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国作と往古来今
第25話・現在
しおりを挟む―――異次元空間・アリスのお部屋―――
アリスはお茶を一口飲んでから続ける。
「いつまでも楽しい時間は続かず、夏休みの終わりを迎えました。そしてそれがお別れの日でした。男の子は引っ越しで違う町へ行くのだそうです。最後の日に男の子は宝物をくれました」
ザァァァァァァ……!
………
……
…
「おまえ、ゲーム好きだろ!またいつか一緒にやろうな!約束な!」
そう言うと男の子は、おもちゃの剣を女の子に渡しました。
「これは大事にしてた宝物じゃない!」
「いいんだよ!それにおまえの名前を書いといたから、今日からおまえのもんだ!」
そこには “ありす” と下手な字で書かれていました。
「ありがとう!大切にするね!」
「おう!またな!」
ザァァァァァァ……!
…
……
………
「女の子は男の子のことが大好きでした。とてもつらい別れでした。でもきっといつかまた会えると信じて天界へと帰りました。――数年後、ふと男の子の事を思い出して地上を覗きました。見つけた男の子は大きくなっていました。幸せそうに覗きこむ女の子。日課のように、親の目を盗んでは毎日、地上を眺めていました。ある日、男の子が交通事故に遭いました。女の子は気が付くと地上に降り、叫んでいました」
ザァァァァァァ………!
「ねぇっ!しっかりして!」
血がたくさん出ていました。
「あ……あれ?アリスじゃないか……ひさしぶりだな……」
「しゃべらないで!!」
『助からない』直感で女の子は思いました。女の子は男の子を助けたいあまり禁忌の法を犯しました。
「THE複製!!」
「……ざこ……ぴぃ?はは……アリスはまだゲームばかりし……て……ゲホゲホッ!」
「くっ!なんで!!うまくいかないのっ!!お願い!!THE複製!THE複製!THE複製ィィィィ!!!!!」
『――キィィィィィィィィン!!』
「男の子は交通事故で死にました。だけれど禁忌の法により生き返りました。周りの人達は男の子が死んだことに気付きませんでした。複製はあくまで複製です。男の子は記憶を失いました」
アリスの話は続く。話が進む度に脳裏に強い衝撃が走る。
「こうして禁忌を犯した女の子は天上界の神様に捕まり、罰を受けます。数年もの間、牢獄で食べ物も飲み物も与えられませんでした」
見計らった様にプリンが口を開いた。
「その牢獄で二人の女の子が出会いました。一人は時を操るクロノスの義理の娘。時を操る存在自体が禁忌という意味わかんない神のせいで小さい頃から投獄され、外にも出たことありませんでした」
「ふふ、もう一人の女の子が言います。ねぇ、あなた二人でここから出ない……?」
「え?どうやって出るの?」
「簡単よ……こうするの……」
「あ……がっ……ガフッ!」
ザシュ……ポタポタ……。
クロノスの娘は牢獄内で一度死にました。そして牢獄の外で女の子の複製が蘇ります。
「良い?鍵を持ってきて。私をここから出すのよ。わかった?」
黙ってうなずく女の子。この時、女の子はこの神に一生付いていこうと心に決めました。
そして2人は天界から逃げました。そして逃げた先は偶然にもガッコウでした。ガッコウは既に廃墟で誰もいません。
「ねぇさま。予知夢って信じる?たぶんだけど、もうすぐ人間界は……崩壊する」
「時を奏でるあなたが言うのなら信じるわ」
――ある暑い夏の日。
忘れかけてた思い出。このガッコウで初めて出会った友達。そして偶然にも彼はまたこのガッコウを訪れ、再会することになりました。
小雨が降り出します。そして涙を隠しながら女の子は言いました。
「聞いてちょうだい。この世が終わる前にどうしても会いたい人間がいるの。そして出来ればこの先の世界へ連れて行きたい。協力してくれない?」
「ねぇさまがそこまで思う人間って見てみたいわ。私はねぇさまの為なら何でもするわ」
「ふふ、良い子ね。それじゃぁ、ここの部屋に入って来る男の子を脅かしてくれる?」
ザァァァァァァ……!
