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第553話 三月十四日
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最終期末試験の実力試験が終了した翌日。
アリスはいつもよりも遅い時間に目を覚ます。
昨日の疲れが出てぐっすりと眠り過ぎたと思いながらも身体を起こし、ベッドから降り洗面所で顔を洗う。
タオルを手探りで見つけ顔を拭き、鏡に映る自分を見つめる。
「うん。顔色も悪くないし、身体もほとんど痛みがない。これもタツミ先生のお陰だね、感謝しないと」
手に持ったタオルをタオル掛けに掛け、ベッドの方へと戻り腰掛ける。
アリスがいる場所は競技場地下に設けられた自室ではなく、まだ治療室であった。
昨日はそのまま治療室で夕食もとり就寝する様に伝えられていたのだ。
時計は八時半を示しており、いつも通りならそろそろタツミが朝食を持ってやって来る時間であった。
「時間的にそろそろ、タツミ先生が来るはず」
アリスはそう思いながら治療室の扉の方に視線を向けていると扉が開く。
そして入って来たのはタツミと学院長であるマイナであった。
え、マイナ学院長?
咄嗟に腰かけていたベッドから立ち上がった。
どうしてと一瞬思うアリスだったが、直後マイナがやって来た理由を察する。
「おはよう、アリスさん。体調の方はどうかな?」
「おはようございますマイナ学院長。はい、タツミ先生のお陰で順調に回復してます」
「それはよかった」
マイナがほっと胸をなでおろす。
一呼吸置いてマイナはアリスの目を真っすぐと見る。
「今日は、アリスさんに伝えるべきことがあって来たわ」
「はい」
アリスは緊張も不安を抱くことなくマイナの次の言葉を待った。
「アリス・フォークロス。貴方の退学日は、三月十四日に決まりました」
「そうですか」
今日を含め後四日か。長い様で短いんだろうな。
試験も終わったし、もしかしたらそうかなと思っていたけど本当にそうだったとわね。
こういう所で予想が当たるのは、あんまり嬉しくないな。
……覚悟は出来ていたつもりだったけど、改めて言われると辛いわね。
アリスは視線を逸らしながらそんなことを考えていた。
「寮に残っている荷物については、後で部屋の方に持ってこさせる。それと先程リーリア、アリスさんのお母様には連絡を入れておいたわ。退学日当日には近くに迎えを向かわせるそうよ」
「分かりました」
するとマイナはアリスに近付くと優しく抱きしめた。
突然のことにアリスも驚き、入口付近で待機していたタツミはそっと部屋から出て外で待機する。
「マイナ、学院長?」
「最後まで守ってあげられなくてごめんない。こんな形で学院を立ち去らせてごめんない」
その言葉は学院長としてではなく、一個人のマイナとしての言葉であった。
「……謝らないでください、マイナ学院長。ルールを破ったのは私ですし、こうなるのは当然です」
「アリスさん」
「私はここにこれて本当に良かったです。色んなことを体験出来て、自分を見つめ直せて、たくさんの友人が親友も出来ました。まだ居たい、もっと皆と学びたいという気持ちはありますが、もう我儘は言いません。既に聞いてもらいましたし」
マイナに対しアリスはそう笑顔で答えるとマイナは「そう」と小さく答えて離れる。
「今回の一件は、オービンの独断行動の件もあってどうにか学院内だけで収められる見通しがたったわ。だから、この後のことで思い詰める必要はないわ。リーリアらにもこれから詳しく話すつもりよ」
「そうですか」
アリスは小さく安堵する。
マイナやオービン、それだけでなく他の色んな人によってそれが実現したのだとアリスは思うのだった。
「さすがに全てが元通りとはいかないし、この先今回の一件をなかった事にも出来ないわ。でも、怖がらず先に進むのよ。これからどうなるのかは、全て貴方の行動次第で変わってくるはずよ。今回のようにね」
「はい」
そしてマイナは振り返り、その場から立ち去って行き外で待っていたタツミに目配せをするとそのまま待たずに帰って行く。
タツミは入れ替わる様に治療室に再び入る。
