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神の子と魔法陣
第32話・魔王軍四死聖死神
しおりを挟む―――コリータ王国食堂―――
ウェスタン国王を招き、晩餐会が行われる。
「これはっ!うまい!」
「メタルスコーピオンの蒸し焼きにございます」
「へへへ。ぼくが取ったの!」
「これは本当に美味ですな」
よし!メタルスコーピオンはこの国の名物確定だな。養殖出来ないかな。
「さて先程の話じゃが、明日ウェスタン王国は襲撃を受ける。相手はおそらく……」
「……イスタン帝国」
「うむ。国王よ、その通りじゃ。チグサよ。そなた以前にここ、中央都市のオアシスで魔物に襲われておったの。おそらくあれも王妃の仕業じゃ」
「お母様が!?」
お母様といえど後妻、確か息子がいたはず。姉のチグサを亡きものにして息子を後継ぎにし、国を乗っ取ろうとしてたのか。
「そうじゃ。今回の一件、あの眼鏡ひげ大臣が来てない所を見て、ピンと来たのじゃ」
「うぅむ。そういえばデリ大臣は急に身内に不幸が出来たとかで、今回の来訪に同行せなんだ……」
「あやつは魔物の匂いがする。そしてチグサを襲った魔物がイスタン帝国地方の魔物だとしたら?」
「まさかっ!あの時のオーガはこの大陸の魔物じゃなかった……と!!」
ガタッ!とゼシカが席から立ち上がる。そしてウェスタン国王が話始める。
「実は心当たりはあるのじゃ。第一王子と前妻が亡くなり、その後すぐにイスタン帝国側から王妃との婚姻の話が来た。その話を持って来たのが確かデリ大臣。そしてハリス侯爵とも仲がいい……」
「まぁ、国を作り維持をするのは大変じゃからのぉ。色々と諸事情もあろうが、そなたを亡きものにしようとする輩がおっても不思議ではない。のぉ、そこのちょびひげ大臣」
「な、何の事ですかな!」
「お主の肩のそれは盗聴用のキキトリ虫じゃな。そんなに慌ててどうした?」
「そ、そんな、こ、こととは!」
肩を払おうとするちょびひげ。
「束縛呪縛」
「ちょ!ちょっと!何ですか!これ!外してください!」
ちょびひげ大臣をイバラで絡めてみた。
「と、言うわけじゃ」
ちょびひげ大臣はひっとられ連れて行かれる。
「はぁ。こんな所にまで。国を守ろうとイスタン帝国の娘と婚姻したのが間違いじゃったか……」
「ご主人様ご主人様……」
クルミが僕の後ろに来て小声でささやく。
「ご主人様、きりんが帰って来ましたにゃ。エル様はもうしばらくエルフの里にとどまられるそうにゃ」
「わかった、ありがとう。きりんをゆっくり休ませてあげて。明日の朝には出立する」
「わかりましたにゃ」
クルミとチグサの目が合う。後で遊ぼうね!という感じの目だ。同年代の子が少ない中、気分転換にちょうどいいだろう。
「それでは明朝出立じゃ。わしとハルトはきりんで明日中にはウェスタン王国に着くじゃろう。お主らは後で来い。ゼシカよ、留守は任せたぞ」
「はっ!アリス様!」
飲みかけの紅茶を置きウェスタン国王がゼシカに聞く。
「と、ところでゼシカよ。そのなんだ。ハルト殿とはどこまで……」
「お父様…もうそろそろ子供が出来るのではないかと……」
顔を赤らめるゼシカ。違うよ、出来てないよ。
「そ、そうか、それはおめでたい!ははは!」
動揺するウェスタン国王。違うよ、おめでたじゃないよ。チラっと横目で見るゼシカ。
「わしのハルトに色目を使うなっ!!」
ガタンっ!とレディが席を立つ。
「あんた誰よ……!!」
ゼシカも喰ってかかる。そう言えば2人は初対面か。ざわざわする食堂。ニヤニヤするアリス。ややこしいのがまだいたか……はぁ。