………
……
…
――そこには青白い透明の女の子が座っていた。髪は短く金色で可愛らしい顔立ちだ。
女の子はこちらに気付くと何か言いたそうな顔をする。
「見てはいけないものを見てしまった!」一瞬で体が硬直し、恐怖に包まれ、背中に冷や汗が流れる。
足の震えを抑えながら、静かにゆっくりとその場から目を反らそうとすると……女の子が話しかけてきた。
「へぇ……この人が……ねぇ……」
「!@?♯?☓!?」
「……ねぇ……さ……」
「お、お前は誰だっ!!」
ピカッ!!ゴロゴロゴロゴロッッ!!!
雷が頭上で鳴り響き、その音に驚きスマホを落とし辺りが真っ暗になる。
その時だった!!
背後に気配を感じ振り向こうとした瞬間!雷の激しい稲光と同時に背中に激痛が走った!
ピカッ!!ゴロゴロゴロゴロッッ!!!
「痛っ!!」
背中が痛くて熱い!何かを刺されたのだろうか。血が背中を流れていく感覚がする。
「だ、誰か……助け……」
体から血が抜ける様にだんだんと僕の意識は遠くなり、ついにはその場に倒れこんだ。
『……他に方法がなかった。許せ』
――そう最後に聞こえ、まばゆい光が広がったそして彼は2度目の死を迎えました。
ザァァァァァァ……!
「へぇ……この子がねぇさまの言ってた人間なのね……」
「今度は複製する前に魂と肉体を封印保存するわ。いつかこの世界がまたこの子を必要する時まで。その時は複製して蘇らせよう」
その後……世界はプリンの予言通り、洪水、津波、地震、噴火、地殻変動、伝染病と次々と災いが起き……そして全ての生き物が死滅しました。
一度は世界中の大陸のほとんどが海に沈み、そして噴火が起き、また陸地が出来て生き物が産まれ、この星は再生されました。幾度かそんな再生を繰り返し、長い長い時間をかけて今に至るのです。
「……おしまい」
「パチパチパチ!」
呆然とする僕。昔話じゃなくて、実話……色々聞きたい事がある。確かに記憶のところどころがない。でも、『ありす』と名前を書いたおもちゃの剣、2回目ではなく3回目の複製、そして僕がいるこの大陸こそが……!
「未来のニッポン……!?」
しかし話を聞いても、目の前のアリスと記憶の中のアリスが一致しない。
「当たり前じゃ。何百年経ったと思うておる。わしだって変わるわ。そして世界も幾度となく変わりに変わった。じゃがの……それでもわしはこの世界、いや、このチキュウが好きなのじゃよ。ハルト」
自然と涙が溢れた。異世界転生なんて思っていたがそうじゃなかった。これは未来への転生……そして僕はまだこの地球上にいる。
「確かこのマサミカ大陸も大昔は、シコクと呼ばれる大陸じゃったはず。この都市の地下にはガッコウも埋まっておるはずじゃ。わしがこの土地にこだわる理由がそれじゃな。思い出の地なのでな」
「そう言えばこの大陸の魔物や魔法は、ねぇさまが昔、ゲームとかって言うので見たのを再現したんでしたわよね!幾度の大陸の再生の時かは覚えてないですけど……それが根付いて、この世界になってるのですわ!」
全部繋がった。この世界は子供のころに夢みたゲームの世界……アリスと過ごした楽しかった日々を写した世界。
「アリスっ!!」
僕はアリスを抱きしめる。
「恥ずかしいではないかっ!離さぬか!バカハルト!こらっ!」
「ただいま、アリス。もうどこにも行かない」
「……わかった。わたしもだ」
気付くのが遅かった。でもまだ間に合う。子供の頃の夏休みの続き……引っ越しして会えなくなるのが寂しくて……最後まで言えなかった。
あの時の僕はアリスのことが大好きだった。今、思えばこの世界で生きるためにアリスが必死で生かしてくれた。僕はそれに答えなきゃならない。
――改めて、アリスとこの世界に僕は感謝した。
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