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南の大陸の下僕
第89話・エリサとエル
しおりを挟む―――クラウド教会―――
翌日、僕達は教会にエリサを訪ねていた。
コンコンッ!キィィィィ……。
「おはようございます。エリサさんおられますか?」
「はぁい!おはようございます!ご主人様!少々お待ちを!」
「エリサさん、急ぎませんのでゆっくり――」
「ん?ご主人様?はてはて?前はハルトの事をご主人様なんて言っておったかの?」
「ボス。これは事件の匂いがしますわ」
「うむ。ハルトよ……お前やったのか?」
「……や、やってません」
「嘘をつけっ!!ここに証拠があるんだ!」
バンっ!とプリンが机の上に証拠を出す。
「……いや。それは違……」
「ハルト、もう良い。わかっておる。これはお前の物なんだろ?田舎のかぁちゃんが泣いてるぞ?」
「泣いてるぞ!」
「……あのぉ。僕の描いたドラゴンの絵を思い出した様に出すのやめてもらえます?」
まだ持ってたのか、その絵……。
「はい。お待たせしました!」
「あっ、エリサさん……」
何だかエリサがいつもより綺麗に見える。化粧?をしてたのか?
アリスとプリンはまだ2人で芝居を続けてた。こっちはほっておこう。
「これ……キウイ山にあった果実なんだけど、調べたら妖精の蜜を精製出来るらしいんだ。誰か精製できる人を知らないか?」
「あぁ、それでしたら妖精王か、エルフの調合師に頼めば可能かと」
「いや、妖精王がキウイ山にいると思ったらいなかったんだ。エルフの調合師はどこにいるかわからないか?」
「そうなのですね……わかりました。私がやってみますね。昔、一応調剤師もしていたので……時間がかかると思いますが出来ると思います」
「あぁぁぁぁぁぁ!!思い出したぞ!」
突然、アリスが大声を上げエリサを指差す。
「びっくりした!アリスまだ芝居を続けてるのか!」
「たわけ、違うわ!エリサ、お主有名な医者じゃったろ?ロゼとセシルの言っていた師匠と言うのはこやつじゃ!」
「えぇぇぇぇぇぇぇ!」
そういえばエリサって聞いたことあると思った!
「あら!よくご存知で!ロゼもセシルもお元気ですか?」
「2人共、うちの国で医者をしてます」
「そうなんですかっ!つくづく、ご主人様とはご縁がありそうですね」
ニコッと笑う彼女。
「……ピクッ!今、ご主人様と言わなかったか?」
「はい、ボス。私も聞きました」
そのクダリ2回目だから……。
「精製するのに1ヶ月はかかると思います」
「結構かかりそうだな……。そしたらお任せして良いか?」
「えぇ、もちろんです。ご主人様」
また言った!て顔をするアリスとプリン。
「ところで、もしかしてこの飾ってある4人てナツト達だったりするのか?」
「私も最初はそう思ったのですが、あまりに古く色あせていたのと……そのカーテンの陰にもう1枚ありまして、全部で5枚あるんです」
「5枚?」
僕はカーテンをめくってみる。そこには色あせてない絵が飾られていた。
「アリスっ!この人っ!」
「……うむ。キウイ山のゾンビだな」
「アキネ……!?」
そう日記には書いてあった。
「アキネさんと言われるのですか。ナツト様達と関係があるのかしら……」
色々考えてみたけど、結局わからずじまいだった。僕はそのままカーテンを元に戻した。
「それでは1ヶ月後にまた来られますか?それまでに精製しておきます」
「そうだな……ちょっとやらなきゃならない事も出来たし」
僕達は一旦、コリータ王国に帰る事にした。
帰る前に買い物をする!と、言う事を聞かない子供が3人いたのでその日はウィンダの町で買い物をしてから帰る事になった。
―――コリータ王国―――
――翌日。
「ただいまぁ」
「国王様!おかえりなさいませっ!!もう連絡がつかないからどうしようかと!」
「マリン何があったんだ?」
「っと、ちょっとお耳を……」
「ん?何だ?」
マリンが僕に近付き小声で話す。
(ゼシカ様、レディ様と……なぜかメリダさんの妊娠が判明致しまして、つきましては――)
「……う、うん。そうか。そうなのか!そうなのだろう!ははは……は……は……」
落ち着こう。とりあえず落ち着こう。そうだ!名前を考えないと!えぇと!
