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第六章―愛すべき人―
6−6・鬼の里
しおりを挟む―――帝国マルク城―――
――翌日。
マルク城は鬼達が復興あたり、周辺各地からも鬼達が集まって来ていた。
鬼と言っても、見た目はほとんど人間と変わらない。女性も子供も老人もいる。民家の修復をしながら住む場所を決めていく。
「舞、もう少しだけ待ってくれ。この鬼達をほっとくわけにはいかない」
「……うん。わかってる。早く魔王を追いかけて愛ちゃんの元気な姿は見たいけど……」
「すまない」
「ぬ……それなら大丈夫じゃ」
ノアが桃矢と舞の会話に入ってくる。
「ノア、大丈夫って?愛は無事なのか?」
「ぬ。おそらくな。わしの知り合いの神が昨晩来てな……あの宝玉で生命を吸われている限り生きておるそうじゃ。あの宝玉が無くなれば魔王も死に、中に捕らわれた奴らも死ぬ……」
「ノア様!でもそれって魔王を倒したら、宝玉の中の愛ちゃん達は助からない!?」
「ぬ。その通りじゃ。そこで提案がある……」
ノアの話によると、愛は舞、マキは早紀の肉体に一時的に魂を移し、魔王の死を確認してから元の肉体に返すと言う話だった。
「そんな事が出来るのか……いや、ノアにしか出来ないな。それは……」
「ノア様、魂の転移……と言ったところですか……」
「ぬ。左様。しかし魂に合う器がいる。つまりはダリア、チカゲの二人は片割れが別に必要じゃ」
「似た者……を探せと言うことか」
「ぬ。そういう事じゃな。後はわしの気分……おっと、力量次第じゃな。クックック……」
「ノア様、でも似た者と言っても簡単に見つかるでしょうか?私と早紀ちゃんはたまたま双子だったり、姿が似ているのかもしれませんが……」
「確かにな。舞、貼り紙を作って国内に貼り出そう。見つかり次第、魔王の元へ向かう」
「そうだね……桃矢くん。うん、それしかないね」
こうして僕たちは復興の傍らで、ダリアとチカゲに似た人を探して回った――
―――鬼の里―――
太郎が鬼の里に帰って来たとの知らせはまたたく間に、里の住民に知れ渡る。
「太郎様、おかえりなさいませ。ジオナ様はご息災ですかな?」
「ん?お主は誰じゃ」
「はい。ジオナ様の身の回りのお世話をしておりましたトキと申します。以後、お見知りおきを……」
「……そうか。父上は亡くなったよ。残念だが……」
「なんとっ!?ジオナ様が……やはり別世界は恐ろしい……あのジオナ様が……」
「いや、そうだ。まてよ……確か三男の三郎が殺したのだ。父上を。次男の次郎と一緒にな」
「なんですと!!親を手にかけるなど!!」
「そうなのだ。俺は止めたのだが二人は結託して父上を……」
「くっ!!何とおいたわしや!!」
この太郎のついた嘘もあっと言う間に里へ広がり、異世界へ討伐隊を派遣すべきだ!と村中のいたるところで声が上がった。
その後太郎は傷ついた体を癒やし、しばらくして鬼の里の長となる。転移門に外から施錠してあることにも気付いた太郎は、鬼の里の力ある者を集め異世界から来るであろう鬼達を待っていた。
「俺の手の内に宝玉はある……あやつらは必ずここに取り返しに来る……返り討ちにしてくれるわ……」
………
……
…
―――帝国マルク城―――
――探し人の貼り紙をして数日後。
ダリアのそっくりさんはすぐに見つかった。エルバルトの第一王女。影武者が居たのだ。
「初めまして、桃矢様。わたくし、ダリア様の影武者にて名前を――」
「――え?もう一度良いか?」
桃矢は聞き返す。
「はい。アリダ・サントロノア・ライスアンブレラ・マチルダアモン・チョコレートディス・コモド・アイン・クライン・テキサスシュガー・マコです」
「……あぁ、そうか。初めまして……アリダさん」
「お初にお目にかかります。桃矢様」
「アリダさんは今までどこに?」
「はい。エルバルト王が亡くなられた際に東の港町ウィンダに避難しておりました」
「あぁ、チハヤさんが住んでる街か……」
「……そこで貼り紙を見かけ、ダリア様が生きておられるのであればお会いしたいと……」
「そうか。すまないが事情があって……」
桃矢はアリダに事情を説明し、協力して欲しい旨を伝えた。
「わかりました。わたくしに出来る事であればお手伝いさせてくださいませ」
「ありがとう。恩に着る」
「あら?ダリアさんの貼り紙にそっくり!!初めまして!早紀と言います!あなたのお名前は?」
「あっ!早紀!この人は――」
「早紀さん、初めまして。わたくし、アリダ・サントロノア・ライスアンブレラ・マチルダアモン・チョコレート……」
「あぁ……う、うん……よろしくね……マコさん」
「あれぇ!貼り紙そっくりの人!!初めまして!私は舞!あなたの――」
「わぁぁぁぁ!!舞ちょっと待った!!」
「初めまして舞さん。私は――」
この後で、このやり取りを繰り返したのは言うまでもない……
「ぬ。この者は誰じゃ?」
「初めまして――」
「ノアァァァァァァァ!!」
―――ウィンダの街―――
「チハヤ様、お手紙が届いております」
「お手紙?誰かしら……」
パサ……
『――チハヤ様、先般帝国に援軍を派遣して頂いたこと感謝致します。生き残った人々も無事、エルバルトでの生活が始まりました。ありがとうございました。またお会い出来る事を楽しみにしております。桃矢』
「桃矢様……ふふ……何だか、あの人に似た感じがするわね……」
「あの人……?ですか」
「えぇ……私が愛したたった一人の……」
ミーンミーンミーン……
外では夏の始まりを告げるセミが鳴き始めていた……
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