その後、これからの流れをざっと説明し終わると簡易診察が行われる。
体調も特に問題なかった事から、そのまま自室の方へ戻る事になり朝食は自室でとるのだった。
それからは自室にて大図書館から持って来てもらった本などを読み時間を過ごし、昼食の時刻になるとタツミが部屋の扉をノックする。
アリスが返事をするとタツミは扉を開け、昼食を手渡す。
それと同時に朝にお願いしていた新しい本を受け取り、読み終えた本を渡す。
「本当に好きな。読んでて飽きないのか?」
「面白そうな物しかお願いしてないので、飽きませんよ」
「論文や学生の研究発表資料から雑学本までと幅広過ぎだな」
「この学院でしか読めない物ばかりですよ」
「好きでやっているならいいさ」
そう言い残しタツミは部屋から出て行き扉を閉める。
アリスは昼食を食べるときは読書を止め、とり終えたらまだすぐに読書を始める。
暫くすると再びタツミが部屋の扉をノックする。
昼食の回収にやって来たのだと思い、アリスはトレイを手にしタツミに渡しに行く。
すると部屋の外に箱がいくつか積み上げられているのが目に入る。
「タツミ先生、それって」
「ああ、お前の荷物だ。とりあえず寮にあった分全て持って来たつもりだ。大きい箱があまりなくて小さいので多くなっているがな」
「すいません、ありがとうございます」
「俺は何もしてないぞ。エリスがミカロス立ち会いの元作業したんだ。一応予備の箱等持って来ているが、整理で何かあれば言ってくれ。鍵は開けておくし、今日はこっちで作業をしているからよ」
「はい」
アリスはタツミから予備の折りたたまれた箱などを受け取った後、荷物を一つずつ部屋に運んだ。
タツミも部屋に入れるとこまで手伝い「それじゃ」と告げ、部屋を後にする。
それからは箱を開けては中身を整理し、区分けして行くのだった。
あっという間に時間は経過し、時刻は十六時を過ぎた。
「ふ~ざっくりとは終わったわね。後は分類ごとに詰めればおしまいなのだけれど、やっぱり少し物が足りないな。ちょっとタツミ先生に相談してみるか」
アリスはそう思い立ち部屋の扉を開ける。
本当に鍵掛かってないんだ。
と思いながら廊下へと出て、タツミがいるであろう部屋を探し歩き始める。
そして治療室近くにタツミがいると思われる部屋を見つけ、ノックするも反応がない。
声を掛けても返事がないので、寝ているのかと思いそっと扉を開けて中をのぞくとそこには誰もいなかったのだ。
「何だタツミ先生いないのか」
見当たらないので一旦部屋に戻ろうとした時だった。
遠くの方からタツミ先生が話す声が聞こえ、近くにいるならとアリスは声の聞こえた方へと向かう。
その声は地上の方から聞こえ、階段を登れば地上に出れタツミに会えるのだが、そこで一瞬アリスの動きが止まる。
ここまで勢いで来ちゃったけど、私ってここまで出てよかったのかな? さすがに上まで登るのはダメな気がする。
だが、上からはタツミの声が聞こえて来てすぐそこにいると分かるのだった。
アリスはそう考えつつも、上にいるタツミに声を掛けてすぐに戻ればいいだろうという謎の考えの元、階段を登り地上に出る。
「タツミ先――」
「えっ」
その時アリスの視界に入ったのはタツミの後ろ姿ではなく、小箱を持ったトウマが振り返る姿であった。
アリスはいつもよりも遅い時間に目を覚ます。
昨日の疲れが出てぐっすりと眠り過ぎたと思いながらも身体を起こし、ベッドから降り洗面所で顔を洗う。
タオルを手探りで見つけ顔を拭き、鏡に映る自分を見つめる。
「うん。顔色も悪くないし、身体もほとんど痛みがない。これもタツミ先生のお陰だね、感謝しないと」
手に持ったタオルをタオル掛けに掛け、ベッドの方へと戻り腰掛ける。
アリスがいる場所は競技場地下に設けられた自室ではなく、まだ治療室であった。
昨日はそのまま治療室で夕食もとり就寝する様に伝えられていたのだ。
時計は八時半を示しており、いつも通りならそろそろタツミが朝食を持ってやって来る時間であった。
「時間的にそろそろ、タツミ先生が来るはず」
アリスはそう思いながら治療室の扉の方に視線を向けていると扉が開く。
そして入って来たのはタツミと学院長であるマイナであった。
え、マイナ学院長?
