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第554話 二人だけの時間
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「ト、トウマ!?」
「アリ、ス?」
互いにまさかの人物との遭遇に目を丸くする。
アリスはそのまま周囲に目を向け、タツミを探すも見当たらなかった。
「え、えっと……久しぶり」
トウマはぎこちない顔で声を掛けて来る。
「試験の時以来だから、そんなに久しぶりでもないよ」
「そそうだよな。あははは……いや~まいったな」
最後はアリスから視線を外し小さく独り言を呟くトウマ。
アリスはそのままトウマにタツミについて訊ねた。
「タツミ先生? さっき俺も会ったんだけど、何か呼び出しがあるっていってどっか行っちゃったよ。俺もこの小箱でタツミ先生に用があって来たんだけど」
「届け物?」
「俺も急にタツミ先生がいるこの競技場に持って行くようにって頼まれた側だから詳しく知らないんだ。だから、どうすんのかって訊こうとしたらすれ違いで行っちゃってよ」
「そう、だったんだ……よかったら私が預かろうか? ずっと待ってるのも大変でしょ」
「いやさすがに頼まれたことをアリスにそのまま頼むわけにはいかないよ」
「そっか」
「うん。でもありがとう」
「ううん」
そこで二人の会話が途切れ、何故か気まずい雰囲気になってしまう。
アリスはその状況に耐え切れず話は振らずに、一度戻ろうと決め「じゃあ」と口にし振り返った時だった。
「ちょっと待ってアリス」
突然トウマに呼び止められアリスは動きを止める。
「あ、えっと、その、せっかくだしもうちょっと話さない?」
トウマは照れくささを隠す様に笑顔でそう誘う。
その時トウマの耳は赤くなっていたが、夕日が差し込んでいたこともありアリスにはばれてはいなかった。
アリスはトウマの突然の誘いに少し悩み「分かった」と返事をした。
本来ならばこのまま外に出ているのは認められてないし、今置かれている自身の立場的にもダメだと分かっていたがトウマとこうして話す機会はもうないかもと考えそう答えた。
一時の気まずさで引いてしまうよりも、ここでの偶然を活かさなければとアリスは考えるのだった。
そのままトウマは小箱を持ちながら、競技場外近くにあるベンチに二人は座った。
「身体の方はもう大丈夫なのか?」
「うん、タツミ先生のお陰でこの通りだよ」
トウマは「それは良かった」と安堵の表情で告げる。
あの日ルークとの試合を間近で見ていた一人で、試合後に倒れたことも全て知っているのだとアリスは思い「心配かけた」と謝罪した。
それと同時にトウマからの言葉に試験中に救われたことも共にお礼を伝えた。
アリスからのお礼にピンと来ていないトウマだったが、何かしらの助けになれたのならよかったと思うのであった。
それをきっかけに試験中にあった面白話や学科で難しかった箇所などをトウマが話し出し、アリスも同じ試験を受けていたことを明かし共感したりトウマの話しに笑みがこぼれるのだった。
関連する様にトウマは次々とこれまでの日々を振り返るように話題を出しては、アリスもそれについて話すなど会話に花が咲く。
転入して来てクラスで会った日、ルームメイトとして過ごした日々、学院内イベントでの即興芝居やハプニング、対抗戦での他学院との交流など上げ始めたらきりがない程たくさんの思い出があった。
二人だけの楽しい時間は誰かが止めない限りずっと続くような雰囲気であったが、唐突に鳴り響いた学院のチャイムによりその時間は終わりを迎えた。
「今のチャイムって」
「下校のチャイムだな。もうそんなに経ってたのか」
「楽しい時間はあっという間だね」
「そうだな」
そしてアリスは立ち上がる。
「こんなにトウマと話したのは初めてかもね。凄く楽しかったよ」
「俺もだよ」
暫くの沈黙後アリスが口を開こうとした時、トウマがそれに被せる様に声を出す。
「アリス、行く前に一ついいか?」
「っ……何かな?」
トウマは急に渇いた喉に唾を飲み込むも、喉の渇きは癒えず微かに震える右手を左手で隠す様に掴む。
そのままトウマもベンチから立ち上がりアリスに向き合う。
そんな二人を沈みゆく夕日が照らす。
トウマは意を決して再び口を開く。
「その、冬の修学旅行の時のこと覚えているか? リウェンク城の屋上でのこと」
アリスは暫く黙っていたが、ゆっくりと頷く。
「そうか……じゃ、聞くけどよ。あの日の答えはもう出てたりするのか?」
トウマの耳はそこで再び赤くなり、合わせていた視線も下にずらしていた。
アリスはそんなトウマの態度から目を逸らさず、真っすぐに見つめて答える。
「うん。出しているよ、トウマ」
「っ!」
そこで外していた視線をトウマはゆっくりと戻す。
「真剣に向き合って考えた。目を背けようとも思ったけれど、それじゃ対等じゃない気持ちを踏みにじる行為だからやめた」
「……それで、出した答えは?」
恐る恐るトウマはその言葉を口にした。
アリスは一度瞳を閉じて小さく深呼吸し瞳を開けた。
