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⑸ 小人さんは同衾したい
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「吉太くん!来ちゃった~」
吉太が夜、お風呂に入って自分の部屋に戻るとそこにかぐや姫がいた。
タタタッっと身軽に走ってきて足元で吉太を迎える。
「来ちゃったって…どこから??」
「エヘヘ、私忍者ごっこ上手なんだ~。それよりこっち来て」
グイグイと足元を引っ張って窓際に誘導する。
なんだろうか?と思って歩むと、突然かぐや姫が吉太をよじ登り始めた。
スルスルと肩まで到達すると、「とうっ!」と言って窓の鍵に飛び移り、カシャリと鍵をあけ、ガラッと窓を開けた。
するとそこから小さいパンダ4匹がゾロゾロと入ってきた。
先に、窓からぴょいっ、とすん、と床にかぐや姫が降りると、部屋にあったクッションを引きずって窓際に設置する。
その上にパンダ達がぽすん、コロコロ、ぽすん、コロコロ、と、着地して行く。
「パンシちゃん!がんばって!」「だいじょうぶだよ!」「そんなに高くないから!」「ほら、ここだよ!」
パンダ3匹ととかぐや姫は最後の1匹を下から見上げてワーワーと応援していた。
高いところが苦手なのか、パンシと呼ばれるパンダはブルブルと心細そうにしている。
そのパンシを吉太はひょいと持って、床に下ろしてあげた。
わぁ!っとパンダ達とかぐや姫は喜んだ。
「ありがとう!吉太くん!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねるかぐや姫の首はまだぐらついてるようで、パンダ達は頭がとれたらキャッチしようとでも言うようにかぐや姫の周りで手を上げてアワアワしていた。
飛び跳ねるかぐや姫を見て吉太は言う。
「かぐや姫、それで何しにきたの?」
「え?同衾したいなって思って…」
もじもじと言うかぐや姫を吉太は不思議そうに見た。
「ドウキン??」
ドウキンってなんだろうか…。
ふと、そういえばと思い出したことを吉太は言った。
「ねぇ、かぐや姫は、しょっちゅうこの家に来てる?」
おばあちゃんが座敷わらしを見かけないと心配そうにしてたのだ。
「うん!毎日テレビでお勉強しに来てるよ?でも…」
かぐや姫は、肩を落としてしょんぼりとした。
「先週のドラマ全部見逃しちゃった…続き楽しみにしてたのに」
言って、ものすごく悲しそうな顔でため息をついた。
吉太は、ハッとした。首の治療のために『竹ドック』に入っていたからだろうとわかったからだ。
「僕が切っちゃったせいで…ごめんね…。あ、でも、僕ハードディスクレコーダーの使い方わかるよ」
「はーどでぃすくれこーだー?」
「おばあちゃんがドラマ録画してるヤツ」
かぐや姫は不思議そうにしている。
「おいでよ。明日お休みの日だし、おばあちゃんももう寝てるだろうから見せてあげる」
吉太はかぐや姫と一緒に居間に来て、テレビをつけた。
興味津々とリモコンと操作画面を見つめるかぐや姫に使い方を説明してあげた。
かぐや姫は物覚えがとてもいい。
ただ、最初はリモコンが大きすぎてうまく押せなかったようだ。
足で踏むと操作しやすい事に気づき、ていてい、とリモコンを器用に踏んづけている。
そうして居間のテーブルの上にちょこんと座って、念願の先週のドラマを夢中で見ていた。
吉太はドラマは観てなかったので、途中からの話がわからず、暇だな、と思った。
かぐや姫は、顔を紅潮させじっと画面に見入っている。
時に腕をパタパタと振り興奮したり、ガーン!と衝撃を受けた顔をしたりと感情表現が激しくて、見ていて面白い。
でもずっと見てるわけにもいかないので、吉太は実家で通っていた塾の教材を久しぶりに出して勉強する事にした。
教材を取りに戻ると部屋ではすでにパンダ達が吉太の布団ですやすやと固まって寝ていた。
起こさないように静かに用事を済ませて部屋をでる。パンダ達はとてもかわいい。
かぐや姫がもしうちに来たら、あのパンダ達もうちに来るのかな?とか、吉太は考えてしまった。
かぐや姫はテレビに夢中で吉太が席を立った事にも気づいてないようだった。
よっぽど好きなんだなぁ、と思いつつ吉太は教材を開いた。
ほんとは年明けすぐに、中学受験があるはずだった。
