スマホ依存症な俺は異世界でもスマホを手放せないようです

寝転ぶ芝犬

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第351話 必要な戦力は

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「9大ダンジョンの解放…しかしそうなるとどうやったのかと他国から…他の魔神から圧力かかりませんか?」

「問題ない。すでに海神、氷神、神剣はこちらの味方だ。」

「ああ、そういえば確かに。それから妖精神もこっちの味方についてくれると思いますよ。俺がいることによる彼らのメリットは大きいですから。」

 それにおそらく神魔もこちらについてくれるだろう。つまりすでに過半数の魔神を味方につけている。ミチナガの地道な努力もこうして9大ダンジョンの解放につながっているのだ。法国の方も心配いらないとのことで本当に絶好のタイミングだ。

「それにしてもゾンビ騒動とはな。どうせ奴らのことだ。何かの実験をしていてそこからパンデミックでも起きたんだろうな。」

「あ、あはは……」

 おそらく…いや間違いなくヴァルドールの影響だろう。以前火の国に進行してきた10万の法国の兵を眷属に変えたのが各地に広がったのだ。どうやら大問題になっているようだが、法国の実験の影響ということで済んでいるらしい。

「こちらでも部隊を編成するがミチナガ、お前の方でも多少揃えておけ。これは英雄の偉業としても語り継がれるものなのだからな。ただし最低でも魔王クラスの実力者でないと役にはたたん。それに対人よりも対モンスターに特化した実力者だ。」

「そうなるとぐっと少なくなるといますか…そもそも俺そんなに戦力いなくて。多分ナイトとヴァルくんだけしか連れていけないと思いますよ。他に連れていけそうなのは…ミラルたちくらいかな?せいぜい5人…そんなもんですね。」

 蛍火衆やイシュディーンはいるが、イシュディーンはすでにセキヤ国に戻った。これから呼びつけることもできるがセキヤ国の防衛のために残しておきたい。蛍火衆も似たような理由でアンドリュー・ミチナガ魔法学園国の防衛のために残しておきたい。それに彼らは対人特化だ。

「まあ少数精鋭が望ましいだろうな。基本的にモンスター討伐は私と12英雄たちが行う。魔王クラスの実力者を連れていくのはお前の護衛のためだ。魔王クラスでもダンジョンに近づけば時間稼ぎくらいにしかならん。」

「どんだけ危険なんですか…まあ自分の身はナイトかヴァルくんに守ってもらうようにお願いします。あ、それからヴァルくんの正体を隠さないと連れていけないですね…」

「12英雄たちにはすでにヴァルドールの存在は知られている。中には肩を並べて戦うことを嫌悪するものもいる。まあそういったものたちはこの国の防衛に残ってもらう。3人を国に残し、もう3人をダンジョン周囲に残し、6人を連れていく予定だ。12英雄以外にも魔帝クラスの実力者は我が国にもいる。彼らもヴァルドールのことは気に入らないだろうが…なんとかお前の方でうまくやってみてくれ。」

「わかりました。まあ本人に相談してみます。多分変装とかもできる…と思いますし。」

 準魔神クラスであるヴァルドールの戦力はこの9大ダンジョン攻略には欠かせない。本人を説得し、変装までさせてなんとか連れて来るべきだ。ナイトはこんな面白そうな戦いの話に乗らないはずがない。ナイトの説得は簡単そうだ。

 その後もいくつか打ち合わせをしたのちにミチナガは帰路についた。ミチナガは帰るとすぐにナイトとヴァルドールを招集してアレクリアルからの話をした。反応はミチナガの予想通りだ。

「それじゃあナイトは行くの決定で良いな。」

「ああ、血が滾る。」

『ムーン・楽しそうな表情しちゃって。じゃあ冒険者ギルドの方にはもう顔を出せないって伝えないとね。』

「その辺はよろしく頼んだ。それでヴァルくんは…」

「特に行かなくてはならない理由もありません。別に戦う理由もありませんからね。それよりも新しい作品を作らねば…」

 ナイトは即決で決まったが、ヴァルドールはやはり乗り気ではない。素性を隠してまで戦いに行く理由がない。別行動でモンスターの間引きをしてもらっても良いが、おそらくそれはナイトがやりたがるだろう。そもそも行きたくないのにモンスターの間引きを頼むのもおかしな話だ。

 ミチナガは頭を回転させてヴァルドールを説得する方法を考える。しかしそんなことはなかなか思いつかない。そんな時ふと目に入ったムーンを見て思いついた。

「ヴァルくん。今回目的にしているのは9大ダンジョンの一つ、巨大のヨトゥンヘイムだ。全ての生物が通常の数倍、数十倍の大きさになる。」

「ええ、存じています。昔はそこからモンスターを連れ出して周囲の国を襲わせておりました。若気の至りです。」

 なんという迷惑なことをしているのだろうか。しかしヴァルドール本人が暴れるよりかは数百倍も安全だろう。そういえば英雄譚の中には突如現れた巨大なモンスターと戦う英雄の話もあった。モンスターの出所が不明で、実は創作ではないかという説もあったがこういうことなのだろう。

「まあそれはさておき…大人と子供では体の大きさが全然違うよな?倍くらいは違う。つまり周囲のものの大きさの感じ方も違うんだ。全てのものが巨大に感じる。」

「…確かに。」

「だからそこをもっと大げさにするんだ。自分の大きさを蟻くらいの大きさに考える。そうなるとどうなる?小さな水溜りは巨大な湖になり、石がゴロゴロしているところは洞窟…いや要塞だ!庭の芝生は樹海になり、小さなキノコは天然の傘になる。」