「どうしたのじゃ?」
「うぅん!アリス、なんでもないでちゅよ!」
「なんじゃ?気持ちの悪い……」
「……」
冷ややかな目で見てくるアリス。
「マ、マリン。その話は後で詳しく……こほん。先にエルとアカシア、ドムドさんを呼んでくれないか?」
「わかりました。食堂でよろしいですか?」
「あぁ」
―――食堂―――
「あなたおかえりなさい」
「国王様、お待たせしました」
「旦那!どうしたんでぃ!」
エルとエルの母、エリサの顔が重なる。
「エルはちょっと待ってて。アカシア、ドムドさん先にこれを見てくれ」
僕は南の大陸の地図を広げる。
「実はウィンダの町まで行くと念話器が通じない事がわかった。そこでここから南東、サウスタンの町からさらに東の大陸の先端……ウィンダの町に一番近い場所に町を作ろうと思う」
「なるほど。そこに拠点ができれば南の大陸との行き来などに使えると」
「そうなんだ。念話器もそうだが転移魔陣を起き、行き来できるようにすれば――」
僕は3人に妖精の実を渡す。
「これを食べて見てくれ」
3人は顔を見合わせ、パクっと一口食べて見る。
「んんん!!美味しいっ!」
「これは美味しい果物ですな!」
「初めて食べました。美味しい。これはコリータでも栽培できないでしょうか」
「そうなんだ。妖精の蜜の原料になる、妖精の果実。これを栽培したいと思う」
「わかりました。新しい町の設計と資材をすぐに手配をかけます」
「わしは念話器とトロッコと……そうじゃ。周辺のドワーフや亜人にも、新しい町への勧誘をするか。これはまた忙しくなるのぉ!」
「2人は早速取りかかってくれ。僕はエルと少し話がある」
「かしこまりました」
アカシアとドムドさんは、あぁでもないこうでもないと言いながら食堂を後にした。
さて、問題はエルの方だ。
「急にどうしたの?あらたまって」
「実は……」
エルにウィンダの町にいた母の話を一からした。その……あの話以外を。
「何て事なの!?母さんが……母さんが生きていたなんて……うぅ……」
涙を流す彼女。
「エルが良ければ、エリサさんをコリータに呼ぼうと思う。どうかな」
コクコクとうなずく彼女。
「会いたい……ぐす……」
「わかった。1ヶ月後には迎えに行くから一緒に行こう。クロも一緒に行けば乗って帰れるだろう」
「わかった!ありがとう!」
エルが抱きついてくる。
「マリンに言って、エルの部屋の近くを用意して迎えいれよう」
エルにぎゅぅ……と抱きしめつけられる。よほど嬉しいのだろう。
――ガチャ。
「あれ?ねぇさんは……?っと。ご主人様おかえりなさい!」
「あぁ、アクア。ただいま。マリンは秘書室にいるよ。ちょうど良かった。調べて欲しいことがあるんだが」
「はいはい、何でしょう~?」
「南の町のウィンダでアキネという人物の肖像画と、そういう名のアンデッドと出くわしたんだ。ナツト関連の本にそういう名前がないか調べてくれないか」
「アキネ……ね。了解しましたぁ~」
さて、1ヶ月の間にすることが山ほどあるな。とりあえず……。
「エル、そろそろ離してくれない?」
「無理です」
エルを引きはがす所から始めるので……。
「そろそろ離してくれないか」
「嫌です」
「色々やることが――」
「駄目です」
結局その日はエルをぶら下げたまま仕事をすることになったのだった。
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