3 / 17
⑶ 竹取の吉太くん
しおりを挟む吉太はおばあちゃんにあてがってもらった自分の部屋に、小さなパンダのぬいぐるみが落ちてることに気がついた。
「??最初っからあったかな?」
それともおばあちゃんが置いたのだろうか。
拾い上げると、毛並みがすごくふかふかで気持ちが良かった。
「かわいい。ん?手になんかついてる。…『押す』?」
ああ、スイッチがついてるヤツか、喋ったりするのかな?と思い、手を押すと、ぷにっと柔らかかった。
スイッチの手応えは無いけど、パンダは喋り出した。
「裏の竹藪には金銀財宝が採れる竹があるよ」
「…え?」
吉太は思いもよらないことを言ったパンダに驚いた。
もう一回手を押してみる。
「うりゃの竹藪には金銀財宝が採れる竹があるよ」
「うりゃ…?」
もう一回手を押す。
「裏の竹藪には金銀財宝が採れる竹があるよ」
「ああ、気のせいか…。金銀財宝の採れる、竹…?」
それってどれくらいなんだろう…父親の借金が返せるくらいかな…?
吉太の脳裏にはそんな考えががよぎる。
お金があれば、家にも帰れるのだ。
「…って、そんな都合のいい話、あるわけない、よな…」
パンダのぬいぐるみは接触不良なのか、たまに手を押しても反応しないこともある。
何種類かのバージョンを録音してあるのか、順番がちょっと違う文章で喋ることもあった。
手触りが気持ちよくてついつい吉太は何度もパンダの手を押してしまった。
そして何故か温かく感じるぬいぐるみと、吉太は一緒に寝た。
すべすべでふかふかで気持ちが良かった。
~~~~~~~~~~~~~~
「え~~!!吉太くんと同衾できるなら私がいけば良かったぁぁぁ!」
吉太の部屋の窓が覗ける塀の上から、かぐや姫はヒソヒソ声で言った。
あらかじめ覗けるようにカーテンは少しあけてあった。
「かぐや姫だったら無理でしょ」「吉太くん怖がると思う」「燃やされちゃうかも」
吉太の部屋のにいるパンタを除く、3匹のパンダちゃん達が口々に言う。
「失礼な!一斉を風靡したお人形スタイルなんだからね!」
そう言いながらかぐや姫は塀の上でパンダちゃん達にダイブした。
「もふもふ!もふもふ!」
「アァ!かぐや姫!お尻はダメだよぉ!」
餌食となったパンジは赤くなって嫌がるが、塀の上が狭くてなかなか避けられず、かぐや姫に蹂躙されてしまう。
「もふもふ!もふも…スヤァ…」
「かぐや姫?」「あー、夜遅いから」「僕たちもねよねよ」
かぐや姫を担いで撤収をパンダちゃん達が決めた。
「みんなぁ!まってよぉ~~!」
その後ろからタフタフタフタフと、吉太の部屋を、窓から抜け出して走ってくるパンタの姿があった。
~~~~~~~~~~~~~
吉太は竹藪の入り口に立っていた。
朝起きたらあの小さいパンダのぬいぐるみは無くなっていて、おばあちゃんに聞いても知らないと言われた。
夢だったのかな…?とも思ったけれど、何度も繰り返し聞いたあの言葉が気になって仕方なくて、ついついここに来てしまった。
「金銀財宝が採れる竹…」
呟いて、竹藪の中に目を凝らすと、看板が見えた。
「え?看板?」
吉太は竹藪に分け入ってその看板に書いてあることを読んだ。
「『光る竹、こちら⇨』」
矢印は竹藪の奥を指していた。
矢印の方向を進むと、また看板が出てくる。
『金が採れる竹はこっち⇨』
その通りに進むと『金銀財宝までもう少し⇨』と言う看板があった。
そうしてついに、『光る竹、これ⇩』という看板と共に、明らかに普通のものとは違う竹を見つけた。
「すごい……光ってる…」
中に高輝度のLEDライトでも仕込んでいるのか、というくらいその竹の根本は光り輝いていた。
じっと見つめていると眩しく感じるくらいだ。
そして、その竹の近くには鉈が置いてあった。