「全てのものの大きさがまるで違う世界…見知った庭が大自然に変貌する!おお!創作意欲が湧いて来る!」

「それを巨大のヨトゥンヘイムなら体験できる!想像よりも実体験は強いぞ。実体験から創作を加えて物語を完成させるんだ。」

「最高だ…我が王よ。今回のお話、この私も同行させていただきます。」

「ありがとうヴァルくん。まあヴァルくんは基本的に俺の近くで周囲を観察しながらスケッチして、俺のことを守ってくれれば良いから。ナイトは好きに動いて良いよ。」

 うまいこと説得に成功した。感謝の意味を込めてムーンの頭を撫でてやるが、ムーンはなんのことかまるでわからない。単純に子供よりも小さいムーンの姿を見て思いついただけなのだが、ミチナガはとにかくムーンを褒める。

「それじゃあこのことを他の二人にも言っておかないとな。」




「ということで俺とナイトとヴァルくんは近いうちにここを出るけど二人はどうする?」

 翌日、アンドリューとメリアの二人も揃った朝食の際に二人の今後を訪ねる。二人も忙しそうにしているため、こうして話ができるのは朝くらいしかないのだ。二人は朝食を頬張りながら予定を確認する。

「私は釣り仲間がまた増えたので今度その方達と釣りに行く予定です。先生ともまた行きたかったですが、まあお互いに忙しい身なのでそのうちゆっくりできる時にまた釣りをしましょう。ただ先生たちが出かけている間に…さすがに戻らないといけませんね。では先生の出発の日が別れの日になることでしょう。」

「私の方は化粧教室を開いたり、幾人かの貴族たちから招かれたりしているのでそちらに赴く予定です。しばらくはこの英雄の国周辺を飛び回ることになりそうです。もう明日には列車で移動しないといけなくて…」

「それじゃあメリアとは明日でしばらくお別れか。アンドリュー子爵もこっちの出発の日に話せるかどうかはわからないね。でもみんなと会ってこうしてゆっくりと話せてよかったよ。またそのうち集まれそうなら集まろうか。」

 どうやらもう別れの時が近いらしい。メリアは明朝の列車で移動するのでそこでお別れだ。アンドリューも基本的に毎日なんかしらの予定が埋まるのでもうなかなか会えないだろう。今日の夜にお別れ会でもやれれば良いが、メリアもアンドリューも夜は忙しいようだ。

 だから事実上この朝食がみんなで集まれる最後の朝食だ。今のうちに話しておきたいことをみんな話しておく。つい思い出話に花が咲きそうになるが、ミチナガは忘れてはならないことを言っておかなくてはならない。

「アンドリューさん。ミラルたちについてだけど、彼女たちは元々俺の護衛だからこっちに引き戻しちゃっても良いかな?」

「そういえばそうでしたね…私も長く彼らと共にいたので忘れていました。ええ、もちろん先生の元へお返しします。むしろこれまで彼らを護衛に貸し出してくれましてありがとうございます。」

「俺は遠くに行っちゃっていましたからね。むしろこれまで彼らをありがとうございました。それで…今あいつらはどうしてんだっけ?ポチ、今あいつらどうしてんの?呼べる?」

『ポチ・う~~ん…それがちょっとよくわかんないんだよね。白獣たちが何やら慌ただしくしているみたいなんだけど、何をしているか教えてくれなくて……ミラルたちにもこっちに戻れないか何度か聴いているんだけど、はっきりとした答えがもらえなくて。正直呼び戻すの難しそう。』

「なんじゃそりゃ…まああいつらが動くとしたら預言関連なんだろうけど……預言に関しては詳しいこと教えてくれないしな。どうすっかなぁ…まああいつらいなくてもヴァルくんいるからなんとかなるか。まあ来れるようなら来させて。無理なら無理で別にいいや。彼らにも使命があるんだから仕方ない。それに魔王クラスじゃロクな戦力にならないような危険地帯だしな。」

 まともな戦力として換算できるのが魔帝クラスからとなるならミラルたちでは正直力不足だろう。それなら下手に足手まといを連れて行かない方が良い。そう考えると準魔神クラスを2人も抱えているミチナガはものすごい戦力だろう。

「ナイトもそうだけど、本当にヴァルくんには感謝しているよ。今回も半ば無理やり連れていくことにしたしさ。それにヴァルくんが法国に眷属を送り込まなかったら法国の侵略の手が伸びてきてダンジョンどころじゃなかったし。今も眷属が暴れているおかげでこうしてダンジョンに気兼ねなく行けるしさ。」

「眷属がですが?……もう私の眷属はいないかと思いますが。あの眷属は即席の眷属でして、死者に我の魔力を込めて使役するものです。魔力供給はすでに断ったので、これだけの時間が経てばすでに眷属は一人残らず消えているはずです。」

「え?そうなの?…それじゃあ今のゾンビ騒動ってマジで法国での研究施設から漏れた何かが原因ってやつか。うっわぁ…そんなのがこっちにきていたらえらい目に会っていたよ。」

 どうやらヴァルドールの騒動を誤解していたらしい。考えてみれば10万もいたとはいえ、そんな眷属が各地に広がって騒動を起こすのは少しおかしい。おそらく眷属の騒動で何かしら起きたのだろう。その何かしらはよくわからないが、まあそのおかげでミチナガはこうしてダンジョンに向かえる。

 そんな偶然に感謝しつつみんなでの最後の朝食を終える。ミチナガもダンジョンに向かう前にやるべきことをやっておかなくてはならない。ミチナガだってなかなかに多忙なのだ。

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