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ホンモノと複製
第50話・エスポワール
しおりを挟む―――コリータ王国祝祭運営本部―――
祝祭も佳境になり打ち上げ花火の準備を始める。
「……と言う事で、2時間後に花火の打ち上げを開始。30分前には魔法球を発動。それでは皆、準備をお願いします!」
『はいっ!わかった!やろう!ピューイ』
必ず口笛を吹くヤツがいるな。誰なんだ?
マリンを筆頭にアクア、メリダ、リン、ギル、ドムド、クルミ、ミレー、ベリアル、このメンバーで祭りの最後を飾る。
「ハルト、ちょっと運ぶの手伝って欲しいのだけど」
「ん?メリダ、わかった!すぐ行く。マリンちょっと任せた」
「承知しました」
僕はエルバルト教会に向かう。中に入るとひんやりしていて気持ちが良い。見上げるとマリアの像がうっすら微笑んでいる。
「メリダ、荷物は奥の部屋か?」
僕は奥の部屋に入ると後ろで音がする。カチャン……ん?鍵がかかった?
「メリダ、鍵………ん!?」
「静かにしてください……」
メリダが突然キスをしてくる。そしてそのまま、僕はソファに押し倒された。
「ずっと待っていたんですよ?」
魔物に襲われたならどうにでもするが、どうにもこうにも、こういう事には慣れてはいない。
「わかってると思うけど、僕は……」
「わかっています。だけど今は寝たフリでもしててください」
寂しそうな表情を浮かべるメリダ。僕は黙って目をつむった。抵抗する気はない……2人の唇が重なり、メリダの吐息が近くで聞こえる。
「はぁはぁはぁ……ハルトッ!!」
今日は誰も止めに来ない。僕はメリダを抱きしめた。そして声をかき消すかのように、時間を知らせる教会の鐘の音が鳴り響いた。それはまるでマリアさんが祝福してくれてるかのように……。
『カーンカーンカーンカーン……!』
―――コリータ王宮前広場―――
「遅いっ!あと30分じゃぞ!ハルトのバカタレはどこで何を食べているのだっ!プンプン!」
「アリス……何も食べてないよ。荷物運びと片付けと酔っ払いの連行。ふぅ疲れた……」
ここは王宮広場の高台、ガッコウがある場所だ。ここなら城内を全て見渡せる。
「メリダさんはご一緒ではなかったのですか?」
「あ、あぁ、教会の子が迷子になって探しに行ってしまった。おかげで1人で荷物運びだったよ」
と言う事にしようと、メリダと2人で口裏を合わせた。
「それよりも準備はいいか!魔法球を発動する!」
『オォォォォォォォォォォ!!』
「魔法球発動!」
魔法球を一斉に起動する。ブラックボックスとヴァンパイアソードの記憶技術、プリンの映像化スキル、ドムドさんの技術、お菊の不思議な宙を浮くスキル、そして僕の複製。
1000個の魔法球が動き出す。大中小さまざな大きさで、城内に飛び散って行く。シャボン玉のようにふわふわ浮き、メインの魔法球が映した映像が他の魔法球に投影されていく仕組みだ。
魔法球はウェスタン王国にもエルフの里にも1000個送ってある。自動回避魔法もかけてあるので捕まったり、壊される事もほとんどないだろう。
「こほん。コリータ王国の皆様!そしてウェスタン王国、エルフの里の皆様!お待たせしました!これより打ち上げ花火を開始します!」
城内で魔法球が飛び回り、映像を映し出す。
「何だこれ?どこだ?」
「あっ!お城の上で何かやってるわ!」
「すごいな、これ?どうなって……あっ逃げた!」
ウェスタン王国でもエルフの里でも一部の人を除き、この魔法球の正体を知る者も、これから起こることを知る者もいない。
ざわざわする城内。そしてお城の明かりが消える。
…
……
………
ドンッ!!ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ……!
皆が夜空を見上げる。
パァァァァァァァァァァァァァン!!!
パラパラパラ……!
