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第二章―彷徨うジョナサン―
2−7・キュウカ島
しおりを挟む―――マイア城―――
「ここは……?」
「舞っ!気がついた!?」
「うむ、間に合ったようじゃな。しばらくは動くでないぞ」
「ロザリア!ありがとう!」
神の山で魔法陣の修復をしていたロザリアが、戻ってきた舞の生命を繋ぎ止めてくれた。妖精族に伝わる『妖精の蜜』。これを傷口に塗り回復力を高め、一命を取り止めたのだ。舞も愛も無事だった。
「桃矢くん。ところで、メイが何だか人が変わったような……」
「はは……は……気にしないでいいよ……害はない」
「ハッハッハ!!よいではないか!ハッハッハ!」
「きゃぁぁ!メイ様!お戯れを!」
メイがエルフを追いかけている。見た目はメイだが、中身はおっさんだ……
「はぁ……仕方ない……魅惑の眠り――」
パチンッ!
メローペが指を鳴らす。
ドスンッ!!
メイが壁に顔面から突っ伏し、そのまま眠る。
「あれ?甘い紅茶の香りがする……僕が眠ったのもこれか……」
「はっ!?桃矢様、今のは忘れてください!」
燐粉――エルフ族に伝わる秘薬らしい。この粉を吸うと、眠りにつき幸せな気持ちになれるそうだ。
「リンの背中の『S』の文字にシールを貼りました。また緊急の際はシールを剥がしてください」
「あぁ、メローペありがとう」
よく出来た女性だ。上目遣いで誘惑してくるあたりに僕はキュンキュンしてしまう。いや、駄目だ。落ち着け桃矢。ジョナサンの二の舞いになりたいのか。
「と、ところで、ドワーフのおじさんの具合はどうだい?」
「はい、先程目が覚めまして、後でこちらに――」
コンコン……
「失礼します。メローペ様、ドワーフのユリゲルが目を覚ました」
「おぉ、ちょうど良かった。入るが良い」
「失礼しますじゃ……」
背丈は僕の胸あたりか、少し小柄だが筋肉ムキムキのワイルドおじさんだ。
「この度は、命を救ってくれたこと……誠にありがとうございます!」
深々とお礼を言うドワーフ。
「こちらにおられる桃矢様がそなたを救ってくれたのだ。礼ならば桃矢様にするが良い」
「はっ!桃矢様!このユリゲル!お礼に何でも致しますのでお言いつけください!」
「あっ、いえ、運んでくれたのはメイだし。怪我が治るまでゆっくり休んで行ってください」
「なんたる優しさっ!ワシは長らく生きてきましたがこんなに優しい神様は知りませぬ!」
ただの人間なんですが……
「そうじゃ!街外れに釜を作ってもらえんですか?ワシはこう見えて武器を作らせた……それはもしや村正ですかいっ!!初めて見ました……何と美しい……」
壁に掛けてある村正に興奮を隠しきれないユリゲル。
「妖刀村正……かつて伝説の侍が使っていたと言われる名剣――」
「妖刀村正……そう言えば戦場で声が聞こえたような」
「声ですかい?それは村正かもしれませんね。何でも妖刀には命が宿るとか。桃矢様は村正に選ばれた方なのかもしれませぬな!わっはっはっは!」
豪快にユリゲルが笑う。
「やかましいのぉ、怪我人がいるのじゃ。静かにせぬか」
「あっ……ロザリア様。これは失礼した。では桃矢様、今後ともよろしくお願い申します」
「あっうん、こちらこそ、よろしく」
こうしてドワーフのユリゲルが城下に住み、武器防具など今後一手に引き受けてくれる事になる。
「さて、桃矢様。今回の一件、魔法陣の破壊から、キュウカ島の魔物まで……今後の対策を決めませぬと」
「メローペの言う通りだな、今後同じ事が起きないようにするには……」
「桃矢くん……実は……」
舞が重い口を開く。
「何だって!?ツクヨミ様が!?」
「……そうなの。何者かに襲われ、行方知れずに。私と愛ちゃんは、キュウカ島を死守するので精一杯だった。マサミカ大陸でいったい何が起きているんだろう」
「私はここから出るのは反対よ!舞と愛がこんな目に合ったのですもの!このままこの地で魔物と戦って皆を守るべきだわ!」
「早紀……それも一理あるが……ツクヨミ様を探さないワケにもいかない……少し考えさせてくれ」
「桃矢よ、お主の選択次第じゃ。この者らの命はそなたにかかっておる。良く良く考えることじゃな」
「ロザリア……わかってる。しばらく考えてみるよ」
◆◇◆◇◆
一週間後――
僕達はキュウカ島にいた。ドロップアイテムの回収、魔物の出現の原因解明、それぞれが島を探索し後で集まる形になった。
僕とメイがドロップアイテムの回収、メローペとロザリアが魔物の出現場所の特定、早紀とマイアが周辺の警戒をしている。
あれから舞と愛に変化があった。二人が手を繋ぐとマイア・マイエスタ神へと融合できるようになったのだ。副作用も特段なく、分離する時はイメージすると元に戻れると言う。元々一人の神。先の戦闘でその力が蘇ったのかもしれない。
早紀にも変化があった。ドワーフ族ユリゲルのおっさんの協力でパワードスーツを作り自由に空を飛んでいる。もうあれはメイのソレに近いのかもしれない。
「メイ、これは何だろう?」
足元に一冊の本が落ちている。
「桃矢様、これハ……!?」
「な、なんだ!?」
『オニサン伝承記』
表紙にはそう書かれてあった――
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