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恋は秋菊の香り
何ぞ彼の穠たる唐棣の華。嫁ぐ姿は、あの美しく盛んに咲き誇る艶やかな花のよう。
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地精たちは、女官を、否、己と同じ地精を殺しきった。体をねじりきり、腕をもいで、首もねじ切る。そこまですると、土を掘り出した。
「おい、何をしている」
慎重に足を運び、移動しながら士匄は声をかけた。この内宮どこにいても地精から逃げられないであろう。油断すれば、見えぬ腕がひっぱってくる。侍ろうと絡んでくるのを払いのけながら、掴まらない場所をさぐりながら、歩く。
士匄の声に、地精が一斉にふり返った、その顔は清楚で、可憐であった。一見、地味な目鼻立ちであったが、心に清冽さが残るような、美しい女どもであった。まさに、菊そのものである。それらが、表情なく、士匄を見つめた。
「埋めるのです。死ねば黄泉に。鳥か土と伺いました。今は土のほうが早いのです」
澄んだ声が、唱和し、幾人かがしゃがんで土を手で掘り出した。柔らかくもない土に、爪が剥がれた女もいたが、もくもくと掘っていた。地精に痛みなどわからぬのであろう。
「あなた、あなたたち、狄の方を、木の上に、置いたのですか、あのように、惨い! おやめなさい、やめて!」
趙武が、地精たちをかきわけ手を伸ばす。士匄は、バカ、と思わず言った。趙武の手は白い腕にからめとられ、それどころか体に女たちがまとわりついてくる。柔らかく、いいにおいの、おそろしい女たちが趙武を四方八方から抱きしめ侍ってくる。
「ヤダぁっ」
幼児のような声をあげて、趙武は泣きだした。男として役得、などとは思わなかった、押しつけられる胸も腿も、性欲をかきたてられるどころか恐怖でしかなかった。
「大夫さまは、穢れたところに行ってはいけません」
「穢れても私たちがお役に立てますけれども、貴きかたに卑しい女官など」
「大夫さまは、我が主の主にならなければなりません。そうでなければ、お役に立たないでしょう、大夫さまはお役に立たなければなりませんでしょう」
「ここにいるのであれば、お役に立たないと」
「君公の、我が主のために、さあ大夫さま、私たちが務めますゆえ」
人のことわりなどわからぬさえずりを合唱され、趙武は耐えられなくなり嘔吐した。地精どもは、人の生理などわからないため、気にしなかった。
胃液に喉を焼き、鼻を痛めながら、趙武の目に強い光が戻ってくる。極めてくだらない、本当にくだらないことが原因であろう。
しかし、それにより人が三人死んだ。いや、目の前で埋められていく女官を合わせれば四人か。人は、死ねば取り返しがつかない。世の中に取り返しがつかないことなどごまんとあるが、死んでしまっては、本当にどうしようもない。戻らぬ。
――死者は生者と歩めない
かつて、士匄の祖父范武子が、死者として言った。あの偉大な存在でさえ、彼岸の向こうから戻ることはない。趙武は人が死ぬのは、嫌だった。
「あなたがたがなんなのか。わかりませぬが」
趙武は士匄と晋女のなまめかしいやりとりなど、知らぬ。聞こえていない。ゆえに、異界の女どもとだけ思った。
「君公に尽くし、我ら大夫に侍るというなら、人を殺すな。離しなさい! 汚らわしい!」
美しいご面相は、怒りに震えても、やはり美しいらしい。埋み火のような光を目にたたえ、趙武が女の腕を振り払った。地精どもは、抵抗しなかった。
「大夫さま、何を。ご不快なことが」
「何がご不興なのですか。殺すなとはなんでしょうか」
女どもが、口々に言った。趙武はますます頭に血が上り、周囲の女たちを遠ざけるように腕を振り回すと、怒鳴った。彼らしくない、裂帛の声であった。
「あなたがたは! 狄の女官を惨たらしく殺しましたね! そこの、楚の方も。私は存じ上げませぬが、衛の女官も惨たらしく殺したのではないですか。そして今、その女官もねじり殺した。人は死ねば、何もできない、取り返しがつかない、そこで終わる。あなたがたは、その責をとるほどのものですか!」
趙武の声に地精たちは首をかしげた。
「役に立たぬものを、処分したのです」
「貴き方々は、私たちの弱い部分を処分いたします」
「お役に立てぬものは弱き部分なのではないですか」
唱和される無機質なそれに、趙武がのけぞった。地精どもを振り払いながら後ずさる。そこを士匄が見計らい、趙武を引っ張り寄せた。
腕の中に後輩を入れ、肩を抱き寄せながら、士匄は用心深く周囲を見た。常にお調子者で軽々しい彼とは思えぬ、目つきであった。集中し、全方位に気を張る。
もし取り込まれれば、晋女と共に地精のおもちゃとして閉じ込められる。この騒ぎに他の女官も寺人も誰ひとりかけつけていない。となれば、さらなる結界の中に放り込まれた可能性もあった。
「……わたしが見るに、衛の女はなかなか使えるやつだった。あほうであるが、バカではなかった。さて、お前たちは役立たずをいらぬという。まあ、それは理であろう。しかし、どうやって裁定した」
士匄は衛女を悼んでいるわけではない。この地精のルールを知らねばならぬ。いくつか方法を考えては、いる。
が、それをいちいち試す余裕はない。絞らねば、ならぬ。本来、手っ取り早いのは晋女を士匄の支配下にすることである。しかし、そうなれば地精どもに取り込まれかねない。
この地精は、晋女の浅はかな願望を世の本質と受け止め、意味がわからないまま大夫に身請けさせようとしている。そうなれば、地精の世界ができあがりかねない。最悪、異界と異界の隙間に放り込まれれ、戻れなくなるであろう。
人は、そこを仙境と言うらしいが、士匄は枯れた余生を過ごすなど、まっぴらである。
さて、士匄の問いである。地精ごときが、剪定をどうやって決めたのか。
「役立たずと申告いたしましたので、そうなのだと」
地精の一人が、表情のない声で言った。
士匄は、衛女の笑顔を一瞬思い出す。夫に売られたのか。いえ、義父に売られました。
この、花の群れは黙るということを知らぬ。秘すということも知らぬ。今まで気づかれなかったのは、本当にたまたまというものであった。
人は一人の時に弱い己を出す。それを、地精たちは見た。
植物は土の中で会話をするという。そのように、誰かが見れば、誰かがわかる。内宮に溶け込んだ地精どもは、見ては、伝えたのである。そして、それを今、垂れ流していく。