一輪の花火が夜空を飾った。そしてそれは映像でも映し出される。
『オォォォォ!すごいっ!綺麗!ピューイ!』
城内から歓声があがる。よしっ!今だっ!!
「今だっ!エルフの皆!音楽スタートッ!」
パッと明かりが点き、高台に設けたステージにスポットライトが集まる。そしてベリアルさんに手を引かれ、ミレーさんがステージに立つ。
「ミレー落ち着いて。いつも通りに」
「うん。ベリアル、見ていて。最高のステージにするわ」
魔法球もミレーさんの姿を映し出し、そしてマリンが紹介を始める。
「お待たせしました。それでは皆様、聞いてください。歌姫ミレーで……」
『希望――』
音楽に合わせてミレーさんが歌い始める。合わせて花火も打ち上がる。
『ラララ~ラ~ララ~……』
城内に歓声が上がる!
「あれ!見て!ミレーよ!ホンモノだわ!」
「めちゃ綺麗だ……」
魔法球で歌も映像も届ける。これが僕のサプライズだっ!
―――ウェスタン王国―――
――城内警備室。
「これやばくないか?大好きなんだよ。ミレー」
「俺も!これコリータ王国だよな。行けば良かった!くそぉ!」
――冒険者ギルド。
「おい、ビャッコ?やべー!ホンモノじゃねぇか!」
「めっちゃ歌うめー!セイリュウ見て見ろよ!」
「嘘っ!ゲンブ、どうしよう!私泣けてきた!ぱおん」
コンコン……。
「失礼します。ラルク様、お茶が……ラ、ラルク様?」
「わしミレーちゃんの大ファンなのに!マリン、アクア!どうして教えてくれなかったんだぁ!!」
「ラ、ラルク様!落ち着いて下さい!」
―――エルフの里―――
「花火も歌も綺麗!なんなの!これっ!」
「コリータらしいわよ!ミレー様っっ!」
「キャー!かわいい!!」
サァァァァ……!
「世界樹様、これは何とも優雅ですね。あら?今、一瞬麒麟様も映って――」
「フフ……そうね、ジュリ……」
―――コリータ王国―――
「――よしっ!ミレーさんのサビに合わせて花火を一斉点火だっ!!」
「おうっ!」
「はいっ!」
「行くぞっ!5・4・3・2――!」
『この世界が終わりを告げるまであなたを想いたい……!!!!!』
バァァァァァァァァン!
ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ!
バァァァァァァァァァン!
バァァァァァァァァァァァァン!
パラパラパラ……。
バァァァァァァァァァァァァァン!
ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ!
バァァァァァァァァァァァァァン!!!
パラパラパラ……。
『希望――!!』
バァァァァァァァァン!
ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ!
バァァァァァァァァァン!
バァァァァァァァァァァァァン!
パラパラパラ……。
『そんな言葉で片付けたくはないけれど
そんな言葉しか出てこなくて――』
バァァァァァァァァァァァァァン!
ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ!
バァァァァァァァァァァァァァン!!!
パラパラパラ……。
『死ぬまでずっと希望を胸に生きることでしょう
あなたが迎えに来てくれる日をずっと待ってます――』
ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ!
バァァァァァァァァァァァァァン!!!
パラパラパラ……。
………
……
…
城内は元より仕掛けた僕達もミレーさんの歌に酔い、歓声を上げ、いつの間にか魅入られていた。
まわりの仲間達もそして、魔法球で見ている人達も感極まって涙を浮かべている。
僕は思う。これが金の力……いや、間違えた。世界が平和になると言うのなら最高じゃないかっ!
と、いつの間にかメリダが寄り添って来ている。
「とても素敵ね。あ・な・た」
「う、うん……」
よし。こっちもまたややこしい感じになってきたぞ!
僕達はミレーさんの歌を聞き花火を堪能し、大好評のうちに祝祭は終わりを迎える。
そして僕の肩には、いつの間にか泣きじゃくる妖精が座っていた。
「……え?君は……誰?」
「ピューイ……」
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