吉太にとっては、確かこれは鉈というはものだったはず、くらいの知識くらいしかなかった。
だが、ご丁寧に『鉈。これを使って切る』と書いてある紙の上に乗っていたからわかった。
「鉈なんて使ったことないし、竹なんて固いもの切れるかなぁ…」
吉太は不安だったが、ものは試しと鉈を持って竹に打ち付けてみた。
すると、驚くほど手応えなくスパリと竹が切れた。(月テクノロジー製の超高性能鉈だった為)
驚き目を見開いた吉太は、切れて倒れていく竹に、『ココを切る』という文字とラインがあることに気がついた。自分の切った位置の10cm程上だった。
「え?」
よく見ようと地面に落ちた竹に目線を向けると、コロリと切れた断面から何かが転がり落ちた。
小さな生首だった。
完。
「かっ、かぐや姫ぇぇぇ!」「た、大変だ!」「拾って!」「くっつけてぇぇぇぇ!!」
一瞬物語が終わったような錯覚に囚われた吉太だったが、その目の前にわらわらと、どこかで見たぬいぐるみが姿を現した。
「かぐや姫ぇぇ!」「いきかえってぇぇ!」「竹ドックに入れて!」「かぐや姫ぇぇぇ」
パンダのぬいぐるみ達はものすごく焦って、生首を回収し、竹の中の残っている体にくっつけている。
「前後ろ逆じゃない?」「うそ?」「ちょっと一回外して!」「この向きで大丈夫!竹ドック起動!」
自分が切ったはずの竹がみるみるうちに伸びて行く様を後目に、吉太は絶叫し、逃げた。
6
あなたにおすすめの小説
ホントのキモチ!
望月くらげ
児童書・童話
中学二年生の凜の学校には人気者の双子、樹と蒼がいる。
樹は女子に、蒼は男子に大人気。凜も樹に片思いをしていた。
けれど、大人しい凜は樹に挨拶すら自分からはできずにいた。
放課後の教室で一人きりでいる樹と出会った凜は勢いから告白してしまう。
樹からの返事は「俺も好きだった」というものだった。
けれど、凜が樹だと思って告白したのは、蒼だった……!
今さら間違いだったと言えず蒼と付き合うことになるが――。
ホントのキモチを伝えることができないふたり(さんにん?)の
ドキドキもだもだ学園ラブストーリー。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
転生妃は後宮学園でのんびりしたい~冷徹皇帝の胃袋掴んだら、なぜか溺愛ルート始まりました!?~
旅する書斎(☆ほしい)
児童書・童話
平凡な女子高生だった私・茉莉(まり)は、交通事故に遭い、目覚めると中華風異世界・彩雲国の後宮に住む“嫌われ者の妃”・麗霞(れいか)に転生していた!
麗霞は毒婦だと噂され、冷徹非情で有名な若き皇帝・暁からは見向きもされない最悪の状況。面倒な権力争いを避け、前世の知識を活かして、後宮の学園で美味しいお菓子でも作りのんびり過ごしたい…そう思っていたのに、気まぐれに献上した「プリン」が、甘いものに興味がないはずの皇帝の胃袋を掴んでしまった!
「…面白い。明日もこれを作れ」
それをきっかけに、なぜか暁がわからの好感度が急上昇! 嫉妬する他の妃たちからの嫌がらせも、持ち前の雑草魂と現代知識で次々解決! 平穏なスローライフを目指す、転生妃の爽快成り上がり後宮ファンタジー!
黒地蔵
紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。
※表紙イラスト=ミカスケ様
児童絵本館のオオカミ
火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
大事なのは最後まで諦めないこと——and take a chance!
(also @ なろう)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