衛女は士匄のめんどうをかいがいしくみていた。酒ではなく強い清めに昏倒していたのだが、衛女にはわからぬ。そのうち、そっと士匄の前髪を撫で、目尻に指を添わせた。
――大夫さまは、みなさまこのようにきれいなのかしらね。うちの旦那の次にかっこいい
そう笑い、なんとなく腹を撫でた。子を為せず、家に戻されるところを止めたのは夫であった。その夫が死に、家も受け取り拒否、石女など他の男にやるわけにいかぬと、売られた。実際、衛女の生理は不安定であったため、己の体の欠陥だろう、仕方無いと肩をすくめて受け入れた。血の穢れこそが生命を産むのだと、古代人だってわかっていたのだ。
――子供の産めない私は、役立たず、ね
衛女は若干、士匄を色めいた目つきで見て、笑った。
背後に、女官が現れ、衛女を引き倒した。ぎゃ、と叫んだ口を塞がれる。
「役に立たぬあのものは、音をあげて、大夫さまのお眠りを邪魔しようとしたのです」
淡々と説明しながら、地精が士匄を見上げた。士匄は無表情に聞いた。
腹の中がよろしくないと知った地精は、それを潰して潰して、取り払った。そうならば、この女も役に立つ女官となるだろうと考えていたのだが、なんと動かなくなり、どうやら死んでしまった。
「私たちは、弱きものが処分されると、死ぬなどと知りませんでした」
「私たちの弱いところも死んだかもしれませんが、それで私たちはお役にたてます」
狄女は薬草を摘みながら、趙武のおめがねにかなわなかった己を役立たずだからだ、と自嘲した。
楚女に関しては、まあ読者はご存じであろう。
趙武は、士匄の腕の中で声を失っていた。自嘲、自己嫌悪の一言が、そのまま死刑執行書とされるなど、これほど理不尽なことがあろうか。口に出すことで、己から祓われるものもあったろう。しかし、地精は烙印と見た。
「范叔……このひとたち、いえ、ひとじゃないのでしょう。あなたは、わかっているのですか」
「菊の地精だ。あのバカ女が名を与え、役割を教えた。それもわからんのに、まあお前はよく耐えたな」
士匄は素早く答えると、場を見渡した。目があった晋女が動こうとするのを手で制す。
あの女が地精を鎮めるのが手っ取り早いが、その胆力があるとは思えぬ。そもそも、きちんとした咒を紡ごうとして途方にくれるであろう。式を知らず適当に書いた解が当たっただけの女である。
地精どもは、今はおとなしく見てきている。
これらは女官たちの動きをトレースしてそれを『役に立つ』と思っているふしがある。宴席で働いていたのもそれであろう。が、地精自身で『役に立つ』ことを作り出しかねない。
実際、役立たずを殺すという暴走をしている。この、おとなしいうちにケリをつけねばならなかった。
士匄が、晋女を気にしつつ、囲んでくる地精どもに目をくばらせ、趙武をしっかと抱き――離れればさらに見ねばならぬものが増えるからである――脳内をフル回転させていたとき、その声は聞こえた。
「范叔、趙孟。私は何をすればよい?」
内宮の外であった。菊園に、韓無忌がいた。女が一人立ちはだかるように立っている。それも地精だ、と気づいた。他の地精とどこか違う、と士匄の勘が働いたが、それよりは韓無忌である。彼がこちらを認識している、そしてこちらから見えているということは、地精に取り込まれかかっている可能性がある。菊茶の女か、と士匄は思った。つまり、一番早く地精に目を付けられたのは韓無忌ということになる。
手伝って貰うか、と士匄は思った。趙武では補強できぬ部分を、韓無忌は支えてくれるであろう。士匄が即興で作る咒を聞いて、即座に対応するに違いない。
「そうだな、まず――」
士匄が口を開いた瞬間。
「何もしないでください! 来ないで! 逃げて! 逃げられないのでしたら、動かないでください!」
趙武が身を乗り出すようにして韓無忌を見ながら叫んだ。士匄は、甘ちゃんめ、と舌打ちをする。先達に迷惑をかけるわけいかぬ云々、だいたいそんなところであろう。
「趙孟。韓伯に逃げろとはどういう了見だ。離れれば、二度とこちらに来れぬであろう。お前よりよほど役に立つ。この場を解放するに、一人でも役に――」
「うるさい!」
士匄の理屈を、趙武が四文字で遮った。ここまで無礼な後輩など見たことはなく、士匄は唖然とした。韓無忌が趙武へと顔を向ける。その目は、遠い異界を見ているようであった。――本当は、ほとんどの世界が見えていないのであった。
「趙孟。私は汝ら先達だ。私には様子はわからぬが、ざわついた気配、悲鳴、緊張はわかる。范叔は才あるが、巫覡でなく只人。一人では荷が重いと思ったまで。それを、一人で逃げろとは、私に卑怯者となれというか。導かねばならぬものを見捨てろと」
何が起きているかなど、詳しいことはわからない。内宮の状況がそのまま韓無忌に見えても聞こえてもいない。水の中で響く、くぐもったような音であった。しかし、異常が起こっていることくらいわかる。范叔と趙武の声とかたちを見た時、韓無忌は先達として、年長としての責任を思ったのである。が、趙武がそれを撥ねのけた。
撥ねのけ、そして、さらに叫んだ。
「あなたは、何もできない、足手まといです!」
血を吐くような声が、場に響き渡った。士匄は息を飲んで趙武を見た。
趙武は悔しそうに泣いていた。尊敬する先達を傷つける言葉を吐く己が、悔しかった。他の言葉があるかもしれなかったが、趙武には見つけられなかった。
「人が! 死んでいます! 三人、いや四人かもしれません、死にました。私たちもどうなるかわかりません。あなたは、一人で走れますか、身を守れますか、安全な場所を探せるというのですか! 范叔に応じて支えるという、その時に、あなたは己に責をとれますか! 私はいま、あなたの手を引くことかなわぬのです!」
韓無忌が、手を震わせた。拳を握りしめすぎて爪が肌を傷つけ、うっすらと血が滲む。しかし、彼は表情を変えなかった。趙武の言葉は、罵倒である。障害を持つ韓無忌などなんの役に立たぬと言い切ったに等しい。手探りで文字を覚え、耳で教養を覚え身につけ研鑽し、己を律してきた韓無忌の全てを否定する言葉でもあった。
しかし、韓無忌を守ろうとする言葉でもあった。誠実すぎる趙武らしい、身を切るような悲鳴であった。この、謹厳実直で真面目で、不器用な青年は、肩を落とすことなく士匄と趙武を見た。
「私は、汝らに背を向けて逃げるようなことはできない。私はそのような生き方はできぬ。しかし、趙孟の言葉は理あり。私は范叔を満足に支えることできぬ。私は、ここから動けぬだけのものになった。私は、役に立たない」
