ラジオの中の届かなかった想い

にまる いお

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⑯ 推薦のお知らせ

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朝のHR前、すずりはいつもより少し早く登校していた。
教室の空気はまだ静かで、窓の外にはやわらかな光が差し込んでいる。

やがて、担任の先生が教室に入り、すずりと、すでに登校していたつばさ、さちに声をかけた。

「三人とも、ちょっと職員室まで来てくれる?」

突然の呼びかけに、三人は顔を見合わせながら立ち上がった。心当たりはないけれど、どこか落ち着かない気持ちで職員室へと向かう。

案内されたのは、放送部顧問でもある、みどり先生の机の前だった。

「おはよう。来てくれてありがとうね」
そう言って迎えたみどり先生の表情は、どこかうれしそうで、でも少しだけ緊張しているようにも見えた。

担任の先生が封筒を手渡す。

「これは、さっき届いた通知です。三人に、直接伝えたくて。」

すずりが封筒を受け取り、恐る恐る中の紙を取り出す。
数秒の沈黙のあと、それを見ていたみどり先生が、ゆっくりと告げた。

「全国大会への推薦が、決まりました。審査員特別賞を受けたあなたたちの朗読に、『ぜひ全国で聞きたい』という声が集まったそうです。」

「……えっ?」

つばさが声を上げた。大きく目を見開いて、信じられないという表情。

「それって……推薦ってことは、行けるってことですよね? 全国に?」

担任の先生がうなずいた。

「はい。正式に、出場が認められたということです。」

「すごい……ほんとに……?」
さちは小さくつぶやきながら、紙に記された文面をのぞき込む。目を伏せたまま、そっと手を口元にあてていた。

すずりは言葉をなくし、通知の文字をただ見つめた。

(あの録音……あの朗読……)

思い返されるのは、あの時のナレーション。緊張しながらも声を重ねた三人の時間。そして月島さんがくれた言葉——。

「あなたたちの“声”が、本当に届いたのね」
みどり先生がそっと言った。

すずりの目に、熱いものがこみ上げてくるのを感じた。隣で、つばさが「うわー! 信じられない! 本当に行けるんだ!」と弾けるように笑い、さちが小さく笑いながら「現実なんだ……」とつぶやく。

三人の間に、温かな空気が広がっていた。



全国大会出場が決まったことは、昼の放送でも紹介された。

「放送部、朗読部門で推薦枠にて全国大会出場が決定しました!」

その声が校内に響いた瞬間、教室のあちこちから拍手がわき起こった。
すずり、つばさ、さちの三人が放送室から戻ると、すぐに後輩たちが駆け寄ってきた。

「先輩たち、おめでとうございます!」
先に声を上げたのは、元気いっぱいの後輩・梨々花。目を輝かせて、つばさに勢いよく抱きついた。

「わ、わっ、ありがとう梨々花!」
つばさは嬉しさと驚きで笑いながら、ぎゅっと梨々花の頭をなでる。

「推薦って、すごいことですよね……!あの朗読、本当に心に残りましたもん!」
梨々花は興奮気味に言った。

「俺、発表聞いて鳥肌立ちました」
控えめに、でもはっきりと声を出したのは陸。いつもは冷静な彼の頬にも、ほんのりと紅が差していた。

「ありがとう」
すずりは静かに微笑みながら、ふたりに頭を下げた。

「でも、本当に私たちの声が届いたんだって思うと……まだ少し夢みたい」

「夢じゃないですよ、現実です」
陸は真っ直ぐな目でそう言った。「それだけの朗読だったってことですから」

「……そうだね」
さちが穏やかに笑う。「みんながいたから、私も声を出せた。ありがとう、陸くん、梨々花ちゃん」

「先輩たちこそ、ありがとうございます!」
梨々花はぴょんと跳ねるようにして敬礼した。「全国、応援してますからね!」



その日の放課後。放送室で一息ついたみどりのスマホが、再び震えた。
画面に表示されたのは「月島悠」の名前。

「おめでとう。朗読、推薦で全国って聞いたよ。」

「……どうして知ってるの?」
みどりが問い返すと、スマホの向こうで小さく笑う声がした。

「審査員のひとりがうちの制作に顔を出してくれてね。“あの朗読、推薦出したよ”って。思わず、“やっぱり”って返しちゃった」

「それで、わざわざ連絡くれたのね」

「うん。あの声、届いたってことがうれしくてさ」

みどりは思わず、スマホを見つめながら笑った。

「ありがとう。伝えておくね、あの子たちに」

「うん。よろしく。……あの朗読、ほんとうにすばらしかったよ」

その一言が、電話の最後に静かに残った。
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