異世界おにぃたん漫遊記

ざこぴぃ。

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第三章―尊さと鬼―

3−9・桃矢の過去

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―――ムルーブ街―――

 ムルーブ街のキシボジンが祀られてる堂内で、夢の歌を歌い終わり、涙を流すミーサ。

「おかしいわ、涙が流れるなんて……」
「感極まったのかもしれないね、このキシボジンの像にはそれだけの価値がある……」
「えぇ、そうね……そうかもしれないわね」

 ふと、振り返ると先ほどの案内をしてくれた女性が入口に立っていた。

「お勤めは終えられましたか?」
「あ、はい。しかしすごい迫力のキシボジン様ですね。感動しました」
「ふふ、それはよう御座いました。向こうでお茶の準備が出来ております、良かったら上がって行かれませんか」
「ありがとうございます。お言葉に甘えて……」



 僕とミーサは、女性に連れられ本堂の横の茶室へと案内される。お茶の良い香りがする。

カチャ……

「申し遅れました。私はこの寺院を管理しておりますトウヤチホと申します」
「僕は桃矢、こっちはミーサと言います」
「ミーサです。よろしくお願い致します」

ズズズ……

トウヤさんが入れてくれたお茶が美味しい。

「はぁ……落ち着くなぁ……」

カッコン……

『えっ?トウヤ?』

間が開いてから、三人がハモる。

「トウヤ?この大陸でトウヤと呼ばれるのは私達の一族だけのはずですが……」
「トウヤさん?あれ?同じ名前だ……偶然ですね、ははは……」
「……まさか!?お坊っちゃんですか!?」
「お坊っちゃん?」

カタカタカタカタ……

トウヤさんのお茶を持つ手が震える。

「つ、つかぬ事をお聞きしますが……ど、どちらのご出身で御座いますか……」

声まで震え始めたトウヤさん。あれ?何だか様子がおかしい。

「出身……と言われると、お答えしにくいのですが……」
「間違っていたらすみません……ニッポン……では……ないですか」
「どうしてそれをっ!?」
「やっぱり!?」
「ニッポン?どこの街ですか?」

ミーサだけ何も知らない様だ。

「すみません!お坊っちゃん!大変失礼を致しました!!こんな所へお通ししてしまい、お茶まで……すみませんすみません!!」
「ちょ、落ち着いてください!トウヤさん!」

トウヤさんの顔が青ざめている。ミーサは意味がわからずきょとんとしている。

「この街は、お坊っちゃんの祖父君、ジオナ様の作られた街、そしてお祀りしてある御本尊様はお坊っちゃんの祖母君であらせられます!!大変失礼致しました!!」

床に手を突き、頭を必死で下げるトウヤさん。

「頭を上げてください!お坊っちゃんか何か知りませんが、僕はここに今日初めて来ましたし、何のことやらさっぱりです」
「はぁはぁはぁ……取り乱してすみません。まさかお坊っちゃんが生きておいでとは……うっ……」

先程とは一変、今度は泣き出してしまう彼女。
しばらくして、彼女は口を開く。

「着いて来てください。お見せしたい物が御座います」

そう言うと彼女は立ち上がり、僕とミーサも彼女に付いていく。

ザッザッザッ……

 本堂の横を抜け、裏手の墓地へ行く。そこには立派なお墓が並んでいる。そして、見覚えのある像が立っている。しかしかなり古そうだ。

「ジョナサンの像だ……」
「はい、ウィンダの街にもあったかと思います。あちらは後で作られた像です」
「そうなんですか」
「はい、ジョナサンの像……正式には……」

像の前にある石板が目に入る。

『ジオナ様、ここに眠る』

「ジオナ様……ジオナさん……ジョナサン!?」
「そうなんです。この像はかつてこの大陸を支配し、この街を築いたジオナ様、お坊っちゃんの祖父君の像なんです」
「まさかや……」
「桃矢様のおじいちゃん……」

その像には一本の立派なツノがあり、夢で見たジョナサンそのものだった。

「じいちゃん……なのか?」

 僕には産まれたニッポンの記憶が鮮明にある。父さんも母さんもいた。朝ドラや大河ドラマが好きなごく普通の家族だった。そうか……あれはツクヨミ様が作られたニセの記憶……

「ジオナ様とキシボジン様……いいえ、本名キシボイン様には三人の可愛らしいお子様がおられました」
「キシボインって名前どこかで……」
「ん?ミーサ、どうかしたか」
「ううん、何でもないです。続けてください」
「はい、三人のお子様はそれぞれ六人の妻をめとったと聞いております。六人の妻を持つことは何でも鬼一族に伝わる伝承だということです――」

 ある時、その子供同士で地権争いの末、戦が起きてしまう。その子はイヌカイ公爵、キジカワ公爵、サルワタリ公爵を従え、ジオナじいさんに直談判しに行ったそうだ。
 その頃、ジオナじいさんは浮気が原因でキシボインばあさんと別居中にてキュウカ島で暮らしていたとか。そしてあれよ、あれよと言ううちにその子はそそのかされ、キュウカ島に戦争を仕掛けることとなる。

「その子の家は……桃之家。おとぎ話で有名な桃太郎で御座います」
「おとぎ話と全然違うのだな……」
「はい、おとぎ話は桃之家が作った鬼退治。しかし桃之家もまた鬼一族の末裔なのです……桃之家、桃園家、桃矢家。すべてが仲良くできる日はもう来ないのでしょう」

悲しそうに外を見つめるチホさん。

「はっ!大事な事を忘れておりました。伝承に、もし桃の名を名乗る別世界からの使者が現れる時この世界は混沌に飲み込まれる、という記述が御座いまして――」

 この後、数時間もの間、僕とミーサ、チホさんの三人は話込んでいた。この街に異変が近付いていることも知らずに――

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