士匄は息を飲んだ。己を全否定しながらも、堂々と立つ男に飲まれた。
韓無忌の中に諦念はあるかもしれぬ。悔しさも、もしかすると趙武に対する憎しみも生まれたかもしれぬ。しかし、彼は常のままの顔で、声で、己は立ってるだけの役立たずだと言い切ったのである。
腕の中の趙武が歯を食いしばって泣いていた。この、異常な状況をなんとかせねばならぬのが第一義である。だからといって、韓無忌を傷つけて良いわけではない。趙武は、己の至らなさが苦しかった。狄女の痛みも分からず、楚女の不安にも気づかず、死なせたのは己ではないかとも、思った。
うかつなことに、士匄は一瞬、集中をゆるめた。ゆえに、場の変化に気づくのが遅れた。
女たちの視線が、全て『外』に向いていた。
「役に立たないのですか、大夫さまですのに」
「この宮の中にいるものは、全て役に立たなければならない」
「大夫さまは――」
表情のない女たちが――地精が、韓無忌に向かい歩き出す。
「ち、そちらは、宮の中ではなかろうが!」
士匄は幾度めかの舌打ちをした。あの地精どもは、内と外を出入りしている。それは、韓無忌の前に立っている女を見ればわかる。寸分違わぬ同じ顔をしたあれも、地精である。もし、あんなものが全て出てしまえば、この宮城が菊に埋め尽くされる。
菊に囲まれた仙境に、宮城が取り込まれ、それにひもづいたもの、つまり晋は此岸から消える。夏もそうであった、山猿女のせいで、苦労したのだ。次は勘違い女のせいで苦労させられる。女難の年かよ、と士匄は歯ぎしりした。
韓無忌から守るように、菊の女官が地精を押しとどめようとふり返って手を広げた。
「私たち、この方は大夫さま、我らが奉仕せねばならぬ貴き方です、何をしようというの! 私たちは職分に戻らないといけません、この宮の中にいるものは、全て役に立たなければならないのです!」
「私たちである私。あなたは何をしているの、あなたの職分はお役に立つことでしょう。そこに、役に立たぬものがある。弱きものは貴き方々が処分されていたのではないのですか。私ではない、あなた。菊の係を譲らぬあなた――」
内宮から伸びる手を払い、鍵を開けようとする手を叩きながら、菊の女官は叫んだ。
「私が菊の係であると、大夫さまは仰った! 私は私になりました、あの方を守るのがお役目でございます。だって、あの方の、菊の係のものですもの。あなたたちは、その宮の中にいて、役目を終えなさい、私は私たちではない、私は私だったのです!」
菊の女――菊女の声は、内宮まで響き渡った。韓無忌の眼前で、内宮の風景がはっきりしてくる。
菊の花にも似た女たちのかたまりが、群がり韓無忌を見て手を伸ばしていた。それを、菊女が必死に払いのけようとしている。彼女は、君公の女官ではなく、韓無忌への忠を選んだらしかった。
菊の係のものか。
韓無忌の言葉に、この女はそのようなものだ、と言った。つまり、そういうことだったのだ。全てがわかったわけではないが、韓無忌は己が愚かであったことはわかった。
そのような韓無忌の自嘲など、士匄は知ったことない。
「韓伯! やはり手伝ってくれ。あなたは弱兵、そして今や囮。敵は囮にくいついた、わたしに合わせろ。合わせるだけでいい」
士匄は趙武をわきに放って言った。地精は今、韓無忌だけを見ている。地精の中に反旗を翻したものがいるようだが、潰されるのは時間の問題であろう。が、時間稼ぎはしてくれている。
今、地精たちは一つの川となっている。一本の線の先にたまたま韓無忌がいる。士匄はすばやく、対になる場を見つけ走った。士匄が起点であれば、韓無忌が終点である。
士匄は立ったまま向き直り、口を開いた。高い天に届くほどの大きさで、しかし愛しいものを呼ぶ甘さで声を張り上げる。
「谷神は死せず。これを玄牝と謂う」
合わせろと言われた韓無忌は戸惑うことなく即座、口を開いた。
「玄牝の門、これを天地の根と謂う」
谷に宿る神は枯れることなくその水を生み出していく。それは、女そのものである。
女が命を生み出すところこそ、天地陰陽、万物の源。
祭政一体の祖霊の祀りが理とするならば、玄牝への陶酔は生々しい情である。後に老子によって宗教から思想へと純化されるこれは、世界の深淵であると同時に、幻影でもある。男はもちろん、女自身でさえ全容を見ることのできない、生命を生み出し潤うその門は、人と異界を繋げている。
士匄はちらりと空を見た。そこには、秋らしい雲が流れ、日の光がふりそそいでいる。その光には確かな陽があり、この場が完全に閉じられているわけではないことがわかる。
己の位置が計算通りであると、式に適うと確信し、士匄は言葉を続けた。
「萃は、王の有廟に仮る。大人を見るに利あり。亨る。貞しきに利あり」
地に水が集まり沢になる。それを萃という。萃は宗廟に至る。正しき祭祀、正しき賢人、正しき道へ至れ。士匄の言葉に、趙武が不安を隠さず韓無忌を見た。常は士匄一人で行っている言上に他者が混じる。それは文言が濁るに等しい。
「――大牲を用うるに吉。往くところあるに利あり」
迷わず言葉を続けると、韓無忌は冠を止める簪を引き抜いた。頭から冠が滑り落ち、真っ直ぐで艶のある黒髪が解かれ肩を背を滑っていく。まるで夜のとばりでも降りたようであった。韓無忌はそのようなこと気にせず、持っていたかんざしで己の腕を刺した。流れる血を掲げるように、軽く腕をあげ突き出す。深くつきさしたそこから、ぽたりと一滴、地に落ちた。
「韓伯、何を!」
当時、人前で冠を外すということは、裸体をさらすよりも恥である。韓無忌は自ら文明人であることを否定した。いや、人ではない、というレベルである。趙武がうろたえても仕方が無い。それを士匄が止めるように手で制した。目端に移った士匄のしぐさに、趙武は黙る。士匄の確信めいた目つきに、意味があるのだと察した。
さて、士匄と言えば、内心韓無忌に舌を巻いていた。
――まさか、己を贄とするとは、一人で歩けぬくせに度胸がある。
謹厳実直で、真面目な先達。そして、一人で歩くことも生きていくこともできぬ哀れな嗣子。士匄は韓無忌をそのように見ていたが、土壇場の胆力がここまでか、とも思い、獰猛な笑みを浮かべた。
士匄は同一個体に近い地精が溢れているさまを萃とし、意志なく指向性のないそれらに道を作ろうとしている。それに応じた韓無忌は、廟の祀りには牛が良し、しかしこの場にいない。であれば、己が牛になると、即座に人を捨てた。それが最適解であろうとも、人は己を獣と言い切れない。口でそう嘯いても、どこか人であろうとする。しかし、目の前の韓無忌は冠を外して形で宣言し、その声音で訴えてくる。犠牲の牛になろう、と。