「2人共落ち着いて。ゼシカ、この人はレディ。元魔王軍の幹部……」
魔王軍と聞き、剣を抜こうとするゼシカ。
「魔王軍だと……!?」
「ちょっと待て待てっ!!」
ゼシカをなだめ説明すると、ようやく落ち着きを取り戻した。
「ふんっ!そんなことだから、ウェスタン王国は死神に言いようにやられるんだっ!」
死神?新しいキーワード出てきちゃったよ。
「レディ、死神て魔王四死聖てこと?」
「そうだ、死神は以前からイスタン帝国を裏で操っていると聞いたことがある。正式名称は死神ザクス。アンデットだ」
「また厄介なやつが魔王に肩入れしたもんじゃ……トカゲといい、臭うやつばかりじゃ」
アリスが横目でレディをチラッと見る。
「私はくさくなぁぁぁい!」
魔王の幹部がまた絡んでるとなると、あのトカゲクラスの強さなのか。
「レディ、一緒に来てもらおうか。アリスは宝石に入ればきりんに2人は乗れるだろ」
「ふっ。ハルトよ、背中でこやつの胸を楽しむつもりか。愚かな」
「違うわっ!!」
皆の視線が痛い。そしてレディの上目遣いが気になる。
こうして明朝、僕とアリスとレディは先にウェスタン王国へと向かった。
ウェスタン国王は馬車で帰路に着くので2日はかかるだろう。
―――コリータ国上空―――
――翌日。
「高いのぉ。こんな高い所は産まれて初めてだ!」
胸をこれでもかと、僕の背中に押し当てるレディ。人魚族なのにサキュバスの血も入っているのか?
「気持ちいいのぉ。このまま死んでも悔いはないっ!はっはっは!」
いや、僕はここでは死にたくない。
「きりん。せっかくだから、ウェスタン王国までの直線で障害物になる物を見て教えてくれる?あとで地図に書き込むから」
「わかりました。ご主人様」
きりんは高度を下げ、道の整備に邪魔になりそうな物を教えてくれた。山、丘、森、川、湖……町や村などは直線では見当たらなかった。
「うん、こんなもんかな。あとは直線で障害物を退けてと……」
「ご主人様、ウェスタン王国が見えてきました」
そうこうしているうちにウェスタン王国に着いた。レディはと言うと、はしゃぎ疲れて背中で寝ていた。よく落ちなかったなと思う。
「ありがとう、きりん。目立ちたくないから町外れに降りて宝石に隠れてくれ」
「わかりました。お気をつけて!」
僕達は町外れに到着すると、きりんはそのまま僕の中の宝石に吸い込まれる。とりあえず、冒険者ギルドへ寄って王宮へ向かうか。
―――ウェスタン王国冒険者ギルド―――
「はぁい!お疲れ様です!ご要件をお伺い致します!」
「すみません、ラルクさんはおられますか。ハルトが来た、とお伝えください」
「ハルト様ですね!了解しました!しばらくお待ち下さい!」
僕達はラルクさんに事情を説明して、王宮へ向かうことにした。魔王軍が潜伏しているかもしれないこと、イスタン帝国が攻めてくる可能性があること。
ラルクさんは裏付けが取れ次第、冒険者を集めて待機してくれるそうだ。早速、物見を走らせてくれた。
「ねぇ、ハルト」
「ん?どうした、レディ」
「お買い物したい」
「うん。後でね。今は王宮に……」
「今!したいっ!」
「いや、今は忙しいって……」
「良いではないか!死神も動くなら夜じゃ。こやつにも武器がいるじゃろうしな。ちょっと寄っていこう」
「そういうことなら……」
「へへへへ」
アリスに言われ嬉しそうなレディ。僕達は王宮へ向かう前に買い物をすることにした。
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