異世界おにぃたん漫遊記

ざこぴぃ。

文字の大きさ
91 / 92
第九章―世界の向こう側―

9−10・転生の夜明け

しおりを挟む

――数日後。

 『桃矢とノアが何者かに襲われ、連れ去られた』と言う噂を愛が流した。噂は大陸中に広まり、捜索隊が結成された。しかしいつまでたっても見つけることは出来なかった。

 それから一年経ち、二年経ち……いまでも桃矢の捜索は続く。
 いつしかウィンダの街の墓地には、ジオナの像の横に桃矢の像も立っていた。

 桃矢がいなくなって、間もなくしてから舞と愛もこつ然と姿を消えた。桃矢の失踪の後だったためか、人々は『神隠し』にあったのだと恐れた。

――数年後。

深夜、トメト村の祭壇の前にノアリスの姿があった。

バチバチ……

「ようやく……見つけたよいっと。全部話してもらおうか……ノアリス。いや……鬼子母神。返答によってはお前を許さない」
「……タケオよ。少し長くなるがな……全部話そう。わしもそろそろ天界へ帰ろうと思っていたのでな……」

 神々は鬼の存在を許さなかった。あの日、桃矢が死なずとも数日後には天兵により殺される運命だった。それはまた鬼と神との争いの種になる。

「そうだったのか……僕はてっきり桃矢を見捨てたのかと思ってたよっと……」
「愚かな。わしの孫ぞ?みすみす神らに殺させたりはせぬわ。美しい魂のまま……新世界で生かすと決めていたのじゃ。案ずるな、近い将来、桃矢の魂は現世で必ず蘇る……」

『きっとまた桃矢に会える……』そうタケオに話すノアリスは背を向けたまま涙を流していた。

――更に数年後。

 神々は『鬼狩り』を始める。これによりエスポワール大陸の鬼達はほとんどが息絶えた。
 しかしデゼスポワール大陸の存在を知らぬ神達は鬼の子孫が繁栄している事に今もまだ気付いてはいない。
 早紀を始め、鬼の血の流れる者はタケミカヅチの教えで転移門をくぐる者もいた。
 死神ノアリスの最後の仕事、桃矢の魂の一部を生贄として使い、トメト村の地下深くに転移門を作っていた。それはしばらくの間、デゼスポワール大陸と繋がっていたという。

――鬼の里。

「サクラさん、うちの子見なかった?」
「いや、早紀様のお子さんは見てはおらぬが?」
「そう……どこに行ったのかしら?あっ!チカゲさん!うちの子知りませんか?」
「あぁ、早紀さんそれならさっきうちの子と一緒にチョウチョを追いかけて――」

――出雲の国。

「お前が鬼の子孫か」
「おじちゃんだぁれ?」
「これはこれはスサノオ様!我が家にいったいどのようなご要件でしょうか!」
「お主が……零か?爺さんには興味はない。この子の名は?」
「はい、冬矢と言います。五つになりまして、わしの孫です」
「トウヤか……十五になったら俺の元へよこせ。修行を積んでやる」
「は、はい。ですがこの子の親にも聞いて見ないと……」
「俺の命令は絶対だ。心せよ」
「は、ははぁ!」」

――更に数十年後。

 マサミカ大陸にある『エルフの森』に一人の人間の男が迷い込む。

「ここはどこだ……?地図にも無い。迷ったか……」

男は迷いながらも森を進む。

「ん?何か聞こえた?」

男は耳を澄ませる。

「歌……?」

森の中の泉から美しい歌が聞こえた。


――とぅ……とぅ……とぅ……

堕ちてくあなたの手の平を
忘れることが出来ずに 今思う
伸ばしたあなたの鬼の手は
わずかに届かず地獄へ 墜ちる――


 男はしばし、その歌に心をとらわれる。妙に懐かしく、涙が自然と流れた。


――あの日から何かを忘れぬようにと
神に願い 
あの日からお前を忘れぬようにと
何を憎む

舞いあがれ 咲き乱れ
桜吹雪よ
散りゆく花よ もがき遊べ
命の灯よ

今夜限りは……

とぅとぅとぅ……とぅとぅとぅ――


歌が終わると、男が話しかける。

「あの……すいません……その歌はいったい……?」
「キャッ!ニンゲン!?」
「あっ!すいません、驚かせてしまって……僕はトウタ・ヤウロと言います。森で迷ってしまって気が付いたらここに……」
「……ヤウロさん?変わったお名前ね」
「はは……良く言われます。君は……エルフ族?」
「えぇ、エルフ族のクラウドエリサ・メローペと言います」
「えぇと……クラウド……?」
「皆には、エリサとか、メローペとか呼ばれるわ。フフフ」
「メローペ……さん、初めて会った気がしないんです」
「まぁ、お上手!そうやっていつも女性に声をかけるんですか?」
「そ!そんな事ないです!あなたの歌に……何て言うか心を奪われてしまって……」
「冗談ですよ、ヤウロさん。ありがとうございます。あの歌は『鬼の唄』と言ってこの世界にまだ鬼がいたとされる頃の歌なんです」
「鬼……僕も母から聞いたことあります。おとぎ話ですが。何でも悪さをする鬼を退治するお話でしたね」
「フフ、いいえ。鬼さんは悪くないんですよ。中にはきっと強くて優しい鬼さんもいたはずです。言い伝えによれば、中でも異世界から来た鬼さんは、おにいたんと呼ばれ――」

 二人は日が暮れるまで話し込み、また会う約束をする。どこかお互いに惹かれ合い、どこか懐かしい感じのする時間だった……。

【天界・陣の国】

「無事に会えたようじゃのぉ……」
「鬼子母神様、あの二人はお知り合いですか?」
「ふふ、お主も良く知っておる二人じゃよ……」
「私が?知っている二人?」
「遠い遠い時間をかけてようやく結ばれるのじゃ。尊いのぉ……」
「ぷっ!鬼子母神様、それはジョークと言うやつですか?」
「ぬ?マイアよ、からかうでない。わしは――」
「もう、鬼子母神様。また口癖の『ぬ』が出てますよ!」
「ぬっ!はっ!いかんいかん……」
「さっ、もう行きますよ。天照大神様のお勉強を見るお約束をされているのでしょう?」
「あぁ……そうじゃな……」
(元気でな……桃矢よ。またいずれ………)

二人は、神の社へと帰って行く。

「鬼子母神様、結局あれは何でしたの?」
「ん?ふふ……マイアよ、あれはのぉ……」

『世界が切り放される時、私は復讐を誓う』

そうあれは若い頃にわしが書いたんじゃった……。

『私とあなたの恋によって、世界が切り放される時が来ても私はあなたを愛し続けるわ。もしあなたが裏切るような事があれば、私はあなたに復讐を誓うわ。いい?ジオナ、約束よ』

「マイアよ、あれはのぉ……内緒じゃ」
「もう!鬼子母神様!教えてください!」
「ふふふ……いやじゃ」

――これはずっとずっと昔のお話。

鬼の子が神と恋をし、世界を変えていく。

今はもう昔。鬼と神の恋物語。

―完―

著・雉川マキ




しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

処理中です...