「大牲あり、すなわち韓氏の産。大人あり、すなわち士氏の嗣子」
己を賢人と言い切る士匄は常なら厚顔といえるわけであるが、この場をとりしきるのは彼である。『大人』となり祭祀を取りしきる。士匄はすっと息を吸って吐いた。
「孚ありて終わらず。乃ち乱れ乃ち萃まる。汝ら地より湧く沢の恵みを受けしもの、ただその場で積み上がり留まる、その性みな同一、すなわち萃如、嗟如たり。利するところなし」
韓無忌へと向かっていた女たちがぴたりと止まった。意志なきそれらは、しかし不安そうであった。役に立たねばならぬという本能だけで動いているそれらは、おまえ達は誰にも相手にされず嘆くだけ、存在に価値がないとされたのである。女の感傷と虚勢で生み出されたものどもは、戸惑った。
菊女だけは、韓無忌を守るように片手を広げてそのさまを見つめた。彼女は、萃からはじき出されていた。
天子から奴隷にいたるまで、同一個体というものは人の世界に存在しない。しかし、菊から生み出されたあれら地精はみな同一である。咒に従うために人の世界を侵蝕し、結果、己らに住みよい土壌にしようとしている。それは意志ではなく本能であり、ふわふわと方向は定まっていない。
士匄は道を示し、方向を定め、沢から溢れただようだけの萃を流すために――門を作ろうとしていた。
人のことわりを歪めるように充満する菊の香りが肺まで入り込み、息苦しい。巫覡が、君公が、天子が贄を捧げて天への門を伺うように、士匄も異界の門を思う。
天ではなく、地。それは完全な陰でもあり、陽、つまり男の士匄とは相性が悪い。
「……我ら、陽のもの、陽は陰に包まれ安んじる。萃は沢よりいずる、すなわち兌。勃々たる陽を押さえるもの」
そこまで言うと、士匄は黙って韓無忌を睨み付けた。韓無忌はもちろん、士匄の表情など見えぬ。しかし、声音で促されたと気づき、続けて口を開く。
「今や我ら陽は陰中にあり」
それだけを、彼はなんとか言った。この言上の主は士匄である。これ以上の言葉を積み上げることはできない。下手に足せば、士匄のやりくりに時間がかかる。
教養深い韓無忌でさえ、士匄が異界の入り口を呼ぼうとしているなど気づいていない。法制としての律があるであろう、と思っていた。
地精たちが再び韓無忌へと向いた。乱雑に排除だけを考えていた先ほどとは違い、秩序があった。
「陽全て陰とならば、ことわり全て道に順おう。萃よりのご教導に説び、貴き牲を捧げ、道に誘おう」
士匄が甘やかな声で言葉を紡ぐ。伸びやかで、遠くまで響き、風に乗って場を支配する。韓無忌が黙って己の腕に刺していたかんざしを跳ね上げるように動かしながら抜いた。広がった傷口から、さらなる血が流れ落ちていく。これは、牛の血である。本式であれば耳を切り落とし玉の皿で受け、口に含まねばならぬ血であったが、即興なのだから仕方がない。どうせ贄は地に捧げられる。
天からそそがれる陽気さえ覆い隠すような陰気の充満が菊の香りとあいまって、窒息しそうであった。趙武でさえ、体がだるい。士匄に至っては、酸欠で頭がガンガンと殴られ続けているような痛みに襲われていた。
玉もなく、祀りの備えもなく、言上のみで神仙の世界を伺おうなど、士匄の才をもってしても無謀である。ゆえに、体が悲鳴をあげている。
滑稽なことにそれを支えているのが、君命であった。あの、サボリの口実である言い訳と君命が士匄を支えていた。腐っても天命は背負っているらしい。――そもそも、州蒲が丸投げしたから、こんなめにあっているのだが、集中している士匄は八つ当たりする暇もない。
「地は及ち坤、陽と対なす陰。溢れた萃は還り安らぐ、其れ升である」
君公のいる宮は陰陽共にめぐる循環の中にある。そこに、むりやり陰のみの道を作りながら、士匄は小さく息を吐き、静かに息を吸った。わずかな空気が、体の奥へと落ちていく。
「升は元いに亨る。用て大人を見る。恤うるなかれ」
賢人の指し示す先で、おまえ達の願いはかなう、憂いはない。
「虚邑に升れ」
誰もおらぬ邑を、ただ進め。
「萃とは聚なり。聚りて上るものはこれを升ると謂う。故にこれを受くるに升をもってす」
柔らかい吐息とともに士匄は言葉を終えた。現実の世界では、士匄と韓無忌が垣根を挟み向かい合って立っているだけである。しかし、こちら側では、違った。
「……穴?」
趙武が茫然と立ち尽くしながら呟いた。韓無忌の眼前に、むりやり空間をひらいたような穴ができていた。左右にこじ開けたようなその穴ーー門は、時折蠢動しており、生き物のようでもあった。そこから、水が静かにあふれ出る。谷底より湧きでる水そのものであった。
地精の女たちは、一斉にその門へと走っていく。意志無きそれらは、本能のままに走っていく。
あの場こそが己の場所である、あの場でお役に立てるのだ。無数に湧いてでていた歪な女官たちは、門に吸いこまれるように消えていった。
「やだ」
ぽつりと、声がした。玉璧にヒビが入ったような、哀れな声であった。
士匄はそんなものにかかずらってられない。終わるまで動けぬ。動けば、道が途絶える。
その代わりのように趙武が声の主を見た。
晋女がよろりと立ち上がると、地精を追いかけるように歩きだした。その歩みはどんどん早くなっていく。
「いけません。あちらに行けば、もどってこれなくなります。人でなくなる、死ぬのと同じです。死んではいけない」
「いやよ、あの子たち、わたしのものなんでしょう、おいてかないで」
おそろしいと震えていたくせに、一人になるとわかれば、耐えられず追いかける。趙武は晋女の言葉が全く理解できなかったが、止めなければならぬとかけより、手を伸ばした。その腕を取ろうと、かよわい腕を掴もうとした。
悲しいかな、趙武は細く小さい。伸ばした手は袖をつかむのでせいいっぱいであった。それでも、趙武は諦めない。彼女は趙武に対し冷たくいっそ厳しかった。だからといって、死ぬのを見過ごすわけにはいかぬ。趙武がそうであるように、晋女も生きるべきだと思った。生きていれば、どこかで報われるものがあるはずなのだ。
趙武は引き寄せようと思いきり引っ張った。袖は破れ、晋女の腕はあらわになった。趙武は虚しく布一片を握るのみである。
それは滑らかな絹ではない。趙武の着ているような、絹ではない、ごわごわした何かの布であった。視線のかなたに、仙境へと旅立つ女が見えた。
