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学園生活
18 毛布王子はあきらめない。
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それはまるで天使が手をさしのべた様だった。
無様に尻餅をつき、メシュリーに言葉を吐いた物の言い返せない屈辱の中に光が差し込んだのだ。
「カーティス様、まずは立ち上がりましょう!
授業に遅れちゃう!お怪我はありませんか?」
そう言って煌めく光を纏い、手をさしのべる天使。
ピンク色に輝く髪の毛、不要なものを感じさせない美しいフォルム、慈愛さえ感じる微笑み。
窮屈で狭い鳥籠のような世界に僕に自由を与えてくれる天使。
そうだ、ここから僕を救いだしておくれ…
僕は熱に浮かされたようにその美しい指先に向かって手を伸ばす。
「そこまでですわ!アンジェ様。淑女が簡単に殿方へ手をさしのべてはなりません。カーティス様も、立ち上がるくらいはご自分のちからでなさいませ。まさか、赤子のように手を取らねば立ち上がれぬ。などとはおっしゃいませんよね?」
おのれ!邪魔なメシュリー!いつもいつも小言ばかりで…
「とっ、当然だ!アンジー、すまんな。世話をかけた。」
慌てて立ち上がると、やや心配そうな顔をしてこちらを見上げるアンジー。やはり天使だ。
「そんな…私こそでしゃばってしまってごめんなさい。」
ああ、うつ向かないで!かわいい顔が見れぬではないか。
それにしても、なんといじらしい。
やはりアンジーは中身もかわいいな。
「そうですよ。アンジェ様。お気をつけくださいませ。」
そんな言い方をしなくてもよいではないか。やはりメシュリーは意地が悪い。
「申し訳ありません。ご指摘ありがとうございます。」
あああ!そんな奴に礼など不要だというのに!
後ろからバタバタと音がする。
振り返るとオリバーとオスカーの姿が見えた。
「カーティス様!こちらにおいででしたか!」
最初はオスカーが、そのすこし後にオリバーが息も絶え絶えになってやってきた。
「うむ。ここにいる。」
そしてふと考える。
「アンジー、僕の事はなんて呼ぶのかな?」
君のかわいい唇から、僕の愛称を呼んでくれ。
君にしか許していない。僕の愛称…
ところが、アンジーは少し悲しそうにうつ向いてしまった。何故だアンジー!
アンジーはふるふると首を左右にふると
「カーティス様?ここは人目が多すぎるのです。それに私ごときが愛称でお呼びするなどとてもでないけれど…」
なんということだ!
今まであんなに近くにいたというのに、身分など関係ないと言っていたのに…
こんなことを吹き込むのは決まっている。
ぐっとアンジーを抱き寄せて、忌々しいメシュリーを睨み付ける。
腕の中のアンジーが、驚いて何かを言っているが、後でゆっくり聞いてやろう。それよりも今はコイツだ!
「メシュリー、アンジーに余計なことを吹き込みおって…今度こそ許さぬぞ!」
「何の事かしら?愛称の事でしたら、アンジェ様の方が余程立場がわかってらっしゃるようですが。」
「僕が許可したのだから良いに決まっているではないか!そなたにどうこう言われる問題ではないわ!」
メシュリーは眉をひそめて扇を広げると心底嫌そうに口を開いた。
「あら嫌だ。カーティス様までそのような事をおっしゃっては他へ示しがつきませんわ。一から教育課程をやり直した方がよろしいんじゃなくて?」
「なっ…不敬だぞ!」
「私は貴方の婚約者。婚約者をいさめるのも役割の一つでございますので。これ以上言って分からぬようであれば、陛下にご報告致します。」
なっ…父上に報告されては不味い!
しかし…
「お、お話中失礼いたします!あの!私からもカーティス様へ分かるように申し上げますので、この場はどうかお納めください!」
おおお!流石天使!
しかし、このような危険な場所へ来てはいけない。こんな醜い所へ居てはいけないんだ…
メシュリーはパチンと扇を閉じると
「わかりましたわ。この場は引きましょう。しかし、貴女もお気をつけなさい。」
「ありがとうございます。」
だから、アンジェ!君がそんな事をする必要なんてないんだ!
「カーティス様?私折角愛称で呼ぶ許可を頂いたのですから、二人きりの時で使いたいわ!ダメかしら?」
なんと、なんといじらしいのだ!
「ああわかった!このような人目が多い場所で使うべきではなかったな!流石だアンジー!」
メシュリーは、はぁ…と言いながら扇で額を押さえたが、すぐに向き直ると
「ひとまずはそれで結構ですわ。さて、そろそろ移動しなければ間に合いません。参りましょう。」
そう言うと、他の女生徒を伴って去っていき、辺りにはオスカーとオリバーしか居なくなってしまった。
「さぁ、私たちも参りましょう?カート様!」
うおお!確かにこのようにこっそり呼ばれた方が燃えるではないか!
流石だアンジー!
「うむ!急ごう!」
意気揚々とアンジーの肩を抱いて歩き出す…と
「カート様、少し恥ずかしいので少し離れて頂けると嬉しいです。」
なっ…
「この胸の鼓動が聞こえてしまうと思うととても…」
なんて可憐な!!
ほほを染め、両手を頬にあてて恥ずかしがる姿もまた愛らしい!
「よい。すまぬな、許可もなく触れてしまって。」
するとアンジーはふるふると首を左右にふり、こちらを見上げると
「いいえ、私から触れられませんのでいいんです…」
そう言ってうつむいてしまった!
