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第四章―苛立ちと悲しみ―
4−1・エルバルト王国
しおりを挟む―――エルバルト王国―――
「ミーサ様、こちらです」
「さ、桃矢様行きましょう」
エルバルト王国に着いた僕達は街外れの古い洋館へと案内された。そこはかつて、ロザリア姉妹が暮らしていた住まいだった。
今はロメリア――ロザリアの妹が住んでいるそうだ。
「ロメリア様、お連れしました。こちらが桃矢様で御座います」
「ようおいでなすった。姉が大変お世話になったそうで……さ、顔を見せておくれ」
「はい、初めまして。桃矢と言います。ロザリアさんにはこちらも大変お世話になりました」
ロメリアは姉とは違い、歳相応の年配の方だった。しかしロザリアが五百歳とか言ってたからこの人も……
「ふむ。なかなか精悍な顔つきをしておられるようじゃ。若き日のジョナサンに似ておるのぉ」
四百歳以上確定。
「祖父をご存知なのですね」
「無論じゃ。姉がお熱だったからのぉ……さてお主らが来たのはダリアの件と、先の戦の件じゃろ?」
「はい、なぜあんな戦争が起きたのか教えてください。僕は大事な……大事な仲間を失いました」
「メローペじゃな。エルフ族の守護神メローペ。おしいやつを亡くしたもんじゃ……」
「エルフ族の守護神?」
「なんじゃ知らんかったのかぇ。あやつはエルフ族を守る守護神じゃ。ほれ何というか、遺体は残らんかったじゃろ?神族の証じゃ。いずれ転生してどこぞの時代でまた蘇るじゃろうて」
「そうだったのか……だから僕の手の中で消えたのか……」
手にはまだメローペがいた感触が思い出される。仮に蘇るとしても僕はもう二度とメローペには会えないのだろう……
「ふむ。お主にはちょっと重たい十字架だったようじゃな。ん?お主その指輪は……」
「あぁ、これはロザリアさんがくれたのです」
「そういうことか。なら姉の願いを聞いてやるかの。ここでちょっと待っておれ」
そう言うと、ロメリアは数人の兵士を連れて奥の部屋へと行く。
「なぁ、ミーサ。ロメリアはエルバルト王国の幹部なのか?」
「いいえ、ロメリアは私の育ての親……おばあちゃんみたいな感じですわ。ここは私の育った屋敷ですもの」
「そうだったのか……」
そうこうしていると、一体の人形を兵士が担いで持ってくる。
「どっこらしょ……と。さて、桃矢殿、その指輪をこの人形の指にはめるが良い」
「人形の?」
僕は人形の指にレンコーンの指輪を通す。すると!!人形が光出し、眩しくて何も見えない!
「おかえりなさいマセ……ご……ごすうじんサメ……」
「ありゃ、ちょっと人形が古かったかの。まぁ、すぐに使えるようになるじゃろ」
「え?どういう……」
目を開けると、そこには黒髪の美しい女性がひざまずいていた。
「メローペ!?……これは……どういう……」
「そのレンコーンの指輪は妖精王の指輪。持つ者の記憶を人形に移せる。別名、死者の指輪。お主が今強く願った者の魂が蓮……すなわち、あの世から魂を作り人形に移したのじゃ。それを蓮魂という」
「……よくわからないが、メイと同じアンドロイドなのか?」
「違う違う。アンドロイドは戦闘特化型の兵器じゃ。この人形はその者の意思を形にした物じゃ。戦闘には向いてないわい。ミーサや、人形を綺麗にしておやり」
「はい、ばあさま。人形さん行きましょう」
「ハイ、ご主人サマ――」
「魂の定着には少し時間はかかるが、徐々に話せるようになるじゃろう」
「ロメリアさん、ありがとうございます」
「あの子をこれから頼んだよ」
「はい……大切にしますっ!」
「うむ、結構。さて本題はダリアの件じゃったな」
ダリアは現在、王城の西の塔に幽閉に近い形で閉じ込められていると言う。何かを待っているように来る日も来る日も窓の外を眺め、魂が抜けたようだったそうだ。
そして、エルバルト王国の大臣が動いた。たぶんこいつが黒幕なのだろう。桃之家、雉川家、犬飼家、猿渡家を引き連れ南の帝国へと攻め入るという。ここ数日のうちに動きがあるらしい。ダリアとの接触、国王との謁見はこのタイミングがベストみたいだ。
「綺麗になったよぉ!」
ミーサが人形と部屋へと帰って来る。
「お待たせシマウメ、ご主人サマー」
「う、うん、おかえり……」
「ご、ご主人サマー!!」
なんだろう……気のせいか。失敗作な人形の様な気がする……
「ご主人サマー。私の名前は……へペせす」
「……へペ?へペ……へペか……うん……」
へペがギュッと僕を抱きしめる。
「痛い!痛い!痛い!」
「ご主人サマー!!またお会いしまショウ!!」
人形の力を舐めてた。背骨が逝く前に、兵士達が引き剥がしてくれる。
「ご主人サマーとの愛をジャマするナー!!」
「ロメリア……これ本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃ!案ずるな!」
即答だった。
◆◇◆◇◆
二日後――エルバルト王国西の塔
僕達は変装をし、ロメリアの付き人としてエルバルト城へと入る。へペはロメリアの屋敷に置いてきた。
戦争の引き金となった大臣達は南の帝国領へと進軍を開始したとの報告を受け、急ぎ謁見の支度をしたのだ。
「ロメリア様、こちらがダリア様のお部屋になります」
「うむ。案内ご苦労。終わり次第、国王に挨拶に伺う」
「はっ!お伝えしておきます」
近衛兵はそう言うと階段を降りていく。
「姉上……」
部屋に入ると、ダリアが窓の外を見てブツブツ何かを言っている。僕達が部屋に入っても素知らぬ顔だ。
「はぁ……ぶつぶつぶつぶつ……」
「姉上!ミーサです!今、戻りまし……た」
一瞬、ミーサの方を向いたがすぐに窓の外を眺めてぶつぶつ言っている。
「うむ。何かの呪いかのぉ。ミーサよ、ダリアは何をぶつぶつ言っておる?」
「はい……え……と……」
『……トウ……ヤサ……マ……オ……コヲ……ウミ……タイ……』
「と言っている様ですが、何かのおまじないでしょうか?」
「……ちょっと待て。今、なんつった?」
「トウヤサマノオコヲウミタイ……はっ!?姉上!?」
ガタンッ!
その時だった!窓に写った桃矢の姿を見つけ、ダリアは桃矢の胸に飛び込む!
「あぁ……桃矢様……お会いしとう御座いましたぁぁ……」
「……はい?」
泣き崩れるダリアと桃矢をミーサは冷ややかな目で見ていた――
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