月星人と少年

ピコ

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⑷ 首飛んで地固まる

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 吉太はあまりの恐ろしさに、帰宅すると同時に高熱を出し、昏倒した。

 三日三晩うなされ、起きた頃には夢だったかな?と思うようになった。
 だって、何から何までそんなこと起こるはずがないのだ。

 金色に光る竹、動いて喋るぬいぐるみ、そして首の切れた小さな女の子。
 最後のは特に、考えるだけでゾッとした。
「僕が、殺しちゃったの……?」
 あの時の情景がフラッシュバックしてどうにかなりそうだった。


 だけど、パンダのぬいぐるみ達は一生懸命に生き返らせようとしていた。
 あれはどう考えても人間じゃない。それだったら死ななかったりするんじゃないか?
 でも首を切られたら流石に…。

 そんなふうに悶々と考えて、1週間後吉太は光る竹の元にまたやって来てしまった。


「光る竹…やっぱりある。夢じゃなかったんだ…」
 ぎゅっと吉太の胃が痛くなる。あの女の子はどうなっただろうか?

「あ!吉太くん!!わーーーい!!」
「あ、かぐや姫!」「まだくっついたばかりなんだから!」「待って待って!」「大人しくしてないと!」
 シャカシャカという草をかき分ける音と共に、小さな存在達が現れた。

「ひ、ひひゃぁぁぁぁ!」
 吉太は叫んで、凸凹の地面でよろめいて転んだ。
 そこに、かぐや姫が飛んで、ぽしんとお腹あたりに乗った。
「吉太くん!私のこと拾って!育てて!」
 かぐや姫は精一杯のキメ顔をして見上げた。きゅるん。

 でも艶やかで足元まであった髪の毛がオカッパになっててちょっと心許ない。
 首はつながったけど髪までは無理だったから仕方がなかった。
 でも、先輩の時代だったらとんでも無いスペックダウンだが、現代の地球ではおかっぱでも問題ないはず!
 きゅるんきゅるん!目をウルウルさせて精いっぱいかぐや姫は見上げた。

 だけどそれは吉太には通用しなかったようだ。
「ひぃ!は、離れろ!気持ち悪い!」
 そう言ってパシッと振り払われたかぐや姫は、「あ!」っと、取れそうになった頭を抑えて転がり落ち、パンダちゃん達にキャッチされた。

 あまりの言われように、かぐや姫はショックを受けた。
「なにそれ…。私、死んでた方が良かったってこと…?」
 かぐや姫は、間違えて首を切ってしまった吉太がそれを気にしてると思っていた。
 だから吉太が現れた時に、元気な姿を見せようと走ってきたのだ。
 ぶわっと、涙が出た。
「あ、かぐや姫…」「違うよ、生きててよかったよ」「死んじゃやだよ」「もう気にしないで。違う人間に拾って貰おう?」
 ぼろぼろと涙を流すかぐや姫をパンダちゃん達は囲んで、慰める。

 吉太はそれを見て言った。
「あ、ち、ちがうんだ。ごめん。生きてて良かったって思ってるよ」
 グスッ、グスッと泣き腫らした目をかぐや姫はこちらに向ける。
「ほんとう…??」
 吉太は頷いた。それは紛れもなく本当だ。心の底からホッとしている。
 泣いているかぐや姫はよく見ると、テレビの心霊特集とかで見るような動く人形ではなく、小さな小さな子供のような姿をしている。
 幽霊や妖怪みたいな怖いものではないのかもしれない、とぬいぐるみに慰められているのを見て思った。
「君は、なんなの?小人??」
「かぐや姫だよ」
「かぐや姫?あの、なんだっけ?あの、竹取物語の??」
 授業でやった古典の名前を吉太は思い出す。
「それは先輩のお話。おんなじ名前にすれば、地球人は扱いがわかるだろうからって」
 ゴシゴシと涙をかぐや姫は涙を拭いた。
「竹から出てきて、小さい姿から大人になって、月に帰る…?」
「そうそう!吉太くん、私のこと拾って!育てて!お礼に金を沢山あげるから!」
 ぴょんぴょんとかぐや姫は飛び跳ねて元気に言う。頭がぐらぐらするの見て一生懸命にパンダちゃん達がそれを止めようとしていた。
「私拾われるなら絶対若い人がいいの!おじいちゃんおばあちゃんじゃ嫌なの!だから吉太くんが拾って!」
 止められている間にいつの間にかのパンダちゃん達の上に乗って転がりながらかぐや姫は嬉しそうに言う。

 でも吉太はブンブンと顔の前で手を振ってとんでもない!というように言う。
「僕は子供だから無理だよ!まだ小学生だよ?」
「え…?小学生??こんなにおっきいのに??」
「君らからしたら幼稚園児でもおっきいと思うけど…」
「ショウガクセイってなに?」「ショウガクサイならわかる」「ショウガ辛いよな」「吉太くんショウガなの?」
 パンダちゃん達がざわつく。
「小学生っていうのは、6歳~12歳用の学校に通ってる人間のことだよ。この国の成人は20歳からだから子供だね…」

 流石、かぐや姫は日々勉強してるだけあって小学生を正確に理解していた。
 その言葉に吉太はホッとして言う。
「うん、だから無理だよ」
「えー!ヤダヤダヤダ!もう竹藪のお外に出たい~!連れてってよ~!」
 パンダちゃんの上でかぐや姫は暴れた。
「ムギュ」「ムギュー」という声がその下のパンダちゃん達から漏れる。
 被害から逃れたパンタは言う。
「ダメだよかぐや姫。まだしばらく竹ドックで寝てないと。ちゃんと首くっついてないでしょ」
「うぐぅ~~」
 かぐや姫は歯を剥き出しにして悔しそうにする。
 吉太は申し訳なさそうに言った。
「まだちゃんと治ってないんだね…ごめんね」
 ハッとしてかぐや姫は言う。
「ううん!大丈夫。もう痛く無いし」
 そこにパンタはかぐや姫を担いで言った。
「ほら、入ってないと治らないんだから」
 よいしょよいしょとパンダちゃん達はかぐや姫を竹ドックに運ぶ。
 ジタバタしながらかぐや姫は、「吉太くんまたね!」と言って手を振り、竹ドックの中に収められていった。


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