村石君の華やかな憂鬱 Remake

A.Y

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鮎川家編

第58話 平穏な日常⑤

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凛は玄関前に居る内藤の側へと行く。

「今日、我が家への来客が来る予定などありましたか?」
「いえ…その様な予定は受けておりません。多分ノーアポで来た方ですね」
「誰ですか、名前とかは聞きましたか?」
「さあ…私にも存じませんが…」

やがて、玄関前に車が来ると、車から中学生位の少女が現れた。
優雅な足取りと、気品あるしなやかな媚態に凛は一瞬息を呑んだ。

「あら・・・お美しい方ですね、モデルの方かしら?」
「ま・・・まあ、綺麗な人は世の中には沢山いますから」
「お嬢様も綺麗ですよ」
「あ・・・有り難う」

凛は答えるが、美貌を降り回している目の前に現れた少女に対して囁かながら嫉妬心があった。
やがて少女が玄関へと入って来る。

「ようこそ、いらっしゃいませ」

内藤と凛は、跪いて来客者に頭を下げる。名目上・・・民宿としての経営も行っているので、来客者に対してはそれなりの接待をも尽くすのが、鮎川家のしきたりであった。

「貴女・・・鮎川凛さんですか?」
少女は凛に向かって話す。

「あ・・・はい、そうでありますが・・・」
「貴女と話しをしたいの、何処かお部屋を貸して頂けますか?」
「はい・・・?」

凛は来客者用の応接室を案内する。
2人は黒塗りの豪華なソファーに向かい合わせで座る。内藤は2人にお茶を入れて、テーブルに置く。

「で・・・お話とは?」
「その前に自己紹介がまだでしたね。私は・・・漆畑玲奈と言います。この町の公立中学に通っています」
「あ・・・初めまして、あたしは・・・鮎川凛と言います」
「凛さんには会っていきなり、変な話しをしてしまいますが・・・こちらに村石竜也さんいるでしょう?」

いきなり直球過ぎる話しに凛は少し戸惑った。

「え・・・ええ、居ますが・・・何か?」
「彼に会わせて頂けますか?」
「何故ですか?」

玲奈の言葉に凛は怯む姿勢を見せなかった。

「彼は私の恩人であります、どうか・・・彼をこの屋敷から解放して頂けないしょうか?」

その言葉に凛は彼女も病院で竜也と知り合った1人と悟る。

「貴女にとっては、恩人かも知れませんが、彼の身柄はあたし達鮎川家が責任を持って、お守りしております。その辺を御了承下さい」
「それは・・・個人の見解ではありませんか?私は、彼を将来の旦那様として、迎え入れる覚悟はあります。子を身籠もってサヨナラするつもりは毛頭無いです」
「その辺は、私も同じ見解です・・・貴女と彼との間に、どのような経緯があったかは不明ですが、あたし自身彼と生涯を共にする覚悟が出来ています」

お互い引き下がらない舌戦を繰り広げていた。
応接室の外で話しを聞いていた内藤が、このままでは永遠に口論が続きそうと考えて、近くに居た使用人に声を掛ける。

「あ・・・はい、分かりました」
使用人は、急いで走り出す。

「彼を閉じ込めて、貴女にどんな利益があるのでしょうか?」
「閉じ込めるつもりは無いです。ただ・・・彼を単独で外出させると、貴方の様に彼を誘惑する方が居るので、出来るだけ1人では外出させないだけです」
「その様な行為が傲慢だと、ご自分でお気付きになりませんか?」
「確かに傲慢かも知れませんね。ですが・・・そう思うなら、他に連絡を取り合っている方達にも、会いに来るよう言えばどうでしょうか?隠れてコソコソ何か企むよりもそちらの方がずっと立派かと思いますけど...」
「私は、自分の親しかった方と連絡を取り合っているだけです。貴女が誰を対象としているかは不明ですが・・・貴女が考える方とは、さほど関係は持っておりません!」

2人はお互い引き下がる様な素振りは見せなかった・・・その時、応接室のドアがノックされた。

「はい」

凛がドアを開けると、目の前に竜也が立っていた。

「あ・・・竜也さん!」

それを聞いた時、玲奈は席を立って、凛の横へと行き、しばらくぶりに会う彼を見て頬を赤くしながら

「こんにちは、竜也さん」
と、挨拶をする。

「あ、こんにちは玲奈ちゃん。しばらく降りだね、無事退院したんだ」

竜也が嬉しそうに挨拶をする。

「ちょっと・・・」

凛が竜也の腕を引っ張り、廊下へと引きずり出す。

「貴方は、今仕事中でしょ?」
「何か、僕に会いたがっている人が来ていると・・・聞いて来たのだけど?」
「勤務中に無断で持ち場を離れるのは、仕事を放棄している事よ、早く持ち場に戻りなさい」

