異世界ざこぴぃ冒険たん

ざこぴぃ。

文字の大きさ
74 / 113
魔王とその仲間

第72話・限界突破

しおりを挟む

―――学校屋上―――

「あれを見よ。魔物の群れだ」

 月子が指差す方向の暗闇に、月明かりにうごめく赤い光が無数に見える。全部目……だろうか。

「数万はいるね。一番奥に見える巨漢はジャイアントオーガだと思う」

 リンは月子に付与された千里眼で、遠くにいる魔物の状況を教えてくれる。そして魔物の勉強を良くしていると感心した。

「いよいよ、わしを見つけた。という事か?」
「見つけた?月子それってどういう……?」
「すいません!すいません!神様だと思い、気配を探ってこちらにきました!!」
「誰だっ!?」

いきなり声がし、後ろを振り返るが誰もいない。

「あ、すいません。こっちです。上です。ボクは妖精族のカルティア。こっちが妹のピューです」
「初めまして、神様。おそらく、月夜見命ツクヨミ様ですよね。お初にお目にかかります」

 上を見上げると数十体の羽根の生えた生き物が宙に浮いている。手の平くらいの大きさだろうか。

「ふむ。お主ら、わしの正体を知ってる所を見ると神の社の使いか?」
「はい。天照大御神様から月夜見様を探すように言い付かって来ました。ですが、今回のあの魔物は別件です」
「ねぇさん、自分が天界へ帰れぬからわしを使う気だな。知らぬぞ。そんなこと……」
「月子が神様?……そう言えば月夜見命って」

 そう言えば書庫にある歴史の本で少しだけその名を見た気がする。

「神の社からのご伝言は他にも御座いますが、あの魔物達が先です。ここから西の方角にて魔界との接点が開き、一番近くにいる神様。つまり月夜見命様の気配に気付き向かっているものだと推測されます」
「やはり来てしまうか。戦闘は苦手なのじゃ。肌が荒れるしのぉ」
「は、はぁ。魔物を率いるのはヴァンパイアのリリス族だと思われます」
「どうか、お逃げください!あの数相手では無理かと存じます。月夜見命様!」
「そうじゃのぉ。先制パンチをくら――!!?」

 それは一瞬だった。魔物のいる方角から光の光弾が飛び、月子の胸を貫いた!

「しま……った……油断し……がはっ!」
「え……?」

 その場に力なく倒れ込む月子……胸の辺りから血が出ている。そして……動かない。

「月子っ!!」
「月子様!!」
「月夜見命様!!」

 慌てて抱きかかえるが、月子の体から力が抜けていくのがわかる。

「メリー!回復魔法を……!」
「もうしてるメス!!」

 メリーは既に回復魔法をかけていた。しかし血が止まらない。

「ナツト……よく聞け……がはっ……!」

消え入りそうな声で月子が話かけてくる。

「月子っ!月っ……!?」

 月子が俺の首に腕を回し、2人の顔が近付く。そして月明かりの下でキスをし、月子はそのまま目を閉じた……。

「つ、つきこぉぉぉぉぉぉ!!!」
「月夜見命様!大変!ピュー!天界へ急ぎ報告を!」
「は、はい!カルティア兄様!」
「メリー!月子様を病室へ!急いで!リンはお湯を沸かして!」
「わ、わかった!!」

 あれ?なんだこれ、どういう事だ。夢か?いや、さっきまで月子が俺の手の中にいたはず……。
 月子は皆が見ている前で俺の腕の中で消えた……。何が起こったかわからず動揺する。

「え……月夜見命様……!?」
「え?月子様!どこへ――!」

ドクンっ!

俺の中で怒りと悲しみがこみ上げて来る……!

ドクンっ!!

コロセ……アイツラヲ……コロセ……!!

ドクンっ!!!

「……全員、学校内へ避難。チハヤ、リン、メリー。今までありがとう。楽しかった……」
「駄目ですっ!ご主人様!!あの数相手は無理です!逃げましょう!」

 怒りが腹の底から湧き上がり、おさまりがきかない。チハヤが俺の腕を掴むが……もう止められない。

『――混沌の地より生まれし竜、我の声に答え、導け。我はこの世界を破壊するもの也……』
「ご主人様っ!いけません!逃げま――!!」


『――竜の嘆きドラゴングリーヴ……百叫ビャッコウ!!!!!』


 風が止み、魔物達も異変に気付き動きが止まる。月をどす黒い雲が隠し、辺りは暗闇に包まれる……。
 ――そして天から魔物の群れに一筋の光が降り注ぐ……次の瞬間!!

ズドォォォォォォォォォォォォン!!!!!
ゴゴゴゴゴ……!

轟音と閃光が魔物達に向かって降りそそぐ!

ズドォォォォォォォォォォォォン!!!
ゴゴゴゴゴ……!
ズドォォォォォォォォォォォォン!!!
ゴゴゴゴゴ……!
ズドォォォォォォォォォォォォン!!!
ズドォォォォォォォォォォォォン!!!
ゴゴゴゴゴ……!
ズドォォォォォォォォォォォォン!!!
ズドォォォォォォォォォォォォン!!!
ゴゴゴゴゴ……!

