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第三章―尊さと鬼―
3−10・アイマイミー
しおりを挟む―――ムルーブの街―――
ムルーブの街でキシボジン様が祀られている寺院で出会ったトウヤチホさんは僕と血縁関係だった。そして、ジョナサンとキシボジンが僕の祖父と祖母だった。
――その日の夜
「宿代が浮いて助かったわね、桃矢様」
「ミーサ、宿代くらいは持ってるから……」
「ウフフ、節約よ節約」
僕とミーサは寺院の空き部屋で泊めてもらうことになったのだが……
たぶんジオナじいさんの趣味なんだろう。豪華絢爛、金金ピカピカの部屋へ案内された。
「落ちつかん……」
「私は平気です。父の部屋もこんな感じでしたので見慣れてますわ」
「そうか……ミーサはエルバルト王国の第二王女だもんな」
「はい!今は……桃矢様の許嫁ですが……ぽっ」
「ん?いつの間に許嫁に……」
「内緒です!」
「まったく……そうだ、早紀と舞に連絡をしとかないと……」
以前、ウィンダの街で手に入れたエルフのペンダントを開く――
「おぉい、早紀、舞、聞こえるか?」
ザザザ……
「……い、はーい早紀さんですよー」
「……矢くん?もしもーし」
「あぁ、早紀、舞、今日ムルーブの街へ着いたよ」
「そうなんだ、お疲れ」
「ムルーブは確かウィンダの西にある街?だったかなぁ」
「そうなんだ、そこで――」
手短に今の状況を説明し、皆の無事も確認出来た。ミーサが帰って来たら『アイマイミーバンド』を結成するという話で盛り上がってるらしい。ノリは相変わらずというか女子高生のままなんだな、と思う。
「……桃矢様」
「ん?ミーサ、どうし……んっ!?」
ミーサが覆いかぶさり、キスをしてくる。
「早紀様と舞様とあんなに仲良くお話されて私だけのけもの扱いですか!そんなの許しませんっ!」
「ちょ!ちょっと待て!妬いてるのかっ!?」
「妬いてませんっ!!ムキー!!」
その夜はミーサに何度も迫られ、精魂尽きた桃矢であった……
◆◇◆◇◆
翌日――
「眠い……ミーサおはよう……」
「ふぁぁ……桃矢様のせいで寝不足です」
「おいおい……」
コンコン……
カチャ――
「お坊っちゃん、おはよう御座います。チホで御座います。よぅおやすみになられましたか?」
「チホさん、おはようございます」
「朝ごはんのご用意が出来ておりますれば――」
「ありがとうございます。着替えたら行きます」
「はい、それでは後ほど」
――それから数日、僕とミーサはこの寺院でお世話になりエルバルト王国へ向かう事にした。たくさんの見たことない親戚が訪れ、挨拶をして行った。いずれまたここに戻って来たいものだ……
「それではお坊っちゃん、必ずまた戻って来てくださいね。チホは待っておりますゆえ」
「はい、もちろんです。エルバルト王国で用事が済んだらまた寄ります」
「ではお元気で!いってらっしゃいませ!」
『行ってらっしゃいませ!!』
大勢の街の人達に見送られ僕は旅立つ。
「ミーサ、また戻って来ような」
「はい!桃矢様!」
そして――
桃矢達が旅立ち、数日後――
大陸が震撼する出来事起こる……
ムルーブの街が崩壊した――
桃矢達はまだ知らない。エルバルト王国に着き、しばらくしてから聞かされることになる。
そしてその先には
チホの死が待っていた――
◆◇◆◇◆
――オニノ城――
「さぁ!舞!練習するわよ!」
「うんっ!」
「じゃぁ、メイ!音楽スタート!!」
「はいナッ!」
ホールで歌の練習に励む、早紀と舞。オルガンを器用に弾くメイ。
マイア城は愛に留守番を任せて、舞はオニノ城に滞在していた。
「ふぅ……これならCDデビューも夢じゃないわ!愛には負けないわ!」
「ふふ、頑張ろうね!早紀ちゃん!」
「ワタシもコーラスで入れてくだサ――」
「メイは駄目よ!音痴だから!」
「ガーン……」
メイは器用に楽器をこなせるのに、歌だけは下手だった。
「さきおねぇちゃん!まいおねぇちゃん!おてがみでしゅうぅ!」
「レディス!分かった、ちょっと休憩にしましょう!」
「うん!」
パサ……
背景 雉川早紀様
はじめまして私、雉川家当主、雉川新右衛門――
ビリビリッ!
「レディス!これはいらないわ!捨てておいて!」
「はいでしゅ!」
「え?早紀ちゃんもう読んだの?」
「またあれでしょ?例の……鬼を討伐とかって。くだらない。私は今は雉川だけど、結婚したら桃矢になるから関係ないわ!」
「えぇぇ!早紀ちゃんずるい!私も今日から桃矢舞になるわ!」
「ちょっと待ちなさい!舞は犬飼でしょ!まだ早いわ!」
「桃矢メイ……悪くナイ」
「桃矢レディスちゃん!かわいい!」
「こらぁ!そこの二人は名字無いでしょ!駄目よ!」
「えぇぇぇ!!ずるいィィィ」
「レディスちゃんはトウヤなのっ!!」
「トウヤカディア……ぽっ」
「こらぁぁぁ!!カディアは関係ないでしょ!!」
こちらはもう少しだけ平和な時が続く……
◆◇◆◇◆
―――マイア城―――
「わしはな、その昔はブイブイ言わせておってのぉ……」
「へぇ……はぁ……ほぉ……」
ぷるぷるする長老の話にまったく興味がない愛。
ズズズズ……
マイア城の留守番を任された愛はヒマをもて余し、お茶を会を開き、バナナ街の人々を招待していた。
「愛様、お手紙が届いております。何でも犬飼家――」
「捨ててください。桃矢様以外のお手紙には興味がないわ」
「かしこまりました」
「はぁ……今頃、桃矢様は何をしておられるのでしょう……はぁ……」
「桃矢……わしはトウヤの名前を昔は名乗っておってのぉ……」
「え?桃矢様!?長老!詳しく教えなさい!」
「昔々のことじゃったぁ……ジオナ様と言うそれはそれは――」
ぷるぷるする長老の思い出話はこのあと二時間続いたという……
「――そこでワシが言ってやったのじゃ!お主らジオナ様に楯突くとは……」
「すぴーすぴー……」
愛は一時間しか持たず夢の中へと落ちていった……
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