一生懸命勉強してきたのにな、と吉太は思う。これから自分はどうなってしまうんだろうか。
「吉太くん何してるの?」
ドラマがひと段落したのか、トコトコとテーブルの上を歩いてかぐや姫は吉太を興味深そうに覗いた。
「勉強だよ。受験するんだ」
「え!?受験!?すごいかっこいい!!」
かぐや姫がぴょん!と跳ねた拍子にグラっと首が不審な方向に動いた気がして、吉太はかぐや姫の頭をサッと押さえた。
パンダ達の気持ちがよくわかる。
「受験するのは難しい学校なの?」
頭を押さえられたままかぐや姫は聞く。
「うん…、でも家に帰れないと受験できないし…」
吉太は問いに答えつつも、結局勉強なんてやっても無駄なのかな、と暗い気持ちで思う。
うちは今、それどころではないのだ。
「吉太くんお金があればお家に帰れるんじゃない?金はすごくたくさんのお金になるんだよ!」
拳を握りしめ、かぐや姫は一生懸命に主張した。
「え?そうなの??」
「うん!でも、その代わり、私も連れてって育ててほしいの。パンダちゃん達も。」
またきゅるん、とキメ顔でかぐや姫は吉太を見上げる。
「…僕は子供だから無理だけど、僕の両親に聞いてみるよ」
おばあちゃんも、『座敷わらし』と言ってかぐや姫を受け入れていた。
よく見ればそんなに怖い存在ではない。お金をくれると聞けば、かぐや姫を育ててもいいと言うのではないだろうか。
うん、と吉太は心に決めて頷く。
するとかぐや姫は、ブルブルと顔を真っ赤にしていた。
「や、やったぁぁぁぁ!うれ、うれしい!嬉しいよぅぅ~!」
そう言うと、ぽしん!と吉太の腕に勢いよく抱きついて、そのまま泣いた。
ぐりぐりと顔を押し付けながら、泣いて嬉しがった。
「ありがとう!ありがとう吉太くん!やっと竹藪から出られる!ご飯も食べて、大きくなれるぅ!」
「しー!おばあちゃんが起きちゃうよ。僕たちもそろそろ寝よう?」
そう言うとグスグスと鼻を啜りながら、かぐや姫は嬉しそうな満面の笑顔で頷いた。
パンダ達がすでに眠る布団に戻ると、「わーい!同衾だー!」とかぐや姫は喜んで布団に入った。
一緒に寝ることをドウキンと言うらしい。
布団に入ると、すぐにかぐや姫は眠そうな顔をした。
そして「ありがとう吉太くん。だいすき…」と言ってスヤァ…と眠りに落ちた。
吉太は、最初はあんなにかぐや姫が怖かったのに、今は可愛く見えて不思議だな、と思った。
吉太が夜、お風呂に入って自分の部屋に戻るとそこにかぐや姫がいた。
タタタッっと身軽に走ってきて足元で吉太を迎える。
「来ちゃったって…どこから??」
「エヘヘ、私忍者ごっこ上手なんだ~。それよりこっち来て」
グイグイと足元を引っ張って窓際に誘導する。
なんだろうか?と思って歩むと、突然かぐや姫が吉太をよじ登り始めた。
スルスルと肩まで到達すると、「とうっ!」と言って窓の鍵に飛び移り、カシャリと鍵をあけ、ガラッと窓を開けた。
するとそこから小さいパンダ4匹がゾロゾロと入ってきた。
先に、窓からぴょいっ、とすん、と床にかぐや姫が降りると、部屋にあったクッションを引きずって窓際に設置する。
その上にパンダ達がぽすん、コロコロ、ぽすん、コロコロ、と、着地して行く。
「パンシちゃん!がんばって!」「だいじょうぶだよ!」「そんなに高くないから!」「ほら、ここだよ!」
パンダ3匹ととかぐや姫は最後の1匹を下から見上げてワーワーと応援していた。
高いところが苦手なのか、パンシと呼ばれるパンダはブルブルと心細そうにしている。
そのパンシを吉太はひょいと持って、床に下ろしてあげた。
わぁ!っとパンダ達とかぐや姫は喜んだ。
「ありがとう!吉太くん!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねるかぐや姫の首はまだぐらついてるようで、パンダ達は頭がとれたらキャッチしようとでも言うようにかぐや姫の周りで手を上げてアワアワしていた。
飛び跳ねるかぐや姫を見て吉太は言う。
「かぐや姫、それで何しにきたの?」
「え?同衾したいなって思って…」
もじもじと言うかぐや姫を吉太は不思議そうに見た。
「ドウキン??」
ドウキンってなんだろうか…。
ふと、そういえばと思い出したことを吉太は言った。
「ねぇ、かぐや姫は、しょっちゅうこの家に来てる?」
おばあちゃんが座敷わらしを見かけないと心配そうにしてたのだ。
「うん!毎日テレビでお勉強しに来てるよ?でも…」
