『独り鬼ごっこ』

東雲皓月

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一話

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──いーち──にーい──さぁーん──






『またあの子一人でやってるわよ』






──よぉーん──ごぉーお──ろぉーく──






『不気味ねぇ~』






──なぁーな──はぁーち──きゅーう──






『ホントよねぇ。・・・親はどんな教育してるのかしら?』






──じゅーう──!






公園で一人、数を数えている少女に離れた場所から主婦達はヒソヒソと会話をしている

けれど、数を数え終えた少女は楽しそうに公園内をキョロキョロと“居る筈もない誰か”を探し始めた

日本人とは思えない程に美しい腰辺りまで長い金色の髪を靡かせて、キラキラと宝石のように輝くエメラルドグリーンの瞳で公園内を探している


『もぉーいーかぁーいー』


その言葉を合図に、少女は木の上や草の生えた場所を手当たり次第に動き始めた

それを見てはまた主婦達は気味が悪いというような表情でヒソヒソ話をする

白いワンピースを泥で汚れるのもお構いなしに、少女は無我夢中で遊んでいた


『…気味の悪い子………っ』

『どうかしたの?』

『いえ……急に足が痛くなって…』

『えっ?あら、アナタ…足から血が出てるわよ』

『……ホントだわ。いつ怪我したのかしら…?』

『でも、さっきまではなかったように見えたけれど……?』


主婦達の一人が少女の悪口を言うと、いきなり痛み出した足を見ると、枝で引っ掛けたような擦り傷が出来ていて主婦達は皆不思議がっている

そのまま不思議そうにしながらも主婦達は夕飯の支度をしなくてはと各自の自宅に帰って行った


『……っみぃーつけた!』


少女は未だに、夢中で鬼ごっこを続けている

……そこに居るのは、少女以外が見えなかった“何か”


『ァー、ミツカッタァ』


しょんぼりとして草むらから出てきた“それ”に少女は笑ってヒョイと手の中に入れた







そう、少女は“見えない者が見える”のだ








『クスクス…あとふたりだねぇ』








無邪気な笑みを浮かべる十歳の少女は、まだ見つかって居ない“ふたり”を探し始める





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