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八話
しおりを挟むさて、今の状況を誰か説明して下さいませんかね。
只今二人共互いを睨み合い中です。
いや、そう見えるのは私だけかも知れないですけど……いやいや、これはどう見たって睨んでますよね?
「リナから話は大体聞いたけど……あんまりしつこいと嫌われちゃいますよ?ストーカーさん」
「ストーカーじゃなくて三神アキトだ。俺はただ、仲良くなって隙あらば恋人になりたいだけだよ」
「でも断れてるんですよね?それってどうなんですか。しつこいと言わないでなんと言うんです?」
威嚇のような表情をしている奴と、笑ってはいるがトゲトゲしさを隠そうともしない親友の言葉のやりとりに私は呆れてモノも言えない状況である。
そもそも、最初の時からおかしいと思ったんだよ。
めっちゃ距離近いしさ、いつもなら絶対しない事したりさ、名字じゃなくて名前で呼べとかさ。
(…面白がってるな、これは)
わざわざ言葉を濁して、奴に勘違いをさせる時点で親友が何をしたいのか薄々分かってしまった私もどうかと思うけど。
私は今、もの凄く困っています。
ていうか。
めっっっんどくっさいな!!
え、帰っていいですか?
帰りたいんですけど。
別に親友は女だし、彼氏になるなんてまず有り得ない。
でも、これで諦めてくれるならと親友の好きにさせてたら………なんだ、この修羅場みたいな感じ。
まるで私が二股したみたいじゃないか!
失敬な、私はどっちとも付き合ったりしてないぞ。
どうして私がこんな気まずい空気を吸わなきゃいかんのだ。
「…あの、お二人さん?落ち着こう?」
「リナ、男には譲れないモノがあるんだよ。ここで引いたら駄目なんだ」
「いや引けよ」
「ほら、リナがこんなに嫌がってるんですよ。”俺“なら嫌われたくないからって引きますけど」
「……っ嫌われたくはない!でも、諦めるのも嫌だっ」
おいおい、マジかよ。
そんな難しい事じゃないよ?
なんでそんな苦虫を噛んだような顔するのさ。
そしてマイさん?
貴女はそれを楽しんでますね?
口元が隠しきれてないですよー。
(…めっちゃ悪い事考えてるな…)
辛うじて奴には見えていないが、私からはもうバッチリ見えましたとも。
口元がニヤニヤとしているのが。
「はぁ、ここまで言っても分かってもらえないんですね。ならオブラートに包むのはやめます。ハッキリ言って、リナに近づくなって言ってるんですよ。理解できますか?この意味が」
「……っ」
ワーオ。
小悪魔ちゃんが現れましたよー。
完全に奴をからかってますね。
そして、また誤解を招くような事をペラペラとよくもまぁ吐けますこと。
演技上手いね、マイさん?
でもさ……それって多分逆効果な気がするんですが。
ほらー、奴の顔見ました?
めっちゃ諦めないぞっ!て顔してますよ。
どうしてくれんの。
「…相手が誰だろうと、奪えばいいだろ。俺は諦めないからなっ」
「ほぉー?なら、どうやって”俺“から奪う気か聞かせてもらおうじゃないですか」
あ、ニヤけるの我慢してるぞ親友。
頑張れー。
って他人事じゃなかったわ。
んー、マジでどうすっかなぁ。
「あっ!やっぱりここに居たな!アキト!!」
うーんと悩んでいた矢先に、突如現れた黒髪男性に奴はゲッと嫌そうな表情を隠す事なくした。
が、嫌そうな表情をしたのは奴だけではなかった。
「……って、あれ?アヤさん?こんな所で何してんの」
「ア、ハハハ……よぅ、山口」
うっわー。
まさかの親友の知り合い来たー。
てか、親友の知り合いが奴を呼んでたような気がするんだけど。
「よぅっじゃないわ。何これ?どんな状況だ??」
「はっ?お前、コイツ知ってんの?」
「あっ?知ってるも何も、この人は───」
「あぁー!そういや山口に話しがあんの忘れてたわー。つーことで、ちょっと抜けるっ」
「えっ、ちょ!まっ…!!」
脱兎の如くに山口と言う人を連れて親友はカフェの入り口まで連れ去ってしまった。
私も彼も唖然としてその光景を眺める事しかできずに固まる。
てか、え?
二人っきりになったんですけど。
ヘルブミー!!
マーイーサーンー!!!
二人にしないでよー。
もう嫌だー、帰りたいよー。
とりあえず、気まずいからなんか話そう。
何を話せばいいんだ。
「………あの二人、知り合いみたいだね?知ってた?」
「えっ、いや……知らなかったですね」
「俺も知らなかった。つーか、アイツに見つかったのが辛い…」
「な、なんでです?」
「いっつも邪魔するから。リナに近づく度にアイツが妨害してくんの。お陰で三ヶ月も掛かった…」
わー、三ヶ月も…………怖いわ!
そんな前から見られてたのか、私!
鳥肌立つわー。
でも、頑張って妨害してくれたんだね。
私のメシアよ!
その調子でもっと妨害してくれー。
かなり落ち込んでいる奴とは裏腹に私は内心引いたり喜んだりと忙しい。
てか、マイさんと山口って人……めっちゃ話し合ってる気がするんだけど。
何話してんのかな?
面倒な事にならないといいなぁー。
(…あ、戻ってきた)
「お待たせー。ちょっと話し込んじゃったわ」
「おかえりー。何話してたの?」
「んー?ちょっとね」
え、なんですかその笑顔。
めっちゃ怖いんだけど。
そして山口とやら、何を吹き込まれたんだろう。
こっちもめっちゃ微笑んでるんだけど。
「つーわけで、俺ら行くわっ」
「はっ?お前何言って────」
「んだよ。今からお前仕事だろ?さっさと行くぞー」
じゃっと手を振ると山口は奴を連れて喫煙所から出て行こうとする。
「ばっ!襟掴むなって!時間もまだあるじゃんかっ」
「ツベコベ言うなー。あと、時間ある訳ないだろ?締切が近いってボヤいてたクセに」
「っだから嫌だったんだよ!お前に見つかるのっ」
「はいはい。話しは後で聞いてやるからなー」
「っっ鬼!悪魔ぁー!!リナァー」
さらば。
幸運を祈ってあげなくもなくもない。
首元の襟を掴まれながら消え去っていく奴に向かって手を振ると、隣に戻って来た親友が肩を震わせながら笑いを耐えていた。
ヤバいわー、多分二人コンビ組んだな。
どうなってそうなったかは知らないけども。
助かったよー!
やっぱり山口はメシアだったぁ!
ありがとうよー!
もう来させないでくれるともっと有り難いけどね。
「…クッ……駄目だ……アハハハ!もう限界っ」
「あー、はいはい。存分に笑いなさい。そして説明ヨロー」
「おっ……おけ~……クッフフフ…」
ヤバい。
親友が壊れた。
さーてと、これからどうなんのかねー?
アハハ…………はぁ。
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