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密告⑥
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それは突然やってきた、というべきなのだろうか。
私はクルルギ大司教に呼ばれた。
今回も私の護衛をしてほしいと。
「はい、分かりました。大司教様。」
と、いつものように表情を殆ど変えずにただ黙って返事をしながら、少し大司教の見る。
今日は何故か機嫌が今までで一番良いように感じるのは気のだろうか。
疑問に感じる私だが彼の事だ、もしかしたらまた良からぬことを考えているのではないのだろうか。
だがしかし、シスターや他の司教がいる前で直接問いただすわけにはいかない。
「分かれば良いんだよマルクス君。今日は私にとってそれはそれは大事なお客様が来らるので君にはあの部屋まで私と同行してもらうよ。」
あの部屋…そういえばスヴェンが最近良くクルルギ大司教様と同行しているという噂のあの部屋……。
マルクスにはあの部屋なんなのか良く分からないが、恐らくはその部屋は不正と治安の悪化の原因とも言える場所なのだろう。
それならばどれだけ目の前にいる憎い相手でも黙って護衛の義務を果たさなければ行けなかった。
◆◆◇◇◆◆
しばらくすると教会の前に豪華な馬車が止まっていた。
馬車には二人の若い男女が乗っており、周囲をチラチラと見渡ししている。
二人の服装は平民よりもやや目立っている。
私はその二人が誰なのか観察しているときにクルルギ大司教は笑みをこぼしながらその二人の名前を呼んだ。
「ウェルヘム・ストロング様、スカーレット・ノヴァ様、私たちの教会にお越しいただきありがとうございます。」
とクルルギ大司教はその二人を教会内部へと案内しようとする。
私はその二人のうち一人である若い男性を何度か見た覚えがある。
そうか…彼は確か…あのウェルヘム公爵なのか…!?
周囲が羨む端正で爽やかな容姿にかなりの長身で細身でありながらがっしりとした体型をしていたので何度か礼拝堂でお祈りをしていたとき、彼を見た他の貴族のご令嬢や年若いシスターが頬を赤らめて少し放心状態になっているのを見て苦笑いしていた記憶があった。
そのようなやんごとなき御身分のウェルヘム公爵が何故若い女性と同じ質素な服装で教会に…?
いや、何故なんだ。
何故、ウェルヘム様は奥方様であるリリアン様ではなく茶髪の若い女性と…?
いや…まさか…目の前にいる彼は一緒にいる若い女性と浮気をしていると…?
疑問に感じる私を尻目にクルルギ大司教は不機嫌なウェルヘム公爵と年若い女性であるスカーレット・ノヴァにあの部屋へと案内するための護衛をするよう指示を出した。
「彼等二人は私たちのとても大切な客人だ。だからこそ元々傭兵だった君を護衛として私と共に同行することにしたんだ。何かがあっては元も子もないからな。私たちにとっての大事な大事な仕事の取引相手なのだからな。」
私はその言葉に嫌悪感を覚える。
私たちの仕事の取引相手…??
いや、私の悪事や不祥事を揉み消す為の出資者や共犯者の間違いだろ、と心の中で思ったが口には出さずにただ黙ってクルルギ大司教に頷いた。
私はクルルギ大司教に呼ばれた。
今回も私の護衛をしてほしいと。
「はい、分かりました。大司教様。」
と、いつものように表情を殆ど変えずにただ黙って返事をしながら、少し大司教の見る。
今日は何故か機嫌が今までで一番良いように感じるのは気のだろうか。
疑問に感じる私だが彼の事だ、もしかしたらまた良からぬことを考えているのではないのだろうか。
だがしかし、シスターや他の司教がいる前で直接問いただすわけにはいかない。
「分かれば良いんだよマルクス君。今日は私にとってそれはそれは大事なお客様が来らるので君にはあの部屋まで私と同行してもらうよ。」
あの部屋…そういえばスヴェンが最近良くクルルギ大司教様と同行しているという噂のあの部屋……。
マルクスにはあの部屋なんなのか良く分からないが、恐らくはその部屋は不正と治安の悪化の原因とも言える場所なのだろう。
それならばどれだけ目の前にいる憎い相手でも黙って護衛の義務を果たさなければ行けなかった。
◆◆◇◇◆◆
しばらくすると教会の前に豪華な馬車が止まっていた。
馬車には二人の若い男女が乗っており、周囲をチラチラと見渡ししている。
二人の服装は平民よりもやや目立っている。
私はその二人が誰なのか観察しているときにクルルギ大司教は笑みをこぼしながらその二人の名前を呼んだ。
「ウェルヘム・ストロング様、スカーレット・ノヴァ様、私たちの教会にお越しいただきありがとうございます。」
とクルルギ大司教はその二人を教会内部へと案内しようとする。
私はその二人のうち一人である若い男性を何度か見た覚えがある。
そうか…彼は確か…あのウェルヘム公爵なのか…!?
周囲が羨む端正で爽やかな容姿にかなりの長身で細身でありながらがっしりとした体型をしていたので何度か礼拝堂でお祈りをしていたとき、彼を見た他の貴族のご令嬢や年若いシスターが頬を赤らめて少し放心状態になっているのを見て苦笑いしていた記憶があった。
そのようなやんごとなき御身分のウェルヘム公爵が何故若い女性と同じ質素な服装で教会に…?
いや、何故なんだ。
何故、ウェルヘム様は奥方様であるリリアン様ではなく茶髪の若い女性と…?
いや…まさか…目の前にいる彼は一緒にいる若い女性と浮気をしていると…?
疑問に感じる私を尻目にクルルギ大司教は不機嫌なウェルヘム公爵と年若い女性であるスカーレット・ノヴァにあの部屋へと案内するための護衛をするよう指示を出した。
「彼等二人は私たちのとても大切な客人だ。だからこそ元々傭兵だった君を護衛として私と共に同行することにしたんだ。何かがあっては元も子もないからな。私たちにとっての大事な大事な仕事の取引相手なのだからな。」
私はその言葉に嫌悪感を覚える。
私たちの仕事の取引相手…??
いや、私の悪事や不祥事を揉み消す為の出資者や共犯者の間違いだろ、と心の中で思ったが口には出さずにただ黙ってクルルギ大司教に頷いた。
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