永久の試練

K:ニトロ

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最初の試練 自然より生まれし小さな女王

1ー2 悪化

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1ー2

〔舞台裏〕
「だんだん動き始めたか、ちょっと遅いが...まぁギリギリ及第点だな、異変の深刻化には活動本格化くらい間に合えばまだ勝ちの目はあるぞー」

元凶のウラさんは呑気に応援していた、永遠の命を持ち、感染させたウラさんにとって1000年以内は早いもの、地上の様子を観戦し楽しんでいた


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〔試練発覚から1週間後、スリィー聖王国〕

「これより《スリィー聖王国》、《ペルジン国》、《フェリム国》の三国会議を始める、議題は...『"試練"の発生』だ!」

会場内が一瞬だけ僅かにざわつく

そして、ペルジン国の王が声を発した

「"試練"が起きたと?その根拠を聞かせてもらっても?」

「勿論だ、マユ、例の物を」

「はい、これをご覧ください」

 マユは先日近場でまた見付けた【春告げ草】を取り出す

「それは?」

「説明します、これはそこそこ豊かで四季が巡る土地で自生する植物です、民からは【春告げ草】と親しまれています」

「む?今春の間だけと言ったが、おかしいじゃないかいまは夏なんだろ?」

 そう言ったのはスリィー聖王国より北方の雪国フェリム国の王だった

「はい、その通りです、春にしか咲かない筈なのです、しかし、ご覧の通り、こんなにも元気に咲いております」

「それはマユ、おめぇさんが自分で育てたからじゃねぇのか?」

「その疑問も最もです、その為、現在、数人の兵に映像転写機を持たせ、近場の草原に向かわせております、どうぞ」

 そう言うとマユは円卓の中央に設置された機械を作動させた、するとモニターが出現し、カメラの映像と、自然の音、兵達の歩く際の音が流れた

「クラム様!、各国国王様方!こちらが草原の様子です!【春告げ草】に限らず、多くの春の野草が生えております!」

「ご苦労、もう少しの間、そうしててくれ」

「分かりましたか?これが現在の様子です、更に言わせてもらえば、5日前までは春告げ草だけでした、急速に春の草花が再び目を覚ましています、それもかなりの広範囲で、これはほぼ確実に"試練"が開始したと言えるでしょう」

少しの沈黙...

「わかった、俺の方は急ぎ事態終息のため動こう、そなたらにも協力するとここで誓おう」

「ありがたい!ペルジン国王はどうです?」

「ええ、我が国もフェリム国とおおよそ同意見ですよ、すぐさま動きましょう」

 そうして、会議が終わろうとしたその瞬間、映像撮影の兵士達が騒ぎ始めた

「クラム様!マユ王妃!大変です!ご覧ください!」

 各国重鎮達が映像に目を向けると、目を疑うような映像が写った
 突然土が盛り上がり、裂け、桜の大木が生えたのだ

「平原に向かった兵はすぐさま退避!!!最悪装備や転写機を手放してもいい!急いで戻れ!!!」

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〔行動開始から1週間後、幻想郷付近の上空〕

「にしても、こうして見ると、花映塚を思い出すわねー」

霊夢の見下ろす森では色とりどりの花が咲き誇っていた、

「・・・そんなこと言ってる場合じゃないわね、急がないと、まずは紫が何か知ってないか聞きに行くとしますか」

(・・・にしても、)

「多すぎるのよ!!!」

 霊夢の眼前にはものすごい量の春告精が弾幕を放ちまくっている、上を除いて全方位にいるのだ、弱い妖精もここまで増えれば厄介で、それなりに時間がかかっていた

「「「「「「「「春ですよー!」」」」」」」」

「うっさいわね!そんなこと分かってるのよ!」

〈1時間後〉

「「「「「「「春が来ましたよー!」」」」」」」

「さっきから進めてないじゃない!どきなさいよ!」

「「「「「「「「「きゃう!」」」」」」」」」

(これで何体目のリリー・ホワイトなのよ、やっぱ動かなければよかったわ)

全く進めないでいた霊夢だが、転機が訪れた

「「「「「「「「「ピチューーーン!」」」」」」」」」

視界を埋め尽くすような春告精達が、一瞬で壊滅した
そしては霊夢にも向かってきた

「これは?ッ!まさか!?」

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〔魔理沙サイド〕

マーガトロイド邸
捜査が一向に進まない魔理沙は一度魔法の森に戻り、七色の魔法使いこと【アリス・マーガトロイド】に相談していた

「なぁ、アリス。今回の状況はどう思う?」

「そうねぇ、今回の異変だと源泉のようなものがありそうじゃない?」

「ん?なんでそう思うんだ?」

「だって、考えてもみなさいよ、今回の異変、そうね、【常春暦】としましょうか、常春暦は、春の期間が大きく延びて、動植物も同様に影響があるじゃない?でも、今年まで貴女は気付かなかった、妖怪の私でも異常に気付いたのは去年位ね、博麗の巫女ならもっと速く気付いてたんでしょうけどそれはいいわ。それで、源泉のようなものがあると言う推察の理由は、その異常が何処かを起点に波紋のように拡がっているように感じるのよ、それに、上海達に警戒をさせてるのだけど、場所によって強く影響を受けていたり、まだ薄かったりしているわ、だから、その源泉を潰せば止まるんじゃないかしら?」

「波紋のように、ねぇ」

 魔理沙は紅茶を啜りながら、考えていた

(アリスの言う通りだとしたらそれを取り除けば良さそうだが...だったらそれはなんだ?恐らく人や魔物系ではないだろうが...精霊だったら最悪だな)

「あ、そうだ魔理沙、あまり飛ばない方が良さそうよ」

「あ?なんでまたそんな時間かかりそうなことを」

「信じなくてもいいわ、でも、嫌な予感がするのよ」

(・・・・・)

「ふっ、この魔理沙様が無事に帰ってこないと思ってるのか?」

 そう言うとアリスも笑顔を見せるが、何処か不安げで、寂しそうな笑顔だった

(こいつは、よっぽど気を引き締めないといけないか...)

 魔理沙は、椅子から立ち、アリスの後ろに回ると優しく抱き締めて囁いた

「心配するなよ、必ず帰ってきて、一番に元気な顔見せてやるから、そしたらまた二人でお茶でもしような?」

 それだけ言って、魔理沙はマーガトロイド邸を去った

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〔ボルティック王国〕

 ドルトランが外を眺めていると、遠くで血飛沫を確認できた

(!!!)

ドルトランはすぐに汎用訓練場に全兵士を召集した

「南南東に大型魔獣を一瞬で屠る程の巨大な蔦状の物が延びたのを確認した!試練の中心はその方角だ!最低限の戦力を残し、原因の排除を開始する!、居残りの者は、各班の班長より通知される!悪化する前に急ぎ鎮圧だ!」

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〔?????〕

「うーーーーーーーん、みんな既に苦戦してるな?まだまだ、序の口なんだがなぁ」

ウラさんはそう言いながら地上を見下ろす

「というか、天界の奴らや、魔界の者共はまだ動かないのか、天界の奴らは...まだ私に対する危機感が薄いのか、魔界の方はー...あ、肉体の魔素含有量の割合が高いせいで中位以下のやつは使い物になってないのか、上位種の者も少し酔ったみたいになってるな、魔王種はー、あぁ、試練に合わせた装備の制作中か」

 何もかもを可能とするウラさんにとって、万能でない者達の頑張りは、見ていてとても面白く、やめ難いものなのである
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