「……トウマ、貴方の想いには答えられない。ごめんなさい」
その言葉と同時に夕日が完全に沈むのだった。
「アリ、ス?」
互いにまさかの人物との遭遇に目を丸くする。
アリスはそのまま周囲に目を向け、タツミを探すも見当たらなかった。
「え、えっと……久しぶり」
トウマはぎこちない顔で声を掛けて来る。
「試験の時以来だから、そんなに久しぶりでもないよ」
「そそうだよな。あははは……いや~まいったな」
最後はアリスから視線を外し小さく独り言を呟くトウマ。
アリスはそのままトウマにタツミについて訊ねた。
「タツミ先生? さっき俺も会ったんだけど、何か呼び出しがあるっていってどっか行っちゃったよ。俺もこの小箱でタツミ先生に用があって来たんだけど」
「届け物?」
「俺も急にタツミ先生がいるこの競技場に持って行くようにって頼まれた側だから詳しく知らないんだ。だから、どうすんのかって訊こうとしたらすれ違いで行っちゃってよ」
「そう、だったんだ……よかったら私が預かろうか? ずっと待ってるのも大変でしょ」
「いやさすがに頼まれたことをアリスにそのまま頼むわけにはいかないよ」
「そっか」
「うん。でもありがとう」
「ううん」
そこで二人の会話が途切れ、何故か気まずい雰囲気になってしまう。
アリスはその状況に耐え切れず話は振らずに、一度戻ろうと決め「じゃあ」と口にし振り返った時だった。
「ちょっと待ってアリス」
突然トウマに呼び止められアリスは動きを止める。
「あ、えっと、その、せっかくだしもうちょっと話さない?」
トウマは照れくささを隠す様に笑顔でそう誘う。
その時トウマの耳は赤くなっていたが、夕日が差し込んでいたこともありアリスにはばれてはいなかった。
アリスはトウマの突然の誘いに少し悩み「分かった」と返事をした。
本来ならばこのまま外に出ているのは認められてないし、今置かれている自身の立場的にもダメだと分かっていたがトウマとこうして話す機会はもうないかもと考えそう答えた。
一時の気まずさで引いてしまうよりも、ここでの偶然を活かさなければとアリスは考えるのだった。
そのままトウマは小箱を持ちながら、競技場外近くにあるベンチに二人は座った。
「身体の方はもう大丈夫なのか?」
「うん、タツミ先生のお陰でこの通りだよ」
トウマは「それは良かった」と安堵の表情で告げる。
あの日ルークとの試合を間近で見ていた一人で、試合後に倒れたことも全て知っているのだとアリスは思い「心配かけた」と謝罪した。
それと同時にトウマからの言葉に試験中に救われたことも共にお礼を伝えた。
アリスからのお礼にピンと来ていないトウマだったが、何かしらの助けになれたのならよかったと思うのであった。
それをきっかけに試験中にあった面白話や学科で難しかった箇所などをトウマが話し出し、アリスも同じ試験を受けていたことを明かし共感したりトウマの話しに笑みがこぼれるのだった。
関連する様にトウマは次々とこれまでの日々を振り返るように話題を出しては、アリスもそれについて話すなど会話に花が咲く。
転入して来てクラスで会った日、ルームメイトとして過ごした日々、学院内イベントでの即興芝居やハプニング、対抗戦での他学院との交流など上げ始めたらきりがない程たくさんの思い出があった。
二人だけの楽しい時間は誰かが止めない限りずっと続くような雰囲気であったが、唐突に鳴り響いた学院のチャイムによりその時間は終わりを迎えた。
「今のチャイムって」
「下校のチャイムだな。もうそんなに経ってたのか」
「楽しい時間はあっという間だね」
「そうだな」
そしてアリスは立ち上がる。
「こんなにトウマと話したのは初めてかもね。凄く楽しかったよ」
「俺もだよ」
暫くの沈黙後アリスが口を開こうとした時、トウマがそれに被せる様に声を出す。
「アリス、行く前に一ついいか?」
「っ……何かな?」
トウマは急に渇いた喉に唾を飲み込むも、喉の渇きは癒えず微かに震える右手を左手で隠す様に掴む。
そのままトウマもベンチから立ち上がりアリスに向き合う。
そんな二人を沈みゆく夕日が照らす。
トウマは意を決して再び口を開く。
「その、冬の修学旅行の時のこと覚えているか? リウェンク城の屋上でのこと」
アリスは暫く黙っていたが、ゆっくりと頷く。
「そうか……じゃ、聞くけどよ。あの日の答えはもう出てたりするのか?」
トウマの耳はそこで再び赤くなり、合わせていた視線も下にずらしていた。
アリスはそんなトウマの態度から目を逸らさず、真っすぐに見つめて答える。
「うん。出しているよ、トウマ」
「っ!」
そこで外していた視線をトウマはゆっくりと戻す。
「真剣に向き合って考えた。目を背けようとも思ったけれど、それじゃ対等じゃない気持ちを踏みにじる行為だからやめた」
「……それで、出した答えは?」
恐る恐るトウマはその言葉を口にした。
アリスは一度瞳を閉じて小さく深呼吸し瞳を開けた。
「……トウマ、貴方の想いには答えられない。ごめんなさい」
その言葉と同時に夕日が完全に沈むのだった。
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