晋女ごと、地精が消えたことを見届けた士匄は
「恤うるなかれ。往けば咎なし」
と愛をささやくような優しい声で、門を閉じた。
「おい、何をしている」
慎重に足を運び、移動しながら士匄は声をかけた。この内宮どこにいても地精から逃げられないであろう。油断すれば、見えぬ腕がひっぱってくる。侍ろうと絡んでくるのを払いのけながら、掴まらない場所をさぐりながら、歩く。
士匄の声に、地精が一斉にふり返った、その顔は清楚で、可憐であった。一見、地味な目鼻立ちであったが、心に清冽さが残るような、美しい女どもであった。まさに、菊そのものである。それらが、表情なく、士匄を見つめた。
「埋めるのです。死ねば黄泉に。鳥か土と伺いました。今は土のほうが早いのです」
澄んだ声が、唱和し、幾人かがしゃがんで土を手で掘り出した。柔らかくもない土に、爪が剥がれた女もいたが、もくもくと掘っていた。地精に痛みなどわからぬのであろう。
「あなた、あなたたち、狄の方を、木の上に、置いたのですか、あのように、惨い! おやめなさい、やめて!」
趙武が、地精たちをかきわけ手を伸ばす。士匄は、バカ、と思わず言った。趙武の手は白い腕にからめとられ、それどころか体に女たちがまとわりついてくる。柔らかく、いいにおいの、おそろしい女たちが趙武を四方八方から抱きしめ侍ってくる。
「ヤダぁっ」
幼児のような声をあげて、趙武は泣きだした。男として役得、などとは思わなかった、押しつけられる胸も腿も、性欲をかきたてられるどころか恐怖でしかなかった。
「大夫さまは、穢れたところに行ってはいけません」
「穢れても私たちがお役に立てますけれども、貴きかたに卑しい女官など」
「大夫さまは、我が主の主にならなければなりません。そうでなければ、お役に立たないでしょう、大夫さまはお役に立たなければなりませんでしょう」
「ここにいるのであれば、お役に立たないと」
「君公の、我が主のために、さあ大夫さま、私たちが務めますゆえ」
人のことわりなどわからぬさえずりを合唱され、趙武は耐えられなくなり嘔吐した。地精どもは、人の生理などわからないため、気にしなかった。
胃液に喉を焼き、鼻を痛めながら、趙武の目に強い光が戻ってくる。極めてくだらない、本当にくだらないことが原因であろう。
しかし、それにより人が三人死んだ。いや、目の前で埋められていく女官を合わせれば四人か。人は、死ねば取り返しがつかない。世の中に取り返しがつかないことなどごまんとあるが、死んでしまっては、本当にどうしようもない。戻らぬ。
――死者は生者と歩めない
かつて、士匄の祖父范武子が、死者として言った。あの偉大な存在でさえ、彼岸の向こうから戻ることはない。趙武は人が死ぬのは、嫌だった。
「あなたがたがなんなのか。わかりませぬが」
趙武は士匄と晋女のなまめかしいやりとりなど、知らぬ。聞こえていない。ゆえに、異界の女どもとだけ思った。
「君公に尽くし、我ら大夫に侍るというなら、人を殺すな。離しなさい! 汚らわしい!」
美しいご面相は、怒りに震えても、やはり美しいらしい。埋み火のような光を目にたたえ、趙武が女の腕を振り払った。地精どもは、抵抗しなかった。
「大夫さま、何を。ご不快なことが」
「何がご不興なのですか。殺すなとはなんでしょうか」
女どもが、口々に言った。趙武はますます頭に血が上り、周囲の女たちを遠ざけるように腕を振り回すと、怒鳴った。彼らしくない、裂帛の声であった。
「あなたがたは! 狄の女官を惨たらしく殺しましたね! そこの、楚の方も。私は存じ上げませぬが、衛の女官も惨たらしく殺したのではないですか。そして今、その女官もねじり殺した。人は死ねば、何もできない、取り返しがつかない、そこで終わる。あなたがたは、その責をとるほどのものですか!」
趙武の声に地精たちは首をかしげた。
「役に立たぬものを、処分したのです」
「貴き方々は、私たちの弱い部分を処分いたします」
「お役に立てぬものは弱き部分なのではないですか」
唱和される無機質なそれに、趙武がのけぞった。地精どもを振り払いながら後ずさる。そこを士匄が見計らい、趙武を引っ張り寄せた。
腕の中に後輩を入れ、肩を抱き寄せながら、士匄は用心深く周囲を見た。常にお調子者で軽々しい彼とは思えぬ、目つきであった。集中し、全方位に気を張る。
もし取り込まれれば、晋女と共に地精のおもちゃとして閉じ込められる。この騒ぎに他の女官も寺人も誰ひとりかけつけていない。となれば、さらなる結界の中に放り込まれた可能性もあった。
「……わたしが見るに、衛の女はなかなか使えるやつだった。あほうであるが、バカではなかった。さて、お前たちは役立たずをいらぬという。まあ、それは理であろう。しかし、どうやって裁定した」
士匄は衛女を悼んでいるわけではない。この地精のルールを知らねばならぬ。いくつか方法を考えては、いる。
が、それをいちいち試す余裕はない。絞らねば、ならぬ。本来、手っ取り早いのは晋女を士匄の支配下にすることである。しかし、そうなれば地精どもに取り込まれかねない。
この地精は、晋女の浅はかな願望を世の本質と受け止め、意味がわからないまま大夫に身請けさせようとしている。そうなれば、地精の世界ができあがりかねない。最悪、異界と異界の隙間に放り込まれれ、戻れなくなるであろう。
人は、そこを仙境と言うらしいが、士匄は枯れた余生を過ごすなど、まっぴらである。
さて、士匄の問いである。地精ごときが、剪定をどうやって決めたのか。
「役立たずと申告いたしましたので、そうなのだと」
地精の一人が、表情のない声で言った。
士匄は、衛女の笑顔を一瞬思い出す。夫に売られたのか。いえ、義父に売られました。
この、花の群れは黙るということを知らぬ。秘すということも知らぬ。今まで気づかれなかったのは、本当にたまたまというものであった。
人は一人の時に弱い己を出す。それを、地精たちは見た。
植物は土の中で会話をするという。そのように、誰かが見れば、誰かがわかる。内宮に溶け込んだ地精どもは、見ては、伝えたのである。そして、それを今、垂れ流していく。
衛女は士匄のめんどうをかいがいしくみていた。酒ではなく強い清めに昏倒していたのだが、衛女にはわからぬ。そのうち、そっと士匄の前髪を撫で、目尻に指を添わせた。
――大夫さまは、みなさまこのようにきれいなのかしらね。うちの旦那の次にかっこいい
