The other me 〜手乗りサイズの相棒〜

椎木唯

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第1章 祐也、部活入るってよ

第八回CT大会 決勝後

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八回目となるCT大会は大歓声の中決勝戦が終わった。

年に一度の周期で開催される大会は未だに全国から人が集まり、連なるようにして経済効果を生み出していた。

人のいない所に金は生まれないのだ。

どんな基準で開催地が選ばれているのかは今までの傾向から見て、とかでも予測がつかないので完全なカットの会社によりランダムだろう。



名前も聞いたことのない半島に何千万人もの国籍様々な人間がその歴史的瞬間を目に収めようと、集まっていく。

何度も言おう経済効果である。




その地を最大限に利用した自然あふれる会場は一年もの歳月を掛け、急ぎながら丁寧に、精神を掲げながら完成させた。

本来なら一ヶ月程前に開催国、開催地を文書で伝えられるのだがこの名も知らぬ半島だけは一年前…第七回が突如取り止めになった直後に文書で宣告されたのだ。
取り止めの理由は多々あるが…そこまで重要視する所ではない。

一日で稼いで稼ぎまくった開催国…島?は豊かになった自国を思いながら優勝者を見付ける。

そこには惜しみない大喝采の中、堂々とした表情で壇上に上がりトロフィーを受け取る優勝者の姿があった。

事前の登録の情報で分かっているのは十七歳の年齢と現役の女子高校生だと言う事だけだった。

…そんな事を知って何になるのだろうか。

一通り出場者についての情報を目に入れたのだがそんな疑問を抱き、抱いたまま大会は始まっていた。気が付けば落ちたら大惨事は免れない大き過ぎるモニターに個人情報ダダ漏れで表示されていた。

内心ドキドキハラハラしながら後でコッソリと謝罪の言葉と優勝賞金には到底及ばないだろうがある程度のお金は入れて渡そう。

人知れずそんな事を考えていた。



そんなハゲまっしぐらなストレスマッハ状態の半島の王を知ってかしらずか全国から集まった報道陣は様々な機器を使い、目の前の特ダネを激写しまくっていた。全く関係がなかった。

等の本人である彼女は八回開催された大会の中で、二度目の日本人の優勝者との事もあり話題性は十分であった。
会場の上空ではドローンやヘリコプターが飛び交い、上昇気流じみた猛風が生じていた。
台風が発生するのも時間の問題だろう。

空を右往左往し、これでもかと受賞の瞬間を生中継していた。視聴率は全世界平均で30%超えと記録していた。地域を限定するがとある場所では60%を超えていた場所もあったらしい。



優勝者にはトロフィー以外にもいくつか景品が授与される。
第四回目から実施された賞金システムとは違い、カットの会社が優勝した者だけに作った特別なそれは参加者を奮い立たせるのには十分以上の効果を発揮していた。

彼女の半分の大きさ程あるトロフィーを必死に抱え、もう片方の手には小さなメガネケース程の箱がトロフィー以上に大切そうに握っていた。

馬鹿でかい紙に一千万と書かれた賞金も、アホみたいにデカイトロフィーも彼女にとってしてみれば実際の重さはそれ相応だが片手に収まっている物に比べてみれば重かった。重く、心を縛っていた。

中身は事前に公開されていた。


カットを新時代に導く遠距離武器ーー弓である。

本来なら第十二回に公式に発表される新武装なのだが…先行入手であった。

その完成品一号である。


何度も言おう。カットは子供用に作られたおもちゃである。
おもちゃである遊ぶ人間は例え大人であろうと幼少期を思い出し、戯れている時間だけは子供に戻ったような感覚になる。

そんな感覚の延長戦で全世界に販売する前に優勝者の権利として一番最初に遊ぶ権利が与えられたのだ。

公開当初それは世界に多大な反響を生んだ。


生んだと言っても「その武器でどんな戦い方が出来るのか」「威力はどんなものか」「CTで操作…難易度はどんなものか」等の疑問が多数だった。
ネット上ではカットが公式に発表したサンプル画像が拡散され、大いに期待を煽った。

煽ってからの…優勝商品である。



優勝商品が新武器の先行入手だったのだ。
これまでの近距離武器で脳筋スタイルが主流だった今に新たな風を起こす一風となり、時代の先頭に立てる。ファッションリーダー的存在になれるのだ。
だがそう考える人間は…少数だった。


誰もが揃ったようにどんな使い心地なのかだけを想像していた。
弓と言う新たな手法が加わったのだ。今までやっていた戦い方を一新させなければならない。

それは戦いにおける定石が一新される。時代の移り変わり目である。
そんな一大イベントに不純な感情を抱く人間は少なかった。

だがその優勝商品は近日中に発売を決定しているのだ。

その点に不満を覚える層は一定数存在し、そんな悩みを解決するのがカットであった。

第一回から四回は事前に新装備の告知はされておらず、取得した人物が大会などで使用していなかった為情報が無い。
第五回は生きる伝説の敗北が衝撃的すぎて武装に関しての情報が埋もれてしまっている。

そんな状況だが第六回の武装に関しては完全の情報を公開していた。

公開された情報を見るとそれは市販された物より出力が二割り増しであった。

二割。

たかが、と思うが実際に対峙してみるとそのチートっぷりが分かると思う。

同装備であれば火力の差は圧倒的有利に立てる。

優勝商品として他とは差別化を、それが狙いなのだろう。
だからこぞって参加するのだ。





一方、彼女ーー城ヶ崎美玲(じょうがさき みれい)は熱気あふれる会場から逃げるように後にしていた。
向かう先は自宅である。

襲いかかるようにカメラを向けてきた人達から逃げに逃げ、優勝者としてその日一日だけは交通費全てが無料になる、その制度を最大限に使いタクシーに乗り込む。

「あ、そう言えばここ外国だった…」

「オキャクサンユウショウシャネ? ハジメテミタヨー。イキサキドコネ?」

お客さん優勝者ね?初めて見たよー。行き先どこね?

既に優勝者である美玲の顔は全世界規模で配信され、大会が終わって間もない今、既に運転手に知られている現状であった。

片言であったが聞き慣れた日本語により安心感を得たのか息をふぅ、と吐き出し呼吸を整えた。

「空港…かしらね?」

「クウコウ?カエルアルカ?モットミテッテヨー」

「何この片言日本語…」

どこか可愛げのあるソレに気を取られてしまうが美玲自身、ここに居座る意味は大会以外で存在しないのだ。
特にこれといった有名なスポットがある訳はなく、純粋な自然しか取り柄のない場所に居座る必要はないのだ。

妙に辛辣な事を考えながら発進したタクシーから見える風景を目で追い掛けていた。
暗に「コッチは風景見るのに忙しいから話し掛けないでね」オーラを出していたのだが…流石外国。アジア系の顔の作りに親近感を覚えているのかそんな事御構い無しに話し続ける。

話し続ける片言ドライバーと終始無言の女子高生。異様な空間であった。
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