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私の彼岸花
私の彼岸花
しおりを挟む秋風が心地よい、良く晴れた日曜日――
お母さんとお姉ちゃんと私の三人、電車に揺られおばぁちゃんの住む街へと着いた。
駅からタクシーで10分ほど走ると海が広がり、おばぁちゃんちが見えてきた。
「茜、ちょっとお墓参りに行くから付いてきてくれる?」
「うん、いいよ?」
「美央も行くっ!」
「美央ちゃんは、ばっばとおやつでも食べようか!」
「美央おやつでも食べる!」
お母さんとお姉ちゃんはお墓参りに行く。私はおばぁちゃんちで留守番になった。私はおばぁちゃんが大好きだ。優しくて、いつもニコニコしている。
「美央ちゃん、オレンジジュースとぶどうジュースどっちがいいかねぇ?」
「オレンジジュース!」
私はおばぁちゃんとおやつを食べながら、スマホを開く。
「えぇ!うそ!電波入らないの!?おばぁちゃん!WiFiない?」
「ばいばい?美央ちゃん、もう帰りたいんかぇ?」
「違う!違う!WiFiって言ってね、携帯の――」
駄目じゃん……スマホが使えない……電波は1本立ってはいるが、場所によっては圏外……
「あふぅ……そうだ!小説なら――」
「美央ちゃんや、おばぁちゃんはお洗濯物片付けてくるからゆっくりしときんさ」
「はぁい!」
私はWeb小説にハマっている。いつか自分でも書きたいと思い勉強中だ。
「繋がった!これなら電波弱くてもしばらく時間が潰せそう。えぇと、異世界雑魚ぴぃ冒険たんの……ハルト達がエルフの森に行ったところまで読んでたから……」
私は小説を読みながらいつの間にか眠っていた。
◆◇◆◇◆
「――あぁ、わかったよ、茜ちゃんには……そうか、それでいい。あぁ、美央ちゃんは大丈夫だから。ほいじゃぁねぇ……はぁい」
カチャ……
「おばぁちゃん?」
「あら、美央ちゃんや。起きたかね?茜ちゃんが、貧血になってね。病院で一晩お泊りすることになったから、今夜はばっばと寝ようかねぇ」
「え?お姉ちゃん大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫、念のために病院でお泊りするだけだから」
「そっかぁ……何かお手伝いすることある?」
「おやおや、そしたら晩ごはんの用意をしようかねぇ」
「はぁい!」
お姉ちゃんにはメールを入れておいた。落ち着いたら返事が来るだろう……
その日の夜――
なかなか寝つけず、縁側で月を見ていた。庭に咲く赤い花が月明かりに照らされ見とれていた。
「綺麗なお花……なんてお花だろう……明日、おばぁちゃんに聞いて――」
「にゃぁぁ……」
ふいに、おばぁちゃんの部屋から一匹の猫が出てきて、心臓が止まりそうになる。
「ビ、ビックリしたぁ!猫さんどこから来たの?」
「にゃぁ?」
猫はひょいっと縁側から飛び降り、こっちを振り向くと塀に登って歩いていく。「ついてこい」と言わんばかりに、もう一度振り返る。
私は廊下にかけてあったコートを羽織り、縁側にあったサンダルを履いて玄関の方へと周り、家の塀にそって走る。
「あっ!いた!」
家から少し離れた場所を、とことこ歩く猫を見つけ付いていく。夜風がもう冷たい。街灯の少ない路地を、月明かりを頼りに歩いていく。
「どこのうちの子だろう……うぅ、ちょっと寒い」
コートを羽織ってきて良かった。と、思っていると猫がすっと視界から消える。
「あれ?あの角のとこで見えなく――」
建物の角を曲がると、月明かりに照らされた防波堤に着く。そして防波堤に人影があるのが見えた。
「こんな時間に誰だろう……釣り人かな?」
ザザァァ……
潮風の匂いと波の音が心地よく聞こえる。月が水面に反射して辺りはいっそう明るく見えた。
私はゆっくりと近づいていく。小声で猫を探すフリをして――
……女の人?海に飛び込んだりしないよね……?
「猫ちゃぁん、どこ行ったぁ……」
「………あのぉ」
「はひっ!」
女性に近付くと急に声をかけられ、変な声が出た。何だか恥ずかしい……
「あっ、ごめんなさい、驚かせて。猫ちゃんを探しているのですか?」
「は、はい!」
「こっちには来てませんよ」
「そ、そうですか!すいません!お邪魔しました!」
「お邪魔しました」て何を言っているんだろうと、自問自答しながら、向きを変え来た道を引き返す。
「ね、猫ちゃぁん!」
「ねぇ、あなた……私のことが見えるの?」
ドキドキドキドキドキドキッ!!
心臓が今にも飛び出しそうな質問をされた。聞こえなかったフリをして立ち去ろうか……でも足が震えて動かない!!
