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魔王とその仲間
第72話・限界突破
しおりを挟む―――学校屋上―――
「あれを見よ。魔物の群れだ」
月子が指差す方向の暗闇に、月明かりにうごめく赤い光が無数に見える。全部目……だろうか。
「数万はいるね。一番奥に見える巨漢はジャイアントオーガだと思う」
リンは月子に付与された千里眼で、遠くにいる魔物の状況を教えてくれる。そして魔物の勉強を良くしていると感心した。
「いよいよ、わしを見つけた。という事か?」
「見つけた?月子それってどういう……?」
「すいません!すいません!神様だと思い、気配を探ってこちらにきました!!」
「誰だっ!?」
いきなり声がし、後ろを振り返るが誰もいない。
「あ、すいません。こっちです。上です。ボクは妖精族のカルティア。こっちが妹のピューです」
「初めまして、神様。おそらく、月夜見命様ですよね。お初にお目にかかります」
上を見上げると数十体の羽根の生えた生き物が宙に浮いている。手の平くらいの大きさだろうか。
「ふむ。お主ら、わしの正体を知ってる所を見ると神の社の使いか?」
「はい。天照大御神様から月夜見様を探すように言い付かって来ました。ですが、今回のあの魔物は別件です」
「ねぇさん、自分が天界へ帰れぬからわしを使う気だな。知らぬぞ。そんなこと……」
「月子が神様?……そう言えば月夜見命って」
そう言えば書庫にある歴史の本で少しだけその名を見た気がする。
「神の社からのご伝言は他にも御座いますが、あの魔物達が先です。ここから西の方角にて魔界との接点が開き、一番近くにいる神様。つまり月夜見命様の気配に気付き向かっているものだと推測されます」
「やはり来てしまうか。戦闘は苦手なのじゃ。肌が荒れるしのぉ」
「は、はぁ。魔物を率いるのはヴァンパイアのリリス族だと思われます」
「どうか、お逃げください!あの数相手では無理かと存じます。月夜見命様!」
「そうじゃのぉ。先制パンチをくら――!!?」
それは一瞬だった。魔物のいる方角から光の光弾が飛び、月子の胸を貫いた!
「しま……った……油断し……がはっ!」
「え……?」
その場に力なく倒れ込む月子……胸の辺りから血が出ている。そして……動かない。
「月子っ!!」
「月子様!!」
「月夜見命様!!」
慌てて抱きかかえるが、月子の体から力が抜けていくのがわかる。
「メリー!回復魔法を……!」
「もうしてるメス!!」
メリーは既に回復魔法をかけていた。しかし血が止まらない。
「ナツト……よく聞け……がはっ……!」
消え入りそうな声で月子が話かけてくる。
「月子っ!月っ……!?」
月子が俺の首に腕を回し、2人の顔が近付く。そして月明かりの下でキスをし、月子はそのまま目を閉じた……。
「つ、つきこぉぉぉぉぉぉ!!!」
「月夜見命様!大変!ピュー!天界へ急ぎ報告を!」
「は、はい!カルティア兄様!」
「メリー!月子様を病室へ!急いで!リンはお湯を沸かして!」
「わ、わかった!!」
あれ?なんだこれ、どういう事だ。夢か?いや、さっきまで月子が俺の手の中にいたはず……。
月子は皆が見ている前で俺の腕の中で消えた……。何が起こったかわからず動揺する。
「え……月夜見命様……!?」
「え?月子様!どこへ――!」
ドクンっ!
俺の中で怒りと悲しみがこみ上げて来る……!
ドクンっ!!
コロセ……アイツラヲ……コロセ……!!
ドクンっ!!!
「……全員、学校内へ避難。チハヤ、リン、メリー。今までありがとう。楽しかった……」
「駄目ですっ!ご主人様!!あの数相手は無理です!逃げましょう!」
怒りが腹の底から湧き上がり、おさまりがきかない。チハヤが俺の腕を掴むが……もう止められない。
『――混沌の地より生まれし竜、我の声に答え、導け。我はこの世界を破壊するもの也……』
「ご主人様っ!いけません!逃げま――!!」
『――竜の嘆き……百叫!!!!!』
風が止み、魔物達も異変に気付き動きが止まる。月をどす黒い雲が隠し、辺りは暗闇に包まれる……。
――そして天から魔物の群れに一筋の光が降り注ぐ……次の瞬間!!
ズドォォォォォォォォォォォォン!!!!!
ゴゴゴゴゴ……!
轟音と閃光が魔物達に向かって降りそそぐ!
ズドォォォォォォォォォォォォン!!!
ゴゴゴゴゴ……!
ズドォォォォォォォォォォォォン!!!
ゴゴゴゴゴ……!
ズドォォォォォォォォォォォォン!!!
ズドォォォォォォォォォォォォン!!!
ゴゴゴゴゴ……!
ズドォォォォォォォォォォォォン!!!
ズドォォォォォォォォォォォォン!!!
ゴゴゴゴゴ……!
その光は止まらない!轟音が響きわたり、閃光が無数に魔物の上に落ち、悲鳴や叫びが聞こえてくる!
ドクンっ!
「ユルサナイユルサナイユルサナイ……!」
ドクンっ!!
「シネシネシネ……シネェェッ!!」
ズドォォォォォォォォォォォォォン!!!
ズドォォォォォォォォォォォォォン!!!
ゴゴゴゴゴ……!
ズドォォォォォォォォォォォォォン!!!
ズドォォォォォォォォォォォォォン!!!
ゴゴゴゴゴ……!
ズドォォォォォォォォォォォォォン!!!
ゴゴゴゴゴ……!
鳴り止まない轟音と閃光。
「こ、これは……神族魔法……このお方も神様……」
「お兄ちゃん怖い……世界が無くなっちゃう!」
「ご主人様!もういいです!魔物はもういませんっ!」
「ご主人様!もうやめて!死んじゃう!!!」
「ご主人タマっ!!」
「……がはっ!」
血……?これが俺の限界か……。
月子を……守れなかった。目の前にいたのに。ごめん……俺もすぐにそっちにいくよ……。
俺はチハヤ達の声を聞きながら、気を失うまで神属魔法を打ち続けた……。
………
……
…
―――異次元空間月子の部屋―――
「こ、ここはどこだ……俺は死んだのか?」
「よぉ。また会ったの」
「え?……月子っ!!」
目の前にいた月子を抱きしめる。
「よせっ!離れろっ!さわるなっ!痛い!ばかっ!」
ゴンッ!と月子からゲンコツを食らった。
「痛い……」
「ここはわしの作った異次元空間じゃ。消える間際、お主の体内に入り魔力をもらい、この空間を作った」
「死んだんじゃないのか?」
「たわけ、生きておるわ。ただ傷が癒えるまでここで休養じゃ。お主の魔力で外に分体くらいは作れるがの」
「キスをした」
「あれはお主の体内に入る為に必要な行為じゃ。二度とせぬ。忘れろ」
「でも……キス……」
ゴンッ!またゲンコツを食らった。
「痛い……」
「それよりも礼を言うぞ、全部見ておった。お主が魔力を使いきって死ぬ前に、わしが気を失わせたがの。魔物は去った様じゃが……やりすぎじゃ」
「本当に死んでないんだな?」
「生きておるわ。しばらく眠るからわしに魔力を供給せい。お主らは引き続き魔物の警戒を怠るなよ」
「わかった。必ずまた……」
言いかけて僕は意識が遠のいた。
「ふっ。一丁前になりおって。ありがとの、ナツト……」
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