『運命って信じますか?』

東雲皓月

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十三話

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はい、お馴染みの私です。

あれから暫く二人は話し込んで、戻って来たと思えばナオちゃんはニヤニヤと口元を緩ませて私の耳元で小さく一言。

”楽しそうな展開だね♪“と。

イヤイヤイヤ。

全くもって楽しくありません!

マイさんよ、ナオちゃんに何を吹き込んだの!?

一方マイさんの方を見ると、親指をたててウィンクしてきた。

なにがっ!?

何、そのキラキラスマイル!!

不安しかないですけど!?

そして何時までやってるんだ、君達は!!

飽きないのか?

私は飽きたよ!

未だにバトってる山口と奴はバスケットボールの投げ合いだけなのにボロボロで息が上がっていた。

おい、いい加減にやめなっての。

まだバスケしてないのに、そんなに体力使って大丈夫?


「よーし、大体集まったからバスケするよー。チーム分けするから集まりなー」

「ハァハァ……っだってよ…アキト…」

「…ハァ…ハァ……あぁ…ハァハァ……」


めっちゃバテてる、めちゃくちゃバテてるよこの二人。

マイさんの一言でチリチリになっていた皆が周りに集まって、何故か当たり前のように奴が私の隣に座ろうとする。

が、山口のお陰で奴は離れた場所に連れて行かれて代わりにナオちゃんが隣に座ってくれた。

あざーっす!


「…チッ…また邪魔された…」

「初めましてぇ~。リナちゃんとアヤちゃん経由で来た、川井なおでぇーす♡」

「…どうも」


ちょっとちょっと!

ナオちゃんのこの可愛さに微動だにしないとか、アンタヤバいよ!?

ほら、周りを見てご覧よ。

男子皆が目をハートにしてるよ!?

なんて恐ろしい子なのっナオちゃん!

てか、もう少し優しくしなさいよ!

ナオちゃんが可哀想じゃない!


「アキトさんですよね?アヤちゃんに話しは聞きました~♪」

「……はぁ」

「でも残念☆リナちゃんは私の愛人だからあげないですよ~」

「はっ……?」

「でぇ~、アヤちゃんの愛人が私なんですよぉ~」

「え、はっ……??」


可愛らしく微笑む小悪魔の言葉に、奴は固まる。

困惑してるね~、私もだよ。

まさかそのネタを引っ張り出してくるとは思わなかったよ!

てか、状況が複雑になっていくからやめてほしいんだけどなぁー!!?


