『運命って信じますか?』

東雲皓月

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二十五話

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「今日は本当に有り難う御座いました!」

「いえいえ。困った時はいつでも頼って下さいね」


あれから、語りに語って時間はもう数時間が経っていた。

蒼さんはこれから仕事だと言って席を立つので、私も帰る事にした。

最後にお礼を言うと蒼さんは笑ってそう言ってくれて、本当にイイ人だなぁと思いつつ去っていく後ろ姿を眺める。

いやー、滅茶苦茶語ったよ。

満足だわー。

幸せな気分でその日は家に直帰宅して、ルンルンな気分がある内にと私は自分の小説を二話くらい進める事ができた。


(……あ、今思ったけど蒼さん…結局私をどう思ってたか聞くの忘れたなぁー。まぁ、いいか)


それよりも明日はどうしようかなぁと考えながら動画を見ていた私に、スタンプを連打で送ってくるラインがきた。

……こんな迷惑スタンプを送ってくるのは大概ヤツしか居ない。

仕方なくラインを開くと、そこには”今暇?“のスタンプから”構ってー“の可愛らしいスタンプが何個もあった。

てか、なんでそんな可愛らしいスタンプをアナタが持ってるんだよ。

軽く引くわ。

普段ならこういう場合、無視するかウザイの一言で終わらす私。

だがしかし、今の私は気分がいいから”なんですか“と打って送信した。

素っ気ないシンプルな返信だが、アキトさんはすぐに調子乗るからコレくらいが丁度いいんです。

と思ったが、私の考えはどうやら甘かったようだ。

一分もしない内にアキトさんから電話が掛かってきて、ビックリした私はつい電話をとってしまう。


《リナどうしたのっ!?》

「いや、私がどうしたって聞きたいんですけど。あと煩いです」

《だ、だっていつもなら無視するかウザイってスタンプで終了してたじゃん!?なのに”なんですか“とか聞いてくれるし今だって電話出たしっ》

「ソウデスネ。ナンデシテキタノカワカリマセンノデキリマスネ」

《ちょっ!なんでカタコト!?あと切らないでっお願いします!》


電話に出た瞬間、私は後悔しましたよエェ。

鼓膜が裂けそうなくらい叫ぶアキトさんに、私は今にも切ってやろうかと思ったけど泣きそうに頼むので仕方なく切るのは止めた。

と言うか、今日は関わる事は無いだろうと思っていたからか余計にウザイと思ってしまう。

恐ろべしアキトさんと言った所か。


「…で、何か用ですか?」

《え?用がないと電話しちゃイケないの?》

「ド頭カチ割りましょうか?用が無いなら切りますよっ」

《あるっありますから切らないでっ!》

「ならはよ言え」


何が、しちゃイケないの?だ。

私は今動画を観るのに忙しいんですよ。

ただでさえ今日は京君と言うしつこい人に絡まれて疲れてるんだから。


《…明日、リナに会いたいなぁーと思うんだけど空いてるかなって聞きたくて》

「明日?………暇じゃないので諦めて下さい」

《えっ、なにその間。具体的にどう暇じゃないのか聞かせてくれないかな》


やべ、つい暇ですって言いそうになった。

そしてすかさず理由を聞いてくるアキトさんに、私は無い予定をフルに考えて答える。


「一日中寝ます。二十四時間寝ますので暇じゃありません」

《あー、そっかぁ………ってそれは寝過ぎだよ!?あと、それは用事じゃありませんっ》

「チッ……バレたか」

《舌打ち…そんなに俺と過ごすの嫌なの?泣くよ?今外だけど泣くよ俺!?》

「どうぞ」

《え、酷いっ》


ヤバい。

電話越しなのにアキトさんの表情が目に見える。

今きっと半泣き顔で落ち込んでるぞコレは。

そう考えるとつい笑ってしまう。


《………リナって意外とSだね》

「何を今更。アキトさんは会った時からドMの変態野郎じゃないですか」

《違うよっ!?》

「アハハ」

《あ、リナが笑ってくれた。ヤバい起つわ》

「……本当にド頭カチ割りましょうかハンマーで」

《ゴメンナサイっ…;;》


あまりにも清々しい程の否定に笑ってしまった。

アキトさんが下ネタぶっ込むからドン引きしました。

ええ、かなりドン引きモノですね。

なんで電話出たんだろ私は。

早く終わらせよう、うん。


「用件はそれだけですか?ならもう切りますね」

《待って待って!明日、本当に会ってくれないの!?》

「……アキトさんに会ったら疲れるので嫌です」

《そんなガチトーンで言わないで…地味に凹むから;;》

「はぁ………偶然に会ったら考えなくもないです」

《え、マジで?》

「まぁ、そうそう会う事はないでしょうけどね」

《それフラグだって知ってる?絶対明日会うから心配ないねっ》

「……嬉しそうにしないで下さい。キモイですから」

《ほんっとに容赦ない悪態だね!?でもそれもそそるから許すけどっ》

「………………」

《え、なんで無言?もしもーし??》

「っこの変態!!」


決め台詞を吐いて私は有無を言わさずに電話をプツンと切ってやった。

自分でも思いましたよ、フラグだなって。

でも現実ってそう甘くないじゃないですか。

いけるかなって思ったんです。

でも、私の考えが甘かったかもしれない……相手はあのアキトさんですよ?

犬の嗅覚並みに多分私を見つける気がする。

恐っ、今更だけどアキトさん恐っ!


「……はぁ、一応防犯ブザー持ってるからいいか。いやー、フラグ回避したいぃー」


つーか、あの急な下ネタぶっ込むのどうにかならないかなぁー。

本当に頭かち割ろうか。

いや、犯罪者にはなりたくないし……。

目潰しくらいならいいのかな?

一気に疲れが増した私は、フルフルと頭を振ってアキトさんの事を忘れようとお風呂に入る準備をした。

いっそ明日が来なきゃいいのになぁと考えて。



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