女の俺は世界で一番エロ可愛い

椎木唯

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一章 力で商人のヒモになる

見た目と相反する男。気のせい

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 面接に行ったらしのごの言わずに採用されました。まあ、採用された側が使う言葉じゃないけどね。しのごのって。

 俺の経験の中で明確に年上、権力が上の人間なんて学校の校長とかしか経験がないのだ。経験不足ゆえの初々しい態度が気に入られたのかな? いや、それじゃあ完全に如何わしいビデオに参入予定確定じゃねえか。どうも、性なしのアクです。根性どうこうの話じゃないって事ね。良いのか悪いのか。 
 なんやかんやで思考がまとまりづらい現状。当たり前だ。いきなり社長に会って面接してくださいで平常心保てる奴がいるかって話。いたらそいつは人間じゃねえよ。人狼だわ。

 と、そんな事を考えているが現状、目の前に広がる景色は阿鼻叫喚の真逆。
 鼻腔を擽る数々の料理がテーブルに乗せられ、乗せられたテーブルの柄が分からないほど。視線をずらすと正面にはウィンドウショッピングかな? と思ってしまう程綺麗に一列にして並んでいるバニーガール姿の美女、スーツ姿のイケメン。そして妙齢のおじ様。見た目の暴力とでも言えば良いだろう。嫉妬感を覚えるがそのどれもが鏡で見た自分よりは一歩二歩劣っているように感じる。はっはー↑ ねえ、パッと出の新人で御免なさいね? 先輩方?? と、言葉が漏れてしまいそうなので目の前の食事に手を付ける。

 確か何かを話し、場所を移動したのだがその概要までは思い出せない。緊張もここまで緊張すると記憶が飛ぶんだね。と、身に付けたくない知識を手に入れてっしまった。人生経験豊富になっちゃうよ。

 俺が手を付けたのを見てか、社長さんが口を開く。社長さんって…。

「どうだろう。私が町一番だと思うレストランなのだが…」

 直ぐに口に運んだステーキを飲み干し、口をナプキンで拭う。柔らかすぎて食べてる気がしねえよ…。それ以前に食べ始めと同時に喋りかけないでもらえるますか? ご飯中は黙って食べるって教わりませんでしたの?
 若干令嬢感が出てしまうが生憎そんな過去は持ち合わせていない。

「どうって言われても…人選が凄いですねとしか言えないんですけど…ほら、あの扉の近くの人。デカすぎないですか? ナニがとは言わないすけど」

 そう、デカすぎるのだ。マジでメロン。飛び越してバランスボール。は言い過ぎだが世界記録を狙えるほどのデカさを胸に携えているのだ。話題にあげない方が可笑しいとまで言えよう。マジでここどこだよ。食事の場じゃねえの?

 そんな言葉を聞き、リーンは微笑する。直ぐに近くの執事に声をかける。

「…彼女を出せ」

「はっ…」

 なんて言葉が聞こえる。おっと、声のボリューム壊れている方ですか? バチバチに聞こえてますよ?
 心の中で突っ込みながら微かに視線の強さが上がった彼女の退場シーンを眺める。こわ。俺、後で権力戦いで追いだされやしないだろうか。そんな事が頭に過る。
 海外ドラマの見過ぎかな? まあ、その流れで行ってしまうと俺ポジションのやつは最後に刺されるんだけどな。アッハッハー。マジで笑えねえな。優しくしよ。

 話題を変えるべく、口を開く。水みたいなステーキを食べたのに口の中はもう、カサカサの砂漠状態になってしまった。このレストランの煌びやかな装飾も影響してると思うけどな。個室でこの輝き具合…クラブかな? そんな印象を受ける。

「えっと、リーン社長。よろしければ俺がオッケーされた理由って聞いても良いですか?」

 食事の場で何ですけど。言葉を付け足す。
 社長も俺もどっちもどっちだろう。まあ、礼儀以前の問題だろうけどね。すまんが、俺が主役なので。礼儀は俺にある的なね。

 驚いたような表情になるがすぐに優男のような微笑に戻る。やっぱ怖いなこの人。

「分かった。けどその代わりアク君の敬語、無くしてもらって良いかな? 私は君と友達でいたいからね」

 友達?
 瞬間。俺の脳裏に大々的に強調された『友達』の文字が表示される。
 まさか友達ってあの学校帰りに思いつきでカラオケに行くやつ? いきなり深夜に集まって花火大会するやつ? 唐突に家に乗り込んでお泊まり会開催するやつ?
 そんな関係の友達を俺に御所望とな?

