異世界ざこぴぃ冒険たん

ざこぴぃ。

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南の大陸の下僕

第87話・竜の嘆き百叫!

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―――ウィンダ町東門―――

 町の東、キウイ山の方角に魔物の群れが見えた。僕が東門の城門に上がると、ギルド長と門番達が近寄って来る。

「なんだ、君は?」
「ランクCの冒険者です」
「ランクCの冒険者は後ろに下がっておれ!」
「おぉい!にいちゃん!俺達の後ろに下がってろ!あぶねぇぞ!」

 パイソンさんが叫ぶ。いや、それはこっちのセリフなのだけど。

「みなさぁん!危ないから下がってて下さい!後、耳を塞いでて下さいねぇ!」

 ざわざわし始める数百人の冒険者達。さて、一応忠告はした。
 ふぅ……空気が変わるのがわかる。魔物の気配がだんだん近づいてくる。

「おい、なんだ?」
「あれは誰だ?」
「冒険者か?」
「あれ?あれはハルトさん?」

 城門に集まる冒険者の後方にエリサの姿も見えた。大丈夫……エリサの身は僕が守る。

『――混沌の地より生まれし竜、我の声に答え、導け。我はこの世界を破壊するもの也――』

ゴロゴロゴロゴロ……!!
どす黒い雲が数キロ先に広がり、雷が鳴り始める。
ピカッ!ゴロゴロ……!!

「なんだあの不気味な雲は!?おいっ!あのにいちゃんか!」
「き、君はいったい何をしているっ!!」
「誰だ!魔物の手先か!おい!誰かそいつを止めろ!」

 ……ナツト。君が残した手紙に書いてあった魔法。
 そして君が得意とした魔法!今ここに再現させるっ!!

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」



竜の嘆きドラゴングリーヴ百叫ビャッコウ!!!!!』



 風が止み、魔物達も異変に気付き動きが止まる。太陽を雲が隠し、辺りは暗闇に包まれる……。
 そして……天から魔物達の群れに一筋の明かりが漏れる――!次の瞬間っ!!

キィィィィィィィン!
ズドォォォォォォォォォォォォン!!
ゴゴゴゴゴ……!

轟音と竜の姿をした閃光が魔物達に向かって降りそそぐ!

ズドォォォォォォォォォォォォン!!
ゴゴゴゴゴ……!
ズドォォォォォォォォォォォォン!!
ゴゴゴゴゴ……!
ズドォォォォォォォォォォォォン!!
ズドォォォォォォォォォォォォン!!
ゴゴゴゴゴ……!
ズドォォォォォォォォォォォォン!!
ズドォォォォォォォォォォォォン!!
ゴゴゴゴゴ……!

 止まらない!轟音が響きわたり、閃光が無数に魔物の群の上に落ちる!!
 遠くから魔物の悲鳴や叫び声が聞こえてくる!飛行していたドラゴンも次々と落下していく。

「くっ!ナツトッ!これは結構きついっ!もっと軽めのにしてくれよなっ!!」
「ほほぅ……これが竜の嘆きか。良い眺めじゃ」

ズドォォォォォォォォォォォォン!!!
遅れて、凄まじい爆音と衝撃波がやってくる!!
キィィィィィィィィィィィン!!!

「耳がぁぁぁ!耳をふさげっ!!!」
「あわ……あわあわ……!」

腰を抜かして動けないギルド長。

「こ、この魔法はっ!本当に存在したのっ!?おとぎ話……じゃなかったのね……!あぁ……!」

耳を抑えながら、涙を流し震えるエリサ。
ゴロゴロ……!
しばらくすると轟音が鳴り止み、太陽が顔を出す。

「はぁはぁ……ほとんど倒したか。しかしこれはきつい。ナツトはなんて魔法を使ってやがったんだ。まったく」
「うむ。見事じゃ」
「おい!見ろっ!!まだトロールとゴーレムが生きているぞ!」

 生き残った超大型トロールとゴーレム。体力はハンパないようだ。

「ちょっと!ハルト!私にもやらせなさいっ!」
「へっ?プリンいたの?」
「ずっと部屋におった」
「アリス、先に言えよ。びっくりするから……」

ふわふわと宙に浮くプリン。

「私の名は魔王フジン!」

どよどよ……!

「おい。魔王婦人だってよ!あのにいちゃんが魔王ってことか!どうりで……!」

ざわざわ……!
いや、違うよ。僕は魔王じゃないよ。

「わたしは魔王婦人ではなぁぁぁぁぁい!!」

 「どっちだよ!?」というツッコミを皆がしたいのに、言い出せない雰囲気をかもし出すプリン。

「炎の精霊よっ!今こそ!我に裁きの力を!!」


特級火球エクストラファイアーボール!!』


ゴゴゴゴゴゴゴ……!!
空から火球が……町より遥かに大きい火球が落ちてくる!!

