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第三章―尊さと鬼―
3−7・西へ!!
しおりを挟む―――オニノ城―――
『夢の歌』
とぅ……とぅ……とぅ……
堕ちてくあなたの手の平を
忘れることが出来ずに 今思う
伸ばしたあなたの鬼の手は
わずかに届かず地獄へ 墜ちる
あの日から何かを忘れぬようにと
神に願い
あの日からお前を忘れぬようにと
何を憎む
舞いあがれ 咲き乱れ
桜吹雪よ
散りゆく花よ もがき遊べ
命の灯よ
今夜限りは……
とぅとぅとぅ……とぅとぅとぅ……
――朝から心地よい歌が聞こえる。誰かが歌の練習をしているらしい。あれから数日経ち、すっかり回復した。これが人魚の力なのか?
「……桃矢くん、桃矢くん……おはよう」
「ん?舞?おはよう。どうし――」
カーテンの隙間から朝日が差し込むが、まだ部屋は暗く顔ははっきり見えない。
「んんんんっ!?」
急に舞がキスをしてくる!?言葉にならない言葉を上げる。
「はぁはぁはぁ……桃矢くん……」
あれ……服を着ていない?舞のやわらかい胸の感触が僕の体に触れる……いつの間にか僕も服を脱がされている。そして僕の頭の中でリミッターが外れる音がする。
「もう……我慢できない!!舞!!」
「桃矢くんっ!来てっ!!」
小柄な体に、短めの髪……お風呂上がりの良い匂いがする。そして、見た目からは想像できない大きな胸。大きな胸……?
「……あれ?」
「どうしたの?」
「舞の胸じゃない気が……」
「……バレたか。ねぇさんには内緒ね!んっ……」
愛かっ!?
たぶん舞の胸なら以前見た時と変わってなければ……
小ぶりっっ!!
「愛っ!ちょっとそこは!?」
「フフフ……かわいい」
愛が僕の下着を脱がす……
「はじめまして、小さな桃矢くん」
「愛、何を言ってるの。恥ずかしいじゃない……か……」
『え?』
二人でハモった。
いつもそこにいるはずの息子がいない。家出か?いや、待て待て。そんな芸当、僕には出来ない。
「無いんですけど……」
「うん……無いね……どういうこと?」
ちゅんちゅんちゅん――
パサァァァ!!
愛がカーテンを開けると小鳥達が一斉に飛び立つ。
バタバタバタバタッ!!
「え……足がない……」
「桃矢くん……がお魚さんになった……」
それは夢の続きを見ているような……足がお魚さんになっている。僕の息子はどこへ行ったんだ……?
「キャァァァァァァ!!」
僕の下半身をまじまじと見ていた愛が突然悲鳴をあげる!!
そして愛の声を聞きつけ、早紀達がバタバタと廊下を走る音が聞こえる……
「メイッ!このドアを蹴破って!」
「ハイ!早紀サマ!」
ガッシャァァァァァン!!
メイがドアを蹴破る……
「愛!?どうしたの!?」
早紀さんや。愛の声を聞いて駆けつけたのはわかる。
だが、なぜ的確に僕の部屋のドアを突き破るんだ……今回は間違ってはないけれど……
「桃矢くんが……桃矢くんがぁぁぁ!!」
裸体に布団を巻いた愛が叫び声を上げると共に――
「馬鹿桃矢ぁぁぁぁ!!!」
「ちょ、ちょっと!!落ち着け!まっ――」
ガラガラガラガラドッシャン!!
早紀の後ろ回し蹴りが僕の顔面に炸裂する!!
……アホーアホー
バサバサバサッ!!
「桃矢様、これは変態人魚かと思われます」
「変態人魚!?カディア……遠回しに、けなしてない?」
「いえ!滅相も御座いません!先日ご説明した通り、レディスの血を飲んだ者は、異常な回復力と人魚の力を得られます。人魚の姿になるには危険を察した場合と、あとは訓練次第で自由に尾びれを出すことが可能です」
「尾びれ……これって尾びれなのか……」
「危険を察した場合の変態は、しばらくすれば元に戻るかと思われます」
「桃矢くん……危険を察したのね……私に……」
「あ、愛!?そんなことは……」
「ふぅん……桃矢は愛が好きなんだ。ふぅん……お幸せにお幸せにお幸せにっ!!」
バタンッ!!
「ちょ、ちょっと!早紀!?」
「桃矢くんの変態……」
「舞!?ちょ、愛も!?」
バタンッ!!
「あらあら……」
「カディア様!!尾びれの出し入れの訓練を教えてください!!」
「フフ、わかりました。早速訓練致しましょうか」
その日から、カディアとレディスに泳ぎの訓練と、尾っぽ使い方を教わることとなった……
◆◇◆◇◆
――三ヶ月後
「それじゃ、僕とミーサとビルでエルバルト王国へ行ってくる。早紀とメイはオニノ城、舞と愛はマイア城を頼んだよ」
「桃矢くん、気をつけてね」
「桃矢くん、待ってるね」
「桃矢、お土産はいらないわ」
「桃矢サマ、お体に気を付けテ!」
「おにぃたん!いってらっしゃい!!」
手を振る皆を背にし、魔法陣に入る。
エルバルト王国へは神の山から一度ウィンダの街へ行き、そこから西へ数週間の旅となる。
「なぁ、ミーサ。ミーサが王国を出てからすぐに軍隊をキュウカ島へ向かわせたのかな」
「えぇ、時期的にそうだと思います」
「ミーサをエサに、目につく国を手中に……か」
「そうですわね、姉上の指示かあるいは……」
「まぁ、そこは行けばわかるな。ダリアと呼ばれていたあの王女がどうなったかも気になるしな」
「えぇ……」
僕達は一路、ウィンダの街へ向かう。
馬車に乗ると、嫌でもあの日の事を思い出す。
濃霧に包まれ、エルフの森へ迷い込みそしてメローペに出会った。
「メローペ……」
馬車に揺られ、どこかでまたあの濃霧が出ないかとも期待してしまう自分がいる。しかし道中、濃霧は出なかった。淡々と続く山並みを眺め、いつしかウィンダの街へと着いた――
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