 今年一番の嬉しさが襲ってくる。隠しきれぬ高揚感は顔に出ているだろう。だって顔が熱いんだもの。
 なら、遠慮はいらないよね。

 素に戻す。まあ、戻す素なんて持ち合わせていないんだけどな。

「オッケー!! じゃ、俺はお前の事スズって呼ぶわ。リーンだけにな!!」

 上手いジョークだ。
 頬が緩むのをヒシヒシと感じながら羊の頭が目立つ料理に手を伸ばす。グロ可愛いの可愛いを取ったような料理だ。気になったので手を伸ばしたが…すぐ、首元に冷たい感触がくる。

 耳元で声がする。記憶を辿るに…さっき、スズと会話をしていた執事のようだ。

「リーン様。流石にこれは…」

 いつでもヤれますよ。そんな雰囲気を出しながら聞く。その声色は鉄を想像させる、冷たい物だった。内心ビクビクだ。
 対してスズは何かを考えるわけでもなく、ほぼノータイムで

「私の友達だ。そんな態度をとる奴は初めて見た。実力も、見た目も兼ね揃えている人に何が不服か。殺すぞ?」

 同じような冷徹さで、だがそれ以上の狂気を含ませて返事を返す。


「(俺が思うのも何だけどさ、この商会やばい奴しかいないんじゃないの? モーリも若干ヤバイオーラ出てたしさ…)」

 安定した生活と、身の危険。天秤に掛けて…














「君はやっぱ、センスがあるな! 水着か、水着か!! 水の中に来て行く衣服なんて誰も想像していなかったぞ!! よし、早速取り掛かろう1」

「お、おう。スッゲーよな。考えた奴…」

「何言ってるんだ、君が考えたのだろう!! 謙虚は謙虚でも悪い謙虚はダメだぞ! ぶっ殺すぞ!」

「えぇ…怖いよこの人…」

 ガンガンに酒に酔ったスズがテーブルに足を乗せ叫んでいた。こんな人だったなんて…。若干引いていた。


 食べ始めて30分程だろうか。酌でも交わそう、そう言ったスズが始まりだった。駄目だコイツ、酒に弱すぎる…。
 異世界とは言え未成年飲酒に抵抗のある、純粋人間である俺は飲むのに一瞬躊躇った間に飲み干し、止まっている俺の酌を奪い取って飲み干したのだ。どんだけ酒に耐性がないんだよ…。
 冷静になった頭で考える。それは他の人達も同じようで刃物を向けてきた執事も、バニーガールのチャン姉も。強いては控える屈強なイケメンも引きつった無表情を携えていた。

「よし、場所を変えよう。家にしよう! ここは上手いが量が多い! 誰が頼んだここまで多いとは聞いていないぞコンニャロ」

「目が見えないらしいのに元気だなこの人…。つか、多いのはスズが頼んだからじゃないの…?」

「…そうだったな、確かに私だな! よし、私たちは場所を移動する! 残った料理は食べるなり捨てるなり好きにしてくれ! じゃ!!」

 そう言って豪快にその場に倒れる。数秒と待たずに静かな寝息が聞こえ始める。マジで嵐だなこの人…。

「えっと…どうします? 執事さん…」

 取り敢えず聞いてみる。

「…執事に敬称は要りませんよアクさん。リーン様の酒癖は昔からですがここまでとは…楽しかったのでしょうね。後は私達が何とかします」

 よっこらしょっ、と眠っているスズ…誰だろ。リーンを抱え上げる。力持ちだな、この爺さん。流石執事まであるな。

「専属になったので住まいは商会の方になります。ヴェイル! 案内、お願いします。では、私はこれで…」

 そう言って屈強な男を呼び、爺さんは去って行った。
 残ったのは俺と、屈強な男ヴェイル。そして壁に佇む美男美女。光景だけでご飯いっぱい食べられそうです。登場人物じゃなかったら楽しかったんだろうな…。

 嘆くような表情を見せながら妙にニヤついているヴェイルの方を向く。絶対コイツヤバイだろ。

 ニヤついた表情のまま、まるで優男かのような村人服装から見える分厚い胸板をピクピクと震わせ、

「ねえ、ウィンドドラゴン倒したのってホント?」

 クリスマスプレゼントがある、と聞いたクリスマスの当日のような少年のような屈折なき良い笑顔を見せる。
 …あれ?

「ああ、本当だ。ほら、その証拠に…これ、牙」

 取り出し、渡す。受け取ったヴェイルはまるで少年のような目の輝きになり360度回して細部まで見る。

「スッゲー! スッゲーなぁ…スッゲー!! マジ? マジ? マジ!! アク、天才だな!!」

「お、おう。おう? そうだろ! 俺、天才だからな! 流石、お前目の付け所が違うな!」


 いきなり、持ち上げられプロレス技でも掛けられるのかな? 天地落としかな? と、内心冷や冷やしたが結果は逆。父と娘のような感じで、その場でぐるぐると回されただけに留まった。よかった、俺の三半規管が強くて…。
 結構な遠心力が掛けられている中、いつの日にか見た曲がる前の自分と重ね合わせる。

 少年心を忘れない良い男だった。
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