「ギャァァァァァァァ!!!」

町の人達の悲鳴が聞こえる……。

「滅びよ――」

ズドォォォォォォォォォォォォォン!!!
火球が生き残った魔物をすべて焼き尽くす!

「ハッハッハ!おろかな魔物共めっ!恐れいったか!!ハッハッハッハッハッハ!」

唖然とする冒険者達。
そこには高らかに笑う魔王婦人の姿があった。

「……あれ?僕の魔法いらなかったんじゃぁ……」
「ハッハッハッハ!!ハァァ……ゲホゲホッ」

 疲れきった僕と、むせるプリンを町の皆が呆然と眺めていた……。

―――ウィンダ町ギルド―――

「本当にすまなかった。そして本当にありがとう!!」

パチパチパチ!!
僕はこの功績が認められ、最高クラスのSS冒険者として登録された。

「にいちゃん……いや、ハルト殿。俺の目に狂いはなかった。SSランクおめでとう!そして俺達兄妹を弟子にしてくれ!たのむっ!」
「嫌です」
「えぇぇぇぇぇぇぇ!」

不満の声が聞こえる。

「すいません。疲れたので宿に帰ります。そうそうパイソンさん。ランク上がったので、これでキウイ山には1人で行けるようになりました。道案内はお断りします。お世話になりました」
「師匠!そんなこと言わないでぇぇ―――」

バタン……!
 ギルドを後にし、キウイ山を見つめる。さすがに今日はもう魔力が少ない。キウイ山は数日休んでからにしよう。
 宿屋に帰る際にクラウド教会の前を通る。教会の方に目をやると墓地にエリサの姿が見えた。

「エリサさんっ!」

 僕達に気付き、こちらに気付き走ってくるエリサ。
 ガシッ!と人目のある街道で抱きつかれてしまった。そして泣き出す彼女。

「あれか。情緒不安定なのか?」
「更年期とかいうやつですわね」

 首を傾げるアリスとプリン。いや、色々あったんです。昨夜……すいません。

「と、とりあえず教会に入ろう。」
「はい……ヒック」

泣く彼女を教会内まで連れて入る。

「急にどうしたんですか?エリサさん」

しばらく泣いていたが、落ち着いて話し出す彼女。

「ヒック……あの……あの魔法……ヒック。ナツト様の魔法じゃないのですか?」
「え?ナツトを知ってる?え?どういう事ですか?」

エリサは本棚から1冊の本を取り出す。
『神族魔法と固有スキル』と書かれた本。ペラペラとめくり、このページを見て欲しいと手渡される。

【神族魔法を私は見た。天を貫き、竜のごとく雷鳴が轟き、幾千の魔物をほふる。それは神が私に見せてくれた奇跡の魔法、その名は――】
「……竜の嘆きドラゴングリーヴ百叫ビャッコウ

 その後、ペラペラとめくると著者が聞いた話や、うわさ話をまとめた神族魔法や固有スキルが書いてあった。
 挿絵付きで、世界の終末日エンド・ヴァーストも描かれている。THE複製ザコピーの固有スキルもある。若干脚色されたり、説明が足りない部分もあるが大筋合っていた。
 もしや……マリンやリン達が言っていた古代魔法の本とはこの事なのだろうか。
――ペラ。

【あとがき――私の名前はチハヤ・フセ。かつてこの世界を救ってくれたご主人様の従者。従者でありながら、私はご主人様を愛してもいました】
「チハヤ……フセ……?」

 ナツトの指輪をはめた時に、うっすら記憶が見えた。たしかチハヤと言っていたような……?

「チハヤ・フセは……私の祖母なのです」
「そうだったのか……」
「はい。祖母はこの土地に流れ着きこの町で教会を建てたと聞いています。母はエルフ族と結婚し、今でもエルフの里にいるはずです……」

遠くを見つめ、涙ぐむエリサ。

「私もエルフの里で平和に暮らしていました。だけど亜人族と恋をし、子供が産まれたのです……エルフ族の長にそれがバレてしまい、主人ともども里を追い出されました。人間族は良くて亜人族との結婚は駄目だなんてっ!!うぅ……娘に会いたい……!」

涙ながらに語るエリサ。

「お子さんがいらしたのですね。僕もエルフの里にはよく行きます。今回の旅もエルフの里の依頼みたいなものでして。お子さんに会えたらお伝えしましょうか?」
「!? でも……今更どんな言葉をかけたらいいのか。あぁ、エル……会いたい」
「え?今……エルって……?もう一度、娘さんのお名前聞いてもいいですか?」

聞き間違いかと思い、聞き直す。

「娘の名前は……エェ・ルゥ」

彼女の唇はそう優しく答えた。
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