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勇者のプロローグ
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勇者とは聖女と呼ばれる教会のトップに君臨するお偉いさんから授かる名誉ある称号なのだ。
選ばれたものは全員、世界の困難に立ち向かったり、ありとあらゆる人を救ったり、時には敵対している国同士を仲良くさせたり、と多種多様な分野に精通する超絶人間になるのだ。
例えそれがどんな人間であろうと…
勇者。
本名ではなくそんな名前で呼ばれるようになったのはいつ頃だろうか。もう記憶にも残ってないほど前から言われていた。
生まれはなんら代わりのない平凡な村で生を受けた。
両親は共に優しく、時に厳しかった。
自分はそんな両親が大好きだった。マザコンとかファザコンとか言われても仕方がなかったと思う。いや、今も好きだけどね? 家族愛が素晴らしいにんげんなのだ。
だが、そんな至って普通なありふれた幸せは突然消え去った。
そう、聖女から貴方は勇者だと。何の前触れもなく言ってきたのだ。
その時は…何歳くらいだっただろうか。まだ母親と一緒に羞恥心なく風呂に入っていたので多分六歳位だろう。完全に適当なのだが思い出せないのだ。
ほんのり、両親の顔は思い出せる気がしなくもないが…
俺の生活はそこから変わっていった。
何時もなら朝一度起きて二度寝、三度寝を繰り返して昼頃に起きるそんな生活が早朝、しかも完全に太陽が出てきっていないときにたたき起こされ引き取られた協会を合計二十周ほど走らされる。
そこから数分の休憩を入れて勇者の要とも言える剣術の訓練を始める。
まだ、幼少期。
両親に甘えたい年頃だったのだがそんな感情を圧し殺し、無我夢中で剣を振って“斬る”動作を永遠と繰り返しやらされていた。
数が大体五百を越えた辺りで飯の時間になる。
これが唯一の休憩と言えなくもないが結局この時間も苦痛でしかなかった。
飯は体を作る。そんな聖女の一言によって気持ち少ないかな? だった量が徐々に増えていき、三日目からは大人でも食べきれるか疑問な量が出てきた。
今の自分なら料理を思いっきり顔面に投げつけてやるのだがその時の俺はそんな事を考える余裕なんて一切なく、ただ剣を振るうときのように無我夢中で食べた。
その後は運動、食事を取ったら睡眠も大事なのです。
と、じゃあ朝早く起きる必要あった? と、疑問に思ってしまうが腹一杯と言うより詰め込んだ状態で寝るように言われ、逆流しそうな腹の痛みと口に広がっていく飲み込んだ筈の食事の残骸。ここで吐き出してしまうと勿体無い、と言われ出したものを強制的に食べさせられるのだ。
そんな強くなるための近道を強制的にやらされ、十歳の時には三十人ほどの盗賊団を一人で壊滅できるほどの技術が身に付いてしまった。
そこから能力を見いだされ、対人から対魔物。そして人間の大敵である魔族との戦いを強制させられた。人間は意外と脆く倒しやすいし、魔物はたまに頭の良い個体がいるが基本的に何も考えずに突撃すれば大抵勝ててしまう。問題が魔族だった。
見た目は人間と同じ、違った部分をあげるとするなら瞳の色が人間より圧倒的に多種多様な色をしていると言ったところだ。
対人戦は何度もやってきてるし、簡単だろと思って不意打ちをせずに正面から行ったときはーー危うく死ぬところだった。
動きはそんなに良いとは言えず、体術でなら当時十二だった俺でも勝ってたと思うが問題は“魔法”を使ってきたという点だった。
と、そんな濃い生活を送っていたある時、教会が何者かによって襲撃されてしまう。
その結果俺は襲撃した人達に保護され教会から抜け出せたのだ。
その時は何故? どうして? と疑問しかなかったのだがその事を行動に移そうとは思っていなかった。
一番最初に触れたのはリュークと言うなの青年だった。
その表情は決して歴戦の戦士のような数えきれないほどの修羅場を生き抜いてきた顔じゃなかったがどこか、決意がある表情だった。だが、どこか騙されやすそうだな~とそんな人柄だったので多分そこでこの人達を殺してまで抜け出そうと考えなかったのだ。
話はそんな救出劇から十年後の事になる。
救い出された少年は二十歳を過ぎ、二十一歳になろうとしていた。
普通の男女の就職する年齢は十八、九歳なのだがこの勇者の場合は空白の十年間は“普通”や“一般常識”を教える期間だった。
最初の勇者は持ち前の身体能力と圧倒的な戦いのセンスでこれから生き抜くためには戦えるようにならなくちゃな! と、親切心で始まった組み手でボッコボコのボコにしてしまったのだ。本人曰く手加減をしたつもりだった、と言うのだがしたつもりじゃ駄目なのだ。
最初は今の勇者がどれだけ強いかを教え、次に簡単な読み書き、最後に人とのつきあい方を伝授した。
簡単な算数などは教会にいたときに教わっていたのである程度の文章や単語の意味をおしえたりした。
そんな事をしていたらあっという間に十年が経ち、気が付いたらリューク達の姿が無くなっていた。勇者との会話の中で自身が冒険者だと言うことを明かしていたのでほんのりと勇者は「魔族にでも襲われたのか」と、考えていた。
人として大事なことを学び、必要以上の戦闘力を手にした今。勇者が何をしても成功するだろうし、天空の王者であるドラゴンなんて生肉を切るように簡単に倒せるだろう。
だが、そんな勇者が選んだ道はーー
「あー、見付かって良かった。この【スライム討伐】の依頼を受けたいんですけど」
魔物の中でも最弱に位置し、そこら辺の村人Aにでも倒せてしまうスライムの討伐依頼を誇らしげに受けようとしていたっ!!