「そ、それでは参りましょう?」
振り切るように先に歩みを進めてしまった。
ああ!行動一つ一つが特別だ!
僕の妃にはアンジーが必要だ!
無様に尻餅をつき、メシュリーに言葉を吐いた物の言い返せない屈辱の中に光が差し込んだのだ。
「カーティス様、まずは立ち上がりましょう!
授業に遅れちゃう!お怪我はありませんか?」
そう言って煌めく光を纏い、手をさしのべる天使。
ピンク色に輝く髪の毛、不要なものを感じさせない美しいフォルム、慈愛さえ感じる微笑み。
窮屈で狭い鳥籠のような世界に僕に自由を与えてくれる天使。
そうだ、ここから僕を救いだしておくれ…
僕は熱に浮かされたようにその美しい指先に向かって手を伸ばす。
「そこまでですわ!アンジェ様。淑女が簡単に殿方へ手をさしのべてはなりません。カーティス様も、立ち上がるくらいはご自分のちからでなさいませ。まさか、赤子のように手を取らねば立ち上がれぬ。などとはおっしゃいませんよね?」
おのれ!邪魔なメシュリー!いつもいつも小言ばかりで…
「とっ、当然だ!アンジー、すまんな。世話をかけた。」
慌てて立ち上がると、やや心配そうな顔をしてこちらを見上げるアンジー。やはり天使だ。
「そんな…私こそでしゃばってしまってごめんなさい。」
ああ、うつ向かないで!かわいい顔が見れぬではないか。
それにしても、なんといじらしい。
やはりアンジーは中身もかわいいな。
「そうですよ。アンジェ様。お気をつけくださいませ。」
そんな言い方をしなくてもよいではないか。やはりメシュリーは意地が悪い。
「申し訳ありません。ご指摘ありがとうございます。」
あああ!そんな奴に礼など不要だというのに!
後ろからバタバタと音がする。
振り返るとオリバーとオスカーの姿が見えた。
「カーティス様!こちらにおいででしたか!」
最初はオスカーが、そのすこし後にオリバーが息も絶え絶えになってやってきた。
「うむ。ここにいる。」
そしてふと考える。
「アンジー、僕の事はなんて呼ぶのかな?」
君のかわいい唇から、僕の愛称を呼んでくれ。
君にしか許していない。僕の愛称…
ところが、アンジーは少し悲しそうにうつ向いてしまった。何故だアンジー!
アンジーはふるふると首を左右にふると
「カーティス様?ここは人目が多すぎるのです。それに私ごときが愛称でお呼びするなどとてもでないけれど…」
なんということだ!
今まであんなに近くにいたというのに、身分など関係ないと言っていたのに…
こんなことを吹き込むのは決まっている。
ぐっとアンジーを抱き寄せて、忌々しいメシュリーを睨み付ける。
腕の中のアンジーが、驚いて何かを言っているが、後でゆっくり聞いてやろう。それよりも今はコイツだ!
「メシュリー、アンジーに余計なことを吹き込みおって…今度こそ許さぬぞ!」
「何の事かしら?愛称の事でしたら、アンジェ様の方が余程立場がわかってらっしゃるようですが。」
「僕が許可したのだから良いに決まっているではないか!そなたにどうこう言われる問題ではないわ!」
メシュリーは眉をひそめて扇を広げると心底嫌そうに口を開いた。
「あら嫌だ。カーティス様までそのような事をおっしゃっては他へ示しがつきませんわ。一から教育課程をやり直した方がよろしいんじゃなくて?」
「なっ…不敬だぞ!」
「私は貴方の婚約者。婚約者をいさめるのも役割の一つでございますので。これ以上言って分からぬようであれば、陛下にご報告致します。」
なっ…父上に報告されては不味い!
しかし…
「お、お話中失礼いたします!あの!私からもカーティス様へ分かるように申し上げますので、この場はどうかお納めください!」
おおお!流石天使!
しかし、このような危険な場所へ来てはいけない。こんな醜い所へ居てはいけないんだ…
メシュリーはパチンと扇を閉じると
「わかりましたわ。この場は引きましょう。しかし、貴女もお気をつけなさい。」
「ありがとうございます。」
だから、アンジェ!君がそんな事をする必要なんてないんだ!
「カーティス様?私折角愛称で呼ぶ許可を頂いたのですから、二人きりの時で使いたいわ!ダメかしら?」
なんと、なんといじらしいのだ!
「ああわかった!このような人目が多い場所で使うべきではなかったな!流石だアンジー!」
メシュリーは、はぁ…と言いながら扇で額を押さえたが、すぐに向き直ると
「ひとまずはそれで結構ですわ。さて、そろそろ移動しなければ間に合いません。参りましょう。」
そう言うと、他の女生徒を伴って去っていき、辺りにはオスカーとオリバーしか居なくなってしまった。
「さぁ、私たちも参りましょう?カート様!」
うおお!確かにこのようにこっそり呼ばれた方が燃えるではないか!
流石だアンジー!
「うむ!急ごう!」
意気揚々とアンジーの肩を抱いて歩き出す…と
「カート様、少し恥ずかしいので少し離れて頂けると嬉しいです。」
なっ…
「この胸の鼓動が聞こえてしまうと思うととても…」
なんて可憐な!!
ほほを染め、両手を頬にあてて恥ずかしがる姿もまた愛らしい!
「よい。すまぬな、許可もなく触れてしまって。」
するとアンジーはふるふると首を左右にふり、こちらを見上げると
「いいえ、私から触れられませんのでいいんです…」
そう言ってうつむいてしまった!
「そ、それでは参りましょう?」
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