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婚約者から一方的に別れを告げられてしまいました。

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私は婚約者・スカーレットの事が小さい頃から好きだった。だから親同士が決めた婚約でも不満はないどころか嬉しく感じていた。
でも彼にとっては内心不満だったらしくて一緒にいるときなんていっつも不機嫌で黙ったまま言葉を話す事なんてほとんどない。

しかも私との約束事をはぐらかすなんていつもの事だから何度か理由を問い詰めたら
「考え事をしているんだ、黙っててくれないか!!」
と言い返してからまた不機嫌なまま黙り込む。

ずっとそんな状態が続いていたけどそれでも好きだったから我慢をしてきたのに……。

ある日、彼は私に対して
「すまないが僕は君と別れたい。両親が決めた事だから一応婚約をしてあげてたんだけと正直君に対しての好意は最初から持っていなかったんだ、だから悪いが今すぐこの婚約をなかった事にして欲しい。」

え……どういう事なの…と戸惑う私に
「君には元々女性としての魅力が足りないとは感じていたんだ。特別美しくもなければ可愛らしさもない、正直に言って君よりも美しくて可愛らしい女性なんてたくさんいる。両親の頼みでなければ婚約なんてする気なんてさらさらなかったし、この僕には君よりもずっと相応しい女性がいるんじゃないと感じていたから、今ここで告げるのがちょうど良かったんだよ。」

淡々と話す婚約者になんて身勝手なの…と怒りがこみ上げてくる私は
「ふざけないでくださいませ!!そんな理由で本気で婚約をなかった事にしたいのですか!!御冗談も程々にしてくださいませ!!今までずっとどれだけ我慢をしてきたと思っているの!!」

涙目になりながら大きな声で訴えるも
「僕だって我慢をしていたんだ!!君が我慢をしているのは知っているけど、性格と家柄だけが取り柄の地味で目立たない女性なんて釣り合わなさ過ぎるんだよ!!僕が好きなのは美人でかわいい女性に決まっているだろう!!だから君が何を言ってもこの事を曲げるつもりは一切ない!!」

顔を真っ赤にしてキレだす彼に思わず
「なんて最低なの!!分かったわ、この婚約はなかった事にするわよ!!!」

泣きながら後ろを向いて立ち去ってしまった。

本当は続けたかった…。

でも彼の身勝手な主張にははっきり言って我慢が出来なかった。

だから思わずなかった事にするなんて口に出して
しまった。

この事に後悔をしたままあまり寝付けない日々が続き、目にくまが出来て眠そうにしている私を心配してか幼馴染のリットンが
「なんか最近、君の顔色が悪いけど一体何があったんだ。」    

不安にしているリットンに対して
「いいえ、大丈夫よ…、ごめんなさい。彼と大喧嘩をして別れたいその日から中々寝付けなくて……。それ以来、彼とはほとんど会ってないから…。」

弱々しく答える私に幼馴染は険しい顔つきをして
「ああ、スカーレットの事なんだけどさ、あいつ噂によれば自分の所の屋敷で働いている新しいメイドにはベタ惚れみたいで、夜な夜な町へ出掛ける度に彼女を連れて行ってるみたいで、僕もこの間彼に会って婚約者との関係はどうなったんだと怒って問い詰めてたよ。そしたらもうアイツとは別れたよ、あんな地味な女と別れられたお陰で美人でかわいい彼女と付き合えて良かったと思っていると開き直って笑っていたんだ!許せない、あんな奴!!」

怒りに震えながら私に向かって
「僕は君を一度も地味でつまらない女だとは一度だって感じた事はないよ!!とても綺麗で優しい女性なんだ!!それに僕はずっと前から君の事が好きだったけど親同士が決めた婚約で彼の事が好きだと知っていたからどうしても諦めてしまったけど今度こそ本気で君と付き合って欲しいと思っているがだめだろうか。」

真剣な眼差しを向けて告白をしたリットンに思わず顔が赤くなる。

スカーレットからそういった告白なんて一度だってされたことはなかったから…。

私を見つめて顔を赤くする幼馴染に断る理由もなく
「はい、この私で良ければ……。」

私と幼馴染は互いに慰め合いながら付き合う様になった。

しばらくすると元婚約者・スカーレットが私に泣きついて来て僕とやり直して欲しい、今まで悪かったと今更泣いて謝罪をして来たのだ。
「どういう事なの一体。」

冷たく問い詰める私に

「実は……。」

口籠りながら彼は私と別れられた後の事を全て話した。

メイドと一緒になった彼は当初有頂天になっていたけど実はそのメイドはれっきとした悪女だった。

彼女は彼に甘い言葉を囁き続け全財産を毟り取って多額の借金を作った後でさっさと行方をくらましてしまった。

「いくら探しても見つからないんだよ!!親父に相談したら急にキレられて、このままだと一文無しどころか借金取りに追われる地獄のような生活にはなってしまう、だからどうか僕を助けてくれ!!!」
情け無い姿を見せる彼に私は自業自得じゃないと内心呆れて
「お断り致しますわ。私があなたと別れてからどのくらい時間が経っていると思っておりますの。それに私はもう婚約者がおりますので今後一切あなたと一緒するなる気はありませんわ。」

突き放すように告げると彼は怒りに震えて
「ふざけるな―!!」

顔を真っ赤にして私に掴みかかろうととしたが衛兵達に捕えられた後で幼馴染から
「今まで散々僕の婚約者の事を傷付けておきながら、自分自身が危ない状態になったら泣き付いた上に掴みかかろうとするなどなんて身勝手ななんだ!!今すぐこのこの場を立ち去ってくれ!!!」

と厳しく言われた彼は渋々と立ち去って行った。

それからというもの彼は両親からの援助もすぐに打ち切られ、無一文になって路頭に迷う事になった挙げ句、借金取りから逃げ回り行方知らずになったわ。

私は幼馴染であるリットンからプロポーズされ結婚、幸福に満ちた生活を送っているわ。

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