選ばれたものは全員、世界の困難に立ち向かったり、ありとあらゆる人を救ったり、時には敵対している国同士を仲良くさせたり、と多種多様な分野に精通する超絶人間になるのだ。
例えそれがどんな人間であろうと…
勇者。
本名ではなくそんな名前で呼ばれるようになったのはいつ頃だろうか。もう記憶にも残ってないほど前から言われていた。
生まれはなんら代わりのない平凡な村で生を受けた。
両親は共に優しく、時に厳しかった。
自分はそんな両親が大好きだった。マザコンとかファザコンとか言われても仕方がなかったと思う。いや、今も好きだけどね? 家族愛が素晴らしいにんげんなのだ。
だが、そんな至って普通なありふれた幸せは突然消え去った。
そう、聖女から貴方は勇者だと。何の前触れもなく言ってきたのだ。
その時は…何歳くらいだっただろうか。まだ母親と一緒に羞恥心なく風呂に入っていたので多分六歳位だろう。完全に適当なのだが思い出せないのだ。
ほんのり、両親の顔は思い出せる気がしなくもないが…
俺の生活はそこから変わっていった。
何時もなら朝一度起きて二度寝、三度寝を繰り返して昼頃に起きるそんな生活が早朝、しかも完全に太陽が出てきっていないときにたたき起こされ引き取られた協会を合計二十周ほど走らされる。
そこから数分の休憩を入れて勇者の要とも言える剣術の訓練を始める。
まだ、幼少期。
両親に甘えたい年頃だったのだがそんな感情を圧し殺し、無我夢中で剣を振って“斬る”動作を永遠と繰り返しやらされていた。
数が大体五百を越えた辺りで飯の時間になる。
これが唯一の休憩と言えなくもないが結局この時間も苦痛でしかなかった。
飯は体を作る。そんな聖女の一言によって気持ち少ないかな? だった量が徐々に増えていき、三日目からは大人でも食べきれるか疑問な量が出てきた。
今の自分なら料理を思いっきり顔面に投げつけてやるのだがその時の俺はそんな事を考える余裕なんて一切なく、ただ剣を振るうときのように無我夢中で食べた。
その後は運動、食事を取ったら睡眠も大事なのです。
と、じゃあ朝早く起きる必要あった? と、疑問に思ってしまうが腹一杯と言うより詰め込んだ状態で寝るように言われ、逆流しそうな腹の痛みと口に広がっていく飲み込んだ筈の食事の残骸。ここで吐き出してしまうと勿体無い、と言われ出したものを強制的に食べさせられるのだ。
そんな強くなるための近道を強制的にやらされ、十歳の時には三十人ほどの盗賊団を一人で壊滅できるほどの技術が身に付いてしまった。
そこから能力を見いだされ、対人から対魔物。そして人間の大敵である魔族との戦いを強制させられた。人間は意外と脆く倒しやすいし、魔物はたまに頭の良い個体がいるが基本的に何も考えずに突撃すれば大抵勝ててしまう。問題が魔族だった。
見た目は人間と同じ、違った部分をあげるとするなら瞳の色が人間より圧倒的に多種多様な色をしていると言ったところだ。
対人戦は何度もやってきてるし、簡単だろと思って不意打ちをせずに正面から行ったときはーー危うく死ぬところだった。
動きはそんなに良いとは言えず、体術でなら当時十二だった俺でも勝ってたと思うが問題は“魔法”を使ってきたという点だった。
と、そんな濃い生活を送っていたある時、教会が何者かによって襲撃されてしまう。
その結果俺は襲撃した人達に保護され教会から抜け出せたのだ。
その時は何故? どうして? と疑問しかなかったのだがその事を行動に移そうとは思っていなかった。
一番最初に触れたのはリュークと言うなの青年だった。
その表情は決して歴戦の戦士のような数えきれないほどの修羅場を生き抜いてきた顔じゃなかったがどこか、決意がある表情だった。だが、どこか騙されやすそうだな~とそんな人柄だったので多分そこでこの人達を殺してまで抜け出そうと考えなかったのだ。
話はそんな救出劇から十年後の事になる。
救い出された少年は二十歳を過ぎ、二十一歳になろうとしていた。
普通の男女の就職する年齢は十八、九歳なのだがこの勇者の場合は空白の十年間は“普通”や“一般常識”を教える期間だった。
最初の勇者は持ち前の身体能力と圧倒的な戦いのセンスでこれから生き抜くためには戦えるようにならなくちゃな! と、親切心で始まった組み手でボッコボコのボコにしてしまったのだ。本人曰く手加減をしたつもりだった、と言うのだがしたつもりじゃ駄目なのだ。
最初は今の勇者がどれだけ強いかを教え、次に簡単な読み書き、最後に人とのつきあい方を伝授した。
簡単な算数などは教会にいたときに教わっていたのである程度の文章や単語の意味をおしえたりした。
そんな事をしていたらあっという間に十年が経ち、気が付いたらリューク達の姿が無くなっていた。勇者との会話の中で自身が冒険者だと言うことを明かしていたのでほんのりと勇者は「魔族にでも襲われたのか」と、考えていた。
人として大事なことを学び、必要以上の戦闘力を手にした今。勇者が何をしても成功するだろうし、天空の王者であるドラゴンなんて生肉を切るように簡単に倒せるだろう。
だが、そんな勇者が選んだ道はーー
「あー、見付かって良かった。この【スライム討伐】の依頼を受けたいんですけど」
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