そう笑い、なんとなく腹を撫でた。子を為せず、家に戻されるところを止めたのは夫であった。その夫が死に、家も受け取り拒否、石女など他の男にやるわけにいかぬと、売られた。実際、衛女の生理は不安定であったため、己の体の欠陥だろう、仕方無いと肩をすくめて受け入れた。血の穢れこそが生命を産むのだと、古代人だってわかっていたのだ。
――子供の産めない私は、役立たず、ね
衛女は若干、士匄を色めいた目つきで見て、笑った。
背後に、女官が現れ、衛女を引き倒した。ぎゃ、と叫んだ口を塞がれる。
「役に立たぬあのものは、音をあげて、大夫さまのお眠りを邪魔しようとしたのです」
淡々と説明しながら、地精が士匄を見上げた。士匄は無表情に聞いた。
腹の中がよろしくないと知った地精は、それを潰して潰して、取り払った。そうならば、この女も役に立つ女官となるだろうと考えていたのだが、なんと動かなくなり、どうやら死んでしまった。
「私たちは、弱きものが処分されると、死ぬなどと知りませんでした」
「私たちの弱いところも死んだかもしれませんが、それで私たちはお役にたてます」
狄女は薬草を摘みながら、趙武のおめがねにかなわなかった己を役立たずだからだ、と自嘲した。
楚女に関しては、まあ読者はご存じであろう。
趙武は、士匄の腕の中で声を失っていた。自嘲、自己嫌悪の一言が、そのまま死刑執行書とされるなど、これほど理不尽なことがあろうか。口に出すことで、己から祓われるものもあったろう。しかし、地精は烙印と見た。
「范叔……このひとたち、いえ、ひとじゃないのでしょう。あなたは、わかっているのですか」
「菊の地精だ。あのバカ女が名を与え、役割を教えた。それもわからんのに、まあお前はよく耐えたな」
士匄は素早く答えると、場を見渡した。目があった晋女が動こうとするのを手で制す。
あの女が地精を鎮めるのが手っ取り早いが、その胆力があるとは思えぬ。そもそも、きちんとした咒を紡ごうとして途方にくれるであろう。式を知らず適当に書いた解が当たっただけの女である。
地精どもは、今はおとなしく見てきている。
これらは女官たちの動きをトレースしてそれを『役に立つ』と思っているふしがある。宴席で働いていたのもそれであろう。が、地精自身で『役に立つ』ことを作り出しかねない。
実際、役立たずを殺すという暴走をしている。この、おとなしいうちにケリをつけねばならなかった。
士匄が、晋女を気にしつつ、囲んでくる地精どもに目をくばらせ、趙武をしっかと抱き――離れればさらに見ねばならぬものが増えるからである――脳内をフル回転させていたとき、その声は聞こえた。
「范叔、趙孟。私は何をすればよい?」
内宮の外であった。菊園に、韓無忌がいた。女が一人立ちはだかるように立っている。それも地精だ、と気づいた。他の地精とどこか違う、と士匄の勘が働いたが、それよりは韓無忌である。彼がこちらを認識している、そしてこちらから見えているということは、地精に取り込まれかかっている可能性がある。菊茶の女か、と士匄は思った。つまり、一番早く地精に目を付けられたのは韓無忌ということになる。
手伝って貰うか、と士匄は思った。趙武では補強できぬ部分を、韓無忌は支えてくれるであろう。士匄が即興で作る咒を聞いて、即座に対応するに違いない。
「そうだな、まず――」
士匄が口を開いた瞬間。
「何もしないでください! 来ないで! 逃げて! 逃げられないのでしたら、動かないでください!」
趙武が身を乗り出すようにして韓無忌を見ながら叫んだ。士匄は、甘ちゃんめ、と舌打ちをする。先達に迷惑をかけるわけいかぬ云々、だいたいそんなところであろう。
「趙孟。韓伯に逃げろとはどういう了見だ。離れれば、二度とこちらに来れぬであろう。お前よりよほど役に立つ。この場を解放するに、一人でも役に――」
「うるさい!」
士匄の理屈を、趙武が四文字で遮った。ここまで無礼な後輩など見たことはなく、士匄は唖然とした。韓無忌が趙武へと顔を向ける。その目は、遠い異界を見ているようであった。――本当は、ほとんどの世界が見えていないのであった。
「趙孟。私は汝ら先達だ。私には様子はわからぬが、ざわついた気配、悲鳴、緊張はわかる。范叔は才あるが、巫覡でなく只人。一人では荷が重いと思ったまで。それを、一人で逃げろとは、私に卑怯者となれというか。導かねばならぬものを見捨てろと」
何が起きているかなど、詳しいことはわからない。内宮の状況がそのまま韓無忌に見えても聞こえてもいない。水の中で響く、くぐもったような音であった。しかし、異常が起こっていることくらいわかる。范叔と趙武の声とかたちを見た時、韓無忌は先達として、年長としての責任を思ったのである。が、趙武がそれを撥ねのけた。
撥ねのけ、そして、さらに叫んだ。
「あなたは、何もできない、足手まといです!」
血を吐くような声が、場に響き渡った。士匄は息を飲んで趙武を見た。
趙武は悔しそうに泣いていた。尊敬する先達を傷つける言葉を吐く己が、悔しかった。他の言葉があるかもしれなかったが、趙武には見つけられなかった。
「人が! 死んでいます! 三人、いや四人かもしれません、死にました。私たちもどうなるかわかりません。あなたは、一人で走れますか、身を守れますか、安全な場所を探せるというのですか! 范叔に応じて支えるという、その時に、あなたは己に責をとれますか! 私はいま、あなたの手を引くことかなわぬのです!」
韓無忌が、手を震わせた。拳を握りしめすぎて爪が肌を傷つけ、うっすらと血が滲む。しかし、彼は表情を変えなかった。趙武の言葉は、罵倒である。障害を持つ韓無忌などなんの役に立たぬと言い切ったに等しい。手探りで文字を覚え、耳で教養を覚え身につけ研鑽し、己を律してきた韓無忌の全てを否定する言葉でもあった。
しかし、韓無忌を守ろうとする言葉でもあった。誠実すぎる趙武らしい、身を切るような悲鳴であった。この、謹厳実直で真面目で、不器用な青年は、肩を落とすことなく士匄と趙武を見た。
「私は、汝らに背を向けて逃げるようなことはできない。私はそのような生き方はできぬ。しかし、趙孟の言葉は理あり。私は范叔を満足に支えることできぬ。私は、ここから動けぬだけのものになった。私は、役に立たない」
士匄は息を飲んだ。己を全否定しながらも、堂々と立つ男に飲まれた。
韓無忌の中に諦念はあるかもしれぬ。悔しさも、もしかすると趙武に対する憎しみも生まれたかもしれぬ。しかし、彼は常のままの顔で、声で、己は立ってるだけの役立たずだと言い切ったのである。