「あぁ……あ……」
声がうまく出ない。背後に視線を感じる……
「ふふ、冗談よ。ねぇ、こっちに来て少しお話しない?」
「は?」
一気に緊張が解かれ、背中を冷や汗が流れる。
「もうっ!ビックリさせないでくださいっ!」
「あははっ!ごめんごめん!私は春子。あなたのお名前は?」
「……美央です」
ムスっとした表情のまま、私は春子さんの隣に腰掛ける。
海風が海面を揺らし、月が歪んで見える。
「美央ちゃんか……私ね。この街に昔住んでたんだけど、色々あって飛び出したんだ。ちょうど美央ちゃんくらいの歳の頃かな……」
「ふぅん……」
「今日はお墓参りに来たんだ。二十年……経ってもこの街は変わってなかった。皆、歳を取ってはいたけどね、ふふ……美央ちゃんはどうしてこの街に?」
「おばぁちゃんちがあって、お母さんとお姉ちゃんと来ました。お墓参りって言ってました」
「そっか、同じだね。お彼岸……か」
その時、ふと海岸に咲く花が目に入る。おばぁちゃんの庭で見た花と同じ形だった。ただ色が違う。
「春子さん……あの花の名前知ってますか?」
「あぁ……彼岸花ね」
「彼岸花……」
「お彼岸の頃に咲く花ね。でもあれ見て――」
月が海面を照らし、反射した光が白い彼岸花を照らす。
「綺麗……」
海面が彼岸花に映り、まるで青色の彼岸花のように見えた。
「奇跡的な光景ね……美しい」
「青い彼岸花……ですね」
そうだ!と思い、スマホを取り出し、写真を撮り、ネットで青い彼岸花を検索してみる。
「えぇ……と、青い彼岸花の花言葉は……え、無いんだ。そっか。あれは白い彼岸花ですもんね」
「ふふ……そうね。でもそうだなぁ……青い彼岸花に花言葉を付けるとしたら……『輪廻転生』もしくは『母の願い』かしらね」
「母の願い……」
春子さんの言う言葉に何だか深みを感じた。
「さっ、そろそろ帰りましょうか。家は近くなの?私はこの先の旅館だけど」
「あ、はい。旅館の手前のとこがおばぁちゃんちです」
「あら、そうなの。送って行くわ。そう言えば私にも美央ちゃんと同じくらいの子供がいてね――」
春子さんとはアドレスを交換し、それから何度か連絡を取って会ったりした。たまたま同じ都内に住んでいたので色んなお話を聞いた――
◆◇◆◇◆
――数年後。
「それでは新郎新婦の入場です!」
今日はお姉ちゃんの結婚式です。
「お姉ちゃんおめでとう!」
「美央……ありがとう。あなたのおかげよ、ありがとう!」
「えへへ」
「美央ちゃん!」
「あっ!春子さんっ!おめでとうございます!」
「美央ちゃん、ありがとうね!ほんとに……」
「いいえ!さ、さ!二人共、皆が待ってますよ!」
「そうね、美央、また後でね!行きましょう!春子お義母さん!」
「えぇ、茜ちゃん……いえ、茜!美央ちゃんまた後でね!」
「お幸せにっ!!」
茜お姉ちゃんが今日、結婚をする。相手は春子さんの子供……春子さんは茜お姉ちゃんのお義母さんになったのだ。
あの日見た青い彼岸花……
春子さんが言った『母の願い』……
春子さんと幾度か会う間に、色々な話を聞いた。そして家族ぐるみのお付き合いをするようになっていた。
茜お姉ちゃんがまさか息子さんと恋仲になるとは予想外ではあったけど。
春子さんのお母さんが助けようとした人……
それが私のお母さんの妹――美紗さん
そして美紗さんのお腹にいたのが――茜お姉ちゃん
今、世代を越えて
春子さんの子供と、美紗さんの子供が結婚をする。
末永く末永くお幸せに――
―完―
『私の彼岸花』著者・立花美央
……にゃ?
―了―
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
『異世界雑魚ぴぃ冒険たん』外伝
応援ありがとうございます!
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雑魚ぴぃさん
もう、ホントね( ̄^ ̄)ゞ
雑魚ぴぃさんへ
まだ読んでない作品もあるので楽しみです。
٩(^‿^)۶
でるるさんへ
お早いTwitter復帰お待ちしておりますw
雑魚ぴぃ
雑魚ぴぃさんへ
『私の彼岸花』…ちょっと不思議で素敵なお話…何回も繰り返し読んでます。
シンプルな表現と文章なので自分なりに登場人物や情景などを思い浮かべながら読めるのがその理由でしょうか。
読み易すくとても好きな作品です。
こういう作品は実写やアニメ化に向いてるのかなって。素人ながら思えるのでした。
でるるさんへ
とんでもなくありがたいコメント頂きまして
何と言ったらいいのやら!
ありがとうございます٩(′д‵)۶
(言うも通りw
1話目はちゃんと書いたんですよ……
2話目以降は……ちょっとファンタジーなんですよw
異世界雑魚ぴぃ冒険たん、おにいたん漫遊記、かみのこはる、にちょっとずつ繋がってるんです(๑•̀ㅂ•́)و✧
雑魚ぴぃ