「とゆーわけで、ナオちゃんとリナは”俺“のチームだから。山口はソイツ宜しくな☆」

「…え、あ、はい…?」


あららら…山口も困惑してるわコレ。

諦めな、山口。

私も諦めるから。

他の決まってない人達はマイさんと山口がジャンケンで平等に決めて、一チーム六人が出来上がった。

まず、マイさんチーム。

私、ナオちゃん、ミナちゃん、コウキ君、藤本さん。

藤本さんは三十代の男性で、チーム分けする為のアレを用意してくれた人だ。

それから、山口チーム。

アキト、カナちゃん、ミホちゃん、ハルちゃん、弟君。

奴はかなり不服そうだが、あえて無視するとして……なかなか上手い具合に別れた私達は早速試合を始めた。

制限時間は十分で、山口の携帯でタイマー設定をすると開始の合図と共にジャンプボールができる体制になる。

因みに、ジャンプボールをしているのはマイさんと奴の二人。

えーっと、はい。

奴はマイさんを完全に敵視しているようで、目がギラギラ燃えております。


「じゃあー、はじめっ」


山口の合図と共にボールが宙に浮き、落ちてくる瞬間にマイさんがボールを叩き落とした。


「チッ!取れなかった……!」

「ヘイヘーイ♪これだから素人は駄目なんですよー」

「クッソ!」


面白がっているマイさんは味方チームから貰ったボールを持って攻めまくる。

それを邪魔しようと奴は動くが、何せバスケ経験者のマイさんには適わないようでスルスルと抜かれていく。


「リナっ!」


ゴール下に居た私にパスをするマイさんに、私はそれを受け取り投げた。

場所が良かったのかキレイなまでにボスっと入った。


「イエーィ♪流石”俺“のリナー。息ピッタリじゃん♪」

「アハハ……どうもー;;」


わざわざ言わんでいいから。

そんなに”俺の“アピールしなくても奴はかなりダメージを受けてますからねー。


「クソー・・・俺がリナの邪魔できないって分かってやったな!?」


イヤイヤイヤイヤイヤイヤ。

流石のマイさんでもそんなの分からないし、てかそれでダメージ食らってるの!?


「フッ、だろうと思ったよ。弱点が分かればこっちのモンだ!」


え?マジで??

マイさん分かっててやったの?

アンタはエスパーか。

強者の何者でもないなっ。

超ドヤ顔をするマイさんに超悔しそうにそれを睨む奴。

まるでこの二人の戦いのようだ。


(…いや、これチーム戦なんだけどね…)


アハハと苦笑いをする私をそっちのけに、試合は進む進む。

十分後、タイマーが鳴ると試合は終わった。

ん?どっちが勝ったかって??

勿論、マイさんチームですよ。

一点差ですけどね。

最後の最後に私がゴール決めました。

マイさんに渡されて。


「フッフッフー。勝った☆」

「ハァハァ……っ卑怯、だぞ……ハァ…ハァ…」

「はて、なんの事かなー?」


勝ち誇るマイさんと、負けた奴は悔しそうに息をあげながら睨む。

シラを切るマイさんには本当に言葉が出ないよ。

相手の弱点を知ったマイさんは最強だ。

上手い具合にそこをつくんだから。

でも、マイさんが楽しそうならいっかな。

今まで以上にイキイキしてるもんね。


「じゃ、一旦休憩するか」

「さんせーい」


あんまりボールに触れてなかったけど、ボールを追うのにかなり体力を消費した私は誰よりも早くにその提案に賛成した。

冬だというのに走り回ったせいか汗をかいた皆は各々持ってきたタオルで拭いたり、ジュースを買いに行ったりしている。

私は今の内と言わんばかりに煙草を持って外へと逃げる。


「……はぁー、疲れた;;」

「…あれ、君は…」

「はぃ?……あ、貴方は」


外で一服する私の前に現れた人は、私に気付いて近付いてきた。


「もしかして、君もバスケしに来てる人?」

「そうですけど……え、まさか貴方もですか?」

「うん。山口君の誘いでね。仕事でちょっと遅れたけど…まだやってる?」

「あ、はい!今丁度休憩中で」

「そう。良かった、間に合って」

「ですね。あ、先日は有り難う御座いました」

「ん?あぁ…あれね。改めて言わなくてもいいですよ」

「いやいや。多分アレがなかったら本当にヤバかったと思うので、感謝してもしきれませんよ」


本当に、この人のお陰で奴から逃れられたんだから、ちゃんとお礼しないとね。

先日、本を買いに行った場所にいたあの王子がまさかの山口の知り合いとは思わなかったけど。

いやー、それにしても笑顔が眩しい人だな。

爽やか系?

多分それだ。

癒されるなぁー。

さっきのアレで本当に疲れていたのが分かるくらいに、今癒されてるって思えるくらい癒されてますよ。

なんだー、山口と奴の知り合いって聞いたからまた変な人だと勝手に想像してたのに。

ごめんなさい、勝手に決めつけました。


「…でも、意外ですねー。煙草吸ってるなんて」

「あー、本当ですか?やっぱり似合いません?」

「んー、見慣れたらそうでもないですよ」

「アハハー、なら見慣れて下さい。ちょっと見られるのに慣れてないですけど」

「そうだね。また集まった時には見慣れておきます」


なんてほのぼのとした会話だろうか。

これが普通の会話か。

いや、そう思う自分もどうかと思うけど。

さてと、一服したしまた戻りますかねー。

内心いやですけど、逃げたいですけどね。



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