腕の中の趙武が歯を食いしばって泣いていた。この、異常な状況をなんとかせねばならぬのが第一義である。だからといって、韓無忌を傷つけて良いわけではない。趙武は、己の至らなさが苦しかった。狄女の痛みも分からず、楚女の不安にも気づかず、死なせたのは己ではないかとも、思った。
うかつなことに、士匄は一瞬、集中をゆるめた。ゆえに、場の変化に気づくのが遅れた。
女たちの視線が、全て『外』に向いていた。
「役に立たないのですか、大夫さまですのに」
「この宮の中にいるものは、全て役に立たなければならない」
「大夫さまは――」
表情のない女たちが――地精が、韓無忌に向かい歩き出す。
「ち、そちらは、宮の中ではなかろうが!」
士匄は幾度めかの舌打ちをした。あの地精どもは、内と外を出入りしている。それは、韓無忌の前に立っている女を見ればわかる。寸分違わぬ同じ顔をしたあれも、地精である。もし、あんなものが全て出てしまえば、この宮城が菊に埋め尽くされる。
菊に囲まれた仙境に、宮城が取り込まれ、それにひもづいたもの、つまり晋は此岸から消える。夏もそうであった、山猿女のせいで、苦労したのだ。次は勘違い女のせいで苦労させられる。女難の年かよ、と士匄は歯ぎしりした。
韓無忌から守るように、菊の女官が地精を押しとどめようとふり返って手を広げた。
「私たち、この方は大夫さま、我らが奉仕せねばならぬ貴き方です、何をしようというの! 私たちは職分に戻らないといけません、この宮の中にいるものは、全て役に立たなければならないのです!」
「私たちである私。あなたは何をしているの、あなたの職分はお役に立つことでしょう。そこに、役に立たぬものがある。弱きものは貴き方々が処分されていたのではないのですか。私ではない、あなた。菊の係を譲らぬあなた――」
内宮から伸びる手を払い、鍵を開けようとする手を叩きながら、菊の女官は叫んだ。
「私が菊の係であると、大夫さまは仰った! 私は私になりました、あの方を守るのがお役目でございます。だって、あの方の、菊の係のものですもの。あなたたちは、その宮の中にいて、役目を終えなさい、私は私たちではない、私は私だったのです!」
菊の女――菊女の声は、内宮まで響き渡った。韓無忌の眼前で、内宮の風景がはっきりしてくる。
菊の花にも似た女たちのかたまりが、群がり韓無忌を見て手を伸ばしていた。それを、菊女が必死に払いのけようとしている。彼女は、君公の女官ではなく、韓無忌への忠を選んだらしかった。
菊の係のものか。
韓無忌の言葉に、この女はそのようなものだ、と言った。つまり、そういうことだったのだ。全てがわかったわけではないが、韓無忌は己が愚かであったことはわかった。
そのような韓無忌の自嘲など、士匄は知ったことない。
「韓伯! やはり手伝ってくれ。あなたは弱兵、そして今や囮。敵は囮にくいついた、わたしに合わせろ。合わせるだけでいい」
士匄は趙武をわきに放って言った。地精は今、韓無忌だけを見ている。地精の中に反旗を翻したものがいるようだが、潰されるのは時間の問題であろう。が、時間稼ぎはしてくれている。
今、地精たちは一つの川となっている。一本の線の先にたまたま韓無忌がいる。士匄はすばやく、対になる場を見つけ走った。士匄が起点であれば、韓無忌が終点である。
士匄は立ったまま向き直り、口を開いた。高い天に届くほどの大きさで、しかし愛しいものを呼ぶ甘さで声を張り上げる。
「谷神は死せず。これを玄牝と謂う」
合わせろと言われた韓無忌は戸惑うことなく即座、口を開いた。
「玄牝の門、これを天地の根と謂う」
谷に宿る神は枯れることなくその水を生み出していく。それは、女そのものである。
女が命を生み出すところこそ、天地陰陽、万物の源。
祭政一体の祖霊の祀りが理とするならば、玄牝への陶酔は生々しい情である。後に老子によって宗教から思想へと純化されるこれは、世界の深淵であると同時に、幻影でもある。男はもちろん、女自身でさえ全容を見ることのできない、生命を生み出し潤うその門は、人と異界を繋げている。
士匄はちらりと空を見た。そこには、秋らしい雲が流れ、日の光がふりそそいでいる。その光には確かな陽があり、この場が完全に閉じられているわけではないことがわかる。
己の位置が計算通りであると、式に適うと確信し、士匄は言葉を続けた。
「萃は、王の有廟に仮る。大人を見るに利あり。亨る。貞しきに利あり」
地に水が集まり沢になる。それを萃という。萃は宗廟に至る。正しき祭祀、正しき賢人、正しき道へ至れ。士匄の言葉に、趙武が不安を隠さず韓無忌を見た。常は士匄一人で行っている言上に他者が混じる。それは文言が濁るに等しい。
「――大牲を用うるに吉。往くところあるに利あり」
迷わず言葉を続けると、韓無忌は冠を止める簪を引き抜いた。頭から冠が滑り落ち、真っ直ぐで艶のある黒髪が解かれ肩を背を滑っていく。まるで夜のとばりでも降りたようであった。韓無忌はそのようなこと気にせず、持っていたかんざしで己の腕を刺した。流れる血を掲げるように、軽く腕をあげ突き出す。深くつきさしたそこから、ぽたりと一滴、地に落ちた。
「韓伯、何を!」
当時、人前で冠を外すということは、裸体をさらすよりも恥である。韓無忌は自ら文明人であることを否定した。いや、人ではない、というレベルである。趙武がうろたえても仕方が無い。それを士匄が止めるように手で制した。目端に移った士匄のしぐさに、趙武は黙る。士匄の確信めいた目つきに、意味があるのだと察した。
さて、士匄と言えば、内心韓無忌に舌を巻いていた。
――まさか、己を贄とするとは、一人で歩けぬくせに度胸がある。
謹厳実直で、真面目な先達。そして、一人で歩くことも生きていくこともできぬ哀れな嗣子。士匄は韓無忌をそのように見ていたが、土壇場の胆力がここまでか、とも思い、獰猛な笑みを浮かべた。
士匄は同一個体に近い地精が溢れているさまを萃とし、意志なく指向性のないそれらに道を作ろうとしている。それに応じた韓無忌は、廟の祀りには牛が良し、しかしこの場にいない。であれば、己が牛になると、即座に人を捨てた。それが最適解であろうとも、人は己を獣と言い切れない。口でそう嘯いても、どこか人であろうとする。しかし、目の前の韓無忌は冠を外して形で宣言し、その声音で訴えてくる。犠牲の牛になろう、と。
「大牲あり、すなわち韓氏の産。大人あり、すなわち士氏の嗣子」
己を賢人と言い切る士匄は常なら厚顔といえるわけであるが、この場をとりしきるのは彼である。『大人』となり祭祀を取りしきる。士匄はすっと息を吸って吐いた。
