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終わりと始まり
第9話・ざこぴぃ
しおりを挟む―――宿屋フラン―――
「ゼシカちゃん!ごめんね!急に冒険者が増えて、もうこの部屋しか空いてなくて!お客さんもすいませんねぇ!部屋を空けてもらって!」
「おばさん!いいえ!こちらこそ無理言ってごめんね!」
宿屋フランには大勢の冒険者が集まっていた。宿屋の主人が4人の大部屋を特別に空けてくれたが、僕の借りていた1人部屋は出ることになった。
さて女性3人と同じ部屋にいて僕は理性を保てるだろうか……?
否っ!それは無理ではないか!しかし、ここで騒ぎを起こすと聖都にいられなくなる。いや、同意の上なら問題な……!
ペシッ!
「いてっ!」
気を抜いていた。アリスが睨んでいる。
「ふぅ、疲れたな。今夜は自己紹介だけ済ませて早めに休もう。明日は回復薬の買い出しをしてから北の大森林へ向かおうか」
「ゼシカが急に呼び出したからビックリしたよ!まさか魔物が進軍してくるとはね」
「うんうんっ!」
ギシギシ……。
エルとリンが、真ん中にゼシカを挟むようにベッドに座る。
「うむ。改めてハルト殿。私はゼシカ・シリウス。今後、さん付けは不要だ。ゼシカと呼んでくれ。数年前までこの2人と冒険者をしていた。事情があり、今はチグサ様の護衛をしている。職業は剣士、固有スキルは、完全防御、身動きはできないがすべての攻撃を受けきれる」
「私はエル・クラウド。エルでいいわ。エルフ族よ。イースタンから出稼ぎに来てるの。職業は精霊使いと、回復魔法ができるわ。固有スキルは、精霊召喚よ。精霊獣を召喚できるわ」
「え、えっと、ぼ、ぼくはリン・ドラコ。人間族と竜族のハーフです。大魔法使いになるために修行中です。固有スキルは、心眼です!罠を見つけれたり、遠くの物を見たりできます。よ、よろしくお願いします!」
人間族と竜族のハーフなのか。どうりで誘惑指数が高いワケだ。次は僕の番だ。
「僕はセンケ・ハルト。職業は魔法剣士……ですかね。固有スキルは、THE・複製です。よろしくお願いします。あ、殿、はいらないです。ハルトと呼んでください」
「複製だとっ!?」
ギシッ!と、ベッドからゼシカが立ち上がる。
「な、なんか、めずらしいスキルらしいですね。冒険者ギルドでも言われました」
「ねぇねぇ!エル!ざこぴぃ?ざこぴー♡ざこぴぃ♡かわいひ」
「ぷっ」
リンが目を輝かせて笑う。それを見て吹き出すエル。『ざこぴぃ』でハマる2人をよそに、僕は話を進め……ぷっ。雑魚ぴぃか。アリスの鉄拳がそろそろ来そうな……?
あれ?アリスが腹をかかえて笑ってる。
「雑魚雑魚ぴぃwwwwひぃwwww」
なぜアリスに僕が笑われてるのだ。指を指すな。それに元々はアリスのスキルだろう。
「こほん。それでこの複製がそれほどのスキルなんですか?」
「う、うむ。この大陸では太古の昔、創造神アリス様が使われていたスキルだと伝承にはあったはず。ただあまりに危険なスキルなため、その後継承する者もいなかったとか。古代スキルの1つだ。すでにこの世界には継承者がいないと思っていた」
そんなにすごいスキルなのか。食事1人前を2人前に増やせる能力程度にしか思ってなかった。
「種族を複製できるかは不明だが、たとえば魔法であったり、そうだな……城であったりを複製できたら世界は変わってしまう。そもそも大陸そのものを複製できてしまえば……いや、やめておこう」
そう言いゼシカは言葉を詰まらせる。そうか。大陸を複製すれば争いが起き、たくさんの犠牲が出る。金貨だって増やせるし。あまり大っぴらに出来ないスキルなのか。アリスはそんな危ないスキルとは教えてくれなかった。
「いや、教えなかったのではない。知らなかったのだ。わしは創造神として、樹木と石ころを何百年も作っておったのでな……」
寂しそうに思い出にふけるアリス……。いや、どこかで気付けよ。
「まぁ、ハルト殿……いや、ハルトはそんな危ないことはしない人だと信じてる。せいぜい食事を1人前から2人前に増やす位は許してもらえるだろう」
図星です。そのくらいしか思いつきませんでした。ん?待てよ。ということは?
「THE・複製」
おもむろにポーションに、複製スキルをしてみる。
コロンと、ポーションが増えた。
「THE・複製×10」
『オォォォォォォォ!!』
一気にポーション増える。これで明日の買い出しは減るな。
ゼシカ、エル、リンとアリスが目を輝かせたり、口を開けたり、思い出し笑いをして楽しんでいる。
……いや、待て。アリス、お前はこっち側に来い。
前回の魔物の進軍時はオーガが中心だったと聞いた。今回もオーガ、ナーガ、ゴブリン、スライ厶などの魔物が主流だろう。10万の魔物は数は多いが、何とかなりそうな気もする。それを見越してゼシカも迎え撃つ事にしたのかもしれない。
結局夜遅くまで話をして、いつの間にか全員夢の中だった……。
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