とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第538話 注目の対戦試合に来ないわけ

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 休憩時間も終わりが近付き各所で試合の準備が始まる。
 そんな中で一番人が集まっている対戦場があり、試合のない他クラスの生徒も見に来ており、注目度が高い試合だと一目で分かる状況だった。

「うわ、凄いな。こんなに見に来るのか」
「だから大注目の対戦だっていったろ」

 フェルトの言葉を信じてなかった訳ではないが、トウマが改めてルークとニックの対戦試合が注目されているのだと認識する。

「お前らもやっぱり見に来たか」

 そう声を掛けて来たのは、アルジュであった。

「委員長、凄い集まりだね」
「うん、皆この試合は気になるでしょ。うちらの学年一位と未だ底知れる力を持っているニックとの対戦」
「今日のニックは今までとは違うよ」

 するとそこへガウェンとシンリが合流する。

「やけに自信ありげだなフェルト。だが、ルークの奴も同じことが言えるぞ」
「へ~言うじゃんガウェン。そういえば、ルークに何か魔道具を作ってたみたいだね」
「ああ。あいつ専用のな」
「そんなの一つで今日のニックに勝てるかな?」
「あいつは勝つさ」

 真っすぐな言葉にフェルトは負けじと「ニックの方が勝つね」と口にする。
 そんな二人の間にシンリが入り落ち着かせる。

「珍しいなガウェン。お前が熱くなってるのは」
「俺の作った魔道具が使われてるんだ。作り手として熱くなるのは当然さ、アルジュ」
「そういうもんなのか」
「そうさ。何度も試行錯誤して作った一品だ、気持ちの入りようが違うんだよ」

 トウマが二人の会話を近くで聞いているとシンリが声を掛けて来た。

「で、トウマは結局どっち派? やっぱりルークの方?」
「そうだな。ニックも今日は違うってのはフェルト経由でしか知らないけど、仮にそうだったとしてもルークがそう簡単に負ける気はしないだよな」
「流石次期寮長」

 そうシンリがトウマを茶化していると、背後から大声で「それでこそ寮長!」と言われ皆が一斉に耳を塞ぐ。
 振り返るとそこには、ダイモン寮次期寮長のダンデが両腕を組み立っていた。

「ダンデ? てか、急に背後から大声を出すなよ。耳いてぇわ」

 ダンデは悪びれる様子もなく大きく笑っていると、急ぎ足で次期副寮長であるスザクが現れ皆に謝罪し始める。
 するとそんな現場を目撃した、エメル寮次期寮長のスバンとイルダ寮次期寮長のロムロスがやって来る。

「試合前に貴方は何をしているのですの? 次期寮長としての自覚が足りないのでは?」
「スバン、ダイモンは元々こんな感じだから今更そんなこと言っても無駄だよ」
「おーお前らも来たか! スバン、ロムロム!」
「そんな大声で言わなくてもいいから」

 ロムロムは両耳を手で塞ぎながら答えるとスバンが再び謝る。
 周囲も次期寮長らが集まっている事に気付き、少しざわつき始める。

「(何だか目立ってるな)」
「せっかくの機会だ、一緒にあいつの試合を見届けようじゃないってスバン、何をするんだ。引っ張るな、おい、一緒にどうだお前ら」

 と、ダンデが叫びながらスバンに引きずられてその場から立ち去って行くのだった。

「彼は今後も大変だろうね。ダンデの下なんて俺ならやってられないね」
「私も同意見ですわ」

 立ち去る彼らの姿を見つめながらそんな会話をしていると、背後から「うちの寮長が迷惑かけたね」と声を掛けられる。
 そして声がした方に視線を向けると、そこにはダイモン寮のレオンがいたのだった。

「レオン」
「別に貴方が謝らなくてもいいんじゃなくて。副寮長でもないのですし」
「そうかもだけど、寮の仲間が迷惑かけておいて見て見ぬ振りはどうかなって」

 レオンの真摯な対応にロムロスが「お前の方が寮長向いてるぞ」と口にする。

「そんな事はない。ダンデは皆からの信頼もあるし、力もある。僕みたいな転入生が変われる存在じゃないし、僕もダンデを信頼してるしうちの寮長は彼以外考えられないよ」
「でもよ、副寮長の権利まで辞退しなくてもよかったんじゃないのか? お前も認められてない訳じゃないだろに」
「僕には務まらないからさ。スバンみたいに何でも出来る訳じゃないし、仕える主はもういるからね」

 そこへエメル寮次期副寮のリーフがやって来てスバンに声を掛け、何かを聞くとトウマらに提案を持ち掛ける。

「トウマ、ロムロス、それにレオンもしよかったら私と一緒にルークの試合を見ません?」
「俺は構わないが、お前らはどうする?」
「僕も構いません。誘って頂けるだけ嬉しいです」
「俺は――」

 そう口にし一緒にいたシンリらの方を見ると「行って来い」や「気にするな」というジェスチャーをされる。
 それを見てトウマはエメルの提案を受け入れ一緒に試合を見ると決める。
 そしてその場から離れて行き、既に一番試合が見やすい場所を確保していたのかそこに案内される。

「ありがとうリーフ」

 スバンの言葉にリーフは軽く首を横に振り、一歩下がった所で待機する。

「お前の所の副寮長も凄い有能だな」
「当然ですわ。私と共に寮を支えて行くのですから」

 ロムロスにリーフが褒められスバンは鼻が高くなる。
 その時ルークがある事に気付く。

「あれ、そういえばお前の所の副寮長はどうしたんだ?」
「ゲイネスか?」
「そうそう」
「あいつはちょっと用事があって、ここには来ないだけさ」

 トウマがその用事について聞こうとした時だった、ルークとニックの試合が始まろうとし周囲が盛り上がり意識がそちらに向くのだった。
 一方でその頃アリスはというと、休憩時間も終わり第三試合の相手を待っていた。
 すると担当試験官と共にその相手がやって来る。
 アリスは休憩時間もあり、今回は事前に対戦相手が誰かを聞かされておらずクラスの誰が来るのかと考えながら待っていたのだが、思いもしない人物の登場に目を疑うのだった。

「やあクリス。いや、もう違うんだったね」
「っ!? う、嘘。どうして貴方が」

 第三試合の対戦相手としてアリスの現れたのは、イルダ寮次期副寮長のゲイネスであった。
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