公爵は妻となった私よりも浮気相手を本気で愛し、新たな妻にしたいと思っていますが、絶対に許しません!

怒りと悲しみ

スカーレットの事を本気で愛しいると真剣になって告げるウェルヘム｡

リリアンは驚き､激しく動揺をしてしまう。

けれど彼女は負けじとウェルヘムを否定する｡

「なんて事を､御冗談もよしてくださいませ⁉あなたががこの女性を本気で愛しているですって、私だけではなくあなたのご両親やジゼル伯爵を含めて大勢の方々が黙っていませんわよウェルヘム!!それにこの女性がどんな素性や人柄なのかあなただって分かっているはずでは⁉」

激しく食ってかかるリリアンにスカーレットはたじろぎウェルヘムの後ろにそっと下がってしまう。

そんなスカーレットにウェルヘムは心配するかの様な態度を取り、再びリリアンに激しい怒りの表情を向ける。

「君に言われなくとも分かっているんだよ､だからそれがどうしたと言うんだね､く関係のない事だろ｡それとも君の方がスカーレットよりもずっと私に相応しい女性だと本気で思っているのかね!?」

リリアンに疑問を口にするウェルヘム｡

なんで…どうして??

本当にそうではありませんかウェルヘム､あなたは結婚をする前あれだけ私に君だけを愛していると何度も言っていたのではないですか…もう忘れてしまったの……。

「ええそうです、私はあなたの妻です｡彼女の様に浪費癖や人様の夫や婚約者に手を出すという酷い行いを周囲から噂される事なんて一切しませんので｡今まで私がどれだけあなたを支えて来たと思っているのですか｡それを一時の気の迷いでなんでこんな事を…信じたくありませんわ…。」

泣きそうになりながら訴えるリリアンにウェルヘムを冷たい表情になる。

「そんなの君の勝手じゃないか！私はいつ君に支えて欲しいと言ったんだ､これ以上押し付けないでくれ!!うんざりしてるんだよ、仕事といいプライベートの時といい休まる日なんて殆どないじゃないか､冗談はよしてくれ君が伯爵家の娘で無ければとっくに離婚しているよ!!」

我を忘れたかの様に激昂するウェルヘムに、リリアンは彼に対して憤りを感じてしまう。

「何を勝手な事を言っているのです!!今まであなたは私に不満や愚痴をこぼしてくれた事がありましたか?無かったでしょう､私が何度も心配して問い詰めても心配はいらないって言っていたではありませんか!!なんで今になって激昂して私よりもこの女性の盲目になっているなんて理解出来ませんわ!!」

そう言われたウェルヘムは一瞬口を噤んでしまう。

リリアンの言っている事は事実だから｡

でも彼は全く反省する素振りもなくそれどころか増々苛立ちをつのらせていく。

「悪いがいくら君が私を罵った所で私の考えは変わる事はならないし、君がどうしてもスカーレットとの関係を認めず別れさせようするなど絶対に許せるものか､それならば君と別れた後この煩わしい公爵の地位をさっさと捨てて彼女を新しい妻に迎え入れるつもりだ!!!」

ウェルヘムは本気だ……信じたくは無いけれど…目の前の彼の表情から見て取れてしまう…。

なんでこんな事になってしまったのと涙を流してしまったリリアンにスカーレットは哀れみを含めて近寄る。

「大丈夫ですか、リリアン様。ご心配はいりませんわ、私があなたの代わりにウェルヘム様を支えて行きますのでご心配なく｡」

その表情はリリアン対して勝利とも呼べる邪悪な笑みを浮かべた。

その事に全く気付かないウェルヘムはリリアンをわざと見ずにスカーレットの手を繋いで後ろを向き､大広間に向かって歩を進めて行った。

暗闇に一人取り残されたリリアンは二人の影が見えなくなるのを眺めながら今までになかった悔しさと後悔を滲ませる｡

どうしても私も地位も捨ててあの女性と一緒になりたいのね……いいわ…ウェルヘム…私にも考えがあるわ…このままで済むとは思わないでね…絶対に…!!

リリアンは初めて他人に復讐をする事を決めたのだった。