月星人と少年

ピコ

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⑼ 白い小人ネズミ

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「かぐや姫、次の時間体育だから、教室に置いて行くけど、大人しくしててね。絶対見つかったらダメだよ」
 着替える為に更衣室みんな移動し始める隙をぬって、吉太はランドセル置き場にかぐや姫を連れて行った。
「体育?知ってる!運動するんでしょ」
「そう。校庭でね。みんな教室からいなくなるから、うるさくしないければ教室の中探検するくらいは大丈夫だと思うけど…でも気を付けてね」
「うん。わかった!」 
  
 体操着をもって、不安そうにしながらも立ち去る吉太をランドセルの中からかぐや姫は見送った。
 ランドセルの中に脱ぎ捨ててあった、いつもの十二単にかぐや姫は着替えようかな、と思った。でもそれより先に、学校のチャイムと共にいつの間にか静まりかえった教室にひょこりと出てみた。
 探検には身軽なほうが良い。着替えるのは後にしよう!
  
「うわぁ、このお部屋広いなぁ」
 かぐや姫の視点からみると、椅子と机の脚ばっかりで、テレビで見た『学校』の『教室』のイメージとはほど遠い。
  
 それではやはり残念なので、よいしょよいしょと椅子をよじ登り、机の方にとう!っと飛び乗って、かぐや姫は机の上から教室を眺めた。
「おおー」
 これぞイメージしていた『学校』である!
 ビシッ!と手を上げてかぐや姫は、「先生!その問題わかります!」と言ってみた。
 あててくれる人は誰もいないが、それなりにご満悦である。
 今度、パンダちゃん達と学校ごっこしよう。
  
「あれが黒板かー。学校ごっこには黒板が必要だよね!」
 月テクノロジーで作る為にもどんなものなのか調査しなければ。
 ぴょん、ぴょん、と机の上を渡って移動し、教卓から黒板に飛びついて移動した。
 ペタッとくっつくと滑り落ちる時にキキーっとい甲高い音がして、かぐや姫はぞわわわわ、と背筋に鳥肌が立った。
「す、すんごい嫌な音がする!すごいな黒板!!」
 ぜひ再現してパンダちゃん達に聞かせてあげねば、と感心しながら、黒板の下の粉受けに降り立った。
  
 そこに置いてあるちびたチョークを持ってみる。小さいかぐや姫にとっては人間が丸太を持ったみたいなサイズ感だ。
「うんうん!これで書くんだよね!よいしょ」
 ぶるぶる、と震える線でパンダの顔を書いてみようとする。
「うーんなかなか上手に書けないな。チョークが太すぎるぅ…」

 途中で難しくてパンダのお尻にしてみたけど、全然うまく書けない。
「うわ!手がチョークで真っ白だ」
 ぺし、ぺしっと、手のひらを黒板にくっつけると、小さい白い手形になった。
「うーん、あ、そっか。こっちの方が書きやすいよねー」


 チョークの粉を指先につけ、パンダを書いた。納得の出来である。
 かぐや姫の適性サイズでのお絵かきなので、5mm程度の微小サイズのパンダだ。
「えへへ!後で吉太くんに見せよ~!」
  
 ぴょん、と黒板からかぐや姫は降りた。
 教室の入り口から廊下をちらりと除くと、誰もいない。
 大人の声が微かに聞こえる。さっき吉太の教室でも『先生』が勉強を教えていた。その声だろう。
「授業中は、みんな教室の中に居るんだよね…」
 ドキドキ。廊下がものすごく真っすぐで、先が見えないくらいだ。あっちには何があるんだろうか…。
「ちょっとだけ、見に行くだけ…」
 かぐや姫は、すぐ行って、戻るのだ、とタタタタと軽快に走り出した。
  
