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第五章―生と死と―
5−8・生と死と
しおりを挟む―――神の山―――
魔王が復活し、桃矢は愛達を助けれなかったことを後悔し戦意を失う。そして生きていた悪魔アドヴァンに殺されそうになった。
奇跡的に助かったのは、桃矢を追って来た早紀、舞、メイ、カナデ達が神の山に到着したからだった。
悪魔アドヴァンは早紀の攻撃に不意をつかれ、首を吹き飛ばされ死んだ……
雨はいっそう激しくなっていく……
それが桃矢には心地良かった……
薄れゆく意識の中で、舞の暖かい光に包まれ眠るのであった。
―――鬼の里―――
どんどこどん……どんどこどん……
祭りばやしのような賑やかな歌声と掛け声が聞こえる。
「よぅ。坊主。また会ったのぉ」
「ふふ、ジョナ様ったら……ふふ」
「……また夢の中……てあんた誰?」
「あら、失礼ね。私はセイレーン、あなたの体にこれでも住んでるのよ?」
「セイレーン……あっ。そうか、レディスの血を入れたからか……」
「坊主、命拾いしたのぉ。セイレーンのおかげでお主の体は超回復が備わっておる、直に目が覚めるじゃろう」
「偶然……か、神様の仕業か。あの雨のおかげね。人魚族は水があるところでは本来の力を発揮できるの。あなたのお腹の傷も、目が覚める頃には治っているでしょう」
「……はは……そう考えると恐ろしい力だな……」
どんどこどん……どんどこどん……
「坊主。この世界はの……鬼族は暮らしにくいのじゃ」
「じいちゃん、突然、何の話だ……」
「まぁ、聞け。on it another word……元来、この世界の者ではない。異端の鬼……と言う意味じゃ」
「異端の鬼……」
「左様。わしらがこの世界で生きている意味は……殺し合いのためじゃ」
「どういう意味?」
「この世界には元々創造主様が作られた魔物と悪魔が存在しておる。それに対抗するために、人間が異世界より召喚したのが……我ら鬼なのじゃ」
「そうだったのか……」
「魔物と悪魔が手を取り合う時……鬼はまた蘇る」
そう言うと、ジョナサン……いや、ジオナじいちゃんがゴツゴツした手を差し出す。
「坊主。わしはな、平和に暮らしたかっただけなんじゃ……」
「じいちゃん……」
「ふふ……あら、時間みたいね……またいつかお会いしましょう……」
どんどこどん……どんどこどん……
祭りばやしが遠のいて行く――
―――神の山―――
ザァァァァ……
「うぅ……」
雨に打たれたままの姿で目が覚める。手にはペンダントが握られている。
「桃矢くんっ!!気が付いたのっ!」
舞が僕の顔を覗き込む……
「桃矢っ!!」
早紀の声も聞こえた。
「良かった……傷口は塞がっているけど、無理はしないで……」
「あぁ……ありがとう、舞……」
ゆっくりと体を起こす。
「ぬ。気が付いたか。心配させおって……」
「ノア……すまない」
まだ戦闘は終わっていなかった。しかし、山の頂上に魔王の姿は無く、惰性で魔物や悪魔が攻撃してきているだけだった……
――一時間ほどして、周りはようやく静かになる。地鳴りも地震も収まっていた。
「ふぅ、ようやく片付いたみたい。桃矢も無事だったし、ここまでね。愛は……」
「わかってる……早紀ちゃん……うん……たぶん……」
「なぁ、もう一度洞穴に行ってみたいんだが付き合ってくれないか」
「……桃矢くん。ノアさんに聞いたんだけど落盤したって……」
「あぁ……ひとつ奇跡を信じてみたい」
「ぬ?奇跡?そんなものは簡単には起きやせぬぞ?」
「……わかってる。猿鬼、肩を貸してくれ……」
「ハイ、かまいまセンガ……」
猿鬼に掴まり、僕たちはもう一度神の山に登る。
「ぬ。どういう事じゃ?」
「なるほど……桃矢様、魔物が出現した場所ですね?」
「あぁ、カナデ。アイツらは落盤したにも関わらず、どこから出てきた?」
「ぬ……他に祭壇に続く道があると……?」
「……憶測だが、おそらく」
山道を登っていくと、落盤して入口が塞がってる洞穴を見つける。そしてもうしばらく道なりに進むと……
「あった……祭壇の真裏の抜け道……」
ちょうど祭壇の真裏であろう場所に別の入口があり、そこは落盤の形跡は無い。
「行こう……」
カツン……カツン……カツン……
通路を進んでいくと祭壇が見えてくる。早紀とノアが周囲を照らしてくれる。
カツン……
暗闇で動く影がある。
「誰かいる……?」
そこには岩の下敷きになり、身動きが取れない悪魔……メズがいた。
「鬼……か……カハッ……ハァハァ……トドメを刺すがいい……私はもう……」
「……悪魔よ、お前らの主のアドヴァンは死んだ。もう自由だ」
「なっ……アドヴァン様が……くっ……」
「ぬ。桃矢よ、こやつをどうするつもりじゃ?」
「……さぁな。僕にも良くわからないが、猿鬼頼む」
「わかりシタ」
猿鬼が落盤した岩を持ち上げる。近くには気を失ったままのオズもいた。
「ヒーリングデス!!」
舞が回復魔法を唱え、オズとメズの傷が癒えていく。
「悪魔……僕の気が変わらないうちに行ってくれ……」
「……礼は言わぬぞ……」
メズはオズを背負い、そのまま祭壇の奥へと消えて行く。
「ぬ。お人好し……いや、ただの馬鹿か」
「ほっといてくれ」
祭壇の周囲を愛達がいないかと、くまなく探す。
「確かにおかしいな……桃矢が言ったように落盤に巻き込まれたのなら……その……なんだ。言いにくいんだけど、皆の遺体があってもおかしくはない」
「あの時、チカゲさんは球体に飲まれた。もし、愛やダリア、マキの遺体が無いとしたら球体に飲まれた可能性がある……」
「桃矢くん……その球体は?」
「あぁ……たぶん魔王が持っている」
「ぬ。奇跡は起きたかもしれぬが、それはまた過酷な道のりじゃの……」
「あぁ……でも推測が正しければ、愛達はまだ生きている可能性もある……」
「桃矢くん……」
舞が手を握ってくる。愛が生きているかもしれないという嬉しい気持ちの反面で、魔王との戦いは避けて通れなくなったのだ。
「よし、一旦戻ろう……作戦を練る」
僕達が下山する頃にはようやく雨も上がっていた……
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