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神の子と魔法陣
第35話・めでたしめでたし
しおりを挟む―――ウェスタン王国客間―――
――チュンチュン。
翌朝、僕は目が覚めると小鳥のさえずりが聴こえる。そして夢の続きでも見ているかの様に隣で美人の女性が微笑む。
「おはようございます。旦那様。昨夜は……その……ありがとうございました」
「……はい」
夢ではなかった。僕がアリスの部屋にいる間に、初めての……が終わったのだ。
人魚とっ!!!!!
僕は昨日アリスとした会話を思い出す。
「なぁ、アリス。僕と人魚が子を作ってしまった場合、その子は神の子なのか?」
「無論そうじゃ。前にも話したがお主は神族の血を宿した。相手がどうあれ、神の子は産まれる」
「ということはこれで子供が出来ていたら、1人目って事か?」
「もちろんそうじゃが……正直、相手が人魚のパターンを考えていなかったものでな。どうなるかはわしにもわからん」
「そうなの……やっぱりそうなのね……」
僕はベッドから起き上がり、歯磨きをし、顔を洗う。あぁ、何て朝日がすがすがしいんだ!
「はい、旦那様。タオルです」
「あぁ、ありがとう」
こうして僕は責任を取り、人魚と幸せな家庭を築くと誓ったのでした。
めでたしめでたし。
※まだ続きます
―――ウェスタン王国郊外―――
先のイスタン帝国との戦争でウェスタン王国は大勝利した。今は皆、戦争の後片付けに追われている。
死神ザクスの持っていたヴァンパイアソードはアリスが回収し、後日ドワーフに鑑定させるそうだ。
僕達はマリンに教えてもらった住所を訪ねていた。そしてマリンの書いた地図にある路地裏の家に辿り着く。
「この辺だと思うんだけど……?」
【魔法書販売店】
「ここかな。すいません!誰かおられますか!」
「はぁい!ただいまぁ!」
奥から女性の声がすし、ガチャと入口のドアが開く。
「いらっしゃいませ!ご要件をお伺いいたします!」
「マリンッ!?」
丸い眼鏡をかけ、おさげにしているがマリンにしか見えない。
「いえ!私は双子の妹のアクアです!お姉ちゃんの事をご存知という事は、お手紙にあったハルトさんですね!上がってください!さぁどうぞ!」
陽気な感じのマリンが出てきた。この人がマリンの言ってた優秀な秘書?
「お邪魔します」
部屋に入ると大きな魔法陣があり、周囲の本棚には無数の魔法書が収まっている。
「さぁこちらへどうぞ。散らかってますがいつもこんな感じなので……あはははは!」
「アクアさんこの魔法陣なんだけど?」
「あぁ、それですか!昨夜徹夜で作っていたんですが、転移魔陣です!あ、魔法陣のことです!」
アクアさんが紅茶を用意してくれ、店内には紅茶の良い香りが漂う。お茶や紅茶もコリータ国で作れないだろうか、そんな事をつい考えてしまう。
「転移魔法を研究して早3年。どうしてもうまくいかず、トホホなんです」
「転移魔法か。確かにそれがあれば、中央都市まで一瞬ですね」
「行き先にも魔陣が必要なんですけどね」
「そうなんだ。アリスわかる?」
「うむ。たぶんじゃがスペルの間違いと、単に魔力が足りないだけじゃと思うぞ。プリンがたまに使っていたのを見たことあるが、確かに便利じゃった。消されたら元の場所に戻れないのがデメリットじゃな」
「だ。そうですよ。アクアさん。」
「そ、そうなんですかっ!是非教えてください!」
「いや、今日はその件ではなくて手紙でもあったように秘書の件で来たんだ」
「あ、そうでした。それに関しては丁重にお断りします」
「そうか、受けてくれるか。なら、早速だけど……ん?お断り?」
「すいません。私はこの町から出た事が無いのと、そのぉ、興奮すると、皆さんに迷惑をかけてしまうんです。元々宮廷秘書をしておりましたがそれが原因でクビになりまして……」
「原因って?」
「……小さい頃からお姉ちゃんと魔法の勉強をしてたのですが、興奮するとなぜか召喚魔法が発動するんです。その都度、召喚獣は違うのですがお城を壊したり、お店を燃やしたり、散々な人生でして……。その原因を調べるために魔法書を集めてたところ、こんなに増えてしまって、いっそ魔法書販売店をしようかとお店を出しました。今は興奮しないようにひっそりと魔法の研究をしています」
「うむ。ならばその召喚が起きないようにすれば良いわけじゃな。ちょっと見てみるか」
「そうだな。見たほうが早い」
僕達は城を出て、皆に迷惑のかからない草原へとやって来た。
「さてどうやって興奮してもらうかだけど、たぶんマリンと同じ感じなら……光の剣!」
「キャーーーー!魔法剣ですかっ!初めてみました!すごーーーい!どんな仕組みなんですか!?」
アクアは興奮はしている。が、何も起こらない。普段から魔法を見慣れてるからだろうか。次の手だ。これならどうだ。
「きりん!おいで!」
「はい。ご主人様」
きりんが本来の聖獣の姿で現れる。びっくりしすぎて腰を抜かすアクア。
「あわわわ……本物の聖獣……これは伝説の麒麟!!」
ペロっとアクアのほっぺを麒麟が舐める。顔が高潮していくアクア……その時だった!アクアの背後から突然、シールドナイトが現れる!
「これが召喚魔法かっ!」
「旦那様、ここはおまかせを……」
レディが一太刀でシールドナイトを成敗してしまう。
「ははは……うちの奥さん最強説」
カチンと刀をしまうレディと正気を取り戻すアクア。
「うむ。これはただの保護魔法じゃな。保護魔法に召喚魔法を合成してあるだけじゃ。発動条件は身を守るためにおそらく、血圧の上昇。たぶん体内に魔法陣を書かれている可能性が高い。が、それを消すよりも上書きした方が良さそうじゃ。そうじゃの……」
アリスの提案では魔法障壁を上書きして、彼女が興奮したら魔法障壁が発動するようにすれば誰にも迷惑はかけないのではないか?ということでやってみる。
「合成魔法!魔法障壁!」
アクアの背中に手を置いて、合成魔法を体内に送り込む。
「あ……ぁ……!!」
アクアの体が光り、すぅぅと魔法の光を飲み込んでいく。
「よし。これで大丈夫なはずだ」
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
「どれ、試してみるかの……」
アリスがおもむろに、アクアの背後から胸をわしづかみにする。
「きゃっ!!」
――バイィィィン!
アクアの体から魔法障壁が現れ、アリスの手をはじく。
「ちょ!ちょっと!アリス!それは僕の役……」
「旦那様……今、何と?」
「うむ、大丈夫な様じゃな。しっしっし!」
「もうっ!アリス様!びっくりするじゃないですか!でもこれでもう召喚獣に怯えなくて良いんですね……」
レディに耳を引っ張れながら、僕達はアクアの店へと戻った。
僕にも魔法障壁が必要かもしれない……。
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