公爵は妻となった私よりも浮気相手を本気で愛し、新たな妻にしたいと思っていますが、絶対に許しません!

出発

眠れなかった…昨日のスカルの言っていた事が頭から離れられなくて。

しかも、今日はこの国の王妃であるヴィラーネット様のお誕生日という大事な日に限って｡

ウェルヘムの方はリリアンを心配しているみたいではあるけれど、元はと言えば彼が妻であるリリアンとは別の女性と浮気をしているのではないか?

と執事と友人に疑われているのが原因なんだけどね…。

あの時はそんなわけがないとやんわり否定はしたけど、心の奥底では少し引っかかっている。

けど､心配してくれているウェルヘムにはそんな気持ちを出さずに笑顔になって振る舞う｡

「ちょっと悪い夢でも見ていたみたいなの｡でも､あなたが心配するような夢ではなかったわ、だから気にしないで｡」

「ああ、そうだったのか、本当に良かった。」

笑顔を見せるリリアンに彼はほっとしたかのような表情を見せた。

「今日はヴィラーネット王妃様のお誕生日というとても大切な日ですもの、気を引き締めて行きませんと｡」

「ハハハ､良かった､いつもの君に戻ったようだ。だけど、せっかくのお誕生日パーティーだから、和やかに楽しむ事も必要だよリリアン。」

「う､分かっていますわよ!ウェルヘム｡ご心配には及びませんわ。」

「そうか、それなら良かった、じゃあ一緒に行こうか。」

端正かつ優しい笑顔を向けられたリリアンは頬を赤く染める。

リリアンにとって社交界は､王族や他の貴族との繋がりを深め､権威を絶好の機会なのだから、大切な夫であるウェルヘムがより有利な立場になる為には気を引き締めて振る舞う事が大切だと思っている。

だから、こうして緊張をする事が少なくない。

ウェルヘムの方はというとリリアンとは違って、豪華なディナーや催される舞踏会でのダンスパーティーを好んでいるから、常にリラックスした気分でいられているわ。

だから、緊張をする事があまりなくて、ウキウキとしている。

そんな彼をリリアンは何故か嬉しく感じた。

そして、リリアンとウェルヘムは馬車に乗ってヴィラーネット王妃様の住居である、スヴェングル城へと向かった。