『運命って信じますか?』

東雲皓月

文字の大きさ
8 / 26

八話

しおりを挟む
 

さて、今の状況を誰か説明して下さいませんかね。

只今二人共互いを睨み合い中です。

いや、そう見えるのは私だけかも知れないですけど……いやいや、これはどう見たって睨んでますよね?


「リナから話は大体聞いたけど……あんまりしつこいと嫌われちゃいますよ?ストーカーさん」

「ストーカーじゃなくて三神アキトだ。俺はただ、仲良くなって隙あらば恋人になりたいだけだよ」

「でも断れてるんですよね?それってどうなんですか。しつこいと言わないでなんと言うんです?」


威嚇のような表情をしている奴と、笑ってはいるがトゲトゲしさを隠そうともしない親友の言葉のやりとりに私は呆れてモノも言えない状況である。

そもそも、最初の時からおかしいと思ったんだよ。

めっちゃ距離近いしさ、いつもなら絶対しない事したりさ、名字じゃなくて名前で呼べとかさ。


(…面白がってるな、これは)


わざわざ言葉を濁して、奴に勘違いをさせる時点で親友が何をしたいのか薄々分かってしまった私もどうかと思うけど。

私は今、もの凄く困っています。

ていうか。

めっっっんどくっさいな!!

え、帰っていいですか?

帰りたいんですけど。

別に親友は女だし、彼氏になるなんてまず有り得ない。

でも、これで諦めてくれるならと親友の好きにさせてたら………なんだ、この修羅場みたいな感じ。

まるで私が二股したみたいじゃないか!

失敬な、私はどっちとも付き合ったりしてないぞ。

どうして私がこんな気まずい空気を吸わなきゃいかんのだ。


「…あの、お二人さん?落ち着こう?」

「リナ、男には譲れないモノがあるんだよ。ここで引いたら駄目なんだ」

「いや引けよ」

「ほら、リナがこんなに嫌がってるんですよ。”俺“なら嫌われたくないからって引きますけど」

「……っ嫌われたくはない!でも、諦めるのも嫌だっ」


おいおい、マジかよ。

そんな難しい事じゃないよ?

なんでそんな苦虫を噛んだような顔するのさ。

そしてマイさん?

貴女はそれを楽しんでますね?

口元が隠しきれてないですよー。


(…めっちゃ悪い事考えてるな…)


辛うじて奴には見えていないが、私からはもうバッチリ見えましたとも。

口元がニヤニヤとしているのが。


「はぁ、ここまで言っても分かってもらえないんですね。ならオブラートに包むのはやめます。ハッキリ言って、リナに近づくなって言ってるんですよ。理解できますか?この意味が」

「……っ」


ワーオ。

小悪魔ちゃんが現れましたよー。

完全に奴をからかってますね。

そして、また誤解を招くような事をペラペラとよくもまぁ吐けますこと。

演技上手いね、マイさん?

でもさ……それって多分逆効果な気がするんですが。

ほらー、奴の顔見ました?

めっちゃ諦めないぞっ!て顔してますよ。

どうしてくれんの。


「…相手が誰だろうと、奪えばいいだろ。俺は諦めないからなっ」

「ほぉー?なら、どうやって”俺“から奪う気か聞かせてもらおうじゃないですか」


あ、ニヤけるの我慢してるぞ親友。

頑張れー。

って他人事じゃなかったわ。

んー、マジでどうすっかなぁ。


「あっ!やっぱりここに居たな!アキト!!」


うーんと悩んでいた矢先に、突如現れた黒髪男性に奴はゲッと嫌そうな表情を隠す事なくした。

が、嫌そうな表情をしたのは奴だけではなかった。


「……って、あれ?アヤさん?こんな所で何してんの」

「ア、ハハハ……よぅ、山口」


うっわー。

まさかの親友の知り合い来たー。

てか、親友の知り合いが奴を呼んでたような気がするんだけど。


「よぅっじゃないわ。何これ?どんな状況だ??」

「はっ?お前、コイツ知ってんの?」

「あっ?知ってるも何も、この人は───」

「あぁー!そういや山口に話しがあんの忘れてたわー。つーことで、ちょっと抜けるっ」

「えっ、ちょ!まっ…!!」


脱兎の如くに山口と言う人を連れて親友はカフェの入り口まで連れ去ってしまった。

私も彼も唖然としてその光景を眺める事しかできずに固まる。

てか、え?

二人っきりになったんですけど。

ヘルブミー!!

マーイーサーンー!!!

二人にしないでよー。

もう嫌だー、帰りたいよー。

とりあえず、気まずいからなんか話そう。

何を話せばいいんだ。


「………あの二人、知り合いみたいだね?知ってた?」

「えっ、いや……知らなかったですね」

「俺も知らなかった。つーか、アイツに見つかったのが辛い…」

「な、なんでです?」

「いっつも邪魔するから。リナに近づく度にアイツが妨害してくんの。お陰で三ヶ月も掛かった…」


わー、三ヶ月も…………怖いわ!

そんな前から見られてたのか、私!

鳥肌立つわー。

でも、頑張って妨害してくれたんだね。

私のメシアよ!

その調子でもっと妨害してくれー。

かなり落ち込んでいる奴とは裏腹に私は内心引いたり喜んだりと忙しい。

てか、マイさんと山口って人……めっちゃ話し合ってる気がするんだけど。

何話してんのかな?

面倒な事にならないといいなぁー。


(…あ、戻ってきた)

「お待たせー。ちょっと話し込んじゃったわ」

「おかえりー。何話してたの?」

「んー?ちょっとね」


え、なんですかその笑顔。

めっちゃ怖いんだけど。

そして山口とやら、何を吹き込まれたんだろう。

こっちもめっちゃ微笑んでるんだけど。


「つーわけで、俺ら行くわっ」

「はっ?お前何言って────」

「んだよ。今からお前仕事だろ?さっさと行くぞー」


じゃっと手を振ると山口は奴を連れて喫煙所から出て行こうとする。


「ばっ!襟掴むなって!時間もまだあるじゃんかっ」

「ツベコベ言うなー。あと、時間ある訳ないだろ?締切が近いってボヤいてたクセに」

「っだから嫌だったんだよ!お前に見つかるのっ」

「はいはい。話しは後で聞いてやるからなー」

「っっ鬼!悪魔ぁー!!リナァー」


さらば。

幸運を祈ってあげなくもなくもない。

首元の襟を掴まれながら消え去っていく奴に向かって手を振ると、隣に戻って来た親友が肩を震わせながら笑いを耐えていた。

ヤバいわー、多分二人コンビ組んだな。

どうなってそうなったかは知らないけども。

助かったよー!

やっぱり山口はメシアだったぁ!

ありがとうよー!

もう来させないでくれるともっと有り難いけどね。


「…クッ……駄目だ……アハハハ!もう限界っ」

「あー、はいはい。存分に笑いなさい。そして説明ヨロー」

「おっ……おけ~……クッフフフ…」


ヤバい。

親友が壊れた。

さーてと、これからどうなんのかねー?

アハハ…………はぁ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...