咄嗟に腰かけていたベッドから立ち上がった。
どうしてと一瞬思うアリスだったが、直後マイナがやって来た理由を察する。
「おはよう、アリスさん。体調の方はどうかな?」
「おはようございますマイナ学院長。はい、タツミ先生のお陰で順調に回復してます」
「それはよかった」
マイナがほっと胸をなでおろす。
一呼吸置いてマイナはアリスの目を真っすぐと見る。
「今日は、アリスさんに伝えるべきことがあって来たわ」
「はい」
アリスは緊張も不安を抱くことなくマイナの次の言葉を待った。
「アリス・フォークロス。貴方の退学日は、三月十四日に決まりました」
「そうですか」
今日を含め後四日か。長い様で短いんだろうな。
試験も終わったし、もしかしたらそうかなと思っていたけど本当にそうだったとわね。
こういう所で予想が当たるのは、あんまり嬉しくないな。
……覚悟は出来ていたつもりだったけど、改めて言われると辛いわね。
アリスは視線を逸らしながらそんなことを考えていた。
「寮に残っている荷物については、後で部屋の方に持ってこさせる。それと先程リーリア、アリスさんのお母様には連絡を入れておいたわ。退学日当日には近くに迎えを向かわせるそうよ」
「分かりました」
するとマイナはアリスに近付くと優しく抱きしめた。
突然のことにアリスも驚き、入口付近で待機していたタツミはそっと部屋から出て外で待機する。
「マイナ、学院長?」
「最後まで守ってあげられなくてごめんない。こんな形で学院を立ち去らせてごめんない」
その言葉は学院長としてではなく、一個人のマイナとしての言葉であった。
「……謝らないでください、マイナ学院長。ルールを破ったのは私ですし、こうなるのは当然です」
「アリスさん」
「私はここにこれて本当に良かったです。色んなことを体験出来て、自分を見つめ直せて、たくさんの友人が親友も出来ました。まだ居たい、もっと皆と学びたいという気持ちはありますが、もう我儘は言いません。既に聞いてもらいましたし」
マイナに対しアリスはそう笑顔で答えるとマイナは「そう」と小さく答えて離れる。
「今回の一件は、オービンの独断行動の件もあってどうにか学院内だけで収められる見通しがたったわ。だから、この後のことで思い詰める必要はないわ。リーリアらにもこれから詳しく話すつもりよ」
「そうですか」
アリスは小さく安堵する。
マイナやオービン、それだけでなく他の色んな人によってそれが実現したのだとアリスは思うのだった。
「さすがに全てが元通りとはいかないし、この先今回の一件をなかった事にも出来ないわ。でも、怖がらず先に進むのよ。これからどうなるのかは、全て貴方の行動次第で変わってくるはずよ。今回のようにね」
「はい」
そしてマイナは振り返り、その場から立ち去って行き外で待っていたタツミに目配せをするとそのまま待たずに帰って行く。
タツミは入れ替わる様に治療室に再び入る。
その後、これからの流れをざっと説明し終わると簡易診察が行われる。
体調も特に問題なかった事から、そのまま自室の方へ戻る事になり朝食は自室でとるのだった。
それからは自室にて大図書館から持って来てもらった本などを読み時間を過ごし、昼食の時刻になるとタツミが部屋の扉をノックする。
アリスが返事をするとタツミは扉を開け、昼食を手渡す。
それと同時に朝にお願いしていた新しい本を受け取り、読み終えた本を渡す。
「本当に好きな。読んでて飽きないのか?」
「面白そうな物しかお願いしてないので、飽きませんよ」
「論文や学生の研究発表資料から雑学本までと幅広過ぎだな」
「この学院でしか読めない物ばかりですよ」
「好きでやっているならいいさ」
そう言い残しタツミは部屋から出て行き扉を閉める。
アリスは昼食を食べるときは読書を止め、とり終えたらまだすぐに読書を始める。
暫くすると再びタツミが部屋の扉をノックする。
昼食の回収にやって来たのだと思い、アリスはトレイを手にしタツミに渡しに行く。
すると部屋の外に箱がいくつか積み上げられているのが目に入る。
「タツミ先生、それって」
「ああ、お前の荷物だ。とりあえず寮にあった分全て持って来たつもりだ。大きい箱があまりなくて小さいので多くなっているがな」
「すいません、ありがとうございます」
「俺は何もしてないぞ。エリスがミカロス立ち会いの元作業したんだ。一応予備の箱等持って来ているが、整理で何かあれば言ってくれ。鍵は開けておくし、今日はこっちで作業をしているからよ」
「はい」
アリスはタツミから予備の折りたたまれた箱などを受け取った後、荷物を一つずつ部屋に運んだ。
タツミも部屋に入れるとこまで手伝い「それじゃ」と告げ、部屋を後にする。
それからは箱を開けては中身を整理し、区分けして行くのだった。
あっという間に時間は経過し、時刻は十六時を過ぎた。
「ふ~ざっくりとは終わったわね。後は分類ごとに詰めればおしまいなのだけれど、やっぱり少し物が足りないな。ちょっとタツミ先生に相談してみるか」
アリスはそう思い立ち部屋の扉を開ける。
本当に鍵掛かってないんだ。
と思いながら廊下へと出て、タツミがいるであろう部屋を探し歩き始める。
そして治療室近くにタツミがいると思われる部屋を見つけ、ノックするも反応がない。
声を掛けても返事がないので、寝ているのかと思いそっと扉を開けて中をのぞくとそこには誰もいなかったのだ。
「何だタツミ先生いないのか」
見当たらないので一旦部屋に戻ろうとした時だった。
遠くの方からタツミ先生が話す声が聞こえ、近くにいるならとアリスは声の聞こえた方へと向かう。
その声は地上の方から聞こえ、階段を登れば地上に出れタツミに会えるのだが、そこで一瞬アリスの動きが止まる。
ここまで勢いで来ちゃったけど、私ってここまで出てよかったのかな? さすがに上まで登るのはダメな気がする。
だが、上からはタツミの声が聞こえて来てすぐそこにいると分かるのだった。
アリスはそう考えつつも、上にいるタツミに声を掛けてすぐに戻ればいいだろうという謎の考えの元、階段を登り地上に出る。
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