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第八章―赤蛇様―
8−4・赤蛇様
しおりを挟む―――丘の上の社―――
「はい、その滝壺で見てはいけないものを見てしまったのです……」
「見てはいけないもの……?」
桃矢達はカランデクルの街で、鬼達が帰るまで丘の上の社で待機していた。そこでメイが壺を割ってしまい、中から幽霊の本体であるスセリヒメが現れる。そしてスセリヒメの記憶を頼りに話を聞いていた。
セリの怖いくらいの真顔に、桃矢もノアもメイさえも固唾を飲む――
「はい……千年の滝で水浴びをしていたら、滝の後ろで気配を感じたのです。私はどうしても気になって恐る恐る覗きました……」
「ごくり……」
桃矢もノアもメイも、セリの話に耳を傾ける。
「そこには……」
「そ、そこには……?ごくり……」
『プシュゥゥゥゥ!!』
「ギャァァァァァ!!」
突然、メイのお尻の辺りから機械音が鳴り、一同悲鳴を上げる。
「ゴメンナサイ。コウフンシチャイマシタ」
「興奮したら出るんかいっ!」
「イツモハ、デマセン」
「出んのかいっ!」
桃矢とメイが、ギャーギャー言ってる間に会話は進む。
「ぬ……で……お主は何を見たんじゃ?」
「……赤子を食べる鬼です」
「!?」
「私はその鬼と目が合ってしまい、逃げました」
大騒ぎしていた桃矢とメイも、セリの話に耳を傾ける。
「そして足を滑らせ、千年滝から落下し死者の泉まで流されました。気が付くと私は幽体になり肉体はすでにありません。日が経つ事に肉体の記憶が薄れ、幾年か経った頃にはもう……ただの幽霊になっていました」
「それなら肉体を壺に封印した者はわからないのか?」
「はい。しかしそんな事が出来る者も数多くありません。これから調べようと思います」
「ぬ……赤子を食べる鬼に、壺の封印。さてさて、この国ではまだ何か起きそうじゃの……」
そんな話をしていると、街から鬼達が帰ってくる。
「桃矢様!!おにぎり丸殿が見つかりました!宿でお待ちです!」
「そうか!案内してくれ!首が元に戻ったのは残念だけど、これで街に入れる!」
桃矢達は急ぎ、街の宿へと向かった。
―――鬼の里―――
「チグサ様……?」
「サユキさん!!気が付いたのね!良かった……」
「ここは……?」
「鬼の里です。カランデクルの街で桃吉さんの代わりに傷を負われたと聞いています」
「そうでした……そんな夢を見ていました……」
「ここならもう安全です。サユキさんのお話通り、陽子さん……いえ、鬼斬丸はどこかへ行きました」
ガラガラガラ……
「おや?気が付いたかえ。わしはこの里のサクラと言う。サユキ殿、無事で何よりじゃ」
「サクラさん……?」
「ん?なんじゃ、ハトが豆鉄砲食らって鼻に豆が入ったような顔して?」
「チグサさん……すいません。少しサクラさんとお話してもよろしいでしょうか?」
「構いませんよ、お薬用意してきますね」
ガラガラガラ……
「サクラさん……ジゴク丸という人をご存知ですか?」
「!?お主、なぜその名前を!!」
「ご存知なのですね……ようやくお会いできました」
そう言うと、サユキは懐から一枚の写真をサクラに渡す。その写真には立派なお屋敷と中央に幸せそうな家族、周りには数人の人が写っている。
「……サユキ殿。この写真をどこで……?」
サユキが写真を指差し呟いた。
「私の母です……うぅ……」
涙ながらにサユキが指差したそこには、若い頃のサクラの姿があった――
―――カランデクル街―――
「初めまして、桃矢と言います」
「わしはおにぎり丸旅団、団長ジゴク丸と申す」
「おにぎり丸……てお名前じゃないのですね」
「はっはっはっ!おにぎり丸は国王がおにぎりが好きすぎて付けた名じゃ!特に意味はない!」
「ムフー!ソレジャ、オニギリタベレナイ!」
「はっはっはっ!おにぎりは我が東の国の名物じゃからな!帰ったらいくらでもあるわい!」
「ムフー!ソレジャ、モッテコイ!」
「はっはっはっ!このお嬢ちゃんは面白いな!はっはっはっ!」
「それでジゴク丸さん、カランデクルには何用で来られていたのですか?」
「うむ。わしら東の国は古くから赤蛇様をお祀りしておってな。最近、赤蛇様の眠りを妨げる者がおると聞いて様子を見に来たのじゃ」
「赤蛇様……もしかして封印を解こうとしてるのはあなた達なのですか?」
「はっはっはっ!それは濡れ衣じゃ。最近悪さをしておる鬼切丸旅団の事じゃろ?わしらも手を焼いておる」
ジゴク丸の話では東の国カラミニクナイ国は代々赤蛇様をお祀りしているそうだ。
「蛇様の封印が解けると、災害が起きこの世界は再生されるとある。わしらは赤蛇様を起こそうとする鬼切丸旅団を阻止せねばならん」
「ジゴク丸さん、僕らも鬼切丸を追っています。協力させて頂けませんか」
「構わぬが……かなり危険じゃぞ?」
「重々承知の上です」
「ふむ。理由がお有りのようじゃな、わかった。こちらこそよろし――」
ガタンッ!!
「桃矢様!大変です!南の空を見てください!!」
見張りをしていた鬼が部屋の外で叫ぶ。皆、急ぎ窓の外を見る。すでに異変に気付いた人々は空を見上げ固まっていた。
真っ赤に広がる空。夕日でもない。燃えているとも言えるその空は世界の終わりに思えた。
「いかんっ!!赤蛇様の封印が解けおったか!国王様に早馬を!!我らは千年の滝へ向かう!」
「はっ!」
「桃矢殿、ゆっくりはしておれん。おにぎり丸旅団!!ゆくぞ!!」
「ジゴク丸様!!準備は出来ております!いつでも出立出来ます!」
「僕らも行こう!ノア、メイ、セリ!!誰か!鬼の里に連絡を!!」
「はっ!桃矢様!」
「ぬ……赤蛇か。やっかいな事になったのぉ……」
「オニギリヘビ……ヤサクレヤロウ二ナッタノカ……」
「鬼斬丸……何てことをしてしまったのですか……」
桃矢達は、千年の滝へと向かった――
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