 その光は止まらない!轟音が響きわたり、閃光が無数に魔物の上に落ち、悲鳴や叫びが聞こえてくる!

ドクンっ!

「ユルサナイユルサナイユルサナイ……!」

ドクンっ!!

「シネシネシネ……シネェェッ!!」

ズドォォォォォォォォォォォォォン!!!
ズドォォォォォォォォォォォォォン!!!
ゴゴゴゴゴ……!
ズドォォォォォォォォォォォォォン!!!
ズドォォォォォォォォォォォォォン!!!
ゴゴゴゴゴ……!
ズドォォォォォォォォォォォォォン!!!
ゴゴゴゴゴ……!

鳴り止まない轟音と閃光。

「こ、これは……神族魔法……このお方も神様……」
「お兄ちゃん怖い……世界が無くなっちゃう!」
「ご主人様!もういいです!魔物はもういませんっ!」
「ご主人様!もうやめて!死んじゃう!!!」
「ご主人タマっ!!」
「……がはっ!」

血……?これが俺の限界か……。
月子を……守れなかった。目の前にいたのに。ごめん……俺もすぐにそっちにいくよ……。

 俺はチハヤ達の声を聞きながら、気を失うまで神属魔法を打ち続けた……。

………
……


―――異次元空間月子の部屋―――

「こ、ここはどこだ……俺は死んだのか?」
「よぉ。また会ったの」
「え?……月子っ!!」

目の前にいた月子を抱きしめる。

「よせっ!離れろっ!さわるなっ!痛い!ばかっ!」

ゴンッ!と月子からゲンコツを食らった。

「痛い……」
「ここはわしの作った異次元空間じゃ。消える間際、お主の体内に入り魔力をもらい、この空間を作った」
「死んだんじゃないのか?」
「たわけ、生きておるわ。ただ傷が癒えるまでここで休養じゃ。お主の魔力で外に分体くらいは作れるがの」
「キスをした」
「あれはお主の体内に入る為に必要な行為じゃ。二度とせぬ。忘れろ」
「でも……キス……」

ゴンッ!またゲンコツを食らった。

「痛い……」
「それよりも礼を言うぞ、全部見ておった。お主が魔力を使いきって死ぬ前に、わしが気を失わせたがの。魔物は去った様じゃが……やりすぎじゃ」
「本当に死んでないんだな?」
「生きておるわ。しばらく眠るからわしに魔力を供給せい。お主らは引き続き魔物の警戒を怠るなよ」
「わかった。必ずまた……」

言いかけて僕は意識が遠のいた。

「ふっ。一丁前になりおって。ありがとの、ナツト……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

悪役令嬢と入れ替えられた村娘の崖っぷち領地再生記

逢神天景
ファンタジー
とある村の平凡な娘に転生した主人公。 「あれ、これって『ダンシング・プリンス』の世界じゃない」 ある意味好きだった乙女ゲームの世界に転生していたと悟るが、特に重要人物でも無かったため平凡にのんびりと過ごしていた。 しかしそんなある日、とある小娘チート魔法使いのせいで日常が一変する。なんと全てのルートで破滅し、死亡する運命にある中ボス悪役令嬢と魂を入れ替えられてしまった! そして小娘チート魔法使いから手渡されたのはでかでかと真っ赤な字で、八桁の数字が並んでいるこの領地収支報告書……! 「さあ、一緒にこの崖っぷちの領地をどうにかしましょう!」 「ふざっけんなぁあああああああ!!!!」 これは豊富とはいえない金融知識と、とんでもチートな能力を活かし、ゲーム本編を成立させれる程度には領地を再生させる、ドSで百合な少女の物語である!

日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。

wakaba1890
ファンタジー
召喚獣。 それは向こう側とされる所から、10歳を迎えた日本人の子供の下に召喚されるモンスターのことである。 初代天皇・神武天皇が日本を建国した際に書かれた絵画には彼は金鵄と呼ばれる金色に輝く鵄(とび)と契約したのが原初となっている。 そして、縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、戦国時代から近代から今に至るまで、時代を動かしてきた人物の側には確かに召喚獣は介在していた。 また、奇妙な事に、日本国に限り、齢10歳を迎えた日本在住の日本人にのみ体のどこかから多種多様な紋章が発現し、当人が念じると任意の場所から召喚陣が現れ、人ならざるモンスターを召喚される。 そして、彼らモンスターは主人である当人や心を許した者に対して忠実であった。 そのため、古来の日本から、彼ら召喚獣は農耕、治水、土木、科学技術、エネルギー、政治、経済、金融、戦争など国家の基盤となる柱から、ありとあらゆる分野において、今日に至るまで日本国とアジアの繁栄に寄与してきた。 そして、建国から今まで、国益の基盤たる彼ら数万種類以上をも及ぶ召喚獣を取り締まり管理し、2600年以上と脈々と受け継がれてきた名誉ある国家職がーーーーー国家召喚獣管理官である。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...