマイナ学院長もタツミ先生も、学院生がいる前でやめて下さい」

 デイビッドが二人の異様な雰囲気に止めに入ると、タツミが軽く息を吐いた。

「すいませんデイビッド副学院長。ちょっと昔の血が騒ぎました」
「え、昔の血って何ですか?」
「ほぉ~トウマ興味あるのか?」

 不意に問いかけたトウマに対しタツミがぐいっと顔を近付け、耳元で囁いた。

「知りたいなら、じっくりと教えてやるぞ」

 トウマはそれに対し全身が身震いし、鳥肌が軽く立ち何となく身の危険を察し丁重に断るのだった。
 その後マイナがタツミに学院内部に張られた結界、第二の結界と称し知っている情報を共有させた。
 学院内部に入り込んだタツミは、内部から結界を生成している魔道具の破壊をしようとしたが、丁寧にその魔道具まで結界で囲われ手出しが出来ない様になっていた。
 そして校舎全体を囲っている結界に至っては、入る事など出来ず魔法でさえ全く歯が立たない物であるとタツミは口にした。
 ただしタツミは学院全体を覆っている魔道具の結界と、第二の結界について突破できるかもしれない文字を見ていた。

「解除コードを示せと、結界に文字が浮かび上がっていたんだ」
「解除コードって」
「俺にはよく分からないが、学院を覆っている結界の発生源の魔道具は四カ所で、それぞれに同じ文言があったな。それと第二の結界事態には、全ての解除コードを示せと記されていたな」

 そこでルークたちはバベッチのゲリライベントが学院の結界突破の鍵になっていると改めて理解する。
 そしてマイナがタツミに対しても、ルークたちが置かれている状況を説明する。

「そうですか。あれはただの変なイベントではなく、これと連動していたという事ですか」
「結果的には解除コードを奪いに行かなきゃいけないって事ですね」

 デイビッドの呟きに対し、ルークはマイナの方を見て口を開く。

「俺たち、行きますよ」
「ルークさん」

 するとトウマが続けて発言する。

「おいおい、勝手に俺たちって決めるなよ。他の奴らの意見聞いてないだろ」
「俺はもちろん行くぞ! そもそもそのつもりだったしな」
「学院の危機、次期寮長として動くのは当然ですわ」
「少し荷が重いけど、俺がやれる事はやるよ」
「お、お前ら……」

 トウマは他の次期寮長たちの早い決意に押されていると、ルークが「お前はどうするんだ、トウマ?」と訊ねられる。
 それに対し軽く口に溜まった唾を飲み込み、口を開く。

「お前が行くのに、俺が行かないわけないだろう。俺たちが出来る事はやる! ただそれだけだ!」

 トウマの発言に続く様に各次期副寮長たちも次期寮長たちに付いて行くと口にした。

「皆さん……ですが、貴方達に全てを任せはしません。私たちが出来るサポートは全力でします」

 マイナはルークたちの決意を聞き、こんな事に巻き込んでしまったという後ろめたい気持ちを捨てた。
 そしてマイナを筆頭に王都内に発生した結界の場所や、相手となる王国軍隊長から解除コードを奪取する作戦会議を始めるのだった。
 作戦会議にはルークたち次期寮長副寮長以外にも、私たちも参加しルークたちのサポートや学院でのサポートに別れ手伝う事になった。
 その後作戦会議は一時間程行われ、タイムリミットが二時間半を切った所で作戦が開始され、ルークたち次期寮長副寮長たちは一斉に学院から離れていく。
 ルークたちのサポートして数名の教員筆頭に、ニック、フェルト、リーガ、ライラック、マックスも行動を開始した。
 一方で学院側には、私を含めピース、シンリ、ケビンが残り学院近くにてサポート班として行動する事なり、途中でタツミとイベント中医療班として共に行動していたガードルが加わるのだった。
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