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第二章―彷徨うジョナサン―
2−8・オニサン伝承記
しおりを挟む―――キュウカ島―――
『オニサン伝承記』
――昔々、キュウカ島にはオニ族と呼ばれる一族が住んでいた。オニ一族は温厚な性格で人々と仲良く暮らし、それはそれは人間と変わらぬ生活だった。
ある日、人間がオニ族の子供を神への貢物として遠く出雲の国へと差し出した。
それを知り、怒り狂ったオニ族がこの島の人間をすべて殺し人間を飲み込んだ。その後、神とオニ族との長い長い争いが始まる。
最後はついにこの地でオニ一族は封印される――
「いつしかオニ一族は、オニさん、おにさん、おにぃ――と呼び名を変えこの地で祀られ――」
そこで伝承記は終わっていた。
「オニ一族か……」
「桃矢様、私のデータベースにもない過去の記憶デシタ……」
「このキュウカ島にだけ伝わる……忘れさられた歴史だったんだろうね」
「ハイ……」
「オニ族と人間の……なぁ、メイ。お前はアンドロイド、僕達人間と暮らしてみてどう感じる?」
「私はそれはそれは人間と同じ様なアツカイで、幸せな時間を共有させて頂いてマス」
「そうか……」
それから数時間後、全員キュウカ島の魔法陣に集合し、オニ一族の話を教えた。
「そんな事があったのね……」
早紀がポツリとつぶやく。
「皆、聞いてくれ。僕の考えが間違っているかもしれないが人間と魔物が一緒に暮らせる国が合っても良いと思わないか?かつて人間とオニ族がそうであったように――」
「桃矢くん……私も同じ事考えてた……」
「舞……愛はどう思う?」
「私もねぇさんと同じ気持ちです……」
「早紀」
「うん……私もそう思う」
「メローペ、ロザリア」
「そうですわね。現にエルフ族と人間族は共有した時間を過ごしています」
「うむ……妖精族もしかりじゃな」
「決めた。このキュウカ島に新しい国を作ろう。人間族、魔物族、すべての種族が共同で暮らせる国を!」
「賛成!!」
全員一致で、僕らはこの島に国を作る事にした。
「じゃぁ、早速取りかかろう。早紀と舞、愛が城作り、メローペとメイが農耕地作り、僕とロザリアは……魔法陣を固定する」
「いいのじゃな?」
「あぁ……早紀、舞と一緒にこの世界に命を託したい」
「馬鹿桃矢!な、何を恥ずかしいこと言ってんの!」
「ふふ、私は桃矢くんが一緒なら……」
「もう!ねぇさん!桃矢様は私と――」
「あい、わかった!キュウカ島と神の山の魔法陣を繋ぐ。元の世界へは二度と帰れないがそれも運命じゃろうて」
「ロザリア……よろしく頼む」
「うむ」
◆◇◆◇◆
―――半年後
『キュウカ島への移住希望者募集!!種族問わず!ただし、犯罪歴のある者は別途相談!!』
こうしたチラシを作り、近くの島や街、遠く西の国まで広く住民を募集した。
マサミカ大陸ではいまだ神々の争いは終わらず、逃げ延びた人やエルフ、妖精、ドワーフ、そして魔物がキュウカ島へとやってくる。
「桃矢様はどこへ行かれタ?」
「さっきまで居たけど?その後は私も見てないわ」
「そうデスカ、早紀様、南門の手伝いに人を回せマスカ?」
「オケー、すぐ行くわ」
一方、城内では――
「桃矢様……あまりにほったらかし過ぎではありませぬか!私は桃矢様のために毎日毎日……」
「ちょ!ちょっと!メローペ!移住者の入場整理ををを!!」
「はぁぁぁん!!桃矢様ぁぁぁ!!」
母上様、いかがお過ごしでしょうか?この世界では冬を越え、日差しが暖かい春になりました。
エルフは子孫を残すために春になると本能的に発情してしまうらしく、僕は毎日、さかったエルフに追いかけられています。こんな僕の姿を見たら母上様はきっと腰を抜かしてしまうでしょうね。桃矢より
ギシギシ……ギシギシ……
「はぁはぁはぁ……桃矢様……」
「ギ、ギブ………」
………
……
…
「桃矢!どこに行ってたの!早く交通整理してよね!」
「は……はひ……」
「ん?桃矢?体調悪いの?」
「い、いや……大丈夫だ」
早紀がおでこに手を当て、顔を覗き込んでくる。お互いの顔がせまる。
「ん……熱は無いみたいね」
「え……早紀は優しいな……」
僕はメローペと勝手に比べ、思わず声に出してしまった。真っ赤になる早紀。
「んっ!!もう!馬鹿桃矢!!今夜は寝ずに待ってなさい!!馬鹿桃矢!」
「えっ!?いや!ちょ!今日はもう無……」
スキップしながら早紀は話も聞かず行ってしまった……
「うむ。お主、ジョナ様の呪いがしっかり残っておるのぉ」
「ロザリア!?」
「わしもその昔はジョナ様の……ポッ」
「ポッ!じゃねぇ!怖いこと言うな!」
「お主もちょん切られぬよう気をつけなされ……それはさておき……」
「さておくな!呪いの解き方を教えてく――」
「紹介しておこう、こちらはチハヤ。ウィンダ街の教会の司祭じゃ」
「お初にお目にかかります、桃矢様」
「は、はい!初めまして。桃矢です。よ、よろしくお願いしますれば……」
「そんなに緊張するでない。チハヤは想い人もおれば、子もおる。手を出すでないぞ」
「べべべ別にそんなつもりは!」
「フフ、面白いお方」
「馬鹿者が……チハヤはツクヨミ様からくれぐれも頼まれておる。手出しはわしが許さぬ。で、チハヤよ例の……」
「はい、ロザリア様……」
チハヤが手招きすると、木陰から一人の女性と手を繋いた女の子が現れる。長い黒髪が印象的な美女。そしてその美女と女の子がなぜかビショビショである。
「ビショビショな美女……だな」
「はい、私の友人のカディアと娘のレディスと言います」
「桃矢様……初めまして、カディアと申します」
「しまちゅ……」
「で、このビショビショのカディアさんが僕に……ん?」
良く見ると、スカートの隙間からチラッチラッと見えるはずの足が見当たらない。
「この娘はな、希少な人魚族の生き残りじゃ」
「人魚!!?」
人魚は会釈をすると、僕の方へと近づいて来た……
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