かぐや姫は、肩を落としてしょんぼりとした。
「先週のドラマ全部見逃しちゃった…続き楽しみにしてたのに」
言って、ものすごく悲しそうな顔でため息をついた。
吉太は、ハッとした。首の治療のために『竹ドック』に入っていたからだろうとわかったからだ。
「僕が切っちゃったせいで…ごめんね…。あ、でも、僕ハードディスクレコーダーの使い方わかるよ」
「はーどでぃすくれこーだー?」
「おばあちゃんがドラマ録画してるヤツ」
かぐや姫は不思議そうにしている。
「おいでよ。明日お休みの日だし、おばあちゃんももう寝てるだろうから見せてあげる」
吉太はかぐや姫と一緒に居間に来て、テレビをつけた。
興味津々とリモコンと操作画面を見つめるかぐや姫に使い方を説明してあげた。
かぐや姫は物覚えがとてもいい。
ただ、最初はリモコンが大きすぎてうまく押せなかったようだ。
足で踏むと操作しやすい事に気づき、ていてい、とリモコンを器用に踏んづけている。
そうして居間のテーブルの上にちょこんと座って、念願の先週のドラマを夢中で見ていた。
吉太はドラマは観てなかったので、途中からの話がわからず、暇だな、と思った。
かぐや姫は、顔を紅潮させじっと画面に見入っている。
時に腕をパタパタと振り興奮したり、ガーン!と衝撃を受けた顔をしたりと感情表現が激しくて、見ていて面白い。
でもずっと見てるわけにもいかないので、吉太は実家で通っていた塾の教材を久しぶりに出して勉強する事にした。
教材を取りに戻ると部屋ではすでにパンダ達が吉太の布団ですやすやと固まって寝ていた。
起こさないように静かに用事を済ませて部屋をでる。パンダ達はとてもかわいい。
かぐや姫がもしうちに来たら、あのパンダ達もうちに来るのかな?とか、吉太は考えてしまった。
かぐや姫はテレビに夢中で吉太が席を立った事にも気づいてないようだった。
よっぽど好きなんだなぁ、と思いつつ吉太は教材を開いた。
ほんとは年明けすぐに、中学受験があるはずだった。
一生懸命勉強してきたのにな、と吉太は思う。これから自分はどうなってしまうんだろうか。
「吉太くん何してるの?」
ドラマがひと段落したのか、トコトコとテーブルの上を歩いてかぐや姫は吉太を興味深そうに覗いた。
「勉強だよ。受験するんだ」
「え!?受験!?すごいかっこいい!!」
かぐや姫がぴょん!と跳ねた拍子にグラっと首が不審な方向に動いた気がして、吉太はかぐや姫の頭をサッと押さえた。
パンダ達の気持ちがよくわかる。
「受験するのは難しい学校なの?」
頭を押さえられたままかぐや姫は聞く。
「うん…、でも家に帰れないと受験できないし…」
吉太は問いに答えつつも、結局勉強なんてやっても無駄なのかな、と暗い気持ちで思う。
うちは今、それどころではないのだ。
「吉太くんお金があればお家に帰れるんじゃない?金はすごくたくさんのお金になるんだよ!」
拳を握りしめ、かぐや姫は一生懸命に主張した。
「え?そうなの??」
「うん!でも、その代わり、私も連れてって育ててほしいの。パンダちゃん達も。」
またきゅるん、とキメ顔でかぐや姫は吉太を見上げる。
「…僕は子供だから無理だけど、僕の両親に聞いてみるよ」
おばあちゃんも、『座敷わらし』と言ってかぐや姫を受け入れていた。
よく見ればそんなに怖い存在ではない。お金をくれると聞けば、かぐや姫を育ててもいいと言うのではないだろうか。
うん、と吉太は心に決めて頷く。
するとかぐや姫は、ブルブルと顔を真っ赤にしていた。
「や、やったぁぁぁぁ!うれ、うれしい!嬉しいよぅぅ~!」
そう言うと、ぽしん!と吉太の腕に勢いよく抱きついて、そのまま泣いた。
ぐりぐりと顔を押し付けながら、泣いて嬉しがった。
「ありがとう!ありがとう吉太くん!やっと竹藪から出られる!ご飯も食べて、大きくなれるぅ!」
「しー!おばあちゃんが起きちゃうよ。僕たちもそろそろ寝よう?」
そう言うとグスグスと鼻を啜りながら、かぐや姫は嬉しそうな満面の笑顔で頷いた。
パンダ達がすでに眠る布団に戻ると、「わーい!同衾だー!」とかぐや姫は喜んで布団に入った。
一緒に寝ることをドウキンと言うらしい。
布団に入ると、すぐにかぐや姫は眠そうな顔をした。
そして「ありがとう吉太くん。だいすき…」と言ってスヤァ…と眠りに落ちた。
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