「孚ありて終わらず。乃ち乱れ乃ち萃まる。汝ら地より湧く沢の恵みを受けしもの、ただその場で積み上がり留まる、その性みな同一、すなわち萃如、嗟如たり。利するところなし」
韓無忌へと向かっていた女たちがぴたりと止まった。意志なきそれらは、しかし不安そうであった。役に立たねばならぬという本能だけで動いているそれらは、おまえ達は誰にも相手にされず嘆くだけ、存在に価値がないとされたのである。女の感傷と虚勢で生み出されたものどもは、戸惑った。
菊女だけは、韓無忌を守るように片手を広げてそのさまを見つめた。彼女は、萃からはじき出されていた。
天子から奴隷にいたるまで、同一個体というものは人の世界に存在しない。しかし、菊から生み出されたあれら地精はみな同一である。咒に従うために人の世界を侵蝕し、結果、己らに住みよい土壌にしようとしている。それは意志ではなく本能であり、ふわふわと方向は定まっていない。
士匄は道を示し、方向を定め、沢から溢れただようだけの萃を流すために――門を作ろうとしていた。
人のことわりを歪めるように充満する菊の香りが肺まで入り込み、息苦しい。巫覡が、君公が、天子が贄を捧げて天への門を伺うように、士匄も異界の門を思う。
天ではなく、地。それは完全な陰でもあり、陽、つまり男の士匄とは相性が悪い。
「……我ら、陽のもの、陽は陰に包まれ安んじる。萃は沢よりいずる、すなわち兌。勃々たる陽を押さえるもの」
そこまで言うと、士匄は黙って韓無忌を睨み付けた。韓無忌はもちろん、士匄の表情など見えぬ。しかし、声音で促されたと気づき、続けて口を開く。
「今や我ら陽は陰中にあり」
それだけを、彼はなんとか言った。この言上の主は士匄である。これ以上の言葉を積み上げることはできない。下手に足せば、士匄のやりくりに時間がかかる。
教養深い韓無忌でさえ、士匄が異界の入り口を呼ぼうとしているなど気づいていない。法制としての律があるであろう、と思っていた。
地精たちが再び韓無忌へと向いた。乱雑に排除だけを考えていた先ほどとは違い、秩序があった。
「陽全て陰とならば、ことわり全て道に順おう。萃よりのご教導に説び、貴き牲を捧げ、道に誘おう」
士匄が甘やかな声で言葉を紡ぐ。伸びやかで、遠くまで響き、風に乗って場を支配する。韓無忌が黙って己の腕に刺していたかんざしを跳ね上げるように動かしながら抜いた。広がった傷口から、さらなる血が流れ落ちていく。これは、牛の血である。本式であれば耳を切り落とし玉の皿で受け、口に含まねばならぬ血であったが、即興なのだから仕方がない。どうせ贄は地に捧げられる。
天からそそがれる陽気さえ覆い隠すような陰気の充満が菊の香りとあいまって、窒息しそうであった。趙武でさえ、体がだるい。士匄に至っては、酸欠で頭がガンガンと殴られ続けているような痛みに襲われていた。
玉もなく、祀りの備えもなく、言上のみで神仙の世界を伺おうなど、士匄の才をもってしても無謀である。ゆえに、体が悲鳴をあげている。
滑稽なことにそれを支えているのが、君命であった。あの、サボリの口実である言い訳と君命が士匄を支えていた。腐っても天命は背負っているらしい。――そもそも、州蒲が丸投げしたから、こんなめにあっているのだが、集中している士匄は八つ当たりする暇もない。
「地は及ち坤、陽と対なす陰。溢れた萃は還り安らぐ、其れ升である」
君公のいる宮は陰陽共にめぐる循環の中にある。そこに、むりやり陰のみの道を作りながら、士匄は小さく息を吐き、静かに息を吸った。わずかな空気が、体の奥へと落ちていく。
「升は元いに亨る。用て大人を見る。恤うるなかれ」
賢人の指し示す先で、おまえ達の願いはかなう、憂いはない。
「虚邑に升れ」
誰もおらぬ邑を、ただ進め。
「萃とは聚なり。聚りて上るものはこれを升ると謂う。故にこれを受くるに升をもってす」
柔らかい吐息とともに士匄は言葉を終えた。現実の世界では、士匄と韓無忌が垣根を挟み向かい合って立っているだけである。しかし、こちら側では、違った。
「……穴?」
趙武が茫然と立ち尽くしながら呟いた。韓無忌の眼前に、むりやり空間をひらいたような穴ができていた。左右にこじ開けたようなその穴ーー門は、時折蠢動しており、生き物のようでもあった。そこから、水が静かにあふれ出る。谷底より湧きでる水そのものであった。
地精の女たちは、一斉にその門へと走っていく。意志無きそれらは、本能のままに走っていく。
あの場こそが己の場所である、あの場でお役に立てるのだ。無数に湧いてでていた歪な女官たちは、門に吸いこまれるように消えていった。
「やだ」
ぽつりと、声がした。玉璧にヒビが入ったような、哀れな声であった。
士匄はそんなものにかかずらってられない。終わるまで動けぬ。動けば、道が途絶える。
その代わりのように趙武が声の主を見た。
晋女がよろりと立ち上がると、地精を追いかけるように歩きだした。その歩みはどんどん早くなっていく。
「いけません。あちらに行けば、もどってこれなくなります。人でなくなる、死ぬのと同じです。死んではいけない」
「いやよ、あの子たち、わたしのものなんでしょう、おいてかないで」
おそろしいと震えていたくせに、一人になるとわかれば、耐えられず追いかける。趙武は晋女の言葉が全く理解できなかったが、止めなければならぬとかけより、手を伸ばした。その腕を取ろうと、かよわい腕を掴もうとした。
悲しいかな、趙武は細く小さい。伸ばした手は袖をつかむのでせいいっぱいであった。それでも、趙武は諦めない。彼女は趙武に対し冷たくいっそ厳しかった。だからといって、死ぬのを見過ごすわけにはいかぬ。趙武がそうであるように、晋女も生きるべきだと思った。生きていれば、どこかで報われるものがあるはずなのだ。
趙武は引き寄せようと思いきり引っ張った。袖は破れ、晋女の腕はあらわになった。趙武は虚しく布一片を握るのみである。
それは滑らかな絹ではない。趙武の着ているような、絹ではない、ごわごわした何かの布であった。視線のかなたに、仙境へと旅立つ女が見えた。
晋女ごと、地精が消えたことを見届けた士匄は
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と愛をささやくような優しい声で、門を閉じた。
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