凛が、そう言っている間にも玲奈が竜也の側へと来る。

「お話し中に申し訳ないですが…彼と、少しお話しがしたいのですが…」

凛は迷った…その時、竜也が凛に言う

「少しだけ彼女と話しをしたいのだけど…ダメかな?」

ムッとしながら凛は答える。

「じゃあ…少しだけ話しをしなさい。ただし…ハメを外す行為は許しませんよ」

凛は、それ以上言わず、その場を離れて行く。
2人は応接室へと入る。ドアを閉めると玲奈は竜也に口付けを交わす。

「前よりもキスが上手くなったわね」

少しウットリとした表情で玲奈は竜也を見た。そして…竜也を抱きしめる。

「やっぱり貴方が欲しい…どうして、こんな場所に来たのよ…」
「ごめん…なんか、ここに連れて来られてしまって…」
「屋敷を出る時は、私に連絡してね…貴方を迎えに行くから…そして一緒になりましょう…」
「うん、分かった」
「これ、私の連絡先よ」

玲奈は竜也の耳元で囁きながら、ズボンのポケットに自分の連絡先の紙を入れる。

「待っているわ」

そう言って、もう一度竜也にキスをする。
2人は応接室を出る。廊下には凛が待っていた。

「竜也さんは仕事があるので、これで失礼させていただきます」
「分かったわ…」
「玄関まで、お見送りしますね」

竜也と凛は、玲奈を玄関まで見送る。

「それじゃあ、失礼しました」

玲奈は竜也を見て、屋敷を出て行く。
玲奈が居なくなると、竜也も持ち場に戻ろうとする。

「じゃあ…仕事をして来るね」
そう言って凛と別れようとする。

「待ちなさい!」

凛は竜也を呼び止めて、彼のズボンから紙を取り出す。

「これは、貴方には不要な物です。没収させて貰うわ」

凛は、紙をその場で破り捨てる。竜也は驚いた、自分達しか居なかったのに…何故か凛は玲奈が書いた連絡先の紙を見つけた。

「どうして分かったの…?」
「貴方の事なら、何でも分かるわよ」

凛は二ヤッと笑みを浮かべて言う。


~鬼頭家邸…

翌日、鮎川家に行く面々が決まる。雫、薫、美穂の3人だった。そのうち稽古中、屋敷の中を探索するのは薫に決めて・・・残りの雫と美穂で稽古すると言う方針である、雫1人で稽古させるのは、少々不安である・・・と、言う周囲からの判断で決まった。

琴美は、凛と同じクラスである為、一緒に行くと作戦がバレてしまうので、今回は屋敷への案内だけで、中に入らない事になった。絵里も電話で凛と話しをした為…素性が読み取られる可能性がある為、彼女も不参加に決定した。

こうして…名簿を作成した沙耶は、全員がほぼ帰った後…美穂と2人だけになって、溜め息を吐きながら、名簿を眺めていた。
そんな彼女達を傍らで眺めながら梨花が帰宅しようとしていた。

「明日の作戦…上手く行くと良いわね」

梨花が言うと沙耶は、不機嫌そんな表情で梨花を見る。

「そう思うなら、貴女達姉妹も参加してくれませんか?」
「私は…村石さんには、そこまで執着していないし…妹には妹なりの考えがあるのでしょう…。まあ、3人で上手く行く事を祈っているわ…」

そう言って梨花は屋敷を後にする。

「薫さん1人で屋敷の中を歩き周るのって大変そうね」
「相当大変よ…彼女1人で要塞を周るのは、相当時間は掛かると思うわ。はあ…せめて、あと…2~3人誰か参加してくれると色々と計画を進めてるのに便利なんだけど…」

沙耶は、そう言ってソファーの上で背を伸ばす。
自分達が屋敷の中に入って行くのが一番楽だが…凛と顔を合わせれば、素性を知られてしまう為、どうしても沙耶が鮎川家に入るのは難しくなる。

逆に凛を屋敷から出してしまって自分達が屋敷の中に入るようにすれば良いのだが…そうさせる作戦が思い付かないのが問題だった。

「あとは…鴉取さんが、どう動いてくれるか…それしか期待出来る物は無いわね」

それを聞いた美穂は、少し顔を俯かせた…。

「私…あの男性は、ちょっと苦手よ」
「まあ…それは私も同意見よ」

それを聞いた美穂が沙耶を見る。

「何で、あんな男性を雇ったの?」
「一応…人脈があるからよ。彼は相当な人とコンタクトしている筈だわ。ただ…どの程度信用出来るかがネックだけど…竜也さんを鮎川家から出す、最後の切り札として彼は動いて貰うわ…」

正直言って沙耶自身、鴉取の事はあまり信用していない…と言うのが事実であった。

「当然…作戦が上手く行かなかった場合は、支払った代金は全額返して貰うわよ…」

そう言う契約で鬼頭家から鴉取は代金を頂いていた。
役に立たなかったら即解雇してしまえば良い…沙耶は、そう考えていた。
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