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南の大陸の下僕
第91話・秋音の日記
しおりを挟む―――クラウド教会―――
「THE複製!」
プリンがキウイ山から持ち帰ったアキネが書いたと思われる日記を、僕が複製しプリンが修復魔法をかける。完全ではないが読めるほどには修復できた。
――ペラ。
『――目が覚めたらこの世界にいた、ここはどこだろう』
『――神様が私の前に現れ、命をくれた。この方について行こう』
――ペラ。
『私は3番目の複製体……。そうご主人様に言われた』
『4番目の複製体をさぞ気に入っておられるようだ。ご主人様は、私の所へは帰ってこない』
――ペラ、ペラ。
『――ナツトが憎い……』
『今日、ご主人様がいらして天之叢雲で私を刺した。実験だそうだ』
――ペラ、ペラ。
『あの子たちはどうなったんだろう。呪いで自我を失う前に一度……』
『ようやくあの子を見つけたが、半身アンデッドになった私を殺そうとした』
――ペラ。
『もう記憶すら曖昧だ。何十年たったのだろう。誰かいっそ、殺してほしい』
『また失敗した。アンデッドしか召喚できない……つらい……くるしい……』
――ペラ。
『なぜ私はこの世界に生まれたの。こんな世界滅んでしまえばいい……』
『希望なんてない。死ぬ事もできない。何もない。ただそれだけ。そこにいるだけ』
――ペラ。
――ペラペラペラペラ。
途中からはもう字ですらなかった。呪いによってアンデッド化していったアキネはそれでも日記を書こうとしたのだろう。
「やはりアキネとは、ハルトの複製であったか」
「そうみたいだな。そしてナツトの事を恨んでいた……」
「日記があった場所に、こんな物もあったわ」
「手紙?」
それはご主人様であろう者を想い、何枚も何枚も書き直した詩だった。そこには愛や、憎しみ、悲しみなど様々な彼女の気持ちが詩として残されていた。
そして【希望】と題が書かれた手紙があった。
『何十年何百年、あなたを想い希望を捨てなかった。この世界が終わりを告げるまであなたを想いたい』
「これってミレーさんが歌ってた歌詞……」
「どういう事?」
歌姫ミレーの歌と同じ様な歌詞が書かれている。エルも同じ事を思ったみたいだ。
「帰ってからミレーさんに聞いてみよう。その方が早い」
エルとエリサは妖精の蜜を持ってそのままエルフの里に行ってもらった。
僕達は一路コリータに戻りミレーを訪ねた。
―――コリータ王国音楽堂―――
――コンコン、ガチャ。
「こんにちは。ミレーさんいますか?」
「はぁい!あっ!ご主人様!上がって下さい!今、ミレーさんを呼んできます!スー」
「ご主人様!いらっしゃいませ!シー」
「ご主人様!お茶をどうぞ!ショウ」
「ショー、スー、シー!3人共元気そうで良かった。ちょっと待たせてもらうよ」
しばらくして……。
「ハルトさんっ!わざわざ来て頂かなくとも、こちらから参りましたのに!」
「あぁ、ちょっと聞きたい事があってね。3人共、ミレーさんと2人で話があるから席を外してくれないか」
「はぁい!わかりましたっ!」
猫族3人はパタパタと走って行った。
「ミレーさん、これを見てほしい」
――パラ。ミレーにアキネの手紙を見せる。
「――何十年何百年あなたを……え?これはっ!!希望の歌詞にそっくり……どうして……?」
今までのいきさつをかいつまんで話す。
「そうだったんですか……あの歌の楽曲は私が書いたもので間違いないのですが、歌詞はその……」
少しためらいながら続ける。
「……歌詞はベリアルが用意してきたのです」
「ベリアルさんが!?」
「えぇ。なんでもある人を想って書いたとか」
「ベリアルさんは今日はおられますか?」
「それが数日前……」
ザァァァァ……!
「ご主人様!!聞こえますか!」
急にマリンの声がする。
「え?あぁ、マリン。どうした?そんなに慌てて」
「宝物庫に保管していた天之叢雲が無くなっていると報告が!急ぎ城へお戻りください!」
「わかった。すぐ戻る」
ザァァァァ……!
「ミレーさん一緒に行きながら話そう」
「はい」
僕とミレーは急ぎ城へ向かう。
「それでベリアルさんは?」
「はい。数日前から姿が見えず、特にどこへ行くとも言わずいないのです。気になるのは、ハルトさん達が南の大陸へ行った後くらいでしょうか」
もしかしてアキネとベリアルに何か関係があるのだろうか。
―――コリータ城宝物庫―――
「マリン!」
「あっ!ハルト様!アクア来られましたよ!」
「これを見てください」
アクアが手紙を差し出す。
【勝手な真似をお許しください。天之叢雲をお借りします。ベリアル】
「宝物庫の在庫確認に来たらこれが……すいません。いつから無くなっていたのかもわからず」
「……やはりベリアルさんか。手分けして探そう。嫌な予感がする」
僕は急ぎ動ける者を集めて捜索を開始した。
「嫌な予感がするの。複製とはいえ天之叢雲の使い方を間違えれば、ミヤビと同じ事になりかねん……」
――それから三日後の夜。
「ご主人様!!ベリアルさんを発見!ウェスタン王国西の森に姿を確認!しかし……」
「カエデ!?どうした!!」
カエデから念話が入るも、途中で念話が途切れてしまった。
「マリン!急ぎウェスタンへ向かう!!エルとエリサをコリータに呼び戻しておいてくれ!ギル達はコリータの守備強化を!!」
身重のレディやゼシカには頼れない。動けるのはミヤビとリンか。
「ハルトッ!用意できたお!」
「まさか弟子までもが天之叢雲に翻弄されるとは……」
僕達は転移魔陣でウェスタン王国に行き事情を伝える。何かあればリンはゼシカを連れて逃げるように頼んだ。
「あなた、くれぐれも気をつけて……」
「ゼシカ、大丈夫だ。行ってくる」
そしてきりんに乗り、ミヤビと西の森へ向かう。
「アリス様。天之叢雲は折れ、精製されて皆の武具になったのではないのですか?」
「いや。ベリアルが持って行ったのは複製品じゃ。本来の8割程度の出来じゃがの。本物の天之叢雲の欠片はドムドが保管しておる」
アリスとプリンが僕の小窓から顔を出して話す。
「そうでしたか。そう言えば最後に天之叢雲を折ったのもベリアルだと聞きました」
そう言われてみればそうか。折った後のどす黒い煙を吸っていたとしたらベリアルが正常でいれる保証はないか。
「見えてきた。カエデ聞こえるか!」
ザァァァァ……!
「はい!ご主人様!こちらです!」
森の中から上空にすぅぅと光の筋が見え、僕とミヤビはカエデと合流する。
「状況は?」
「ベリアルさんと魔物が交戦中ですが、何か様子がおかしいというか……」
「おかしい?」
「はい。魔物が攻めて来るというより、時間稼ぎをしている様な……」
様子を伺ってみる。確かにあれだけの数がいるのに、魔物が攻撃をしてこない。何かに怯えている……?
「ミヤビ、ここを任せていいか。僕はウェスタンに戻る。嫌な予感がする……」
「了解致した。魔物を討伐後、ベリアルとそちらに向かいます」
「……頼む。また満月か」
僕はきりんに乗って、ウェスタンに引き返す。
……この後、何百年と続いた決着がつこうとは誰も想像だにしていなかった。
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