  
 吉太は体育が終わると急いで更衣室に戻り、急いで着替えて誰よりも早く教室に戻って来た。
「かぐや姫、いる?」
 ランドセルを開けると、その中にかぐや姫が十二単を着た状態で居た。
「おかえり吉太くん!」
「…なんで髪の毛真っ白なの?」
「へ?あ!チョーク…」
「おい、後藤寺なにしてんの?」
「あ!な、なんでもない!」
 ぱたん、と吉太は急いでランドセルを閉めて、仕舞った。
 しかしふと気が付くと、教室の前の廊下でばたばたと走る音、先生方が話しあう声など、いつもと違う雰囲気が周囲に感じられた。
「…なんか、廊下が騒がしいね?何かあったの?」
「ネズミが出たんだってよ。白いから、どこかで飼ってたのが逃げ出したんじゃないかって」
「ネズミ??」
「キャ!!」
 教室の前方、黒板の隅で女の子が声を上げた。
「何この小さい手形!小人!?」
 人だかりになる黒板に心配になって吉太も行ってみる。
 黒板に白いチョークでいくつかの手形があった。
 それを見た、吉太は「ネズミだね」と言った。
 クラスメイトも、ネズミ騒ぎの真っただ中であるので、なーんだ、と言って納得した。
 小さい小さいパンダに見えなくもないイラストから、吉太だけは真犯人が誰かは分かったが。
  
 七不思議には後日、教室の小人の項目が追加されていた。
  
  
  
 やっと放課後である。
 吉太は、帰りの支度をすべくそっとランドセルを開けた。
「あれ??」
「なんだ?後藤寺。今日ほんとにひとり言多いな」
 ハハハ、とクラスメイトは笑う。それに、ハハハと、上の空の笑いを返しながらごそごそと、ランドセルの中に居なかったかぐや姫を探した。
 ランドセルの仕切り、チャックの中、自分のポケット、まさか机の中にいつの間にかに?
  
 ふと、ランドセルのフックについている給食袋に目を向けると、いつもより大きく膨らんでる気がした。
 そっとその口を開くと、スヨスヨとランチョンマットに包まれてかぐや姫は眠っていた。
 その姿に心から安堵して、吉太はかぐや姫を起こさずに下校した。
  
  
 吉太は帰宅すると、「ごはんだよぉ」というおばあちゃんの声に頷き、まだ静かなかぐや姫を起こさないようにランドセルをそっと下ろしてから夕ご飯を食べに行った。
  
 居間で少しテレビを見て、お風呂に入ってから部屋に戻ると、夜の8時くらいだった。
 さすがにかぐや姫も起きて帰ったかな、と思いつつ自分の部屋に戻った。給食袋の中身も洗濯物に出さなければ。
  
 そうすると、コンコンコンコンと窓を叩く音がした。
 窓辺に寄ってみると、パンダ達だった。
「吉太くん、かぐや姫知らない?」「まだ帰ってないの」「ガッコウに行きたいって言ってたから」「見なかった??」
 心配そうに窓辺で主張するパンダ達に、吉太はびっくりした。
「え?まだ給食袋の中で寝てるのかな?」
 ランドセルのフックを確認すると、いつもぶら下がってる袋が無かった。
「え???あれ??ちょ、ちょっとまって!」
  
 吉太は部屋を急いで出ておばあちゃんのところに行った。
「おばあちゃん、給食袋しらない?」
「え?ああ、らんちょんまっとねぇ。まだもらってないよぉ」
 おばあちゃんはランチョンマットが言い慣れずに面白そうだ。
「…落としちゃったかも」
 吉太は青ざめて言った。
「ありゃぁ。そうかい?大丈夫、新しく作ってあげるよぉ」
「う、うんごめんなさい…探してみる」
 吉太は、そう言いながらもう一度部屋に急いで戻った。
  
「パンダさんたち、かぐや姫落としちゃった!」
「落としちゃった!?」「どこにー!?」「なんでー!?」「そんなぁー!」
 パンダ達は大騒ぎになった。
「しー!!ちょっとまって、探しに行こう!」
 吉太はかぐや姫を探す為、家をこっそり抜け出すことにした。
  
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